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生成 AI による美容業界の活性化について

Amazon における美容業界のイノベーション事例には長い歴史があります。現在、美容業界では、生成 AI を用い、アイデアを得る新しい手段を模索できることで、より迅速に市場投入するための新しい方法を模索することが可能です。

美容業界の過去について

美容業界は、他の多くの業界と同様に、近年前例のない変化を遂げており、各ブランドは後れを取らないよう躍起になっています。1990 年より前は、この業界の消費者体験は主にデパート、食料品店、ドラッグストアが占めていました。Chanel、L’Oréal、Revlon などの大手ブランドが市場を独占していました。

1990 年から 2015 年にかけて、Sephora、Ulta、Target などのブランドが栄えました。この時期、セルフショッピングと「マスステージ」 (大衆向けプレステージ) により、プレミアムブランドとマスマーケットブランドの間の境界線があいまいになりました。また、Benefit、Bliss、Tarte、bareMinerals、AXE、Honest Company、Method などの「インディーズ」ブランドや「クリーン」ブランドも増加しました。

その後、2015 年頃から、業界は新しいデジタル戦略とプラットフォームの統合を開始しました。多くの消費者直販のデジタルネイティブブランド (DNB)の立ち上げや、Instagram や TikTok などの新しいソーシャルショッピングプラットフォームの出現により、従来の業界常識を破壊し始めました。

Amazon.com のようなマーケットプレイスはブランドを差別化するために新しいストアフロントを立ち上げ、一方 Fenty や有名人のインフルエンサーブランドは包括性の基準を引き上げました。2026 年までに、美容品の売上の 30% 近くがオンラインになるとも予測されています

これは劇的なチャネルシフトです。

美容業界を支えるテクノロジー

2023 年の美容業界の企業は、次のような問題に焦点を当てています。

  • グローバルマーケットにおける不安定な需要による、予測と補充の課題。
  • ブランドと製品のイノベーションに立ち戻り、包括性、クリーン、持続可能性、そしてインフルエンサーであることを強調すること。
  • 顧客接点の獲得をするために、「フィジタル」 (物理的+デジタル)および、ソーシャルプラットフォームを取り入れること。
  • 新しいマーケティング手法の採用で、インフルエンサーが、あらゆる顧客の声となること。
  • 環境、社会、ガバナンス (ESG)において、消費者は透明性と倫理的で環境に配慮した動物実験のない製品を求めていること。

2013 年に開始された Amazon プレミアムビューティーストア、そして最近では 2020 年に開始されたラグジュアリーストアの美容のカテゴリにおいては、Dr. Barbara Sturm や Clé de Peau Beauté などの厳選された高級ブランドが含まれています。小売ブランドと顧客をプレミアムビューティー戦略の中心に据え、Amazon は革新的なデジタルツールとプラットフォームを用い、買い物体験を向上させています。たとえば、Amazon の顧客は、ショッピングプラットフォームによって、検索、比較、バーチャル試着し、利便性高く補完的な商品を見つけることができます。何百万もの顧客が、美容ブランドについて詳しく知るための出発点および検索エンジンとして Amazon.com を使用しています。

Amazon は、顧客がインスパイアされ、新しいブランドを発見し、膨大な品揃えの商品を閲覧できる信頼できるショッピングの場として Amazon Beauty を設立しました。店頭には何千ものブランドがありますが、LancômeShiseido などの新たなブランドが加わり、その数は増えています。各ブランドそれぞれが Amazon Beauty 内に独自のブランドストアを持っています。

テクノロジーは、没入型で、対話式で、パーソナライズされた Amazon Beauty のショッピング体験を生み出す上で大きな役割を果たしています。機械学習 (ML)によって、プラットフォームの e コマース検索機能とパーソナライゼーション機能を提供し、適切なタイミングで、適切な顧客体験を提供します。買い物客は、エンタテイメントとショッピング体験を組み合わせた Amazon のライブストリーミングプラットフォームである Amazon Live で美容商品を探すことができます。Amazon Live を使用すると、買い物客は同じ嗜好の買い物客とチャットしたり、ホストに質問したり、ほぼリアルタイムで (または後視聴)目玉商品を購入することができます。

今後、買い物客は次のようなイノベーションを期待できます。

  • 拡張現実 (AR) によるバーチャル試着
  • パーソナライズされたスキンアセスメント
  • ライブストリーミングの増加 (APAC市場ではすでに普及しています)
  • ML ベースのシェードマッチングとレコメンデーション
  • ライブおよび AR での仮想サービスアシスタント
  • 生成 AI を活用したスタイリスト
  • マッチする商品のレコメンデーション

美容業界における生成 AI

美容業界における生成 AI のユースケースを詳しく見てみましょう。生成 AI は、会話、ストーリー、画像、ビデオ、音楽などの新しいコンテンツやアイデアを作成できる AI の一種です。この新しいコンテンツは、創造性から生産性、ビジネスインサイトまで用途は多岐にわたります。あらゆる形式の AI と同様、生成 AI は ML モデルによって成り立っています。膨大な量のデータで事前トレーニングされた非常に大規模なモデルは、一般に基盤モデル (FM)と呼ばれます。

生成 AI は ML の最先端であることに注意する必要があります。これは魔法ではなく、急速に進化している最新のテクノロジーということです。

FM が特徴的なのは、複雑な概念を学習できる多数のパラメータが含まれているため、より多くのタスクを実行できることです。FM は、事前学習で、さまざまな形式やパターンのインターネット規模のデータに触れることで、それらの知識を幅広い状況に応用することができます。

生成 AI の流行はまだ初期段階にあり、美容分野のユースケースは今後も成長し、進化していくでしょう。ML の導入が広がるにつれて、生成 AI による顧客体験とアプリケーションの革新的機会はさらに増えるでしょう。企業が創造性と生産性を向上させるために、生成 AI を導入していくことで、美容およびスキンケアブランドの大きなセールスポイントであるパーソナライゼーションが活性化することが予想されます。

AWS を利用する美容業界の企業の多くは現在、広告やマーケティングの幅広いユースケースで生成 AI を活用する方法を検討しています。これらには次のものが含まれます。

  • クリエイティブおよびコンテンツ開発の推進
  • カスタマージャーニーの強化
  • パーソナライズされた広告とマーケティング体験
  • 顧客の感情の理解
  • 業務の最適化

良いユースケースとして、クリエイティブおよびメディアプランニングがあります。デジタルコンテンツとメディアのタッチポイントが爆発的に増加する中、パーソナライゼーションと最適化を可能な限りリアルタイムに近づけることがこれまで以上に重要になっています。

美容業界の企業がさまざまなメディア向けに最適化された KPI において、様々なクリエイティブを組み合わせたカスタマイズデザインができるように、代理店は支援に乗り出しています。彼らは生成 AI を使用して、サイジング、タイトル、フォーマットをすべての異なるネットワークやプラットフォームに迅速に適応させることで、デザインチームの作業を最適化しています。

これにより、チームは消費者のトレンドにリアルタイムで反応する動的なクリエイティブアセットを作成できるようになり、エンゲージメントと ROI が向上します。

私たちは、個々の顧客の興味に合わせてパーソナライズされた商品とコンテンツのレコメンデーションが、コンバージョンを促進する可能性が高いことを知っています。しかし、バーチャル試着室が大規模に普及しているのを見たことがありません。生成 AI は、消費者が商品が自分の体にどのようにフィットするかを確認するための、身体測定値を容易に生成することを可能にします。これは、顧客体験にとって真の変革をもたらすと同時に、複数のサイズ表とさまざまなブランドを取り揃える e コマース小売業者への返品の数を減らすことになります。

また、店内で商品を探している顧客をより良くサポートする機会もあります。たとえば、生成 AI を Web アプリやモバイルアプリと統合すると、店舗の従業員が「南カリフォルニアでの結婚式には、どのようなドレスが必要ですか?」などのリクエストに、より正確に対応できるようになります。従業員は、カテゴリおよび商品情報をクエリして、別の店舗の関連商品のレコメンデーションを提供することもできます。

生成 AI は美容デザイナーやマーケティング担当者の想像力を完全に置き換えるわけではありませんが、クリエイティブ・ブロックを克服し、市場投入までの時間を短縮するのに役立つ可能性があります。

現在、商品開発チームは、製品の詳細、原材料、ブランドデザイン、過去の製品ライン、予測されたトレンドを生成 AI を活用したプラットフォームに入力することが可能です。このプラットフォームは一連の選択肢を自動的に作成し、美容品の小売業者が、膨大な種類のアイデアを元に、新しい商品群に対する検証をできるようにします。

美容品の設計に組み込めるプロセスの改善について考えてみましょう。たとえば、業界におけるいくつかの顧客では、AR を使用して、さまざまな体型やサイズの製品を視覚化しようとしています。また、生成 AI を使用して、製造プロセスで使用される材料の削減や、設計における時間とリソースの削減には、計り知れない可能性があります。一方、洗練されたブランドマネージャーは、生成 AI を使用して自然言語で複雑なデータセットをクエリし、ファッショントレンドに焦点を当て、革新的な新製品を識別できます。

アイディアから行動へ

生成 AI の登場により、美容業界が大きく変わることは間違いありません。GENAI を使ってアイデアから行動に移してみてください。

  • G (Get going):生成 AI の可能性とそのメリットを理解するところから今すぐはじめてみましょう。
  • E (Engage):生成 AI はイノベーションを加速します。試行、学習、調整し、商品化をするためのテストをしましょう。
  • N (Net it out):スタッフに対し、ビジネス用語とテクノロジー用語を使いましょう。これは「IT に関するもの」または「IT プロジェクト」ではありません。ビジネスイネイブラーであり、変革をもたらす能力です。
  • A (Ask questions):質問しましょう。まず知り、より深く理解し、完全し、より良い ML モデルの作成をします。
  • I (Intelligence):独自の「英知」を作りましょう。AI、ML、生成 AI などを中心にあなた独自の英知を構築します。

まとめ

マスマーケット、高級ブランド、インディーズブランド、またはクリーンブランドのいずれであっても、美容業界は生成 AI を利用して、顧客体験を向上させ、従業員の離職率を減らし、新しいトレンドを創出し、先駆的な新商品やアイデアを加速することができます。生成 AI が美容業界で、その地位を確立するにつれて、生成 AI によるチャンスは無限に広がるでしょう。

アマゾン ウェブ サービス (AWS) の生成 AI が、どのように顧客体験とアプリケーションを再発明するためのイノベーションを迅速に行うのに役立つかを学びましょう。
お客様のビジネスの加速をどのように支援できるかについては、AWS の担当者にお問い合わせください。

著者について

Justin Honaman

Justin Honaman は、アマゾン ウェブ サービス (AWS) でグローバルの小売および消費財 (CPG) の市場投入チームをリードしています。彼は食品および飲料分野のグローバルのセグメントリーダーでもあります。CPG および小売業における彼のチームの焦点は、世界中の顧客にサプライチェーン、e コマース、データ、分析、デジタルエンゲージメント ビジネスソリューションを提供することにあります。

本稿は、ソリューションアーキテクトの齋藤が翻訳を担当しました。原文はこちら。