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[開催報告] Mobile World Congress 2021: AWS Virtual Village Re:Cap

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ソリューションアーキテクトの宮田です。

通信事業者の方々、通信業界に関わられている方々、5G やエッジコンピューティングなどの最新技術の動向にご興味のある方々を主な対象として、2021年8月11日に「Mobile World Congress 2021: AWS Virtual Village Re:Cap」をウェビナーで開催しました。

本記事では通信領域における導入事例を含め、当日の内容・動画を皆様にご紹介します。

本ウェビナー開催の背景

2021年6月28日から7月1日まで開催されたテレコム業界最大のイベント Mobile Word Congress 2021。アマゾンウェブサービスは、オンラインの独自イベントを並行して開催しました。

AWSの新 CEO の Adam Selipsky が Swisscom の CEO と共に初めて公式の場に登場したキーノートセッションから、モバイルネットワークの基盤を AWS と一緒に構築していくことを発表頂いた通信事業者様の取り組みを詳細にご説明するセッションの数々。他にも自動車業界と通信の連携を含めたエッジ、メディア配信、ビッグデータ、機械学習などの多岐にわたるコンテンツが盛り沢山でした。

ファシリテーター
AWS
通信ビジネス部 部長
シニアソリューションアーキテクト
山内 晃

1. AWS 新 CEO による Keynote「Reinventing communications, together」

 

まず最初のパートでは、AWS の新 CEO Adam Selipsky と Swisscom の CEO Urs Schaeppi 氏の対談、そして DISH の CNO Marc Rouanne 氏、Swisscom の CTIO Christoph Aeschlimann 氏から AWS と進める取り組みを詳細に伺う対談の2つのキーノートをお届けしました。Swisscom における IT と5G ネットワークの2つの領域で、AWS クラウドを活用してハイブリッド・クラウド・プロバイダーになるというビジョンが紹介されました。AWS と Ericssonとの協業によるモバイルネットワーク上での仮想化や最適化をさらに進めて、インダストリー 4.0 などの多くのユースケースを生み出す 5G ネットワークのエコシステムを構築していくことが語られました。DISH が構築するクラウドネイティブ 5G ネットワークは米国初の商用ネットワークであり、AWS クラウドを活用して顧客が求めるネットワークをスケーラブルに提供するとともに、新たしい機能を迅速に導入してイノベーションを加速するという戦略が述べられました。

2. クラウドネイティブな 5G ネットワークへの進化

AWS
通信ビジネス部
ソリューションアーキテクト
山崎 博司

山崎からは、5G ネットワークの進化をクラウドネイティブに実現するために活用できる AWS のテクノロジーと、DISH のクラウドネイティブ 5G ネットワークへの AWS の導入事例をご紹介しました。AWS クラウドにより、通信事業には4つの変革「ネットワークのクラウド化」「オペレーションの簡略化」「顧客体験の再考」「成長機会の解放」を実現することができます。そしてこうした変革が、グローバルの通信事業者のお客様で既に実践されています。こうしたイノベーションを支えるAWSのテクノロジーとして、AWS Nitro System、AWS 独自開発のプロセッサ、CNF(Cloud-native/Containerized Network Functions)のデプロイモデルや CI/CD パイプライン、通信事業に活用できるAWS Outpostsの技術的な特徴やメリットをご紹介しました。

続いて、DISH の Sundeep Goswami 氏による、5G ネットワークにおけるクラウドオートメーションについての発表をご紹介しました。5Gネットワークにおける CI/CD パイプラインを構築したことでテストやデプロイが自動化され、従来のオペレーションと比較して高い効率を実現することができます。加えて、ネットワークのObservability(可観測性)を Amazon CloudWatch により実現するアーキテクチャ、クローズドループを回すためのベースとなるパフォーマンスメトリクスを収集するアーキテクチャなど、5G ネットワークにおいて AWS を活用した実践的な取組内容が紹介されました。5G の重要な機能の一つであるネットワークスライシングの構築についても、NFVO などのオーケストレータを標準 API で統合しています。特定のイベント向けに UPF を含む専用のスライスを構築し、イベントが終了したらスライスを削除するといったユースケースが紹介されました。

3. MEC とエッジクラウドの融合によるイノベーション

AWS
通信ビジネス部
ソリューションアーキテクト
宮田 直輝

宮田からは、MEC(Multi-access Edge Computing)に関連した発表をご紹介しました。AWS のエンジニアリング VP である Bill Vass からは、エッジに利用できる AWS Wavelength を含む様々なサービスについての紹介されました。AWS Wavelength は 通信事業者さまの 5G インフラ上で AWS のコンピューティングリソース、ストレージリソースをご利用いただけるサービスです。5Gに接続された端末と低レイテンシー、高帯域に接続しながら、AWS クラウドと一貫性のある開発エクスペリエンスでアプリケーションをデプロイでき、AWS リージョンにあるサービスともシームレスに接続することができます。ストリーミングやゲーム、AR/VR などで新たな顧客体験を実現するためにご利用いただけます。

AWS Wavelength

Verizon の Anil Guntupalli 氏からは、AWS Wavelength を使用したマルチテナント用途のパブリック MEC と、 AWS Outposts を利用したシングルテナント用途のプライベート MEC 、そして、それらを組み合わせたハイブリッド MEC のアーキテクチャについてご紹介をいただきました。AWS とのパートナーシップによって、工場内でのAGV(Automated Guided Vecle)を 5G で AWS Outposts 上のアプリケーションと接続することで、サービスのアップデートに迅速に対応することが可能になりました。

SK テレコムの Kang-Won Lee 氏からは、主に B2C 用途でのパブリックエッジとして利用できる Distributed MEC を AWS Wavelength を活用して構築され、主にB2B 用途としてのプライベートエッジとして利用できる Dedicated MEC を AWS Outposts で構築されるというアーキテクチャをご紹介いただきました。医療情報のような機密性の高い情報を Dedicated MEC のエッジ上で適合学習することで、プライバシーを侵害することなく機械学習のモデルを発展させることができるようになります。

4. データ分析により顧客体験にもたらされた変革

AWS
通信ビジネス部
ソリューションアーキテクト
鈴木 浩之

鈴木からは、今後ますます増加することが見込まれる通信事業におけるデータを分析することで、顧客体験の向上につなげる取り組みに関連した発表をご紹介しました。ビジネスを加速するデータセントリックな環境を実現するには、データ基盤のモダナイズデータの民主化機械学習によるイノベーションが重要になります。通信ネットワーク環境においても、エッジでリアルタイムデータを収集し、クラウド上のデータレイクへ蓄積することで機械学習モデルの作成やデータ分析に活用し、ネットワーク側へフィードバックするというクローズドループを実現することができます。DISH の 5G ネットワークでは AWS Outposts 上の Amazon EMR でデータ圧縮やクレンジングを実行し、必要なデータのみをリージョンのデータレイクへ転送します。Amazon SageMaker によって加工済みデータから機械学習モデルを作成し、エッジへデプロイすることでフィードバックループを回しています。

ネットワーク環境のデータフロー

Telefonica の Smart Step は、蓄積したデータからビジネスインサイトを引き出すプラットフォームで、データの匿名やプライバシーの遵守をしながら、データに基づいた意思決定プロセスの改善につなげています。2PBを超える大量のデータと、毎日発生する120億を超えるイベントを Amazon EMR、Amazon Kinesis、Amazon S3、目的別データベースなどの多くのサービスを組み合わせて処理し、人口流動の把握や都市計画に活用しています。

まとめ

本ウェビナーでは、Mobile World Congress 2021: AWS Virtual Village の振り返りとして、開催概要や発表の見どころ、お客様事例をご紹介いたしました。セミナーにご参加いただいた方、まことにありがとうございました。参加いただけなかった方も、このブログから動画や資料を参照いただき、今後の AWS 活用の参考になりましたら幸いです。内容に関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。

このブログの著者

宮田 直輝 (Naoki Miyata)
技術統括本部 エンタープライズソリューションアーキテクト本部 通信ビジネス部 ソリューションアーキテクト