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【開催報告】Hannover Messe と AWS Summit から振り返る製造業のデジタル活用動向
こんにちは!アマゾンウェブサービスジャパン合同会社で製造業のお客様を支援している事業開発マネージャーの川又です。
2024 年 7 月 25 日に製造業向けオンラインセミナー「Hannover Messe と AWS Summit から振り返る製造業のデジタル活用動向」を開催いたしました。セミナーの開催報告として、ご紹介した内容や、当日の資料・収録動画などを公開いたします。
はじめに
今回のセミナーは、2024 年 4 月にドイツで行われた Hannover Messe と 2024 年 6 月に幕張メッセで行われた AWS Summit Japan を振り返り、製造業におけるデジタル活用の最前線をコンパクトにまとめてご紹介しました。また東芝インフラシステムズ株式会社にもご登壇頂き、最新のクラウド型PLCをご紹介頂きました。
スマートマニュファクチャリング化を促進するクラウド型 PLC
登壇者:
東芝インフラシステムズ株式会社
スマートマニュファクチャリング事業部 計装技術部 クラウドサービス技術部
マネジャー 佐藤 光永 様
動画
最初のセッションでは、東芝インフラシステムズ株式会社 スマートマニュファクチャリング事業部 計装技術部 クラウドサービス技術部 マネジャー 佐藤 光永 様より、「スマートマニュファクチュアリング化を促進するクラウド型PLC」と題して講演いただきました。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、製造工場における計測・制御システムの中で、センサデータをもとにアクチュエータを制御するハードウェアで、ISA95 フレームワークでいうと Level 2 に位置しています(図1)。
図1: PLC の役割
また製造業は、2011 年に Industory 4.0が提唱されて以降、OT/IT の連携によるデータ利活用が課題となっています。そこで東芝インフラシステムズ様が開発、2024年5月に発表したのが、ハードウェアPLCのアーキテクチャをクラウド上で実現した、“クラウド型PLC” Meister Control Cloud PLCパッケージ typeN1です。これは、制御プログラムを連続的に実行する機能である制御コアを、Amazon EC2 を使い東芝様独自の Linux ディストリビューション“Skelios”上で動作させ、エッジエージェントを介してセンサ等を操作するもので、図 2 のような構成要素からなっています。AWS 上のアーキテクチャは図 3 のようになっています。
図2: クラウド型 PLC の構成
PLC のアーキテクチャをクラウドに持ち込むことで、OT と IT との連携がより容易になり、以下のようなメリットが想定されます。
- アプリ間連携の容易さ:自社やサードパーティのクラウド上にある、MES その他のシステムとの連携が容易となり、生産性向上や付加価値向上が期待される
- 機材管理や予算確保の容易化:アセットレスで将来の機能拡張・進化に追従しやすい
- 運用の柔軟性向上:リモートでプログラミング・デバッグ、制御・設定変更などが実施可能に
このクラウド型 PLC では、制御コアとエッジエージェントの通信に、低レイテンシーや到達性を高めるための東芝様の独自方式が用いられており、パケットロスによる情報欠落を防ぐ仕組みとなっています。
図4: クラウド・エッジ間通信の独自方式
すでに2社との実証実験が行われており、その様子は動画でご確認いただけます。工場での省力化・運用効率化を狙ったデモとして、一つは工場内物流を担うロボット制御の MES 連携とデジタルツイン化、二つ目はAI を用いた食品のグリル工程における、食品の焼け具合をフィードバック制御するコンベヤラインのスピード調整のデモが確認いただけます。
図5: 実証実験の様子
今後 DX 化の流れの中で、クラウド型 PLC の登場により OT/IT の垣根を超えることが容易になり、スマートマニュファクチュアリングの加速が期待されます。今後、PLC の全く新しい使い方も含めて、様々なユースケースが生まれていくことが期待されます。
Hannover Messeから読み解く、デジタル活用と生成 AI で加速する製造業のデジタルトランスフォーメーション
登壇者:
AWS ソリューションアーキテクト 河井信彦
AWS ソリューションアーキテクト 岩根義忠
動画
このセッションでは、2024年4月にドイツの Hannover で行われた Hannover Messe 2024 における AWS ブースの展示内容にフォーカスして、製造業におけるデジタル活用の動向に注目したまとめをお話しました。ハノーバーメッセは、ドイツの Hannover で毎年開催されている世界最大規模の産業見本市です。AWS ブースは年々その規模を大きくしており、今年は300名以上の日本のお客様に来訪いただきました。今年の AWS ブースの見どころは、生成 AI とパートナー展示でした。AWS ブースでは、製造業における5つのクラウド活用分野(スマート生産、スマート製品、製品設計、サプライチェーン、サステナビリティ)にまつわる展示と、それらをつなぐデータ基盤としての Industrial Data Fabric(IDF)関連の展示がありました。ブース展示の詳細については、こちらのブログをご確認ください。まとめの項では、生成 AI 活用が製造業においても当たり前になる未来が目の前に来ていること、AWS は製造に強みを持つパートナーとの協業で、フルスタックのソリューションをご提供していくことなどを強調しました。
関連ブログ:
Hannover Messe 2024 AWS ブースレポート
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AWS Summit Japan 2024 の振り返り
登壇者:
AWS ソリューションアーキテクト 大井友三
AWSソリューションアーキテクト 伊藤ジャッジ向子
AWSソリューションアーキテクト 水野貴博
動画
このセッションでは、AWS Summit Japan 2024 の振り返りと題して、AWS Summit Japan 2024 の概要と.製造業にかかわるおすすめセッション及び製造ブースのご紹介をしました。AWS Summit Japan 2024 では、2024 年 6 月 20 日、21 日の 2 日間で、150 以上のセッションと、250 以上の展示ブースがありましたが、その中から製造業の皆さんにおすすめのセッションと製造ブースでの展示内容について解説しました。セミナー当日は公開されていなかったセッションの資料及び動画については現在こちらから確認頂けるようになっています。
製造ブースでは「お客様と一緒にデータとクラウドで製造業の未来を変えていく」という統一テーマのもと、AWS が製造業でフォーカスしている4分野から8つのデモを展示しました。各デモの詳細を 3 人のソリューションアーキテクトが紹介しました。
デモの説明については本ブログでは割愛しますので、動画や資料のリンクを参照下さい。資料の内容と重複する部分もありますが、セミナーの前後で公開された解説ブログも併せてご確認下さい。
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本ブログは、事業開発マネージャーの川又俊一、ソリューションアーキテクトの 岩根義忠、水野貴博が執筆しました。