AWS Startup ブログ

【セッション紹介】Startup 2 社対談!サクッと始めて末永く、AWS Amplify / AWS Summit Online 2022

延べ 35,000 人が視聴する、AWS を学ぶ日本最大のイベント「AWS Summit Online 2022」が、2022 年 5 月 25 日・26 日に開催されました。本記事では基調講演やセッションのなかから、スタートアップに関連するものをご紹介します。

今回ピックアップするのは「Startup 2 社対談!サクッと始めて末永く、AWS Amplify」です。

AWS Amplify はアプリ開発者が素早く簡単に AWS でフルスタックアプリケーションを構築できるフレームワークです。本セッションでは aipass株式会社*とナイル株式会社をお招きし、AWS Amplify の魅力と、ビジネスへの活用方法について伺いました。

aipass株式会社には、AWS にマイグレーションした際の AWS Amplify 活用と、マイグレーションで得られたビジネス成果を。ナイル株式会社には、開発初期から AWS Amplify を採用して少人数のチームで圧倒的な開発速度を出し続けているノウハウを解説していただきました。

登壇者はこちらの 3 名です。

aipass株式会社 (旧:CUICIN株式会社)  CSO 兼 PdM 田中 亮達 氏

ナイル株式会社 自動車産業 DX 事業部 執行役員 事業 VPoE 長妻 和佳子 氏

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業部 技術統括部 スタートアップソリューションアーキテクト 永山 大輔

*… CUICIN株式会社は 2022 年 4 月 15 日に aipass株式会社へと社名を変更されました。セッション収録時点では旧社名でしたが、本記事「文中」では、現社名に則って、aipass株式会社という名称を用います。

インフラ構築の工数を以前の 4 分の 1 程度に削減 – aipass株式会社の事例

セッション前半で話をしたのは aipass株式会社の田中 氏。同社はもともと、インフラ環境としてバックエンドに GCP を、フロントエンドに Firebase Hosting と Netlify を併用していました。そして、ある時期にインフラを刷新。バックエンドを AWS、フロントエンドを AWS Amplify へと切り替えたのです。「AWS はサポートが手厚いため、AWS への移行を行ったことで開発・運用の生産性や効率が大きく向上した」と田中 氏は述べます。構築したアーキテクチャは下図の通りです。

サービス規模に適した環境、かつ拡張性・柔軟性が高いアーキテクチャを意識して構築

ここからは aipass 社の Amplify ホスティング活用事例が語られました。Amplify ホスティングはウェブフロントエンドのためのフルマネージドなホスティングおよび CI/CD サービスです。GitHub や AWS CodeCommit などのリポジトリやブランチの情報を指定し、ビルドの設定をするだけで、簡単に使い始めることができます。

利便性の高い Amplify ホスティングの機能を aipass 社はいくつも挙げました。まずはブランチごとに別々の環境へとホスティングを行う Multi Environment 機能です。aipass 社は本番環境やステージング環境、インテグレーション環境、デベロップメント環境という 4 種類の環境を用いています。

もしもインフラエンジニアがこれらの環境を手作業で構築するならば、サーバーのセットアップやカスタムドメインの付与、ベーシック認証の設定や SSL 証明書の発行・定期更新など、数多くの作業が必要になります。しかし、Amplify ホスティングの Multi Environment 機能を活用すれば、こうした作業をワンストップで実施できるため、格段に作業効率が上がります。

aipass 社はフロントエンドの大幅刷新を予定しており、従来の 4 環境からの移設用に新たな 4 種類の環境を準備しているとのこと。田中 氏は「この環境の準備において、Amplify ホスティングを利用したことで工数の大幅な削減に成功しており、過去に実施したインフラ構築と比較すると 4 分の 1 程度の工数になっている」と話しました。

また、Amplify ホスティングを用いることでリリースが効率的かつ安全になります。Amplify ホスティングでは、初期設定が完了すると CI/CD パイプラインが構築されてリリースが自動化されます。エンジニアが手作業でリリースすることがなくなり、工数削減やヒューマンエラーの軽減につながるのです。

他には Pull Request プレビューという機能があります。これは Pull Request が発行されるたびに、自動で動作確認用の環境が構築されてホスティング URL が発行されるというもの。社内の関係者がこの機能を用いてコード修正後の動作を確認できるため、業務効率化につながり、プロダクトの品質が向上します。「私はぜひこの機能をみなさんにおすすめしたい」と田中 氏は太鼓判を押しました。

最後に Amplify Console から利用できる E2E テストの機能が挙げられました。AWS Amplify は E2E テスティングフレームワークである Cypress をサポートしており、Amplify Console と統合することで簡単に E2E テストを CI/CD 環境に組み込むことができます。

この機能の恩恵を受けて aipass 社はテストの効率が向上しており、従来は 3 〜 4 週間に 1 度のスパンでプロダクトをリリースしていたのが、2 週間に 1 度のスパンまで短縮できていることが語られました。

「弊社は AWS Amplify の活用によってプロダクトが成長しており、顧客企業への導入件数も順調に伸びています。各種 AWS サービスを積極的に利用することで、宿泊業界の DX を推進し課題解決をさらに進めたいです」と田中 氏は述べました。対して永山が「AWS Amplify 導入の経緯やビジネスへの AWS Amplify の貢献度が非常によくわかりました」と語り、前半パートを終了しました。

YoY 300% の事業成長に AWS Amplify が貢献 – ナイル株式会社の事例

セッション後半で話をしたのはナイル株式会社の長妻 氏。まずは AWS Amplify 導入のきっかけを説明しました。同社の自動車産業 DX 事業部は、正社員 6 名体制で開発・保守を行っています。2018 年にサービス開始した際も、ほぼ同程度の人数でした。

開発環境はこれまで何度かの変遷をしており、サービス立ち上げ当初は Scala を用いて開発をしていました。その後、開発・運用の効率を向上させ、より良いユーザー体験を実現するためにサーバーレス構成 + SPA へのマイグレーションを実施したのです。しかし、サーバーレス化を行ったものの、以下のような問題が発生したといいます。

・実装や環境構築の方法がエンジニアごとにバラバラ

・リリースに手間がかかる

・複数のエンジニアが検証環境を取り合うことで開発効率が低下する

・ナイル株式会社はフロントエンドエンジニアが多くバックエンドエンジニアが少ないため、バックエンドエンジニアのリソース不足により生産性がなかなか向上しない

さらに、リリース作業のオペレーションミスや、リリース後の障害・デグレードなどによって品質の課題が生じ、結果的にサーバーレスの利点を活かせなくなってしまったといいます。そこで、この課題を解決するための手段として AWS Amplify を導入しました。

ここからは、ナイル株式会社が活用する AWS Amplify の各種機能が語られました。まずは Amplify CLI。コマンドラインを用いて対話的にバックエンド環境の構築・管理が可能であるため、インフラやバックエンドの知識がそれほどないフロントエンドエンジニアでも扱えることが利点です。さらに、ナイル株式会社ではバックエンドの処理を簡潔に実装するためのクライアントライブラリである Amplify ライブラリも利用しています。

これらの技術を用いることで、フロントエンドエンジニアでもバックエンドの簡単な機能の実装やインフラ管理、リリースができるようになりました。それに伴い、エンジニアごとにバラバラだった実装や環境構築の方法が統一されたため、開発効率やコードの品質が格段に向上したのです。

また、リリース作業の工数削減やリリース後の障害削減にもつながっています。さらには aipass 社の事例でも述べられた Amplify ホスティングの Multi Environment 機能や CI/CD によるリリースを用いることで、前述の検証環境の取り合いやデグレードなどの課題も解消されました。

「弊社では AWS Amplify を導入したことで、開発組織のバックエンドエンジニア不足や運用の課題などを払拭できました。このようなお悩みを抱える企業は、ぜひ AWS Amplify の導入をご検討ください」と長妻 氏は推奨します。こうして開発・運用体制を改善したことにより、一定スピードで事業の主体となる機能開発を実現し、2020 年から 2021 年には YoY で 契約件数 300% の急成長を遂げることができました。

「自動車産業 DX 事業部は、自動車サブスクリプションのオンライン販売における国内 No.1 のプラットフォームを目指し、今後も積極的に機能開発を進めていきます。AWS の各種サービスを有効活用しつつ、事業成長につなげていきたいです」と長妻 氏は言及しました。

永山は「エンジニアリソースが少ないなかで、急成長するサービスの開発を支える技術として AWS Amplify をご選定いただきました。視聴者のみなさまも、本セッションの内容を参考にして、AWS Amplify をビジネスの価値を創出することに活かしていただければ幸いです」と語り、セッションを終了しました。


本セッションは、 AWS Summit Online 2022 オンデマンドサイトで公開しております。こちらよりご視聴ください。