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小売/消費財企業が OTIF (On-Time, In-Full) 配送を改善する方法

EC サイトで注文をして、荷物が遅れて届いたことはありませんか?あるいは、予定通りに荷物を受け取ったものの、一部の商品が欠けていたこともあるでしょう。私も最近、このような不満が残る経験をしたことがあります。週末の旅行で使用する予定で、Keen の新しいハイキングシューズを注文しました。旅行の前日に届く予定だったのですが、そのシューズが到着したのは旅行に出発後でした。もちろん不満で、そのシューズを返品しました。

また、Keurig のコーヒーメーカーと K-Cup カプセル1箱をオンラインで注文しました。コーヒーメーカーは予定通り届きましたが、カプセルが届きませんでした。またしても新しいコーヒーマシンを試すことができず、不満でした。K-Cup カプセルの注文をキャンセルし、代わりにコストコで購入しました。

この2つの状況で、小売業者は全部または一部の売上を失いました。同じような販売機会損失のシナリオが何度も起こっているとしたらどうでしょう。規模が大きくなってきたときの売上減は、小売業者の収益に大きな影響を与え、何度も起こると最悪の事態を招きます。私が説明したこれらの状況は、「Not-on-time but in-full」や「On-time but not in-full」と呼ばれています。もちろん、最適な状態は「On-time in-full」(OTIF) です。

私が OTIF という言葉を初めて耳にしたのは、数年前に Coca-Cola に勤務していたときで、この新しい指標がサプライチェーン全体に導入されました。オペレーションチームは、小売店のお客様が注文した商品を時間通りに受け取ったかどうか、また注文数量通りだったかを測定しなければなりませんでした。私はこの指標を実際に見てみたかったので、さまざまな市場でいくつかの配送ルートを見てまわりました。ニューヨークでは、チェーン店、街角の食料品店、専門店などに商品を配送しました。何度か、飲料製品を時間通りに配達したものの、注文からいくつかの商品が欠品していたことがありました。欠品した商品は、コカコーラのボトラーが自動的に取り寄せてくれないため、小売店にとっては大変な手間がかかりました。小売店はその商品を再度注文することを覚えておかなければなりませんでした。

OTIF は、いまや消費財メーカーの共通指標となっています。小売業者にとっての戦術的なレベルでは、2つの指標を組み合わせて1つの総合的な指標としています。

  • オンタイム (OT) は、実際の配達日時と、予測または約束された配達時間を比較するものです。小売業者はチェックイン時に実際の配達日時を測定します。
  • IF (In-Full) とは、納品された商品の数量のことです。注文した量通りであったり、多かったり、少なかったりします。

Walmart のような大手小売業者は、消費財企業に OTIF 納品の遵守を求めています。実際、消費財企業が納品日に間に合わなかったり、商品が正しい数量ではなかった場合、Walmart は、早期納品や遅配、欠品納品の割合に応じてペナルティを課しています。OTIF遵守を徹底するために、Walmart は昨年、遵守ルールを 70% から 98% に変更し、不遵守の場合には商品代金の 3% に当たるペナルティを課しています。Walmart や類似の小売業者への OTIF 未達は、ペナルティや不完全な注文を補うための速達コスト、OTIF 要件を満たすための在庫保有コストの増加など、数百万ドルにも上ることはありません。Walmart の場合、消費財企業は納品期限に間に合わなかった際に前金を支払わなければなりません。また、店舗の棚のスペースを失う可能性もあります。ほぼすべての消費財企業にとって、Walmart は最大の顧客であり、OTIF のペナルティや貴重な棚のスペースを失うことは損失につながります。

消費者にとって OTIF が重要な理由

小売業者は、消費財企業に対して平均 81 のコンプライアンス指標を追跡しています。これらの指標は、メーカーが小売業者の配送や製品に関する要件を満たしておらず、小売業者が商品を処理する際に余計な手間がかかっているケースを示しています。このブログでは特に OTIF について述べていますが、その他の指標には、ASN(Advanced Ship Notifications)の欠落や不正確さ、製品ラベルの欠落、不適切な梱包などが含まれます。

配送やその他の製品に関する問題を解決するために小売店で余計な作業が発生するということは、小売店が問題解決のために従業員に給料を支払わなければならないということです。こうした追加の人件費は、商品価格の上昇という形で消費者に転嫁される可能性があります。さらに、より多くの消費者が、欲しいときに欲しい商品を期待するようになっているため、小売業者として、サイズ、色、数量などの消費者の要求に応えられなければ、売上と顧客を失うことになりかねません。

小売業と消費財企業が協力して OTIF デリバリを実現

小売業者と消費財企業が協力して OTIF 準拠データを分析、理解、実行することで、消費者のニーズに応え、売上を最大化することができます。このデータは、小売業者の売上漏れやその他の運用上の問題の原因を特定するのに役立ちます。また、小売業者は、消費者の需要に合わせて消費財製品を購入する際の指針としてこのデータを利用することができます。配送コンプライアンスデータは、小売業者と消費財メーカーがより良い判断を下し、売上損失を防ぐための分析的資産となります。

AWS と Noodle.ai の予測ソリューションにより消費財企業の OTIF 向上を支援

Noodle.ai は、廃棄物のない世界の実現を目指す AWS の大切なパートナーです。Noodle.ai と AWS は共同で、OTIF の課題に取り組む消費財企業を支援する予測ソリューションを開発しました。注文管理プロセスにおける計画ミスは、リードタイムを短縮し、その結果、速達にかかるコストの発生や OTIF の低下につながります。この予測ソリューションは、AI を用いて、小売店の顧客の注文、供給、在庫、充填率を、通常の実行期間である 13 週間の間、週単位で予測します。その洗練されたソリューションは、アクションに優先順位をつけるために確率的なバリュー・アット・リスク (VAR) を計算し、補充の迅速化や生産注文の抑止など、プランナーのアクションに対する AI 推奨事項を提供します。これにより、サプライチェーン・プランナーは、コストのかかるミスを犯す前に、影響の大きい問題を迅速に特定し、解決することができます。最近では、AWS-Noodle.aiのソリューションにより、130 億ドル規模の消費財メーカーが OTIF を 3% 改善し、速達コストを 40% 削減することに成功しました。これは年間で 2,000 万ドル以上の節約になります。

Noodle.ai の詳細については、創業者兼 CEO のスティーブ・プラット氏との最近の対談をご覧ください。

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次回のブログでは、サプライチェーンの統制や、サプライチェーン資産のリアルタイムな状態と位置情報がどのように OTIF 配送を改善するかについてご紹介します。

著者について

Justin Honaman

Justin Honaman は、Amazon Web Services において世界的な消費財企業の食品・飲料部門を担当しています。彼のチームは、サプライチェーン、e コマース、データ/アナリティクス、デジタルコマースのソリューションを、世界中の消費財企業のお客様に提供することに注力しています。

翻訳は Solutions Architect 濱上が担当しました。原文はこちらです。