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アプリケーションのモダナイゼーションを加速するEBA
こんにちは、カスタマーソリューションマネージャー (CSM)の桑原です。この記事では、普段CSMとしてお客様の大規模移行プロジェクトをご支援している経験を踏まえ、移行及びモダナイゼーションの体験型ワークショップ (Experience-Based Acceleration=EBA) についてご紹介します。
「モダナイゼーションってなんか難しそう…」「XXシステムをモダナイゼーションしろと上司に言われたのですが、どうしたら良いですか。」このようなお客様のご相談が増えております。皆様は効果的にモダナイゼーションを進められているでしょうか。あらゆる分野にあてはまることですが、未経験領域にチャレンジするにはスモールスタートし経験を積むことが効果的です。EBAをご活用いただくことでモダナイゼーションのスモールスタートを実現できます。
モダナイゼーションとは何か
モダナイゼーションと聞くと、コンテナやサーバレスなど特定の技術を想像する方が多いのではないでしょうか。では特定の技術を導入すればモダナイゼーションが完了なのでしょうか。答えは否です。
AWSでは、「モダナイゼーションとは、 最新のインフラ、アーキテクチャ、組織パターンを組み合わせて 現行システムをリファクタリングすることで、 ビジネスの俊敏性を最大化すること。」と定義しております。
昨今、モバイルデバイスの普及やユーザーの多様化などを背景に、企業は今までより短い時間でより多くのサービスをリリースすることが求められております。このために、例えば現状のアプリをコンテナ化するとリリースサイクルは早まるでしょうか。一見実現できそうですが、実際はリリースに向けて多くのチーム間との調整や作業が必要となり、この点がボトルネックとなります。このように、技術だけを最新化しても効果は限定的です。リリースサイクルを早めるためには、技術、プロセス、組織それぞれを組み合わせ、適宜アップデートしていくことが重要です。
EBAでモダナイゼーションを経験してみる
モダナイゼーションの経験を積むために、AWSではEBAというプログラムをご用意しております。
EBAとはお客様とAWSが一体となりパイロット開発を進める約一カ月の体験型ワークショップです。技術だけでなく、Amazonで実践しているチーム編成 (2-pizza team)や意思決定の考え方 (2-way door)を取り入れ、モダナイゼーションにチャレンジして頂きます。
EBAでは技術、プロセス、組織の観点でそれぞれの課題に対してアプローチします。
1 技術) モダナイゼーションの検討範囲/To Beアーキテクチャを明確にする
EBAではAWSが伴走しながらモダナイゼーションを進めるための方法論、スコープ選定、技術的な課題解決等をご支援していきます。また、モダナイゼーション後のアーキテクチャがイメージできないというお客様については、お客様のシステムを評価/分析し、To Beアーキテクチャを議論検討するApplication Modernization Assessmentというプログラムも準備しております。AWS関連スキルに不安をお持ちの場合は、必要に応じてトレーニングの受講や事前にハンズオンの活用をご提案いたしますのでご安心ください。
2 プロセス) 従来のプロセスを変革する
EBAではAmazonにおける意思決定の考え方である2-way doorを取り入れております。2-way doorとは一度決めた後で修正・取り消しすることを受け入れ、仮に意思決定が間違った場合でもすぐに軌道修正可能な考え方です。2-way doorを実現するためにはスコープは小さくそしてアジャイルな働き方によって速やかに形にすることが重要です。
3 組織) 一体感があり俊敏性の高いチームを構築する
EBAでは2-pizza teamという2枚のピザを食べきれるチーム (5~10名程度) を編成して開発に必要な関係者全員が1つの目標に向かって1つの場所に集まり、スピーディに取り組む形式をとっております。それによりチーム/組織の壁を取り払い、全員が一丸となって集中して作業ができる空間を構築しております。また、EBAでは、楽しんで取り組んでいただくことを推奨しております。各タスクの完了や課題解決の際、拍手やカウベルという鳴り物を鳴らすことによってメンバを賞賛する文化を体感いただきます。
EBAの進め方
AWS側の推進役としてCSMが全体をファシリテートし、ソリューションアーキテクトが設計/構築を支援することによって、モダナイゼーションの第一歩目を踏み出していただく後押しをします。
詳細の進め方についてはこちらをご確認ください。
EBAを進める上で重要なポイント
効果的にEBAを進める上で重要な3つのポイントをご紹介します。
- EBAで成し遂げたい目標をお客様自身で言語化し、それを関係者全員に共有し共通認識を持っていただくことが重要です。技術、プロセス、組織の観点で得たい経験を目標として設定することも重要なポイントです。例えば、「Web APIを1つ作る」といった成果物に終始した目標ではなく「Web APIを1つ作ることを通して、少人数チームでサービスを稼働するまでの勘所をつかむ」といった目標が好ましいです。
- EBAで積み上げた経験をもとに、継続的に改善し続けることが重要です。EBAを一度実施するだけでモダナイゼーションが完了するわけではありません。EBAはお客様の第一歩目を踏み出していただくためのきっかけです。
- お客様開発の1サイクルとして捉えて主体性をもって取り組んでいただくことが重要です。EBAは研修ではなく実践の場です。自ら試行錯誤し、経験を積み上げることに価値があります。
モダナイゼーションは一朝一夕では実現できません。未経験領域にチャレンジするにはスモールスタートし経験を積むことが効果的です。モダナイゼーションを検討中のお客様には、EBAを活用頂くことをお勧めいたします。なお、実施にあたってはAWSのITXパッケージ2.0の締結が必要となります。EBAおよびITXパッケージ2.0にご興味をお持ちのお客様は、担当営業へご相談ください。
著者
カスタマーソリューションマネージャー 桑原 直哉
カスタマーソリューションマネージャー 宮本 雅勝
カスタマーソリューションマネージャー 西部 信博
マイグレーション スペシャリスト ソリューションアーキテクト 倉元 貴一