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AWS Summit Japan 生成 AI で技能伝承!プロセス製造業デモのご紹介

こんにちは、元メーカー出身の Prototyping Engineer の鈴木です。

このページを開いていただいたみなさんは、きっと何らかの形で製造業に携わっていらっしゃると思います。ものづくり白書2023では、技能伝承に課題があることについて触れられていますが、みなさんの周りではいかがでしょうか。生成 AI はこの大きな課題を解決する可能性を秘めています。

この記事では、 AWS Summit Japan の製造業ブース内で展示される、プロセス製造業向け生成 AI のデモについてご紹介します。このデモはプロセス製造業を想定していますが、技能伝承は業態を問わない共通の課題のため、ぜひ多くの製造業に携わる方にこの記事を読んでいただき、また実際に AWS Summit Japan の会場まで足を運んでいただければ幸いです。2024 年 6 月 20 日(木)、21 日(金)の 2 日間、幕張メッセで開催されますので、ご登録がまだの方はぜひこちらのページにアクセスしご登録ください。

ベテラン技術者のKKDと生成 AI 

ベテラン技術者の KKD(経験・勘・度胸)は、長年の実践から培われた高度な技能であり、製造現場の安定運用や高い生産性を実現する上で欠かすことができません。一方で近年は製造業就労人口の低下やベテラン技術者の退職により、その貴重なノウハウは失われつつあります。そんな中、生成 AI の登場により技能伝承の新たな可能性が見えてきました。

生成 AI は自然言語処理技術を活用し、大量のテキストデータを学習することで、人間のような対話や文章生成を可能にします。これにより、ベテラン技術者の知見を AI に参照させ、次世代の技術者育成や技能伝承に活用できるのではないかと期待されています。具体的には RAG と呼ばれる方法により、過去の生産記録やアラート対応記録などのレポートを検索・参照することで、期待される回答を AI に生成させることが可能です。

しかし、過去のレポートや文献には明示されていない現場のノウハウも多く存在するでしょう。トラブル発生時など、ベテラン技術者に直接聞いて、解決の参考にしたい場合も多くあると考えられます。

そこで重要になるのが、Human in the loop の考え方です。つまり、ベテラン技術者をループに組み込み、AI による技能伝承をサポートしてもらうのです(図1)。

図1: ベテラン技術者と生成 AI の協調によるノウハウ伝承

  1. オペレータは現場から発報されたアラートを確認する。
  2. オペレータは生成AIチャットボットに問い合わせする。チャットボットは過去のレポートを元に原因・対処方法と、推奨される現場への確認アクションを応答する。
  3. オペレータは現地エンジニアにリモート通話で、AI から生成された応答を基に状況確認を依頼する。
  4. 現地エンジニアは実際の状況を確認後、対応作業を行う。もし原因究明や解決が困難な場合は、別途ベテラン技術者に通話に入っていただく。
  5. 対処が完了した場合、原因や対処法などをレポートに記載し保存する。

このような対応を繰り返すことで過去の対応履歴にベテランのノウハウが蓄積されていき、ベテラン技術者が退職された後においてもその知見をうまく活用することができるようになるでしょう。今回のデモでは、AWS のサービスを組み合わせることによって図1のしくみを実現します。

デモ

このデモではミニチュアプラントを利用して、異常を擬似的に発生させます。実際に動作している様子は AWS Summit Japan 当日のブースにてご覧いただけます。

図2: ミニチュアプラント

ミニチュアサイズですが、流量計や液面計(フロートスイッチ)、圧力計などを設置し、制御ループを組んで実際に計装しています。

図3: 流量計

図4: 液面計(フロートスイッチ)

オペレータは過去のアラート事例について、生成 AI にチャット形式で相談することができます。ここでは原因と過去の対応策をもとに、生成 AI が現場オペレータへの確認事項を提案してくれています。このデモアプリでは、エラーコード(画像の例ではF060)を入力するだけで、原因や対策を出力してくれるように調整しています。

図5: 生成 AI チャット画面

AIチャットで解決できない場合や現場の状況確認が必要な場合、オペレータはすぐに現地エンジニアやベテラン技術者とリモートでビデオ通話を開始することができます。制御ループの設定値の変更やバルブ開閉など、実際に行った対応をコメントとして記録に残すことが可能です。この対応記録は、次回以降のアラート原因究明の際に AI が参照するデータソースとして利用されます。

図6: ビデオ通話画面

まとめ

AWS Summit Japan の製造業ブースでは、生成 AI を活用したプロセス製造業向け技能伝承のデモを展示します。ミニチュアプラントを使用した実際の動作する様子や、技術的な内容について知りたい方は、ぜひ会場までお越しください。みなさまのご登録・ご来場をお待ちしています!セッション・イベント登録はこちら

著者について

Takehiro Suzuki

鈴木 毅洋
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 Prototyping Engineer

計装メーカー R&D 部門、化学メーカー DX 部門を経て AWS Japan に入社。現在は AWS を用いてお客様と共にプロトタイピングの構築を支援しています。