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デジタルトランスフォーメーション:なぜ、誰が、どの様にそして何を – パート1「なぜ」

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を利用して、組織の運営方法や顧客への価値提供方法を根本的に変えるプロセスです。デジタル技術をビジネスの全領域に統合し、ビジネスの運営方法や顧客への価値提供方法を変えることが含まれます。このプロセスは挑戦的で破壊的なものですが、それを受け入れようとする組織には大きな機会を提供することもできます。このブログシリーズでは、同僚のジーン シャドリンと私が、デジタルトランスフォーメーションの「なぜ、誰が、どのように、何を」を掘り下げ、成功するためのガイダンスを提供します。- トム

テクノロジーは、過剰な期待、サイロ化した考え方、増大する技術的負債、大規模で全てを賭けたモノリシックなプロジェクトの失敗によって妨げられ、しばしばビジネス上の問題に対する解決策として無視されています。COVID-19は、私たちの優先順位、習慣、ニーズを変え、これらの欠点の多くをさらに拡大させました。同時に、顧客は日常生活で使用するテクノロジーへの期待を高め続けています。Netflix、 Uber、 Airbnb などのアプリケーションを使うことに慣れ、政府、銀行、学校、雇用主が同じように統合されたデジタル体験を提供することを期待しているのです。このような期待に応えるため、成功している企業は、デジタルトランスフォーメーションをビジネス戦略の主要な成功の鍵として取り入れています。デロイトによると、パンデミック以降、85%のCEOが、デジタルトランスフォーメーション戦略を加速させています

しかし、デジタルによる変革とはどういうことでしょうか。私たちがテクノロジーやコンピュータを使い始めてから、もう30年以上になるのではないでしょうか?デジタルトランスフォーメーションとは、テクノロジー部門が推進する最新のアイデアではありません。新しいデジタル技術と文化の変化をビジネスに統合し、カスタマージャーニーを改善する方法を根本的に再考し、業務をデジタルに最適化して効率を高め、新しいビジネスモデルに投資することです。実際、グローバルマーケットインテリジェンス企業であるIDCは、2025年までにデジタルトランスフォーメーションのための支出が2兆8,000億ドルに達すると予測しています。

また、デジタルトランスフォーメーションは、単に一度だけ導入したり、パートナーから購入したりするものではありません。むしろ、一連の継続的かつ実現可能なプロジェクトに支えられた、組織全体の行動全体の変化なのです。そのため、多くの人が考えているよりもはるかに複雑です。

この4回にわたるブログシリーズでは、デジタルトランスフォーメーションの「なぜ」「誰が」「どのように」「何を」を取り上げ、なぜそれが組織にとって重要なのかを説明します。また、他の企業が苦労している点、そして組織でデジタルトランスフォーメーションを成功させるために利用できるベストプラクティスを紹介します。

カスタマージャーニーを改善する

優れたカスタマージャーニーは、ビジネスの持続的な成長に不可欠です。ポジティブなカスタマーエクスペリエンスは、顧客の維持、ロイヤルティの促進、熱狂的なブランド支持者を増やすことにつながります。カスタマージャーニーの変革は、お客様のニーズを深く理解することから始まります。アマゾンでは、これを「working backwards」と呼んでいます。このプロセスを通じて、組織はデータを取得・分析し、顧客により良いサービスを提供できるようになりました。新しいマルチエクスペリエンスソリューション(タッチ、音声、ジェスチャーなど)は、日常生活に溶け込むデジタルソリューションを提供することで、お客様がいる場所に対応することができます。マクドナルドは、場所、時間帯、過去の注文内容など、さまざまな要素に基づいたおすすめ情報によって、顧客のドライブスルー体験を変革し、パーソナライズしました。ファッション企業は、バーチャルリアリティ(VR)とモバイルアプリケーションを利用して、顧客が自宅にいながら買い物ができるように、衣服のバーチャル試着を提供するようになりました。多くの自治体では、支払いを自動化したり、駐車場の空き状況をドライバーに通知するサービスが作られています。

オペレーションをデジタルに最適化する

デジタルに最適化されたオペレーションは、組織内の摩擦を軽減し、生産性の向上とリスクの低減につながります。これは、望ましいビジネス成果を推進するための重要な成功要因です。デジタルトランスフォーメーションは、2つの方法で業務を最適化します。1つは、組織内で増大するデータから得られる情報の取得、分析、およびその後の洞察。もう1つは、テクノロジーを使用して既存のプロセスを自動化および統合することによってです。

情報処理は、ほぼリアルタイムのデータ取得と洞察に変化し、より迅速な洞察と意思決定を可能にしました。例えば、コンディション・ベース・メンテナンス(状態基準保全)は、製造装置のリアルタイムの健康状態を把握することで、先を見越したメンテナンスで行われる高価で不必要な修理を回避することができます。日本のメーカーである AiSIN AW (訳者注:現アイシン)は、同社が設計した人工知能システムによって製造工程の異常状態を検出し、ダウンタイムの延長に伴うコストを回避しました。このシステムは、その情報をリアルタイムで現場の作業員に伝え、作業員は即座に行動を起こすことができるようになりました。

新しいビジネスモデル

新しいデジタルビジネスモデルを開発することで、組織は迅速に新しい市場に参入し、イノベーターとして新規顧客や既存顧客にブランドを拡大し、パートナーシップを発掘・形成することができます。モバイル機器の利用拡大、ユビキタスな接続性、クラウドコンピューティングによる計算プラットフォームの利用が、新しいビジネスモデルを生み出しています。例えば、自動車メーカーが走行データを収集・分析し、保険会社に販売するなど、データを商品として活用し始めています。

ビジネスモデルの革新は、最も単純なレベルでは、従来のビジネスプロセスから始まり、新しいデジタル技術を使用してそのプロセスを補完または拡張することです。例えば、ロードアイランド州の労働訓練局では、オンライン情報ダッシュボードとインテリジェントなチャットボットを構築し、透明性を高め、住民が複数のアプリケーションやウェブサイトにアクセスする必要がなく、より総合的な失業サポートを提供できるようになりました。

次に、新しいビジネスの方法であるデジタルビジネスについてです。カーシェアリングがレンタカーを、位置情報サービスがオフラインサービスを、メタバースがゲームやファッション、製造、販売などさまざまな業界を破壊していることを思い浮かべてください。

デジタルトランスフォーメーション成功の鍵

大きく分けて、デジタルによる変革をした企業には6つの共通点があると言われています。

1/ トップダウンでサポートされる明確なビジネス主導のデジタルトランスフォーメーション戦略

デジタルトランスフォーメーションの戦略は、テクノロジーのために行うのではなく、ビジネス価値に基づいたものである必要があります。特定のビジネスチャンスやニーズがあり、デジタルトランスフォーメーションがそのニーズを満たすのに役立つから実施するのであって、「したほうがよさそうだから」「競合がやっているから」という理由でデジタルトランスフォーメーションを実施しないでください。デジタルトランスフォーメーションは、ビジネス戦略の追加ではなく、ビジネス戦略を達成するための手段です。

デジタルトランスフォーメーションが持つ重要性と組織全体への影響を考えると、デジタルトランスフォーメーションはサポートされ、理解されなければなりません。組織の上級管理職が「デジタルトランスフォーメーション」の意味を理解していないことがしばしば見られますが、それは「なぜ」を明確にすることから始まります。

2/ 会社全体がデジタルトランスフォーメーションに関わる:単なるテクノロジープロジェクトではない

デジタルトランスフォーメーションは、テクノロジーチームだけに追いやられるものではありません。人事から営業、マーケティング、製品開発、そして業務や財務に至るまで、全社を巻き込んで行わなければなりません。私たちは、テクノロジーでビジネスを変革することを目指しています。テクノロジーは、その変革を実現するためのツールに過ぎないのです。

3/ デジタルトランスフォーメーションは包括的かつ継続的な活動であり、単なるプロジェクトではない

デジタルトランスフォーメーションは、現在および歴史的に行われてきたやり方を根本的に変える必要があります。これは、組織が購入できるものでも、ビジネスが導入して終わりというものでもありません。変革に必要なのは、チームを立ち上げ、要件を列挙し、状況報告書を作成することだけではありません。そのためには、誠実な自己点検、自己評価、そして新たな方向性を見据えた目標設定が必要なのです。

4/ 実験と失敗を許容する組織文化を受け入れる

高い業績を上げている組織は、失敗を許容する文化を醸成しています。顧客や市場の要求に応えるために、新しいアイデアを迅速に試し、実験する必要性を理解しているからです。しかし、うまくいかないアイデアもあることは間違いありません。アマゾンのCEOであるアンディ ジャシーは、次のように言っています。「発明には2つのことが必要です。多くの実験を手掛けてみる能力。そして、実験が失敗と分かったら被害が広がらないうちに見切りをつけることです」。

5/ 働き方の変化への寛容さ

実際の変革は、新しいテクノロジーによって実現される既存のプロセスの再構築によってもたらされるものであり、既存のプロセスのデジタルツインを実装するものではありません。テクノロジーを使って、サービスを大幅に改善することです。

6/ 投資意欲と学習文化への理解

デジタルトランスフォーメーションには、新しいスキルが必要です。新しいテクノロジーの実装と運用方法を学ぶための新しいスキルだけでなく、アジリティや製品開発、新しいビジネスモデル、新しい働き方に関する新しいスキルも必要です。成功する組織は、このことを理解しており、そのようなスキルの開発に組織全体で幅広く投資しています。

本シリーズの2回目のブログでは、「誰が」に焦点を当て、デジタルトランスフォーメーションを支えるために必要な組織、文化、人材の変化を浮き彫りにしていきます。

Tom Godden

Tom Godden

Tom Godden は、アマゾン ウェブ サービス (AWS) のエンタープライズストラテジスト兼エバンジェリストです。AWS 以前は、Foundation Medicine の最高情報責任者として、FDA が規制する、がんゲノム診断、研究、患者予後プラットフォームを構築し、予後の改善と次世代精密医療への情報提供を支援しました。それ以前は、オランダのアルフェン アーン デン レインにある Wolters Kluwer で複数の上級技術責任者を務め、ヘルスケアおよびライフサイエンス業界において17年以上の経験を有しています。Tom はアリゾナ州立大学で学士号を取得しています。

Gene Shadrin

Gene Shadrin

Gene Shadrinは、アマゾン ウェブ サービス (AWS) の ソリューションアーキテクチャーのシニアマネージャーです。AWS 以前は、American Honda の CTO 兼 Director of Archtecture として、ローカル/リージョン/グローバルレベルで技術革新プログラムを確立し、エンタープライズアーキテクチャーを実践し、ビジネス成果の向上と技術的負債の軽減のために新しいデジタルビジネス機会を実現することに貢献しました。自動車、ソフトウェア、小売業界において20年以上の経験を持っています。

この記事はアマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクトの佐藤伸広が翻訳を担当しました。原文はこちらです。