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ライフサイエンス企業の生産工程における「インダストリー4.0」基盤の構築

この記事は、”Setting the “Industry 4.0” foundations for life sciences manufacturing” を翻訳したものです。

はじめに

このブログでは、ライフサイエンス企業の生産工程における課題と、アマゾンウェブサービス(AWS)のお客様がクラウドテクノロジーを使用して運用を改善する例をまとめています。また、AWSサービスを使用して「インダストリー4.0」の基盤を構築する方法を示すリファレンスアーキテクチャを紹介しています。最後に、お客様がデジタルな生産工程の成熟度を理解するために使用できるAWSアセスメントエンゲージメントについて説明し、またライフサイエンスの生産環境で共通のGxPワークロードをクラウドに導入するために重要なGxP許可リストのブログ記事を紹介しています。

ライフサイエンス企業の生産工程における可能性と課題の評価

医薬品業界は、一般に「インダストリー4.0」と複数の業界で呼ばれている第四次産業革命の初期段階にあります。

変化の必要性に加えて、現在の状況は、ライフサイエンス企業の供給能力の確保に予期せぬ課題をもたらしています。これらの課題は、供給の上流や作業者の安全に影響を与え、製品需要の予期せぬ急変動をもたらしました。

ジェネリック医薬品に対するインドへの依存や、医薬品有効成分(Active Pharmaceutical Ingredients, API)の供給に対する中国への依存など、潜在的な弱点は急激な痛みを引き起こしています。

米国市場はAPIの90%の供給を中国に依存しているため、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ノバルティスを含むグローバルライフサイエンス企業、あるいはバーテックスやジャズ・ファーマなど特定領域の企業が影響を受けています。これらの影響は、カルシウムサプリメントからHIV治療薬、がん治療まで多岐にわたります。

同時に、細胞および遺伝子治療におけるイノベーションによって推進される個別化医薬品の普及に伴い、生産の俊敏性と性能に対する要求が高まっています。これらの新たな製品は、ブロックバスター時代のプッシュベースのモデルから生産およびサプライチェーンモデルを変革しています。

こうしたプレッシャーと機会に照らして、先進的な企業は、テクノロジー、データ分析、そしてAWSを活用して生産オペレーションを革新しています。

たとえば、mRNA治療のパイオニアであるモデルナは、高度に自動化された生産設備とサプライチェーンを実現するために AWSを選択しました。

サプライチェーンのデジタル化とともに、業界は医薬品製造の近代化の曲がり角に達しています。

ノバルティスはAWSとの戦略的コラボレーションを締結し、製造とサプライチェーンの運用・管理におけるデジタルトランスフォーメーションのジャーニーを加速し、データと分析を通じて企業全体に価値を提供する基盤を確立しました。

AWSは、アマゾンによる業界をリードするサプライチェーン、イノベーションの文化、マイクロサービスの活用を強化してきた経験に基づいて、これらのイニシアチブをバックボーンとしてその地位を確立しています。現在、バイオ医薬品のお客様は、デジタルプラントの成熟のための強固な基盤を確立し、予測性と適応性のあるものへと業界をシフトすることができます。

医薬品製造のモダナイゼーションを加速するために、このブログでは、段階ごとのリファレンスアーキテクチャ、測定可能な価値を提供する具体的なユースケース、AWSのはじめ方などのアプローチについて概説しています。

デジタルプラントの成熟度の基盤

次のリファレンスアーキテクチャでは、さまざまな段階でのAWSサービスの使用例について詳しく説明します。リファレンスアーキテクチャでは、次の段階について説明します。

  • 接続性の確保
  • クラウドデータレイクの構築
  • 予測分析の実装
  • ユースケースの実装:アラートとリアルタイム監視

接続性の確保

最初のリファレンスアーキテクチャでは、製造現場からのデータの取り込みが含まれます。

データ取込:システムデータの相互運用性が標準化され、データがクラウドに自由かつ均一に流れ、製造現場でデータを活用できるようになります。主な技術的成果は疎結合マイクロサービスアーキテクチャを採用しており、低レベルセンサーまたは特定の計器ユニットの運用、および標準的なプロトコルをサポートし、マルチフォーマット/マルチタイプのデータペイロードを処理します。また、自動化と紙ベースのワークフローのデジタル化も含まれます。すべてのデータフローは、エッジのゲートウェイメカニズムを経由します。

この最初のステップを加速するために、AWSは最近、Industrial Machine Connectivity (IMC) キットを発表しました。IMCキットは、お客様やパートナーがアセットからAWSクラウドにシンプルかつ構造化されたプロセスでデータを取得できるように設計された、業界に依存しないソリューションです。これにより、そのデータから得られるビジネス価値を迅速に実現できます。お客様は、Inductive AutomationのIgnition ServerやPTCのKEPServerEXなどのパートナーのエッジアプリケーションの既存の階層構造 (工場、ライン、マシン、タグなど) を、AWS IoT SiteWiseの同等の階層構造に変換できます。

クラウドデータレイクの構築

リファレンスアーキテクチャの2番目は、クラウドストレージの構築と統合です。

保管:データの分断を排除し、データの統合および工場オペレータが必要とする可視性を必要とする場所へのアクセスを促進します。主な技術的成果は、重要な焦点を従来のオンプレミスインフラストラクチャから、リアルタイムの製造現場オペレーションを管理するために必要なコンピューティングリソースと並行してホットデータとコールドデータを配置できるインフラストラクチャに移すことです。このパターンには、ビジネスアプリケーション(ERP/CRM/QMS)間のデータ疎結合が含まれます。

予測分析の実装

リファレンスアーキテクチャの3番目は、検出とインサイトの生成に焦点を当てた新しい手順を紹介します。

分析:モデルの迅速な開発と展開が可能になり、製造現場でのアクティビティに固有のリアルタイムワークフローまたはバッチワークフローをサポートする製造プロセスを自動化できます。これらのモデルからのイベント管理は、AWS Control Tower ダッシュボードを使用して可視化できます。ダッシュボードでは、すべての製造現場のイベントを、共通のマルチデバイス対応ビューに集約します。分析をサポートする主な技術的成果として、標準のスケーラブルなサービスを使用して、ETL、クエリおよびモデル開発をサポートすることが含まれます。その後、モデルは、ストリームベースのプロセスステップをサポートするためにエッジにデプロイするか、アラート、アラーム、通知イベントなどの高レイテンシが許容される製造状態の変化を処理するためにクラウドにデプロイされます。

アラートとリアルタイム監視

最後のリファレンスアーキテクチャでは、前述の機能を活用し、プロアクティブアラートとリアルタイム監視に重点を置いた新しいステップを紹介します。この段階は、製造環境で最も一般的なユースケースの1つです。

アラートと通知:データ駆動アラートを使用して、ダッシュボードと運用プロセスをプロアクティブに監視します。リアルタイムおよびバッチ予測では、お客様や関係者にプッシュしたり、さらなる追跡やトレンド分析のために保存したりできるアラートと通知が生成されます。

製造オペレーションのリアルタイム監視により、コストや廃棄物の追加、品質の低下に影響するイベントやドライバーを測定および分析するために必要でタイムリーな情報をお客様に提供します。リアルタイム監視ソリューションを通じて、お客様は、スループット時間、在庫レベルとコスト、規制および品質リスクなどの主要な指標への影響を監視および予測できます。

AWSの始め方

ノボ ノルディスクやメルクなどのAWSのお客様は、すでに予測型製造プラントの構築に革新を進めています。

  • ノボ ノルディスクは、機械学習を使用してプロセスの逸脱、エネルギー使用量、および機器の故障を予測し、エネルギー消費を20%削減し、誤った不良判定を排除し、OEEを1-2%改善することができました。
  • メルクはデータレイクを作成し、分析を活用して550万バッチ間の比較(150億回の計算)を評価し、ワクチン生産における収率改善を促進するパラメータを発見しました。

製造業におけるイノベーションのバーは急速に高まっています。今後数年間で、これらのアプローチは革新的であることから、期待される能力の必要な基準へと移行するでしょう。

ライフサイエンス分野のお客様にとって、どこから始めればよいかを理解するのは難しい場合があります。そのため、AWS は製造ニーズに合わせて設計されたワークショップを提供しています。

AWSは、定義されたビジネス戦略に関連する人、プラットフォーム、運用、ガバナンス、セキュリティ、およびビジネス成果など、いくつかの重要な側面にわたってデータ駆動型となるサイトとネットワークの機能を客観的に評価しています。

この評価により、お客様は、現在の成熟度レベルを理解し、ターゲット状態の成熟度レベルに合意し、ビジネスおよびテクノロジー分野にわたって一連のイニシアチブを開始するための実用的なロードマップを定義できます。

もう1つの初期のお客様の一般的な課題は、GxP環境でAWSサービスの使用方法を理解することです。このトピックの詳細については、他のライフサイエンスメーカーが使用しているアプローチとベストプラクティスについては、Approving AWS services for GxP workloadsの投稿を参照してください。

AWSの使用を開始して製造デジタルトランスフォーメーションを開始または加速させる方法を理解するには、アカウントチームにご連絡ください。


著者について

Patrick Buckner

Patrickは、ライフサイエンス業界で20年以上の経験を持ち、ソフトウェア企業を通じて北米、南米、ヨーロッパ、アジアのバイオ医薬品および医療機器企業と協力し、Novo Nordiskのエンジニアリングおよびコンサルティング子会社で9年以上の経験を有しています。Patrickは、研究開発、臨床開発、製造、サプライチェーンを含むバリューチェーン全体で働き、北米とヨーロッパでセールスおよびマーケティングチームを率いてきました。現在、ライフサイエンス業界ソリューションプログラムをリードするワールドワイド事業開発マネージャーを務めています。Patrickはノースカロライナ大学チャペルヒル校で学士号、マサチューセッツ工科大学(MIT)で機械学習プロフェッショナル認定を取得しました。

Christopher Kopinski

ChrisはAWSヘルスケア・ライフサイエンスのコマーシャルビジネスの事業開発をリードしています。AWSに先立ち、Chrisは GE Healtharcesのライフサイエンスビジネスのデジタルソリューションと分析を主導し、診断、開発、製造、品質、供給のバリューチェーン全体でバイオファーマ企業とイノベーションを起こしました。Chrisは、コンパニオン診断、細胞療法、バイオ製造、サプライチェーンコラボレーション、患者エクスペリエンスの分野で、革新的なビジネストランスフォーメーションの経験を持っています。Chrisは、北米およびヨーロッパで研究開発、製造、製品管理、および営業・マーケティングの職を歴任しました。Chrisはウィスコンシン大学マディソン校で学士号、ウースター工科大学でMBAを取得しました。

Misha St. Lorant

Mishaはライフサイエンスおよびヘルスケア業界で15年以上にわたり、バイオ医薬品、免疫療法、臨床試験の分野に特化してきました。AWSに入社する前は、GEのバイオ医薬品および細胞療法の製造、医薬品臨床試験、イメージング患者ケア経路のワークフロー最適化に焦点を当てたエンジニアリングソリューションディレクターでした。Mishaはまた、医療IT、プラットフォーム、および患者向けアプリケーションに焦点を当てた、マイクロソフトの運営プログラム、製品、およびエンジニアリングチームで11年以上を費やしました。Mishaは、オレゴン州立大学で経済学と金融の学士号、UOPで技術管理のMBA、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で統計分析の修了証明を取得しました。

翻訳はIndustry Solutions Architectの松永が担当しました。原文はこちらです。