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AWS Summit Japan 製造業向け展示の見どころ紹介!

みなさんこんにちは!製造業のお客様(主に関西のお客様)を中心に技術支援をしているソリューションアーキテクトの河井です。

間もなく AWS Summit が開催されます!これまで AWS Summit Tokyo という名前でしたが 2024 年度から AWS Summit Japan という名前に変わりました。製造業向けの展示もたくさん出ていますのでご紹介いたします。

AWS Summit とは

AWS Summit は、クラウドコンピューティングコミュニティが一堂に会して、アマゾン ウェブ サービス (AWS) に関して学習し、ベストプラクティスの共有や情報交換ができる、クラウドでイノベーションを起こすことに興味があるすべての皆様のためのイベントです。基調講演、150 を超えるセッション、250 を超える EXPO コンテンツを体験し、皆様の学習にお役立てください。ニーズに合わせてさまざまなコンテンツを自由に組み合わせて楽しむことができます。開催期間は 6 月 20 日 (木) と 21 日 (金) の 2 日間で会場は幕張メッセです。 本ブログでは数ある展示とセッションの中から製造業に関する展示とセッションをご紹介いたします。まだ登録してない方は以下のリンクからご登録ください。

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製造ブースは HALL 3 会場、AWS Village の Industry Zone の中にあります。AWS Village は、AWS のサービスやインダストリーソリューションを扱う 90 以上の AWS 展示と、50 以上のお客様事例展示が一堂に会した展示エリアです。生成 AI など、テーマごとに 4 つのエリアに分かれており、基本的な機能から選定や組み合わせまで、実際に動くデモを見ながら学ぶことができます。各エリアには、テーマに特化したセッションやデベロッパー向けの Deep なテクニカルセッションなどが用意されたミニステージがあります。ぜひ、場内マップでご確認の上お立ち寄りください

(会場全体図と AWS Village)

製造業向け展示ブース全体

2024 年度の製造ブースでは「お客様と一緒にデータとクラウドで製造業の未来を変えていく」というコンセプトをもとに「製品設計」「スマート工場」「サプライチェーン」「スマートプロダクト」の 4 分野から 9 つのデモを展示します (以下の図では 8 つのデモと記載していますが、ブース横断のデモ展示があるため実質 9 つです)。展示は製造業におけるエンジニアリングチェーンを意識した配置となっており、1 から順番に見ていただくことで設計から保守までの工程でどのように AWS のテクノロジーが活用できるかを体験できます。

ではさっそく展示ブースの概要を説明していきます!

展示ブースの内容

製品設計エリア

製品設計エリアでは「環境最適化と開発スピード向上」をテーマにデータとクラウドの力で製品設計開発の更なる効率化、高速化、品質向上のためのアプローチをご紹介します。

1. CAD/CAE 端末の柔軟な管理機能 (Research and Engineering Studio on AWS )

CAD/CAE 端末環境において、従来はワークステーション端末のライフサイクルをはじめとする運用管理の観点から、必ずしも設計者が求める最適なコンピュータ環境が提供/利用されていないケースがあります。それにより設計業務の業務効率が低下する課題があります。このような課題に対処する為に、ユーザーフレンドリーな Web ポータルによって設計者自身がセルフサービスで求めるスペックのコンピュータ端末を起動、管理できるソリューション Research and Engineering Studio on AWS (RES) のデモを展示します。また、シミュレーションの機械学習モデルであるサロゲートモデルを用いることで、瞬時にシミュレーション結果を予測し、シミュレーションにかかる時間とコンピュータリソースの負荷を軽減するアプローチをご紹介します。RES の資料は以下のリンクからダウロードできます。

Research and Engineering Studio on AWS の資料ダウンロード

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

仮想デスクトップの管理画面

(仮想デスクトップの管理画面)

スマート工場エリア

スマート工場エリアでは「小さく早く始める効率化」と「AI によるプラント保守」の 2 つをテーマに製造現場から収集されるデータを活用して継続的に改善する方法やクラウドと生成 AI を活用して作業者をサポートして現場力および QCD の向上につながる活用をご紹介します。

2. Software Defined Factory

Software Defined Factory では仮想的な工場を使って、アクセスせずに擬似的に工場をシンプルに再現することで可視化のメリットを活かし、工場業務の改革にむけた第一歩を踏み出すために AWS の基盤を活用する方法を紹介します。

Software Defined Factoryのデモ展示構成です

(デモ展示の構成)

3. 製造現場のIoTデータをパートナーとともに小さく早く製造DXを実現

このブースではミニチュア組立工場を展示します。ミニチュア組立工場では、製造現場からのデータ取得とクラウドへの送信、可視化や生成 AI 活用を中心としたスマート工場を紹介します。さらにパートナーソリューションも含めて AWS を「早く小さく始める」ことを紹介します。デモでは PLC からデータを送信し、AWS IoT CoreAWS IoT SiteWise などのサービスを活用してクラウド上でのデータ処理・ニアリアルタイムの可視化、生成 AI の活用による 4M (人「Man」、機械「Machine」、材料「Material」、方法「Method」) 変化点の調査を具体的に見ることができます。さらに、パトライトや Salesforce Field Service など、パートナー製品との連携デモもご覧いただけます

(サンプルアーキテクチャ)

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

ミニチュア組み立て工場

(ミニチュア組み立て工場)

4. 製造業の課題に挑む AI ソリューション

工場設備の外観検査とリアルタイムデータ収集における生成 AI の活用をご紹介します。機械学習による外観検査の際に、モデル学習用の良品/不良品画像が必要となりますが、必要量の画像が用意できないことも多々あります。これを生成 AI を用いて画像を生成することで高精度な検査モデルを作成し、実際に外観検査に取り込んで検査する様子を実演します。また、リアルタイムで収集される大量の機器データを生成 AI 経由で迅速かつ柔軟に目的のデータを参照し、RAG (Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成) と組み合わせることで、効率的な運用とメンテナンスを実現する様子をご覧いただきます。デモに関する資料は以下のリンクからダウンロードできます。

デモ展示資料ダウンロード

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

ダッシュボードイメージ

(ダッシュボードイメージ)

5. 生成 AI・映像・音声と外付けセンサーによるプラント保守支援

プロセス製造業においては熟練の技術者の引退後も、後継の技術者がその知見を継承して安定した品質を保つことが求められています。生成 AI のユースケースとして過去の作業報告書などをもとに原因や修復方法を支援してもらう方法が考えられますが、過去のレポートや文献に明示されておらず、ベテランエンジニアが五感で培った現場のノウハウが必要な場合もあります。本デモでは、ミニチュアプラントに障害を疑似的に発生させ、生成 AI と映像や音声によるベテランエンジニアの支援を組み合わせた「Human in the Loop」による事象解決をご覧いただけます。こちらのブログでも詳細を説明していますのでぜひご覧ください。

ミニチュアプラント

(ミニチュアプラント)

生成 AI への障害内容問い合わせ

(生成 AI への障害内容問い合わせ)

Chime SDKを使った音声・映像によるコミュニケーション

(組み込み型 Amazon Chime “Chime SDK“を使った音声・映像によるコミュニケーション)

6. Amazon Monitron による工場群設備の不良予知保全ダッシュボード

複数の拠点に工場やプラントを持つ企業では、何千もあるモーターやポンプなど設備保全タイミング管理は品質とコストに影響する重要な課題です。この展示では 、産業設備の不良を予知し、工場やプラントの計画外のダウンタイムを減らす予知保全ソリューション Amazon Monitronと、産業設備のデータを収集・管理するためのサービスである AWS IoT SiteWise を統合し、多拠点にある工場設備群の不良予知状況を可視化・スコア化するダッシュボードを表示します。一元的に設備の健全性を把握し、適切なタイミングで設備の保全作業を推奨するためのソリューションを展示します。デモでは Amazon Monitron が検知した設備不良予兆に基づいて信号灯やチャットサービスに通知を送り、現場作業員の保全作業と連携する仕組みをご覧いただけます。Amazon Monitron を使った産業設備の予知保全についてはこちらのブログにも掲載しておりますのでご参照ください。

不良予知保全ソリューション全体の概念図です

(不良予知保全ソリューション全体の概念図)

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

予知保全ダッシュボード

(予知保全ダッシュボード)

サプライチェーンエリア

サプライチェーンエリアでは「全体の可視性と予測的オペレーションの実現」をテーマに企業間をまたぐサプライチェーン全体の可視性を高め、予測的オペレーションを実現する AWS Supply Chain と自動車業界における Catena-X への取組みをご紹介します。

7. AWS Supply Chain/Catena-X

AWS Supply Chain では在庫だけでなくサステナビリティなどさまざまなデータを収集し、機械学習を使って異種データを統合データレイクに簡単に保管できます。Amazon Bedrock を用いた自然言語インターフェイスを備えた生成 AI アシスタント (Amazon Q) によりデータレイク内のデータに対して自然言語で問い合わせができます。また、Catena-X の主要ユースケースの 1 つである PCF (Product Carbon Footprint) のデモを題材に、Data Space (Catena-X で用いられるデータ連携の仕組み) のアーキテクチャ、実装例について解説します。AWS Supply Chain の資料は以下のリンクからダウンロードできます。

AWS Supply Chain の資料ダウンロード

Catena-X を AWS 上で実現する為のサンプルアーキテクチャ

(Catena-X を AWS 上で実現する為のサンプルアーキテクチャ)

Amazon Q in AWS Supply Chain:生成 AI アシスタント

(Amazon Q in AWS Supply Chain:生成 AI アシスタント)

スマートプロダクトエリア

スマートプロダクトエリアでは「顧客価値の追求と継続的改善」をテーマに顧客の要望をとらえ、製品リリースのスピードを速加速し、AI を使った新しい製品のリリースや顧客の声に基づく改善を、組み込み ソフト 開発も含むループで実現する仕組みをご紹介します。

8. 仮想化で組み込みソフト開発・改善の高速化

AWS 上でハードレスな開発環境を構築することで製品のリリースを加速し、データドリブンな継続改善で顧客価値の最大化を実現するアーキテクチャをご紹介します。製品/サービス双方の開発環境を 1 つのプラットフォームで構成することにより、組み込みソフトウェア開発・サービス開発といったクロスドメイン間の壁を無くし、両チームが顧客の声を聞きながら高速にお客様に価値を届けることができます。詳細はこちらのブログにも掲載していますのでご参照ください。

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

デモシナリオ

(デモシナリオ)

9. 生成 AI によるカメラ映像からの危険判別

監視カメラ映像をと生成 AI を組み合わせて作業員の安全確保を予防・対応両面から支援する 2 つのシナリオをご紹介します。1 つはカメラ映像と生成 AI を使用して従業員の危険な状況を生成 AI が記述し、状況に応じて警告を出します。もう 1 つは作業員の安全装具の装着状況をカメラ映像から分析してレポートします。AI を活用したスマートな映像活用製品をすばやくリリースし、改善する仕組みとして参考ください。日本で開発し、re:Invent 2023 と Hannover Messe 2024 でも展示されたデモです。このブースの資料は以下のリンクからダウンロードできます。

生成 AI によるカメラ映像からの危険判別の資料ダウンロード

サンプルアーキテクチャ

(サンプルアーキテクチャ)

従業員の危険な状況を生成AIで説明

(従業員の危険な状況を生成AIで説明)

基調講演

AWS と創る次の時代

  • スピーカー:
    • Anthropic (アンソロピック) 共同創設者 兼 チーフサイエンティスト ジャレッド カプラン氏
    • ソニーグループ株式会社常務 CDO 兼 CIO 小寺剛 氏
    • 株式会社 ispace Director of Information Security and Global IT ウッドハム ジュニア ダン ラマー 氏
    • Amazon.com, Inc. 最高技術責任者 (CTO) 兼バイスプレジデント ヴァーナー ボーガス (博士)
    • Amazon Web Services Inc. APJ バイスプレジデント & マネージングディレクター 兼 日本マネージングディレクター ハイミ バレス
    • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 恒松 幹彦
  • 日時:6 月 20 日 10:00-11:30
  • 概要:AWS はお客様視点および長期的視野に立ち、お客様のイノベーションに向けた包括的な支援を続けてきました。「生成 AI」は次の時代を創り出すキーテクノロジーであり、既に多くのお客様が AWS を活用し新たな価値を生み出しています。AWS はこれまでと変わりなく自社のイノベーションを加速し、お客様と共にイノベーターとして社会、地球環境をより良くし、次の時代を創り出します。

ビルダーとテクノロジーが加速する次のイノベーション

  • スピーカー:
    • 東海旅客鉄道株式会社中央新幹線推進本部リニア開発本部副本部長 水津亨 氏
    • 株式会社電通デジタル執行役員データ&AI 部門長山本覚 氏
    • Amazon Web Services Inc. リレーショナルデータベース エンジン担当 バイスプレジデント ラフ―ル パサック
    • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 技術統括本部長 巨勢泰宏
  • 日時:6 月 21 日 10:00-11:30
  • 概要:最新のテクノロジー活用により、ビルダーにとってこれまでにないイノベーションの機会が到来し、迅速にアプリケーションを構築するだけでなく、可用性、弾力性、持続可能性、コスト、パフォーマンスも実現します。さらに生成 AI により、企業はデータをより戦略的かつ簡単に活用でき差別化やイノベーションを加速します。テクノロジーが創り出す新しい時代を、それらの実現に向けての AWS の戦略や支援を、これまで日本のお客様と創出してきたイノベーション事例とともにご紹介します。

AWS セッション

たゆまぬ改善と革新を支える製造データ戦略

  • スピーカー:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 黒田 雄大
  • 日時:6 月 20 日 16:50-17:30
  • 概要:製造業では、人材の不足や育成、品質向上やコスト削減に関する課題が旧来から叫ばれています。さらに、市場の要求はより複雑で変化に富んでいく中で、その変化に追従するためにはデータの活用をあらゆる業務に取り入れいくことが必要不可欠となってきています。本セッションでは、企画構想から設計、製造、更には市場に出た後のたゆまぬ改善にデータとクラウドをどう活用するかについて、現場から出発し、全社にスケールしていくためのデータ活用における思想設計や、ユースケース設定に立ち戻って現場と経営層の視点をあわせたデータ活用を推進するための組織・プロセス・ソリューションについて説明します。

お客様事例セッション

プライベート LLM 開発の実践事例

  • スピーカー:株式会社リコー デジタル戦略部 デジタル技術開発センター 所長 梅津 良昭 氏
  • 日時:6 月 20 日 12:40-13:10
  • 概要:OSS の LLM の性能が向上してきた事で、企業でもプライベート LLM の開発・保有に向けた検討が始まっている。リコーでは AWS の最新 AI チップを使った開発を行い、プライベート LLM 開発に対しての高い技術とノウハウを持っており、本講演でご紹介します。また併せて、企業内データを活用するための RAG やプライベート LLM の紹介や実践例をご紹介します。

生成 AI を活用したソフトウェア開発の効率化

  • スピーカー:
    • 三菱電機株式会社 AI 戦略プロジェクトグループ 兼 DX イノベーションセンター プロジェクトマネージャー兼 副センター長 博士(工学) 田中 昭二 氏
    • 三菱電機株式会社 生産システム本部 生産システム企画・技術部 ソフトウェア生産力強化グループ グループマネージャー 博士(情報科学) 長峯 基 氏
  • 日時:6 月 20 日 13:30-14:00
  • 概要:日本の製造業は深刻な人材不足や開発の属人化が問題になってきており、ソフトウェア開発規模増大への対応が困難となってきています。そこで、三菱電機は AWS と共に生成 AI を活用した組み込みソフトウェア開発の効率化にチャレンジしました。

プラント建設の最前線! ~データ活用による JFE流 DX ~

  • スピーカー:JFEエンジニアリング株式会社 DX 本部 常務執行役員/本部長 小山 建樹 氏
  • 日時:6 月 21 日 12:40-13:10
  • 概要:JFE エンジニアリングでは、プラント操業における膨大なセンサーデータを収集・分析し運転状況の可視化や異常予兆検知を可能にしました。さらに AI による運転最適化で操業効率の飛躍的改善を実現。当社建設プラントのみならず、外部への展開も視野に入れております。センサーと AI の力で、お客様のプラント運用を革新し、産業の DX を加速させます。本セッションでは、当社が現在に至るまで組織として取り組んできた DX 推進のポイントと、インダストリアルデータプラット―フォーム「Pla’cello®」の開発及び、活用事例について紹介します。

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おわりに

今回は、製造エリアの展示をダイジェストでお届けしました。お伝えしたいことはもっとたくさんありますが、このブログだけでは紹介しきれません。ぜひ AWS Summit Japan にお越しいただき、ソリューションアーキテクトが作った実物の展示を見てください!他にもたくさんのセッションと展示がありますので AWS Summit Japan の登録ページからご確認ください。会場でみなさんにお会いできる事を楽しみにしています!

著者紹介

 河井信彦(Nobuhiko Kawai)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト

セキュリティベンダーを経て AWS Japan に入社し、エンタープライズ技術本部でソリュー ションアーキテクトとして活動中。関西の製造業のお客様を中心担当している。趣味はサ ッカーとフットサル