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IBM PCからの学び: 車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームが業界の変革を促進する

このブログ記事では、 IBM PC の物語と比較しながら、自動車アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームの導入が、自動車業界のイノベーション、ディスラプション、トランスフォーメーションの推進において同様の環境を作り出す可能性があることを紹介します。また、このブログ記事では、こうしたプラットフォームをリリースする最初の自動車業界の企業が得る可能性のある優位性についても議論します。

IBM が最初の PC を導入した経緯

1981年の IBM PC のリリースは、パーソナルコンピューティングの歴史における重要なマイルストーンでした。これは大企業が製造・販売した最初のパーソナルコンピュータであり、現代の世界を形作る一助ともなった、コンピュータ業界にとっての一つの標準を打ち立てました。
IBM PC の開発の物語は、1970年代後半、フロリダの IBM ボカラトン事業所のエンジニアチームがパーソナルコンピューターの開発プロジェクトに着手したときに始まりました。チームは Don Estridge が率いていました。Estridge ははっきりした目標を描いており、手頃な価格で使いやすく、ビジネスアプリケーションの実行に十分な処理能力を備えたマシンを作ることを目指していました。
1981年8月12日の IBM PC の発売は、コンピューター業界と社会全体に大きな影響を与えました。これにより、コンピューティングの民主化への道が開かれ、強力なテクノロジーをより多くのユーザーが利用できるようになりました。また、 PC をコンピューティングの主要なプラットフォームとして確立させ、現代では様々な形でPCが社会を形成していると言えます。
IBM PC の成功に貢献した主な要因の 1 つは、マシンのオープンアーキテクチャでした。IBM はコンピューターの技術仕様を他のメーカーにも公開しました。サードパーティ企業は IBM PC と互換性のあるハードウェアとソフトウェアを開発できるようになりました。これにより、製品とサービスのエコシステムが繁栄し、IBM PC は長年にわたってパーソナル・コンピューター市場の主要なプラットフォームとなりました。
IBM は、新しい製品やテクノロジーの革新と開発を続けることで、コンピューター業界の主要プレーヤーとしての地位を維持することができました。この結果、PC 業界のハードウェア製造の面では他企業が IBM を追い越し始めても、成長を続ける PC 市場から IBM は利益を得続けることができました。

IBM PC の物語は、車載ハードウェアでも繰り返されるでしょうか?

今日、車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームはまだ存在していません。しかし、このようなプラットフォームの登場は、自動車業界にとって重要なマイルストーンとなる可能性があります。1980年代に IBM PC がパーソナル・コンピューター業界を変革したように、車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームは、新しいアイデアやイノベーションの急増につながる可能性があります。
IBM PC は相互運用性を念頭に置いて設計されてたため、さまざまなメーカーのソフトウェアとハードウェアのコンポーネントがシームレスに連携できました。同じように、ソフトウェア・デファインド・ビークル (Software Defined Vehicle, SDV) の開発者は、さまざまなコンポーネントやシステムがシームレスに連携できるような、車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームを目指すべきです。
車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームの仕様を作成した最初の自動車メーカーには、次の4つの優位性を得る可能性があります。

俊敏性の向上

オープンハードウェアプラットフォームでは、仮想化されたモデルをオープンに開発し共有することができます。このような仮想化モデルを使用することで、桁違いに多くの人々や組織が車載アプリケーションの作成に参加できるようになります。AWS は、お客様が必要に応じてリソースを迅速に立ち上げ、数分で数百、数千のコンピューティングインスタンスをデプロイできるように支援します。このような機能があれば、自動車メーカーはより迅速かつ頻繁に実験や革新を行うことができます。その一例が Stellantis のバーチャルエンジニアリングワークベンチです

戦略的優位性

オープンハードウェアプラットフォームを最初に開発した自動車メーカーは、より迅速なイノベーション、ブランドの評判の向上、業界でのリーダーシップを通じて競争力を獲得する可能性があります。今後、ハードウェアはコモディティ化し、ソフトウェアが差別化要因となるでしょう。お客様に代わってイノベーションを起こす自動車メーカーにとって、AWS は最適なパートナーであると私たちは考えています。なぜなら、AWS は最も包括的なサービスを提供し、最大かつ最も活気のあるお客様・パートナーのコミュニティと、最も実績のあるオペレーションとセキュリティの専門知識を備えているからです。

コラボレーション

車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームは、構築と革新のための技術的基盤を提供するデファクトスタンダードとしての地位を確立することができます。車載アプリケーション向けのオープンハードウェアプラットフォームの仕様をインターネットで入手できることは、自動車メーカーに複数の利点をもたらす可能性があります。たとえば、自動車メーカーはこの仕様を使用して、新しい電子制御ユニット (ECU) 開発プロジェクトの技術的基礎をパートナーに伝えることができます。ソフトウェアベンダーはプラットフォーム用のアプリケーションを独立して開発できるため、これらの企業に新たな機会が開かれます。AWS では、この種のコラボレーションをサポートする 2 つのサービスが提供されています。
AWS Clean Rooms を使用すると、お客様とそのパートナーは、互いの元データ自体を共有したりコピーしたりすることなく、集計データのみをより簡単かつ安全に分析できます。
組織内では、共通の目標を共有しているが共通のデータセットを持たないさまざまな事業部門が Amazon DataZone を使用できます。Amazon DataZone を使用すると、お客様は組織の事業部門全体でデータを大規模に共有し、検索し、発見できます。さらに、統合データ分析ポータルを介してデータプロジェクトで協力することもできます。

環境の一致

ARM ベースの SoC (System On a Chip) は、さまざまな電子機器におけるデファクト・スタンダードです。これらの機器には、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、および車載システムなどの組み込みシステムが含まれます。その結果、ハードウェアベンダーは、特に車載の中央演算ユニット向けに、 ARM ベースの SoC を自社の製品に組み込むことが増えています。Amazon EC2 上で動作する ARM ベースの AWS Graviton プロセッサを使用すると、開発者は車載アプリケーションバイナリをコンパイルし、車載器同様に AWS クラウドでも実行できます。
その観点から、組み込みエッジ向け Scalable Open Architecture for Embedded Edge (SOAFEE)は、重大性が混在する (mixed criticality) 車載アプリケーション向けに、クラウドネイティブなアーキテクチャ設計と、対応するリファレンス実装を開発し、商用・非商用目的で提供することを目指しています。SOAFEE の組織運営メンバーには、ARM , Bosch, Cariad, Contintenal, RedHat, SUSE, Woven Planet, AWS が含まれます。

AWS は業界の変革をどう支えるか

AWS は、仮想化された車載ハードウェアを実行および操作するための幅広いツールとリソースを提供しています。私たちは、ソフトウェアが主な差別化要因となる未来に向けた自動車業界の移行を支援することを決意しています。
詳細については、AWS for Automotive のウェブサイトからお問い合わせください。

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Daniel Schleicher

Daniel Schleicher

Daniel Schleicher は AWS の Continental 社担当シニアソリューションアーキテクトで、ソフトウェアデファインドビークルを専門としています。彼はこの分野で、クラウドコンピューティングの原理を車載アプリケーションに適用し、仮想化されたハードウェアを利用して車載アプリケーションのソフトウェア開発プロセスを進めることに興味があります。以前の役職では、ダニエルは Volkswagen でエンタープライズ統合プラットフォームの AWS への移行を主導し、プロダクトマネージャーとして Mercedes Intelligent Cloud の中心的なサービスの構築に貢献しました。

Aleksandar Tolev

Aleksandar Tolev

Aleksandar Tolev は、アマゾンウェブサービスのソリューションアーキテクトマネージャーで、製造業と自動車業界のお客様に情熱を注いでいます。Aleksandar は、ソフトウェア開発と複雑な課題に対するリーンアーキテクチャの活用に情熱を注いでいます。余暇には、スポーツ、メンタルトレーニング、料理をするのが大好きです。

本記事は AWS ブログ Learning From the IBM PC : How an open hardware platform for automotive applications can help transform the industry を翻訳したものです。翻訳はソリューションアーキテクトの山本が担当しました。