Amazon Web Services ブログ
[SAP on AWS] Windows Server / SQL Server環境のライセンスオプション
はじめに
Amazon Web Services (AWS)では、12年以上前からマイクロソフトのワークロードを実行しており、これは他のどのクラウドプロバイダーよりも最も長いものです。AWSでは、2008年からSAPワークロードが稼働しており、これも他のクラウドプロバイダーよりも長期にわたり数多くの経験を積んできています。現在5000を超えるお客様がAWS上でSAPシステムをご利用頂いていますが、Microsoft SQL Server上でSAPワークロードを稼働する例も多いです。
このブログの目的は、Microsoft SQL Serverデータベース上で稼働しているSAPワークロードを、AWSへ移行するための計画とガイダンスとリソースを提供することです。 これらのSAPワークロードをAWSに移行する際に考慮すべきライセンスオプションを取り上げます。
ライセンスオプションの確認
SQL Serverデータベース上で稼働しているSAPワークロードをお持ちのお客様は、移行戦略の一環として、現在のライセンスモデル、ビジネス戦略、および運用効率を評価する必要があります。次のフローチャートによって、お客様がお持ちのライセンスの種類とモビリティオプションを確認することができます。
SQL Server ライセンスの確認
*BYOL=Bring Your Own License
図に示すように、SQL Server ライセンスを SAP または SAP の正規販売代理店から購入した場合は、ランタイ ムライセンスと呼ばれます。ランタイムライセンスに準拠するための変更点や要件については、SAP Note – 2139358 SAP ONE Support Launchpadのログインが必要です)をご参照ください。
SAPノートに記載されている通り、SAPのお客様は2022年7月12日まで、SQL Server 2012までのバージョンのSQL Serverを共有/ホスト型ハードウェアで継続して使用することができます。2022年7月12日以降、またはSQL Server 2014以降のバージョンにアップグレードする場合は、コンプライアンスを維持するために、これらのデータベースを占有ホスト(Dedicated Hosts)上で実行する必要があります。
次のセクションでは、これらのライセンス条項の変更の影響を受けるSAPアプリケーションで利用可能な移行オプションに焦点を当てます。
1)SQL Server(Microsoft License Mobilityあり)
Microsoft License Mobilityを利用しているSQL Serverデータベースでは、これらのライセンスをAmazon Elastic Compute Cloud(EC2)の共有テナント環境に導入することができます。さまざまなインスタンスサイズと必要なコア数については、SQL Microsoft License Mobilityのサイトを参照してください。
EC2 共有テナンシーインスタンスを使用して BYOL モデルで Microsoft SQL Server を実行する場合:
- SQL Serverライセンスは、MicrosoftまたはMicrosoftライセンスの正規販売代理店から購入する必要があります
- SQL Serverライセンスは、Microsoft Software AssuranceまたはSA相当の権利を持つサブスクリプションライセンスが有効であること(※)
SQL ServerライセンスがSoftware Assuranceの対象外である場合、EC2インスタンスでSQL Serverライセンスを使用することには制限があります。Software Assuranceの対象外であるSQL Server 2019は、2019年10月1日に発効したマイクロソフト社のライセンス条件によりEC2上に導入することはできません。
(*)注:クラウドソリューションプロバイダー(CSP)プログラムから購入したライセンスは、BYOLの対象外です。
お使いのソフトウェアのライセンスがどのような扱いか、マイクロソフトのライセンス契約をご確認ください。お客様は、本製品条件を含む、適用されるすべてのマイクロソフトのライセンス要件を遵守することに単独で責任を負います。AWSは、適用されるマイクロソフトのライセンス要件を理解し遵守するために、お客様がご自身のアドバイザーに相談されることをお勧めします。
2)Amazon EC2占有ホスト(Dedicated Hosts)
SAPノート2139358(SAP ONE Support Launchpadのログインが必要です)に記載されているように、SQL Server 2012までのバージョンは、2022年7月12日まで共有/ホスト型ハードウェアで実行することができます。これ以降は、占有ホスト上にて引き続き実行することが可能です。SQL Serverデータベースの利用を継続したいお客様は、SAPランタイムのライセンスをAWSが提供する占有ホストに移行することをご検討ください。Amazon EC2 占有ホストでは、MicrosoftやOracleなどのベンダーが提供する対象ソフトウェアライセンスをAmazon EC2上で使用することができます。そのため、自社のライセンスを使用した場合の柔軟性とコスト効果に加え、AWSの回復力、シンプルさ、弾力性を得ることができます。Amazon EC2占有ホストは、お客様専用の完全な物理サーバで、企業のコンプライアンス要件に対応することができます。
Amazon EC2では、お客様専用のEC2インスタンス容量を持つ占有ホストを提供しています。占有ホストは、異なる構成(物理コア、ソケット、VCPUS)をサポートしており、お客様のビジネスニーズに応じて異なるファミリーやサイズのインスタンスを選択して実行することができます。EC2の占有ホストの構成については、こちらをご覧ください。
Amazon EC2 占有ホストは、AWS Management ConsoleまたはAmazon Command Line Interface (CLI)を使用してホストを割り当て、そこにインスタンスを起動することで利用を開始できます。占有ホストで利用できる機能は以下の通りです。
- 複数のインスタンスサイズのサポート – Amazon EC2 占有ホストでは、1つのインスタンスファミリーから複数のインスタンスサイズを設定することができます。同一のインスタンスファミリー内の異なるインスタンスサイズを占有ホスト上で実行できます。同じ占有ホストでの複数のインスタンスタイプのサポートは、ここに記載されているインスタンスファミリーで利用可能です。
- インスタンスの配置制御 – EC2の占有ホストでは、特定の占有ホストにインスタンスを起動することができます。
- アフィニティ – 特定のホストへのインスタンスのアフィニティを指定することで、ホストを停止・起動しても、そのホストに接続されたインスタンスを維持するオプションがあります。
- モニタリング – AWS Configを使用して、占有ホストに起動されたインスタンスを継続的に監視、記録することができます。
- ソケットと物理コアの可視化
- 統合されたライセンス管理 – AWS License Managerを使って、EC2専用ホストのソフトウェアライセンスのトラッキングと管理を自動化することができます。
- 自動管理と自動スケーリング
- クロスアカウント共有
- ホストリカバリー – 予期せぬハードウェア障害が発生した場合、ホストリカバリーが自動的に新しいホストでインスタンスを再起動します。
3)ライセンス込みのAmazon EC2インスタンス
Amazon EC2インスタンスには、Windows ServerとSQL Serverデータベースのライセンスが含まれており、ライセンス込みのAmazon EC2インスタンスを購入する方法もあります。お客様の用途に応じて、ライセンス込みのAmazon EC2インスタンスをプロビジョニングすることも可能です。
ライセンスインクルードのAmazon EC2インスタンスを選択することで、pay as you goモデルの恩恵を受けることができます。このモデルでは、使用した分だけ支払うことができ、Amazon EC2インスタンスを停止するときにWindows Serverライセンスコストを節約できます。
例えば、Windows Server上で動作するNon-Production SAPインスタンスがあり、これらのインスタンスを週に60時間動作させているとします。この場合、Windows Serverの料金は、使用する60時間分のみとなります。SAP Note 2539944 (SAP ONE Support Launchpadのログインが必要です)に記載されているように、SAPサポートを受けるためには、マーケットプレイスのAmazon Machine Image (AMI)を使用する際に、MS SQL ServerとWindows Serverのサポートを購入する必要があります。
SAP Note 1656099 (SAP ONE Support Launchpadのログインが必要です) に記載されているように、Amazon Relational Database Service (RDS) for SQL server は WebAS ABAP/JAVA ではサポートされていません。SAP Data Servicesについては、Amazon Relational Database Service (RDS) for SQL Serverがサポートされています。
4)SQL Serverからの移行
SAPは2020年に、SAP Business Suite 7ソフトウェアのサポートを2027年末まで延長し、さらに2030年末まで延長するオプションを付けるという発表をしました。この発表については、こちらをご覧ください。この日以降、お客様はSAP S/4HANAに移行する必要があります。SAPの製品ロードマップの計画に合わせて、SQL ServerからSAP HANAデータベースへの移行のオプションを評価・検討ことも選択肢となります。
アマゾンウェブサービス(AWS)とSAPは、AWS上のSAP HANAインメモリーコンピューティングプラットフォームのあらゆるメリットをあらゆる規模の企業が十分に享受できるように、緊密に協力してAWSプラットフォームの認定を行ってきました。SAP HANA on AWSでは、以下のことが可能です。
- 価値実現までの時間を短縮 – SAP HANA用のインフラを数週間や数か月ではなく、数時間でプロビジョニングすることができます。
- インフラリソースの拡張 – データ要件の増加に伴い、AWS環境も拡張されます。
- コスト削減 – 必要なインフラリソースのみに費用を支払うことができます。
- ライセンスの持ち込み – 既存のライセンスを活用し、追加のライセンス料は不要です。
- より高いレベルの可用性を実現 – Amazon EC2 Auto Recovery、複数のアベイラビリティー・ゾーン、SAP HANA System Replication(HSR)を組み合わせることができます。
お使いのWindows Serverライセンスの確認
Microsoftの製品条項では、Windows ServerにMicrosoft License Mobilityを付与していません。 そのため、お客様がAmazon EC2の共有テナントにWindows Serverを導入することは、一般的にMicrosoftのライセンス条件に準拠していません。
Windows ServerのライセンスをAmazon EC2に持ち込む場合は、Amazon EC2 占有ホストをお勧めします。
EC2 占有ホストでWindows ServerがBYOL(Bring Your Own License)の対象となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- Windows Server 2019またはそれ以前のバージョンであること。
- ライセンスは、2019年10月1日以前にマイクロソフトから購入したものか、2019年10月1日以前に有効なEnterprise契約の下で購入したものでなければなりません。
- ライセンスが上記の条件を満たしていない場合、マイクロソフトのライセンス条件では、今回の発表によるBYOLは認められません。
さらに、Amazonが提供するWindows Server AMIを使用して、最新バージョンのWindows ServerをDedicated Hosts上で実行することもできます。これは、Dedicated Hosts上で実行可能な既存のSQL Serverライセンスを持っているが、SQL Serverのワークロードを実行するためにWindows Serverが必要であるというシナリオによく見られます。2021年11月現在のWindows Server AMIの価格は、vCPUあたり1時間あたり0.046ドルです。
最新の価格情報については、こちらのページをご参照ください。
結論
お客様のSAPアプリケーションはビジネスに不可欠であり、ワークロードをサポートするために信頼性の高いグローバルなインフラストラクチャとサービスが必要であることが明確です。今回のブログ記事で紹介したガイドラインに従うことで、SAP on SQL ServerのワークロードをAWS上に展開し、世界で最も安全で信頼性の高い広範なクラウドインフラで柔軟性と価値を高めることができます。お客様のビジネスニーズや戦略に応じて、ライセンスの導入や、SAP HANAデータベースやLinuxベースのOSへの移行によるSAPアプリケーションのモダナイズを実現することができます。SAP on AWSチームにご連絡頂けましたら、お客様のご要望を詳しくお伺いいたします。。
以下のリンクを参照してください。
SAP on AWS向けMicrosoft SQL Server HA設計
CloudEndureによるオンプレミスのMicrosoft SQL ServerデータベースをAmazon EC2に移行
翻訳はPartner SA 松本が担当しました。原文はこちらです。