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産業用IoT – コンディションベースのモニタリングから品質予測まで、AWS IoTサービスで工場のデジタル化を実現

産業用IoT(IIoT)は、産業用機器やオートメーションネットワーク(通常はOT、オペレーションズテクノロジーと呼ばれる)と情報技術(IT)の間のギャップを埋めるものです。ITでは、機械学習、クラウド、モバイル、エッジコンピューティングなどの新技術の利用が一般的になりつつあります。IIoTは、機械、クラウドコンピューティング、分析、人を結びつけ、産業プロセスのパフォーマンス、生産性、効率性を向上させます。これにより、顧客は品質予測とメンテナンスのためにIIoTアプリケーションを利用したり、どこからでも操作を遠隔監視することができます。

しかし、IIoTの価値を実現することは容易ではなく、下記のような製造業の方々を妨げる3つの要素があります。

  • データの収集頻度が低すぎる
  • データにアクセスするのが難しい
  • 個々に収集したデータをつなぎ合わせることができない

この投稿では、産業企業が品質予測を使用して機器設定の調整をしたり様々な原材料を調整したり、さらには追加の労働者へのトレーニングなどを行うことによって工場の生産品質を向上していく方法について探っていきます。

AWS IoT サービスを活用することで、鉱業、エネルギー・公益事業、製造業、精密農業、石油・ガスなど、さまざまな業種の産業企業は、運用データに基づいて推論を行い、パフォーマンス、生産性、効率性を向上させることができます。

業界の現状と課題

鉱業、エネルギー、製造業、農業、石油・ガス、またはその他の産業市場セグメントのいずれであっても、過去10年、20年、あるいは30年に渡って、十分に機能してきたレガシー機器を持っています。多くの産業企業は、産業用 PC(IPC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、またはリアルタイム分散制御ネットワーク(fieldbuses)を接続した大規模分散制御システム(DCS)、および監視制御・データ収集(SCADA)システムなどの運用技術に多額の投資を行ってきました。これらの運用は、数十年続くように設計、導入され深く定着しており、置き換えることは非常に困難です。

次の図は、ISA-95 産業用エッジアーキテクチャと上記の要素がどのように関連しているかを示しています。

図1 – ISA 95モデルによる自動化ピラミッド(出典:researchgate.net)

IoTや機械学習、コンピュータビジョンのような新しい技術の恩恵を受けようとすると、IoTアプリケーション用に設計されていない既存の機器やシステムを適応させなければなりません。

あらゆるIIoTアプリケーションの最初の課題は、様々な製造現場の様々なデバイス(センサー、アクチュエーター、電気モーター)からデータを収集するためにレガシー機器を接続することです。多くの場合、異なる産業プロトコルを接続したり、装置を新たに追加することで新しいテクノロジーを古いシステムに追加し、測定やリモートコントロール、接続を行なっていきます。

2番目に、そして最も重要な課題は接続性と一緒に考える必要があるセキュリティです。デバイスとそのデータの安全性を確保しなければなりません。生産環境で機器やシステムに障害が発生すると、コストのかかるダウンタイムが発生し、ビジネスに影響が出る可能性があります。産業用の接続デバイスがクラウド接続されていない場合でも、最高のパフォーマンスで動作するようにしなければなりません。データ収集プロセスは、デバイスの操作を妨害してはならず、遠隔操作や更新操作は、許可されたオペレーターのみから安全な方法で行われるようにしなければなりません。

データの安全性を確保したら、洞察力を得るための3番目の課題がやってきます。データは工場の異なる「フロア」(ISA-95 アーキテクチャの異なるレベル)に固定されます。すべての生データから洞察を得るためには、これらのデータが異なるデバイスや製造現場、時系列、フィールドバス、システム、またはデータベースからのものであるかどうかに関わらず、データを接続することが重要です。

どのように動作するか

AWS IoTは、企業がビジネス目標を達成するための課題を克服するのに役立ちます。

まず、AWS IoTを利用することで、小型のマイクロコントローラからより強力なゲートウェイデバイスまで、あらゆるタイプのデバイスを簡単に接続、管理、更新できます。既存のハードウェアをオーバーホールしたり交換したりすることなく、シンプルなセンサーを導入してプロセスを監視したり、主要なパフォーマンス指標を追跡したりすることで、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)や監視制御・データ収集(SCADA)システムなど、製造現場にある既存のレガシー機器を統合できます。

2番目に、AWS IoTには組み込みのデバイス認証と認証機能を提供して、IoTデータとデバイスを保護し続けます。また、デバイスに関連するセキュリティポリシーを継続的に監査したり、デバイスの異常な動作を監視したり、何かおかしいと思ったらアラートを受信したりすることができます。また、デバイスの電源を切ったり、セキュリティ修正プログラムを適用するなどの是正措置を取ることもできます。

3番目に、AWS IoTは、接続されたデバイスが断続的なインターネット接続で動作できるようにし、予期しないダウンタイムのリスクを軽減します。インターネット接続が可能になるまでも、機械学習モデルやソフトウェアコードを実行したり、データをローカルに保存したりすることができます。

AWS IoTは「プラグアンドプレイ」機能を提供しているため、IoTアプリケーションを数千から数百万台のデバイスに拡張することができます。AWS IoTを利用することで、デバイスのインベントリの整理、デバイスの監視、デバイスソフトウェアのOTA(Over-the-Air)アップデートを含む様々な場所でのデバイスのリモート管理が可能になります。

次の図では、様々なAWS IoTサービスがどのように連携してIIoTを実現しているかを示しています。

図2 – AWS IoT産業用リファレンスアーキテクチャ

デバイスが安全に設置されると、AWS IoTはIoTデータの分析を簡単に実行できます。AWS IoTは、IoTデータの収集、処理、分析を迅速かつ簡単に行うことができるため、運用に関する洞察を得ることができます。AWS IoTはAmazon SageMakerと統合されているため、産業用IoTデータに対して機械学習モデルを構築でき、これらの機械学習モデルは、クラウド上で実行したり、デバイスのローカルにデプロイできます。Amazon QuickSightを利用することで、データを可視化して探索し、チーム間で洞察を共有できます。

次のセクションでは、さまざまなAWS IoTサービスが最も重要な産業用ユースケースをサポートするためにどのように価値を提供するかについて詳しく説明します。

  • アセットの状態監視
  • 予知保全
  • 品質予測

産業用ユースケースとアーキテクチャのウォークスルー

アセットの状態監視

アセットの状態監視では、機械や設備の状態を取得することで、現場や工場のアセットがどのように機能しているかを把握することができます。一般的に、温度、振動、エラーコードなどのデータは、機器の使用状況が最適かどうかを示しますが、技術者が機械を物理的に検査する必要があるため、手動で取得することは困難です。AWS IoTを利用すれば、すべてのIoTデータを取得し、パフォーマンスを監視することができます。可視性が高まることで、アセットの利用率を最大化し、投資を最大限に活用できます。

産業環境でアセットコンディションモニタリング(別名:コンディションベースモニタリング)を行うために、以下のようなリファレンスアーキテクチャを提案しています。

図3 – 資産状態監視のためのAWS IoT産業用リファレンスアーキテクチャ

各AWS IoTサービスの役割を確認して、製造業におけるアセットコンディションモニタリングのユースケースを見てみましょう。

  • AWS IoT Greengrassは、ローカルコンピュート、メッセージング、データキャッシング、同期、機械学習推論の機能をエッジデバイスに提供します。この具体的なユースケースでは、AWS IoT Greengrassは以下のような機能を提供します。
    • AWS IoT Greengrassのコネクタと、既存の産業用プロトコルやデバイスとの統合を可能にするLambda機能を備えています。さらに、AWS IoT Greengrassを利用することで、ゲートウェイが稼働しているローカルリソースにアクセスすることができ、GPIOやシリアルポートなどのインターフェースを介してセンサーデータを受信したり、デバイスを管理することができます。AWS IoT GreengrassはSCADAやMESのような高レベルのシステムと接続して、産業用機器からの情報を充実させたり、現場からMESにデータをフィードバックしたりすることができます。次の図では、AWS IoT Greengrassが既存のレガシーデバイスとどのように通信するかをご覧いただけます。
図4 – AWS IoT Greengrassが既存の産業機器に接続するためにプロトコル変換を行っている様子
    • オフラインでの運用も可能です。AWS IoT Greengrassを利用することで、クラウドへの接続が断続的であっても、デバイスを動作させることができます。デバイスが再接続すると、AWS IoT Greengrassはデバイス上のデータをAWS IoT Coreと同期し、接続状態に関わらずシームレスに機能を提供します。
    • IoTアプリケーションの実行コストを削減するのに役立ちます。デバイスのローカルでデータをフィルタリングするようにプログラムして(さらにはエッジで機械学習推論を実行して)、アプリケーションに必要なデータのみをクラウドに送信することで、低コストで豊富な洞察を得ることができます。これにより、クラウドに送信する生データの量を減らし、コストを最小限に抑え、クラウドに送信するデータの品質を向上させることができます。エッジにETLパラダイム(Extract-Transform-Load)を導入することも可能で、工場機器からプロトコル変換を行ってデータを抽出し、データを適切なフォーマットに変換してからAWS IoT Coreにロード(送信)することができます。
図5 – IoTデータのローカル処理を行うAWS IoT Greengrass
  • AWS IoT Coreは、接続されたデバイスがクラウドアプリケーションや他のデバイスと簡単かつ安全にやりとりできるようにするマネージドクラウドサービスです。AWS IoT Coreは、何十億ものデバイスと何兆ものメッセージをサポートし、それらのメッセージを処理してAWSのエンドポイントや他のデバイスに確実かつ安全にルーティングすることができます。この具体的なユースケースでは
    • AWS IoT Coreは、ユーザーが定義したビジネスルールに基づいて、デバイスデータを即座にフィルタリング、変換、処理できます。IoTルールを利用することで、機器の故障をリアルタイムで検知し、その情報を適切なサービスにリダイレクトすることができます。この場合、エラーが検出された場合には、そのエラーをAWSのSNSメッセージングサービスに送信して、SMSかEmailのいずれかを工場長に送信してアクションを起こすようにしています。それに加えて、すべての情報はAWS IoT Analyticsに送られ、データのさらなる処理と分析のために利用されます。
  • AWS IoT Analyticsはフルマネージドサービスであり、IoT分析プラットフォームの構築に必要なコストや複雑さを気にすることなく、大量のIoTデータを対象とした高度な分析を容易に実行・運用することができます。この特定のユースケースでは
    • AWS IoT Analyticsは、産業機器から受信したIoTデータを他のソースにある情報で拡充したり、データが不足している場合のギャップを埋めたり、誤読を排除したり、センサーが正しくキャリブレーションされていない場合に数学的な演算を行ったりすることができます。
    • AWS IoT Analyticsでは、Amazon QuickSightを使って可視化したり、Amazon SageMakerで機械学習で分析を行うためのデータを用意することができます。

このアーキテクチャに基づいて、次のユースケースである予知保全に対応するための適切なパーツを用意しています。

予知保全

予知保全分析では、産業用機器の状態を把握することで、生産に影響を与える前に故障の可能性を特定することができます。AWS IoTを利用することで、機器の状態、健康状態、パフォーマンスを継続的に監視して推測し、リアルタイムで問題を検出することができます。組織が予知保全分析を活用すると、機器の寿命が伸び、作業員の安全性が向上し、サプライチェーンが最適化されます。

予知保全には、以下のようなリファレンスアーキテクチャを提案します。

図6 – 予知保全のためのAWS IoT産業用リファレンスアーキテクチャ

このアーキテクチャを以前のものと比較してみると、機器の故障を予測する機能がいくつか追加されていることがわかります。

  • Amazon SageMakerは、データのラベル付けと準備、アルゴリズムの選択、モデルのトレーニング、デプロイのためのチューニングと最適化、予測モデルの作成、予測に基づくアクションに至るまで、機械学習のワークフロー全体をカバーするフルマネージドサービスです。この特定のアーキテクチャでは
    • Amazon SageMakerでは、AWS IoT Analyticsで処理されたクリーンデータの上に、既存のものや任意の特注アルゴリズムを直接適用することができます。ロジスティック回帰と呼ばれる手法で統計的な分類を行うことができます。また、LSTM(Long-Short-Term Memory)と呼ばれる、時間の経過とともに変化するプロセスの出力や状態を予測するための強力なニューラルネットワーク手法を使用することもできます。構築済みのノートブック テンプレートは、デバイスのセグメンテーションのための K-means クラスタリング アルゴリズムもサポートしており、デバイスを類似デバイス毎にクラスタリングできます。これらのテンプレートは通常、工場のHVACユニットや風力タービンのブレードの磨耗や破損など、デバイスの正常性やデバイスの状態をプロファイルするために使用されます。
  • AWS IoT Greengrassを利用すると、クラウド上で作成、トレーニング、最適化されたモデルを利用して、デバイス上で機械学習での推論を簡単に実行することができます。AWS IoT Greengrassを利用することで、Amazon SageMaker内の機械学習モデルを利用することも、Amazon S3に保存されている独自のトレーニング済みモデルを持ち込むことも柔軟に可能になります。このアーキテクチャでは
    • 予測モデルをAWSクラウドで学習したら、そのモデルをAWS IoT Greengrassにデプロイし、ローカルで機械学習推論を実行することができます。このようにして、予測モデルで誤動作を予測した場合、エッジ上で即座に修正アクションを実行することができ、工場は常に安全な側で稼働するようになります。

それでは、予知保全のリファレンスアーキテクチャを拡張して、スマートファクトリーの目標である予測品質に到達してみましょう。

品質予測

品質予測分析は、製造装置、環境条件、人の観察などの産業データソースから実用的な洞察を引き出します。品質予測分析の目的は、機械の設定を調整したり、さまざまな原材料を使用したりすることで、工場の生産物の品質を向上させることができるかどうかを判断することです。AWS IoTを利用することで、産業メーカーは品質予測モデルを構築することができ、より良い製品を作るのに役立ちます。より高い品質の製品は顧客満足度を高め、製品のリコールを減らすことができます。

品質予測のための推奨リファレンスアーキテクチャは、産業機器の状態監視(資産状態監視)や故障予測(予知保全)だけでなく、次の図のようにコンピュータビジョンや機械学習を加えることで、生産ラインの全工程で製造された製品の品質を監視することができます。

図7 – 品質予測のためのAWS IoT産業用リファレンスアーキテクチャ

この新しいアーキテクチャでは、以下の要素を追加しています。

  • コンピュータビジョンを用いて、各段階の製品を画像やビデオで撮影します。このアーキテクチャでは
    • AWS IoT Greengrassのおかげで、任意のシンプルなカメラに接続し、必要なプロトコル変換を行い、エッジで機械学習推論を実行することで、そのカメラをスマートカメラに変換することができます。
  • 最初に、十分な画像や動画がクラウドにアップロードされ、S3に保存されることにより、製品に適した画像認識モデルを学習することができるようになります。このモデルが自動的に欠陥品の検出を行います。
  • 機械学習モデルが学習されたら、このモデルをAWS IoT Greengrassにデプロイし、ローカルで機械学習推論を実行することができるので、インターネットへの接続が切れても、ローカルで推論を行い、品質を評価することができるようになります。

まとめ

製造業の企業がIoTアプリケーションの構築を始めるとき、多くの場合、レガシー機器の接続やデータやデバイスのセキュリティ、予期せぬダウンタイムが発生することに懸念を持ち、そして収集したデータから価値ある洞察を得る方法を求めています。

AWS IoTは、メーカーを問わず、既存の機器と接続し、機器からデータを抽出して安全な方法で制御し、最後にこれらすべてのデータで必要な推察を得るための”プラグアンドプレイ”機能を提供しています。

今回のブログでは、事業のデジタル化を実現するために、資産状態監視、予知保全、予知品質を行うためのおすすめのAWS IoTサービスとアーキテクチャを確認してきました。

 

原文はこちら
翻訳はソリューションアーキテクト 渡邉が担当しました。