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MRA (移行準備状況評価) から見えるクラウド移行におけるよくある課題とその対策 (後編)
みなさん、こんにちは。カスタマーソリューションマネージャー (CSM) の仁科です。カスタマーソリューションマネージャーはお客様のクラウドジャーニー全般を支援する活動をします。この記事では、CSM の目線で、AWS への移行を検討しているお客様の課題としてよくあるものと、その対策の一例をご紹介します。
前編では、非技術領域の観点でビジネス、人材、ガバナンスにおける、よくある課題とその対策の一例をご紹介しました。後編であるこの記事では、技術領域の観点でセキュリティ、プラットフォーム、オペレーションにおけるよくある課題とその対策をご紹介します。前編でも記載している通り、お客様によって他にも様々な課題や対策があるため、あくまで一例として考えていただければと思います。まだ前編をお読みでなければ、ぜひそちらもご活用ください。
移行における課題と対策のご紹介
セキュリティ
セキュリティの観点でよくある課題は、AWS でどのようにセキュリティを担保すればいいのかが分からないことです。オンプレミスと比較して、漠然とクラウドに対してセキュリティの不安をお持ちのお客様がいらっしゃるかもしれません。
AWS におけるセキュリティの担保は責任共有モデルという考え方に基づいています。その上で、お客様がご利用いただける様々なセキュリティサービスがあります。それらのサービスを組み合わせて、AWS Well-Architected Framework のセキュリティの柱を参照して利用しながら、要件に合わせてセキュリティを強化することができます。一方で、はじめてAWS を利用される場合には何から実施すればよいかが分からないと思いますので、お客様の状況に応じたセキュリティ成熟度レベルの向上のために、AWS プロフェッショナルサービスによるセキュリティアセスメントやセキュリティガイドラインの作成支援が可能です。また、セキュリティスペシャリスト ソリューションアーキテクトからのセキュリティディスカッション等を実施することも可能です。
AWS はセキュリティを最優先事項と考えています。責任共有モデルに基づいて、お客様側で要件に応じたセキュリティを設定いただき、セキュリティを強化することで安心、安全にクラウドをご利用いただくことができます。
プラットフォーム
プラットフォームの観点でよくある課題は、クラウド移行の経験がなく、どのような手順やアーキテクチャでクラウド移行をすればいいかが分からないということです。机上の検討に長時間かけて検討するより、まずは小さくそして速やかに移行経験を積むことが重要です。
これらの課題の解決策として、まず初めにランディングゾーンを構築することが重要です。ランディングゾーンとは、デフォルトアカウント、アカウント構造、ネットワーク、セキュリティなど、推奨される開始点を提供するクラウド環境のことです。ランディングゾーンを構築することで、組織がセキュリティおよびインフラストラクチャ環境に自信を持ってシステムを迅速に起動してデプロイできる出発点を提供することができます。もしランディングゾーンを構築するだけでなく、組織やプロセスもあわせて変革していきたいというお客様には、AWS 支援のもとお客様自身でパイロット開発を約一か月の短期集中の体験型ワークショップとして、Experienced-Based Accelerations (EBA) というプログラムを活用できます。EBA では移行経験や移行に関する技術的スキルを獲得できるだけでなく、新しいチーム編成 (2 pizza team) や新しい意思決定の考え方 (2-way door) を取り入れ、従来の組織やプロセスを変革させるきっかけを掴んでいただくことができます。また、お客様のクラウドジャーニーのステージに応じたワークショップを複数準備しておりますので、お客様の状況に応じて最適なパーティーをご提案可能です。詳細の進め方についてはこちらをご確認ください。
ランディングゾーンを構築することで、セキュリティやインフラストラクチャ環境に自信をもってシステムをデプロイできるようになります。また、EBA を実施いただくことで、本格移行時にも役立つノウハウと成功体験を獲得でき、本格移行をより円滑に進めていただくことが可能になります。
オペレーション
オペレーションの観点でよくある課題は、現在の運用に人手が掛かっているためクラウド移行にあわせて運用の自動化を行いたいが、具体的に何から始めればよいか分からないことです。クラウドを活用いただくメリットの一つとして、運用の効率化による運用コスト削減がありますが、ただクラウドに移行するだけでは実現が難しいものです。
AWSのこれまでの経験から、AWS のサービスを活用した運用改善の情報が整理されています。例えば、Management and Governance の観点で、統制の自動化や監査、オブザーバビリティ、そして運用の効率化に活用可能なサービスを整理しています。また、AWS Well-Architected Framework における運用上の優秀性の柱としても情報を整備していますので参考にしてください。これらの情報を用いて検討を開始いただくことが可能です。検討をすすめるにあたって、お客様ご自身での実装が難しい場合には、AWS プロフェッショナルサービスによる支援をご提案することも可能です。
クラウドを活用いただき運用の効率化を行うことで、システムにかかるコストだけでなく、運用のコストも削減できる可能性があります。運用の自動化により運用者の稼働を減らし、運用者が本来より時間をかけたいと考える作業に集中することができます。
最後に
前編と後編にわたって、AWS への移行において、6つの観点 (非技術領域のビジネス、人材、ガバナンス、技術領域のセキュリティ、プラットフォーム、オペレーション)でよくある課題とその対策の一例、対策を実施することでお客様が得られる価値をご紹介しました。
課題を乗り越えることで、クラウドをより有効活用いただくことができ、ビジネスの効果を最大化いただくことができます。この記事ではよくある課題について記述していますが、実際のMRA ではお客様個別のお困りごとに対して対策案を提示することが可能です。
AWS ではお客様の移行を支援しています。移行を検討中のお客様はAWSへの移行のページもご確認ください。パートナーを活用した移行を検討する場合は、AWS 移行コンピテンシーパートナーのページをご確認ください。クラウドへの移行に関するご質問やお問い合わせは、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。
カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 仁科みなみ、桑原 直哉、北川 裕介