AWS Startup ブログ
心の健康を支えるデジタル・メンタル・プラットフォームを実現する。Awarefy 社の AWS 活用事例
株式会社Awarefy は「心の健康を支えるデジタル・メンタル・プラットフォームを実現する」をミッションに掲げるスタートアップ企業です。デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy(アウェアファイ)」を提供しています。
同社は AWS を用いてシステムのアーキテクチャを構築しています。加えて、AWS のソリューションアーキテクトによるサポートを有効活用し、サービス開発の改善に役立てているのです。今回は Awarefy 取締役 CTO 池内 孝啓 氏にお話を伺いました。
“デジタル認知行動療法”というアプローチ
――Awarefy 社が提供されているサービスの概要を教えてください。
池内:私たちは「Awarefy」というスマートフォン向けのデジタル認知行動療法アプリを提供しています。認知行動療法とは、人間の認知と行動に働きかけて、思考のバランスを整えストレスを減らしていく精神療法のことです。現在、多くの方々がうつ病や不安症といったメンタルヘルスの問題を抱えています。そうした課題に対してデジタルによるアプローチを行い、解決の一助となることを目指しています。
――AWS のどのような要素を魅力に感じて、AWS をご活用いただいていますか。
池内:AWS は多くの企業で利用されているクラウドです。そのため、世の中に利用法などの情報が数多くあり、困ったときにはすぐに調べることができます。また、私はこれまでのキャリアで 10 年以上にわたり AWS を使ってきたため、その過程で得た知見やノウハウがあります。
さらに、メンタルヘルスという領域はセンシティブなデータを扱います。私たちは今後、デジタルセラピューティクス(DTx)*と呼ばれる領域にも展開したいと考えているため、“データを安心・安全に取り扱うこと”は重要なテーマです。AWS はセキュリティ向上のためのサービスをいくつも提供しており、その点も利用を決める重要な要素でした。
*…医師の管理下で患者自身が使用する治療目的のプログラムであり、疾病の予防や診断、治療などの医療行為を、デジタル技術を用いて支援または実施するソフトウェア。
――以前、御社はバックエンドのシステムとして他のクラウドプラットフォームを利用されていたと伺っています。クラウド環境の移行を考えた経緯をお聞かせください。
池内:かつて私たちは他のクラウドにて、スマートフォンアプリでよく利用される汎用的な機能をクラウドで提供する mBaaS(mobile Backend as a Service)を活用していました。しかしそのクラウドでは、バックエンドのシステムを開発することなくアプリをリリースできることは利点だったものの、データの集計や正規化がしづらいなどの欠点がありました。私たちは、蓄積したデータを用いてユーザーに貢献することを目指しています。そのため、データ活用の自由度や汎用性が低いことは、事業展開するうえで大きな障壁になると考えました。
一方で、AWS の提供する Amazon Aurora は、バックアップ取得やリストアなどのオペレーションが実施しやすく、データの信頼性向上に寄与してくれます。先ほど述べたように、AWS を活用することでセキュリティも向上します。そうした複数の点を鑑みて、AWS への移行を決定しました。今年に入ってから設計や検証などの作業を進め、本番環境に反映させたのは 7 月の中旬でした。
Kubernetes を有効活用したアーキテクチャ
――システムアーキテクチャの全体的な概要を教えてください。
池内:前提として、私たちはモバイルアプリを提供しているため、そのアプリと連携するバックエンドのシステムが必要であり、そこで AWS を利用しています。そのアーキテクチャ構築のポイントとしては、Amazon EKS を採用し、Kubernetes 環境でシステムを動かしていることにあります。
もちろん、Amazon ECS を使う選択肢もありました。ですが、私自身が過去に Kubernetes を運用した経験がありノウハウを持っていましたし、今後さらにシステムを拡大していくためにもインフラ環境を管理・スケールしやすい技術を使いたいと思いました。また、それだけではなく私たちは積極的な技術的チャレンジを大切にしており、その点からも Kubernetes 活用には意義があると考えました。
私は数年前に Amazon EKS を試したことがあるのですが、そのときには「サービスとしては成長過程にあり、不足している機能もある」と感じました。ですが今回使ってみたところ、不満に思っていた点がすべて解消されていたため、AWS の進化の速さを感じます。現在、Awarefy のエンジニアは数名ほどの少人数のチームなのですが、その規模でも問題なく Kubernetes の構築・運用ができています。
――それ以外にも、Amazon Aurora の Serverless v2 や AWS Fargate など、サーバーレス系サービスを使用されていることも印象的です。
池内:バックエンドのアーキテクチャを構築するうえで、サーバーの管理・運用工数を減らすことが重要でした。そうした意味で AWS Fargate は理想的なサービスであり、Amazon Aurora の Serverless v2 も同様でした。2020 年 4 月から Serverless v2 が Production ready になったため、ちょうど良いタイミングだと思い採用を決めました。
――AWS Secrets Manager や AWS CDK などの採用意図もお聞かせください。
池内:Kubernetes を運用していくうえで課題になるのが、セキュアな情報の配置場所です。適切な方法を調査した結果、Kubernetes External Secrets を使って AWS Secrets Manager にアクセスすることが有効な選択肢だとわかりました。
また、少人数でシステムの運用をしていくうえでは、属人性の排除やオペレーションの自動化・効率化が重要になります。そのために有効なのがインフラのコード化であり、AWS CDK を採用した理由もそこにあります。AWS CDK は JSON や YAML などの構造化ファイルでなく、使い慣れたプログラミング言語によるリソース定義が可能であることも利点でした。
――御社は AWS のソリューションアーキテクトによるサポートもご活用いただいています。このサポートはアーキテクチャ構築や機能開発に寄与したでしょうか。
池内:かなり役に立っています。これまで 2 回ほど打ち合わせをし、チャットでは適宜相談に乗っていただいています。1 回目の相談では、リマインダー機能のユーザー体験を良くするための方法をディスカッションしました。インフラレイヤーのことだけではなく、アプリケーションレイヤーにも踏み込んでアドバイスしていただいたのが印象に残っています。
もうひとつは、システム移行の準備をしていたときに、Kubernetes 関連のトラブルに見舞われた際のことです。原因が特定できずお手上げ状態になったため、ソリューションアーキテクトに相談し、「Prometheus を用いて○○○のメトリクスを取得してください」といった、具体的なアドバイスをいただきました。この助言のおかげで原因を特定できたため、非常にありがたかったです。
これからもメンタルヘルスの問題に寄り添っていく
――今後、サービスやシステムアーキテクチャをどのように発展させたいですか。
池内:現在、私たちが提供しているのは BtoC のサービスのみですが、今後は BtoB の SaaS 領域にも展開しようと構想しています。近年、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する“健康経営”が注目を集めています。BtoB に事業展開し、健康経営の支援をすることには大きな意義があると私たちは考えています。
また、冒頭でも少し触れましたが、デジタルセラピューティクスの領域も今後はさらなる発展を遂げていくはずです。私たちのサービスによってデジタルセラピューティクスの支援をするなどの方法でも、メンタルヘルスの問題を解決したいと計画しています。
――今後、どのようなスキルやマインドのエンジニアを採用したいですか。
池内:CTO の私自身が新しい技術への興味・関心が強いエンジニアのため、Awarefy は新しいものを積極的に取り入れる職場になっています。新技術について学ぶのが好きなエンジニアや、そうした技術を課題解決に結びつけるのが好きなエンジニアにとって、Awarefy は楽しく働ける環境です。
さらに、Awarefy の開発組織ではフロントエンドエンジニアやバックエンドエンジニアといったように、業務内容を固定化したくないと考えています。ひとりのエンジニアがインフラもバックエンドもフロントエンドもモバイルアプリも担当できる、マルチスタックなスキルを目指してほしいです。だからこそ「領域を横断して、これもあれもすべてやりたい」というタイプのエンジニアのほうがフィットすると思います。
――御社の事業がさらに成長していくことが楽しみです。今回はありがとうございました。
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