Amazon Web Services ブログ
三協立山株式会社様の AWS 生成 AI 活用事例:議事録作成時間を 75% 削減する生成 AI アシスタントを1か月でリリース
本ブログは、三協立山株式会社と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。
三協立山株式会社は ビル・住宅・エクステリア建材の開発・生産・販売までを一貫して手がけるほか、アルミやマグネシウム合金の鋳造・押出・加工や販売を行っています。商業施設向けの陳列棚やショーケース、屋外看板などを提供し、メンテナンスも担っています。本ブログでは三協立山が開発した社内向けサービス 「AI ふたば」 の概要とその中でどのように Amazon Bedrock が活用されているかを紹介します。
課題と背景
三協立山では 2023 年 6 月に社長より生成 AI の積極的活用方針が示され、特に生産性向上を目指した取り組みを優先的に始めることになりました。
生成 AI の導入に向けて、社内ルールやガイドラインの整備、E-ラーニングの作成など、社員限定での利用環境の整備を進めていき初期バージョンの「AI ふたば」をリリースしました。この時点では Amazon Bedrock は 採用しておらず、他社の LLM を使って実装していました。しかし、実際の運用においていくつかの課題が浮き彫りとなってきました。
主な課題として以下が挙げられます:
- 文字数制限による議事録の自動作成への活用の難しさ
- 業務での具体的な活用シーンの不明確さ
- 自社情報の活用ニーズ(過去の資料検索の非効率性)への対応
また、プログラミングや文書作成業務に従事する一部のヘビーユーザーを除き、全社的な活用は進んでいない状況でした。社内情報を活用した RAG(Retrieval-Augmented Generation)の自社開発も試みましたが、実装の困難さに直面していました。これらの課題に対し、より実用的で効果的な生成 AI 活用の仕組みづくりが求められていました。
ソリューションの概要
そのような課題がある状況で AWS より Generative AI Use cases JP (以下、GenU) をご提案しました。CDK や React の経験が全くなく不安もあったそうですが、開発メンバーの川崎さんは「AWS はほぼ初心者で CDK も今回初めて存在を知ったくらいですが、Readme ファイルなども充実しており、想像以上に簡単に始めることが出来ました。」さらに「コーディングで分からないところは AI ふたば自身で確認をしながら進められ、ローカル環境で動かして画面を確認しながら修正ができるので敷居が低かった。議事録の文字起こし機能のバックエンド部分を非同期処理で実装することもできました。」と語っています。
また、GenU が元々持っていたプロンプトテンプレートを自社向けにカスタマイズし、業務での具体的な活用シーンに即して 50 パターンほど用意しています。
図 1 : AI ふたばの画面イメージ
自社データの活用については、GenU に含まれている Amazon Kendra を活用した RAG を採用しました。商品情報では「X.スタイル」と「クロス.スタイル」など言葉の揺らぎに対してはプロンプトやファイルの置き方を工夫したり、メタデータを活用して、検索精度を高めることに成功しました。また Amazon Bedrock にはない外部の LLM も利用できるようにカスタマイズを行っており、エンドユーザーに多くの選択肢を提供するように工夫しています。
以下の図 2 がAI ふたばのアーキテクチャーの概要になります。
図 2 : AI ふたばのシステム構成
導入効果と今後の展開
GenU をベースとしてカスタマイズをしたことで、AI ふたば Ver2 はたった1か月でリリースすることができました。Ver2 での議事録作成機能の追加やプロンプトテンプレートでユースケースを提示したことで社内の利用者は 1.5 ~ 2 倍程度拡大しました。また当初から要望の多かった議事録作成機能をリリース出来たことで年間で 1 万 5000 時間の業務時間削減効果が見込まれています。
川崎さんは「AWS は初心者で、しかも OSS として公開されている GenU をベースにして開発するという体験は、今までの既存アプリのバージョンアップ中心だった業務から、世の中の動きを知るきっかけになりました。IaC である CDK も初めて使いましたが、あまりの便利さにこれから他の開発でも CDK を使ってみようと思います。」と語っています。同じく開発メンバーの船場さんは「生成 AI も Amazon Bedrock を利用することで非常に簡単に実装できるということが 分かりました。」と語っています。
GenU はアプリケーションのソースコードはもちろん、AWS の各種サービスもビルディングブロックで組み合わされたものを CDK の形で OSS として公開しています。そのままお使い頂くこともできますが、今回の事例のようにカスタマイズして使う事もできるようになっているのが特徴です。
情報システム統括室システム企画開発部の高畑部長は、「若手のメンバーが面白がって取り組んでくれた。GenU をベースにしながらも、Ver1 の見た目に寄せるようカスタマイズしたことでエンドユーザにとっても違和感なく展開することができました。」と語っています。
今後の展開としては以下のようなことを検討しています。
- 議事録機能の更なる改善
- エージェント機能の追加
- Amazon Kendra へのファイル連携機能の効率化
まとめ
本ブログでは 三協立山で導入した AI アシスタントサービスの紹介とその中で Amazon Bedrock や GenU がどのように活用されているかを紹介しました。 Amazon Bedrock を利用することによってみなさまの AWS 上のワークロードに生成 AI を活用した機能を容易に組み込めます。本ブログが生成 AI を活用されている皆様の参考になりましたら幸いです。
本ブログは、三協立山 株式会社と AWS のソリューションアーキテクトの水野が共同で執筆いたしました。
三協立山ショールームにて撮影
左から
情報システム統括室システム企画開発部
高畑 裕紀 部長
情報システム統括室システム企画開発部企画開発一課
船場 和馬
改革推進統括室デジタル改革推進部デジタル改革推進グループ
川上 貞昭 グループ長
情報システム統括室システム企画開発部企画開発一課
川崎 翔平 副主任
情報システム統括室システム企画開発部企画開発一課
阿閉 清紀 課長