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AWS Supply Chainが上流における新機能を発表します

本日(US時間 11 月 30 日)、私たちは AWS Supply Chain について、サプライチェーンの上流のプロセスをサポートするために4つの新機能を発表しました。

  1. コンポーネントと製品在庫を計画、配置、補充するのに役立ち、在庫コストを削減し、需要の変動とサプライチェーンの混乱により迅速に対応できる AWS Supply Chain Supply Planning
  2. 貴社とサプライヤー間のコミュニケーションを効率化し、供給計画への対応と実行段階における需要またはサプライの変更の管理を改善する AWS Supply Chain N-tier Visibility(複数段のサプライチェーンに対する可視化) 。この機能により、わずか数クリックで複数階層の取引先と安全に連携できます。
  3. サステナビリティデータの要求、収集、監査を可能にする格納場所を提供する AWS Supply Chain Sustainability
  4. 生成系 AI を利用して、分析と意思決定を支援する会話型エクスペリエンスをサプライチェーンのプロフェッショナルに提供する AWS Supply Chain の Amazon Q

これらの新しい機能は、2024年に利用可能になり、既存のデータレイク、需要予測、機械学習 (ML) によるインサイトを拡張します。 今日、お客様は在庫の可視性を高め、品切れを防ぎ、過剰在庫による在庫保有コストの増加を減らすために AWS Supply Chain を利用しています。 AWS Supply Chain は、個別のERPに格納された、互いに関係した顧客データを 統一された正規データモデルに基づいて集約し、サプライチェーンデータレイク (SCDL) を作成することが出来るためです。 この統一された SCDL により、在庫の可視性を高める Insights という AWS Supply Chain 機能が可能になり、機械学習を活用し、在庫とリードタイムのリスクを軽減するための在庫配置や補充に対する推奨が提供されます。Demand Planning 機能は Amazon の深いサプライチェーンの専門知識と機械学習を組み合わせ、正確性を向上させるためにモデルを継続的に調整しながら、販売履歴データとリアルタイムデータを分析して予測を作成しています。

サプライチェーン上流の課題

サプライチェーンの上流部分には、サプライヤーや取引先パートナーからの原材料とコンポーネントの調達と移動が含まれます。 サプライチェーンのリーダーは、サプライヤー、メーカー、ディストリビューター、小売業者など、多くの異なるレイヤーの取引先との調整が絶えず課題であると伝えてきました。 各取引先には、独自のデータ管理システムがあり、高価なカスタマイズや長い開発サイクル、または手作業による回避策を必要とすることが多いです。 その結果、供給計画担当者は、予測、注文確認、出荷数量など整合するのに多くの時間を費やしています。 データがサイロ化していることが、需要の変動、サプライの中断、ベンダーのリードタイムの不確実性と相まって、企業が正確に在庫を把握し、顧客需要を満たすのを困難にしています。

製造業のお客様は、原材料とコンポーネントの価格・入手が変動することにより一層の複雑さに直面しています。さらに、取引先の顧客からのデータ要求への対応は、品質、頻度、適時性、構造の点で顧客毎に異なっており、必ずしも体系的に追跡または監査されているわけではありません。

大量の規制対応情報(炭素排出量や有害物質開示など)を管理することは、同様に困難であり、これまでは正式な追跡や監査メカニズムではなく、電子メール、ファックス、メッセージアプリを介して行われてきました。その結果、多くの組織では、需要を効率的に満たしたり、厳しくなる規制要件を満たしたりするために、適切な数量の商品を適切な時間に適切な場所に確実に配置することに苦慮しています。

本日発表された新しい AWS Supply Chain 機能を使用することで、上流のサプライチェーン・プロセスを改善し、材料の在庫率や入荷率を向上させ、サプライヤーとコミュニケーションを取りながら供給計画を確認し合意を得ることができます。また、重要な環境要因に関する正確なデータを取得することもできます。これらの機能についてもっと詳しく見ていきましょう

AWS Supply Chain Supply Planning

Supply Planning の機能は、Amazon が自社の運用のために高度なサプライプランニングモデルを開発してきた専門知識に基づいています。Supply Planning は、施設全体で必要な在庫水準を正確に判断できる高度なサプライプランニングモデルを作成します。サプライプランは、AWS Supply Chain デマンドプランニングによって作成された需要予測と、SCDL からの製品、施設、部品表 (BOM)、在庫、その他の顧客情報を組み合わせて生成されます。このデータの自動統合により、情報の品質が向上し、予測、注文確認、仕入先リードタイムなどを含むさまざまなレポートを手動で統合する作業によるリスクが軽減されます。

Supply Planning は需要の変動、仕入先のリードタイム、発注頻度を考慮して在庫目標を動的に計算し、在庫発注や在庫移動を推奨します。これにより、発注または移動する単位数、発注または移動のタイミング、在庫の配置場所を最適に決定することができます。

次のスクリーンショットは、在庫状況、発注状況、運用指標などをまとめた Supply Planning ダッシュボードを示しています。各カテゴリの詳細を確認し、適切な対応を取ることができます。

Supply Planning Dashboard

Supply Planning Insights

AWS Supply Chain N-Tier Visibility

N-Tier Visibility(複数段のサプライチェーンに対する可視化) は、組織外の複数の外部取引先の可視性と、そこから洞察を得る能力を向上させます。 わずか数クリックで取引先を招待し、利用を開始してもらうことができ、ネットワーク全体のすべてのパートナーを次のスクリーンショットのように表示できます。

N-Tier Partner List

N-Tier Partner Map

この接続性により、取引先はコミュニケーションを自動化し、自社の予測を改善することもできます。 例えば、AWS Supply Chain の N-Tier Visibility から、取引先と購入注文や供給予測を共有し、それらの購入注文や在庫レベルの変化を追跡することができます。 更新された供給計画と購入注文は Amazon Simple Storage Service (S3) にエクスポートされるので、エンタープライズリソースプランニング (ERP) システムと統合できます。

内蔵されたチャットとメッセージング機能により、サプライチェーン全体でのコラボレーションがさらに容易になります。 例えば、コンポーネントの出荷が遅れた場合、在庫管理者は AWS Supply Chain アプリケーション内で回避策を特定するためにサプライヤーに連絡できます。 サプライヤーや製造業者との内部コラボレーションと情報共有の改善により、調達リスクとコンポーネント不足を検出する能力が向上し、迅速に混乱を軽減できるようになります。

AWS Supply Chain Sustainability

Sustainability の機能では、サプライヤーネットワークから必須のドキュメントやデータセットをより安全で効率的な方法で入手することができます。製品のライフサイクルアセスメント、製品安全性に関する証明書、サプライチェーンの有害物質に関する報告書など、どの時点でも使用される成果物を要求、収集、エクスポートすることができます。

また、サプライヤーにサステナビリティの課題を文書化してもらうための独自のデータ収集フォームをアップロードし、複数の階層にまたがって取引相手にデータ要求を送信し、回答を追跡し、不在者にリマインダーを送信し、回答を保存・閲覧するための格納場所を提供することもできます。これは、次のスクリーンショットに示されています。

Sustainability Info Request

また、サプライヤーにサステナビリティの課題を文書化してもらうための独自のデータ収集フォームをアップロードし、複数の階層にまたがって取引相手にデータ要求を送信し、回答を追跡し、不在者にリマインダーを送信し、回答を保存・閲覧するための格納場所を提供することもできます。これは、次のスクリーンショットに示されています。

Sustainability Emissions Dashboard

Amazon Q in AWS Supply Chain

最後に、Amazon Bedrock を用いた自然言語インターフェースを備えた生成 AI アシスタントにより、AWS Supply Chain は SCDL 内のデータを問い合わせでき、「何を?」「なぜ?」「もし~だったら?」といった質問に対してインテリジェントな回答を提供します。質問はアプリケーション内の文章による対話を通じて行うことができます。Amazon Q は、複雑なシナリオの結果と、さまざまなサプライチェーンの意思決定のトレードオフを可視化することもできます。 質問と回答の例は次のようになります。

Q1: ブレーキパッドは何個注文していますか?

A1: ブレーキパッドカテゴリーでは、5 つの製品にわたって 1500 個を注文しています。

Q2: ブレーキパッドの注文数量は先月と比べてなぜ増加したのですか?

A2: サプライヤー AA のリードタイムが先月の 28 日から今月は 56 日に延びたため、注文数量は 50% 増加しました。

Q3: サプライヤーがリードタイムを 2 週間短縮した場合、注文はどう変わりますか?

A3: サプライヤー AA からのブレーキパッドのリードタイムが2週間短縮して 42 日になった場合、注文数量は 20% 減少します。

応答は次のスクリーンショットに示します。

Amazon Q in AWS Supply Chain conversation

これは、Amazon Q in AWS Supply Chain が幅の能力の広さと深さを示す例です。Amazon Q in AWS Supply Chain は応答が速く正確で、すばやく洞察を得たり、因果関係を理解したり、サプライチェーンのパフォーマンスを改善する可能性がある選択肢を特定するのに役立ちます。

まとめ

AWS re:Invent は、お客様、パートナー、AWS にとってエキサイティングなイベントです。互いに出会い、学び合い、最新のイノベーションを共有できるからです。今年、サプライチェーンの計画を改善し、複数のティアのサプライチェーン全体での可視性を高め、重要な課題に対応する 4つの新機能を発表しました。Supply Planning、N-Tier Visivility、Sustainability、Amazon Q in AWS Supply Chain は、2024 年第 1 四半期初頭に利用可能になります。

AWS Supply Chain をご覧いただき、詳細をご確認ください。セルフペースの技術概要については、 AWS Workshops をご覧ください。re:Invent セッションの録画やその他の役立つリソースにアクセスするには、 re:Invent ページもご覧ください。

本ブログはソリューションアーキテクトの水野 貴博が翻訳しました。原文はこちら

著者について

Diego Pantoja-NavajasDiego Pantoja-Navajas は AWS Supply Chain の VP で、ビジネスアプリケーションのビジョンと実行を担当しています。彼と彼のチームは、サプライチェーンがどのように機能できるかを根本的に考え直し、世界で初めての連続的に改善するサプライチェーンシステムオブレコードを市場に投入することに注力しています。彼は顧客の成功に情熱を注ぎ、SaaS、クラウド、AI/ML テクノロジーを活用して、サプライチェーン、e コマース、フルフィルメントに関連するビジネスの問題を解決するための高度に使いやすく知的な B2B エンタープライズソフトウェアソリューションを構築しています。Diego はジョージア工科大学の優等生で、MIT の人工知能・機械学習のエグゼクティブエデュケーションコースなど、トレーニングを続けています。また、IESE ビジネススクール、ミシガン大学ロス・ビジネススクールとのパートナーシップのもと、リーダーシップコースにも参加しています。彼は南フロリダに家族と暮らしており、顧客のビジネスの成功をさらに推進する革新的な製品やソリューションを学ぶことを常に喜んでいます。