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クラウドジャーニーの歩み方(後編)
こんにちは、カスタマーソリューションマネージャーの服部です。「クラウドジャーニーの歩み方(前編)」でクラウドジャーニーの Assess (評価)フェーズ、 Mobilize (移行準備)フェーズについてお話させていただきましたので、今回のブログでは Migration (移行)フェーズと Modernization (モダナイゼーション)フェーズにおける課題や取り組むべき活動についてご紹介していきます。
Migration(移行)フェーズ
オンプレまたは他クラウドから7Rを基に移行方法を選択してAWSクラウドに移行を行うフェーズになります。 7R とはシステムを移行する際の具体的な手法のことで、 AWS では「 Relocate 」「 Rehost 」「 Replatform 」「 Repurchase 」「 Refactor 」「 Retire 」「 Retain 」の頭文字を取った「 7R 」を移行戦略として提唱しています。このフェーズで本番稼働しているアプリケーションをクラウド環境へ移行することになりますが、このフェーズでの課題と解決策については Tech 領域、 NonTech 領域それぞれこちら(Tech課題/NonTech課題)に詳しく記載していますのでご覧下さい。
このフェーズで行う実際の移行作業は大きく以下の3つの手順を踏んで進めていきます。
- 移行計画策定(具体的な移行手順)
- リハーサル実施
- 部分移行、全面移行
それぞれの手順ついて詳しく見ていきましょう。
- 移行計画策定
Assess フェーズ、 Mobilize フェーズで移行の前準備は整っているため、実際に移行を行うプロジェクトを立ち上げます。プロジェクトを遂行していくために「移行の体制」、「移行スケジュール」、「移行対象システム」、「移行方法( 7R )」、「コンティンジェンシープラン」、「意思決定フロー」を策定します。特に移行時に障害が発生した際にどこまでロールバックを行うのか、誰が対応を判断するかなどコンテンジェンシープランを立てておくことが重要です。計画が策定できたら移行作業を行うメンバーを招集して、移行が完了するまで定例会議を開催してメンバー間でコミュニケーションを密に取ることをお勧めします。
- リハーサル実施
実際に本番移行を手順の確認をするために事前リハーサルを行います。本番移行で失敗しないために本番と同じ体制で同じ手順で実施することが重要です。ここで手順の確認だけでなく移行作業に掛かる時間を確認することで具体的な移行スケジュールを精緻に立てることができ、実際の移行でシステムを停止させる時間も確認できます。 AWS では、このリハーサルを支援することもできますので、移行の手順など本番移行に際してお悩みのお客さまは是非ご相談ください。
- 部分移行、全面移行
まずは影響の少ないシステムから部分移行を行うことで、ビジネスインパクトを最小限に抑えた形で移行を始められます。部分移行で手順とシステムへの影響度を確認後、対象システムを広げてリハーサルと部分移行を繰り返していき、移行計画で策定した対象システムの全面移行を完遂させていきます。
これらの手順を遂行するためには移行経験のあるメンバーのサポートが必要になりますが、 CCoE がすでに組成されている場合は CCoE メンバーの支援、組成されていない場合はAWS移行パートナーの協力を得ることで移行をスムーズに進めることができます。
Modernization(モダナイゼーション)フェーズ
モダナイゼーションには 1step モダナイゼーションと 2step モダナイゼーションの主な2つのパスがあります。前者は、マイグレーションのタイミングでモダナイズも合わせて行う移行方法で、オンプレから一気にクラウドのメリットを十分に享受できる環境に移行する形です。新規にモダンな環境をクラウド上に構築する場合もこの1step モダナイゼーションの移行方法になります。クラウドスキルや移行経験がある状態でクラウドの価値を最大限活用されたいお客様はこちらを選択することをお勧めします。この移行方法の場合でも前述のマイグレーションフェーズでの実施内容は省略せずに行います。一方、後者は一度リホストを行った後にモダナイズを行う移行方法になりますので、短期間にオンプレサーバを移行されたいお客様はこちらを選択することでリスクを軽減した状態で迅速に移行ができます。クラウドスキルや移行経験がない場合でも、経営判断によって計画的に移行する場合は前者を選択することも可能です。
モダナイゼーションという言葉は、認識違いから本来の目的を見失っている状態で使われている場面が多く見受けられます。モダナイゼーションとは個別技術要素のことではなく、企業や組織が社会の変化にあわせて素早く価値を提供し続けるために組織やシステムを常に新しくしていくことを表しており、人・組織、プロセス、テクノロジーの3つの軸を組み合わせて推進する必要があります。3つの軸を組み合わせて推進するとは、開発を効率的に回すことを目的として組織体制を改善してチームに裁量を渡して自律を促すこと(人・組織)、 IT アーキテクチャだけを変更するのではなく一連の開発作業におけるボトルネックを改善する(プロセス)、最新技術を闇雲に適用しようとせずに課題を解決するための合理的な変更をすること(テクノロジー)、これらを組み合わせて現状の課題を解決していくことを示しています。
どれか1つを刷新するのではなく、組み合わせてモダナイゼーションを推進していくことをイメージしていただくことで本来の目的を見失うリスクを防ぐことができます。他には認識の違いからあれもこれもすべて刷新しようとする状況も発生しがちです。モダナイゼーションを推進するためには、どの様なビジネス効果を実現するかに応じて最適な手段を選択していくことも気を付けるポイントです。
このフェーズはワークロードのコスト最適化やコンテナ、サーバレス、 CI/CD などを適用してモダナイゼーションを行い、クラウド活用によるビジネス効果を最大化させるフェーズです。既存システムが大規模のためモダナイゼーション対象システムの選定をどのように進めていけば良いのか分からない今あるシステムを変えていくとしたらどのような技術が適切なのか分からないなど、初めてクラウド移行を行う際と同様にスキル、経験不足に起因した課題が多く発生します。
対象システムの選定の課題に対しては、 AWS ではお客さまの業務システムを様々な観点から評価・分析し、モダナイゼーションのポイントや To-Be アーキテクチャ案を提示させていただくことができます。 To-Be アーキテクチャを確認することで、対象システムのモダナイゼーション計画が立てやすくなります。
また、スキル、経験不足の課題に対しては、各種学習やハンズオンなどを実施して補うことは良いアプローチですが、最も重要なのはまずは小さく始めてみることです。 PoC や比較的影響が少ないプロジェクトを選定してパイロット移行を複数回行うことによって実体験からモダナイズのスキルや経験を積むことをお勧めします。プロジェクトメンバーの役割を問わず、実際に手を動かして初めて分かることが多いため、実際にモダナイズ経験をすることで移行計画を段階的に立案することができるようになりますし、その後の移行を加速させる効果が得られます。
まとめ
ここまでで各フェーズの課題と取り組むべき活動を説明してきましたが、 AWS ではお客様に共通した課題に対して支援するプログラムを各種用意しています。この後の記事ではお客様課題と AWS が提供しているプログラムを結び付けた形で詳しくお話させていただきます。お楽しみに!
著者プロフィール
アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 カスタマーソリューションマネージメント統括本部 カスタマーソリューションマネージャー 服部 昌克 |
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アマゾン ウェブ サービス ジャパン 合同会社 カスタマーソリューションマネージメント統括本部 カスタマーソリューションマネージャー 桑原 直哉 |