AWS Startup ブログ

ブロックチェーン領域のトータルソリューションを提供する。HashPort 社の目指す世界観と AWS 活用事例

株式会社HashPort は「すべての資産をデジタル化する」をミッションに、ブロックチェーン領域におけるトータルソリューションを展開する企業です。暗号資産取扱関連サービスやIEO、トークン活用のコンサルティングサービス、ブロックチェーンシステム、NFT プラットフォームの提供を行っている同社は、AWS を用いてインフラ環境を構築しています。

今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジャーの間宮 朋康とスタートアップソリューションアーキテクトの野口 真吾が、HashPort 社の取締役 CTO の林 孝之 氏とブロックチェーン開発部 マネージャーの八塚 弘樹 氏、ブロックチェーン開発部 エンジニアの嘉味田 聡 氏にお話を伺いました。

クリプトはかつてのインターネットと同じような状況にある

間宮:HashPort 社の事業概要についてお聞かせください。

林:HashPort は「すべての資産をデジタル化する」というミッションを掲げて、ブロックチェーン領域におけるトータルソリューションを展開しています。関連会社に HashPalette があるのですが、HashPort は toB の事業を、HashPalette は toC の事業をメインで提供しています。

HashPort では暗号資産交換業者さまを含む多くの日本国内の企業に向けて、新規暗号資産取扱関連サービスや IEO、トークン活用のコンサルティングサービスを提供しているほか、ブロックチェーンを用いたシステムや NFT プラットフォームの提供も行っています。

HashPort のコンサルティング事業では、三井住友銀行や東急不動産、bitFlyer、コインチェックなど大手企業から暗号通貨取引所まで幅広いクライアントと協業を行いながら、プロダクト開発に取り組んでいます。

HashPort 社 取締役 CTO 林 孝之 氏

HashPalette は NFT 関連のプロダクトを開発しています。NFT に特化した自社開発のブロックチェーンである「Palette」や NFT マーケットプレイスの「PLT Place」、NFT と暗号資産を管理できるウォレットの「PLT ウォレット」、そしてブロックチェーンを活用したゲームの開発をしています。

このグラフを見ていただきたいのですが、緑の線が年代ごとのインターネットのユーザー数で、青の線がクリプト(ブロックチェーン技術を用いたデジタル資産)のユーザー数です。両方の線は、同じようなカーブを描いて成長しています。

現在のクリプトのユーザー数は、1998 年ごろのインターネットと同じくらいと言われています。人々がまだ PHS を使っていたくらいの時期です。当時のインターネットはまだ「一部の人たちだけが使っているもの」でしたよね。それに、電話回線を用いてダイヤルアップ接続でつなぐという「意識して使うもの」でした。ですが今では誰もが光回線を利用していますし、インターネットは人々が意識すらしない空気のようなものになりました。

現在のクリプトはまだまだ怪しい何かだと思われていますし、多くのサービスは暗号資産を管理するためのウォレットに意識的につながなければ使えません。クリプトが生活に溶け込んでいない時代です。その状況を変えるため、人々の生活にブロックチェーンの技術が当たり前に浸透し、誰もが使うような世界観を私たちは目指しています。

間宮:ブロックチェーンの技術を活用している他の会社と比べて、御社の強みはどのような点にありますか。

林:自社で垂直統合の事業を提供していることです。私たちはブロックチェーンを用いたプロダクトの開発からマーケットプレイスの提供、コンテンツ制作などまで行っており、自社ですべての業務を完結できます。そのため、普通ならば複数の企業に声をかけなくては実現できないような事業であっても、弊社のみでソリューションをトータルに提供できることが差別化要素になっています。

ブロックチェーンを扱ううえで AWS には複数の利点がある

野口:HashPort 社では AWS でインフラ環境を構築されていますが、AWS のどのような点を長所だと感じていますか。

八塚:世の中に AWS の情報が多いことが一番のメリットだと思っています。たとえば、AWS の公式ドキュメントはかなり丁寧に作成されていますし、AWS についてのブログや導入事例なども Web 上にたくさんあります。

私たちはスタートアップだからこそ、業務のなかでトライ & エラーを行うことが多いです。そんなときに、参考にできるドキュメントがあることで、業務をかなり効率化できるのは大きなポイントです。

HashPort 社 ブロックチェーン開発部 マネージャー 八塚 弘樹 氏(写真左)

嘉味田:AWS は世界中のさまざまな場所にエッジロケーションがあることも利点です。私たちのサービスでは NFT のメタデータなどをユーザーに向けて配布するケースがあるのですが、CDN を用いてエッジロケーションでコンテンツを高速に配信できます。

野口:今後、インフラ環境をより改善していきたい箇所はありますか。

八塚:私たちは現在、「Palette」のノードを Amazon EC2 を用いて運用しています。しかし、Amazon EC2 のインスタンスを管理することは、人的コストが高いと感じています。Linux ディストリビューションやライブラリのバージョンを上げるための対応を定期的に行う必要があり、それによって工数もかかりますしアップグレード作業に伴うトラブルなども起こり得ます。そこで、Amazon EC2 から Amazon ECS のようなフルマネージドのサービスに変えていきたいです。

嘉味田:それ以外にも、Amazon RDSAurora Serverless v2 に乗り換えようという話も持ち上がっています。変更のために解決しなければならない技術課題もあるので、どのように実現しようか考えているところです。

HashPort 社 ブロックチェーン開発部 エンジニア 嘉味田 聡 氏

間宮:そうした場合には、AWS の強みであるソリューションアーキテクトにぜひご相談いただけたらと思います。ソリューションアーキテクトは、AWS を利用されているお客さまとの技術的な壁打ちや AWS のサービスのより良い活用法、アーキテクチャについてのアドバイスなどを実施しています。

野口:まだ方針が決まっていない段階であっても、気軽に相談していただけるとうれしいです。一緒にディスカッションするなかで移行のプランなどをご提案させていただきますし、場合によっては特定領域に強みを持つ他のソリューションアーキテクトと連携してのご対応も可能です。

ブロックチェーン普及のために必要なこととは

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジャー 間宮 朋康(写真右)、スタートアップソリューションアーキテクト 野口 真吾(写真左)

間宮:ブロックチェーンの技術が社会に普及するためには何が大切だと思われますか。

八塚:まずは、何も意識をしなくてもユーザーが使えるものにしなければならないと、私たちは考えています。私たちが「Palette」でやっているようにブロックチェーンのインフラを整えるだけではなく、ユーザーが使いたくなるようにサービスの機能や UI/UX を磨き込むことも必要だと思っています。

また、ブロックチェーン技術に限らず、テクノロジーを世の中に浸透させるには「リアルの世界とデジタルの世界の間にある壁をどれだけなくしていくか」が大切です。たとえば、ブロックチェーンには「改ざんを防ぐことができる」という特徴があるので、身分証明書のように特定の人あるいはその人の持ち物であることを証明するために、ブロックチェーンを用いることは今後有力な用途になってくるはずです。

その観点では、私たちは最近 SoulBound Token(以下、SBT)の開発やサービスへの組み込みに注力しています。これは譲渡不可能な NFT であり、その特性を活かして SBT のウォレットを保有する個人の経歴や行動履歴を表すためのトークンとして発行されます。さまざまな SBT が保管されるウォレットは、その持ち主の姿を示すものとなることから“ソウル”と呼ばれます。

この仕組みを用いることで、その人が誰であるのか、どのような権利を持っているのかなどを簡単に証明できる世界になります。たとえば、これまではオフィスに入る際に受付で入館証を提示したり、本人確認を行う際に身分証明書を見せたりと、いろいろな種類の「自分が誰であるかを証明するもの」を管理する必要がありました。それを、SBT などの技術で代替し、実社会のユースケースとして成立するようなサービスを開発できれば、もっと爆発的に世の中へと普及していくと考えています。

林:現在、ブロックチェーンの技術を普及させるために私たちが用いているアプローチとしては、ゲームやデジタル上のコミュニティなどをユーザーに提供し、それを利用の足がかりにしようとしています。それらのコンテンツのなかにウォレットや NFT などの仕組みを導入することで、ユーザーが自然にそれらを利用しているような世界観を作りたいです。

新しい挑戦が山ほどある、創造的な仕事

間宮:これから開発組織をさらに拡大させていくと思うのですが、どのようなスキルやマインドのエンジニアに来てほしいですか。

林:技術的探究心が強い方が良いですね。私は普段の業務のなかで採用に携わっていますが、伸びるエンジニアとそうでないエンジニアが明確に分かれる特徴はそれだと思っています。やはり、プライベートの時間でもアプリ開発に取り組んだり、好奇心から新しい言語にすぐ触れたりするエンジニアは圧倒的に優秀なんですよ。

それに加えて、技術があってもそれを活かせなければ何も生まれないので、「技術はあくまで道具であり、それを使って何かを成し遂げるのが重要である」と理解できること。自分たちのビジョンやミッション、プロダクトの今後などを見据えて方針を考えられることが大事です。

八塚:弊社のように自分たちでプロダクトを開発・提供しているデベロッパーにおいて、一番大切な能力は「自分たちがそもそも何を何のために作っているのかを認識すること」だと思っています。自分たちが書いているコードの先に、どのような人たちがいるのかを想像できるエンジニアは貴重ですし、そんなエンジニアに入ってもらえたらありがたいです。

林:また、楽をするために技術を使うことも大事だと思っています。仕事の量が 10 あるとしたら、効率化する仕組みを作ってそれを 1 にして、余った 9 の時間を技術の探究やプロダクトの改善に使えるような人だと理想ですね。

嘉味田:自走できる人であることも大事だと思いますね。自分自身の力で方針や解決策を考え出していく人ですとお互いの成長のためになりますし一緒に働いていて楽しいです。

野口:八塚さんと嘉味田さんは社内で SRE 業務に携わっていると伺ったのですが、他社と比較して御社の SRE の仕事の面白さはどのような点にあるでしょうか。

八塚:SRE の役割は会社によって千差万別ではありますが、基本的にはほとんどの企業において、取り組んでいる仕事は似通っています。ですが、弊社は Web3 やブロックチェーンなどの技術を取り扱っているため、他社ではなかなか経験できないような仕事にも挑戦できます。ブロックチェーンの技術は日進月歩ですから、それとともに自分たちの扱うシステムを変化させていけるのは、やりがいが大きいはずです。

嘉味田:一部の企業の SREでは、どうしても保守的な部分というか、ある程度決まったマニュアル通りに作業することが求められるケースもあります。ですが弊社は新しい仕組みを次々に取り入れていますし、自動化・効率化のための工夫を考えながら業務を進めていく面白さがあります。エンジニアがただの作業者にならず、創造的な仕事に取り組めるのは HashPort の大きな魅力です。


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