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生成 AI を活用する鍵は組織横断のチームにあり : ML Enablement Workshop を活用した 4 つの事例から学ぶ

生成 AI のポテンシャルが幅広く認知される中、様々な業界で活用に向けた試行錯誤が続いています。そこで多くの組織が気づきはじめているのは、この最先端テクノロジーを単に社内で使えるようにするだけでは不十分だということです。生成 AI は顧客体験の向上から内部プロセスの合理化まで、業務の様々な側面を革新する可能性を秘めています。しかし、顧客やビジネス知識がなければビジネスインパクト、技術の専門知識がなければ実現コストを評価できず、それぞれを評価できるメンバーが連携しなければ結果として ROI を正確に見積もることは困難です。つまり、組織横断の連携とそれを可能にする経営からの支援がなければ、生成 AI の導入効果は不透明で必要十分な投資を行うことはできないということです。 Gartner の “2025 年までに生成 AI プロジェクトの 3 分の 1 が停止する” との予言は、まさに不透明な ROI に起因しています。AWS の 100 を超える生成 AI の事例から得られる知見でも、下図のように Technology 、生成 AI の活用には顧客起点文化を持つ People、小規模なチームや頻繁な実験といった迅速な仮説検証を可能にする Process が重要であるとしており組織とプロセス、それらを支える文化が生成 AI の活用に不可欠であることを示唆しています。

生成 AI の力を本当に活用するなら、経営戦略としてビジネス、技術、双方にかかわる組織からクロスファンクショナルなチームを組成することを最優先に行うべきです。AWS が無償で公開する ML Enablement Workshop はまさにそのための方法論です。 ML Enablement Workshop は 1) 経営層の支持のもとプロダクトマネージャーなどのビジネスサイド、エンジニア・データサイエンティストなどの技術サイドのリーダー・メンバーを招集したチームを組成する、 2)  Amazon のプロダクトづくりのプロセスに基づきプロダクト・サービスの持続的な成長につながる AI/ML のユースケースを特定する、3) 1~3 ヵ月で最初の効果を確認するためのロードマップを作成する 3 つのプロセスを短期で行うワークショップです。本ワークショップを通じお客様が成果を上げられる様子を見て、生成 AI の活用においてチームの組成が鍵であることに確信を持っています。本記事では、その気づきを共有すべく事例を中心にご紹介します。

事例 1 : 組織横断チームでの顧客体験分析 (株式会社ココペリ)

ココペリ様の事例は、プロダクトマネージャー、開発者、カスタマーサクセスチーム、データサイエンティストを集め、顧客体験を全員で、全体にわたり分析することの重要性を示しています。 ML Enablement Workshop を通じ、中小企業向の DX 化を支援するプロダクト Big Advance における顧客体験を端から端まで分析し、生成 AI の有効なユースケースを特定。成功を測る KPI と実現に向けたタスクを整理し、ワークショップ終了直後からプロジェクトを始めることができました。

生成 AI は中小企業のビジネスマッチングに活用されており、その詳細は AWS Blog として公開されています。中小企業ではまだ生成 AI の利用率が低い現状がありますが、Big Advance を通じ生成 AI が中小企業の事業機会の創出に貢献しています。

事例 2 : ビジネス効果駆動で営業 DX を実現  (株式会社三菱 UFJ 銀行)

三菱 UFJ 銀行様の事例は、ビジネス部門が顧客への効果を確認し、技術部門が効果が確認された価値創出プロセスを生成 AI で効率化するビジネス効果駆動での生成 AI の活用を進められています。営業部門、データサイエンティスト部門を巻き込み ML Enablement Workshop を実施することで、DX 化された営業プロセスのあるべき姿と実現に向けたロードマップを策定しました。ワークショップ終了後 3 ヵ月で最初の顧客提案を行い提案そのものの有効性を確認し、並行してデータサイエンティストのチームが提案の作成の自動化プロセスを実現しています。この緊密な連携が、営業 DX 推進の鍵となっています。さらに、データサイエンティストのチームは、 AWS のプロトタイピング支援により部門職員が利用できるアプリケーション開発のスキルも獲得し、アジャイルな改善プロセスを内製化しています。

三菱 UFJ 銀行様のこの取り組みは、日本の金融機関初の re:Invent 登壇として re:Invent 2024 の金融トラックセッションで発表されます。ぜひご視聴ください!

FSI202 | Beyond productivity: Using generative AI to grow in financial services

The present has caught up with the future in financial services. New generative AI capabilities have helped financial institutions automate labor-intensive tasks like extracting information from unstructured data sources, summarizing complex documents, and curating market intelligence. These investments in improving productivity have paved the way for the industry to focus on harnessing generative AI to create business value. Companies are engaging more meaningfully with their customers, identifying sales opportunities more efficiently, increasing lead conversion, and driving adoption of new products. Hear from industry leaders how they built and are running new growth-focused generative AI applications in production on AWS.
John Kain, Head Financial Service Market Development, Amazon Web Services

  • Tetsuo Horigane, Director, MUFG Bank, Ltd.
  • Aaron Linsky, CTO – AIA Labs, AIA Labs @ Bridgewater Associates
  • Sunny Fok, SVP, Head of AI Innovation Technology, Crypto.com

事例 3: 経営主導の迅速な意思決定と実装 (株式会社セゾンテクノロジー)

セゾンテクノロジー様は、CTO 自ら主導してクロスファンクショナルなチームを組成し、生成 AI 活用を推進しています。ML Enablement Workshop では企画、営業、エンジニア、生成 AI 有識者からなるチームを結成し、競合を含めた生成 AI 活用事例をもとに最適なソリューションを検討、2 週間という短期間で経営陣の合意を得て修了後 3 ヵ月で HULFT Square への AI アシスタント機能の実装を完了しています。

セゾンテクノロジー様の取り組みは、 AI Day 2024 のまさに “生成AIを PoC の次のステップに進めるために” と題したトラックで発表頂きます。ぜひご視聴いだたければ幸いです!

事例 4: 5 ヵ月で本番リリース、さらに特許出願へ (株式会社ペライチ)

ペライチ様では、AWS の生成 AI 活用開始プログラムを通じ迅速なユースケースの決定とプロトタイピングを進め、 5 ヵ月という短期間で本番リリース、プレスリリース、さらにコア機能の特許出願まで完了されました。本プログラムでは、EC 業界に特化することで ML Enablement Workshop のユースケース決定のプロセスを短縮するとともに、プロトタイピングプログラムと組み合わせて実装面の支援、さらに AWS クレジットの支援という予算的な支援を複合することで生成 AI 活用における代表的な 3 つの課題、「決まらない」「開発リソースがない」「予算がない」の 3 点をすべて解決しました。このプログラムを通じ、ペライチ様はウェブサイト制作時間を 10 営業日以上から 10 分と劇的に短縮する「ペライチクリエイトアシスタント」を開発・リリースされています。本プログラムではオズビジョン様ナビプラス様も本番稼働、事例化しており AWS Blog で詳細を公開いただいています。本プログラムではビジネス、技術双方の意思決定者がプログラムに参加いただくよう依頼しており、組成されたクロスファンクショナルなチームが技術・予算の支援を受けるとインパクトのあるユースケースが短期間で実現することを示す実例となりました。

ペライチ様の取り組みもまた、 AI Day 2024 の “事例で学ぶ生成 AI 活用と気になる責任ある AI の実践ポイント” と題したトラックで発表を頂きます。ぜひご覧ください!

結論

経営層の支持に基づくクロスファンクショナルなチームの構築は生成 AI 活用の第一歩にして最重要のプロセスです。この基盤に、ユースケースを確定するためのワークショップ、プロトタイピング実装支援、予算面の支援といった AWS のプログラムリソースが加わることで劇的な速さで差別化につながる価値を創出できることを 4 つの事例を通じ示しました。

ぜひ、生成 AI の力を活用する第一歩として、自社の組織文化や構造を評価し、効果的なクロスファンクショナルチームの構築を検討いただければ幸いです。 ML Enablement Workshop はまさにそのための方法論であり、資料はすべて GitHub で公開されています。本資料を自身で活用いただくことはもちろん、実施に関心がある方は AWS 担当までぜひお問い合わせください。本記事が、皆さんの組織の中で生成 AI の活用を促進、あるいは停滞を解消する鍵となれば幸いです。