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経済的不確実性の中での経営:コスト削減

経済が不安定な時代に経営を行うことは、難しい選択を迫られることを意味します。コスト削減は、リーダーがしばしば直面する選択ですが、たいていの場合、恐れている選択です。私たち企業戦略チームの多くは、以前に CXO として複数のマクロ経済的な逆風や、業界や企業特有の課題に直面した経験があります。この記事では、シニアリーダーとしてコスト削減に取り組む中で学んだ教訓のいくつかを紹介します。

直接、広く、そして明確に伝える

コスト削減に関する会話は、決して簡単なものではありません。リーダーは、直接話し合うことを避け、財務部門やプログラムマネジメントオフィス( PMO )を仲介役にしたがる傾向があります。しかし、このようなときこそ、あなたから直接話をするべきです。常に出てくる質問に対して、すべての答えを持っているわけではありませんが、自分が何を知っていて何を知らないのかを透明性を持って明確にすることが、信頼を得る上で大きな意味を持つのです。また、シニアリーダーだけでなく、より広い範囲のチームに働きかけることも重要です。自分のストレスやプレッシャーをチームに転嫁することはできませんが、メッセージにごまかしをかけず、本音で伝えることが重要です。高い信頼を得ているチームは、リーダーが率直であり、弱さを受け入れてサポートしてくれることを期待しています。

最初に考えていたよりも深く掘り下げる

チームは、急速に変化する環境の中で、計画を修正し実行するための安定性と時間を必要としています。ゴールポストが頻繁に変わると、削減よりもフラストレーションの方が大きくなります。先行きが不透明な環境では、明確な終わりが見えていて解決すべき短期的な課題がある場合を除き、常に当初考えていたよりも深く掘り下げる必要があります。しかし、毎月のように「あと5%足りない」と言われれば、チームも疲弊してしまいます。

シェイプシフターとテレポーターに気をつけよう

コスト削減を行う際には、厳しい決断を下さなければなりません。それは、特定の取り組みやプログラムへの資金提供を停止することを意味します。資金提供の停止を決定した場合、そのプロジェクトが実際に廃止されることを確認してください。時として、マネージャーやチームは、優先順位を下げ、投資を停止する決定を下したとしても、愛着のあるプロジェクトを手放すことが難しい場合があります。また、同じプロジェクトやプログラムが別の名前で再び現れたり、「追加スコープ」や「追加機能」として他の資金がついた取り組みに追加されたりすることがあります。私はこれを「シェイプシフター」と呼んでいますが、実際には消えてしまうのではなく、単に名前、形、姿を変えて再び現れるのです。「しかし、そのための予算が確保できればどうでしょうか」といったフレーズには注意が必要です。重要なのは、ビジネス上の価値と優先順位に基づいて決めることであり、最もクリエイティブな予算管理者が誰かということではありません。

同様に、ある機能や活動の資金を削減することを決定した場合、それが特定のチームや部署のためのその機能や活動の削減ではなく、組織全体のための削減であることを確認することです。例えば、広告への支出を減らすことにしたとします。だからといって、マーケティング部門の広告予算を減らすのではなく、個々のブランド、製品、または Line of Business (訳者注:企業業績に直結するビジネス部門)に広告に支出し続けるようにすべきなのです。主要機能内の特定の活動のための資金が削減されると、社内の他のグループが予算を配分して自分たちだけで続けるのはよくあることです。私はこのような人たちを「テレポーター」と呼んでいますが、ある場所から姿を消し、また別の場所に現れるのです。「しかし、私たちの予算から捻出しているのです」というようなフレーズには気をつけましょう。テレポーターは、削減が行き過ぎたことを示すことが多いのです。組織は、あなたが今、必要なものを取り除いていることを告げているのです。

生贄の羊とごまかしに対抗する

十分な規模がある企業では、経験豊富な予算管理者が、経済状況に関係なく、20% の「緊急時バッファー」など、イニシアティブを水増ししたり、そもそも資金を提供すべきではない依頼を盛り込んだりすることがあります。このような「安易な」予算は、削減が行われたときに最初に差し出されます。私はこれを「生贄の羊」と呼んでいます。しかし、優先順位をつけ、最適化するために、取り入れてからさらに推し進めてください。

一方、どうしても削れない重要な項目が削減の対象として提示されることもあります。私はこれを「ごまかし」と呼んでいます。例えば、IT 部門が電子メールを削除すれば予算を削減できると言うようなものです。特に小規模な部門やチームでは、ビジネスクリティカルな機能に影響を与えずに削減できるものはないかもしれませんが、「ごまかし」は通常、より深く調査する必要があることを意味します。

「非」裁量だけど、そうなのか?

予算の中で裁量的な支出とみなされる項目をまずターゲットにするのは、一般的なやり方です。しかし、特に IT の場合、このような機会を利用して、非裁量的な項目を点検することが、長期的にはより有利であることをよく理解しています。裁量的な支出、例えばプロジェクトの削減や新製品の開発速度を落とすことは、短期的な削減目標を達成するのに役立つかもしれません。より強靭なビジネスを構築するためには、当たり前のように使っている非裁量的な支出について、自分の思い込みを疑ってみることが必要です。データセンターの毎月のリース料は本当に非裁量なのでしょうか? アウトソーシング・プロバイダーは、サーバー1台あたりの固定保守費用とストレージのサイズに基づいた複数年契約を結んでいるのではないでしょうか? 目先の削減を図るのではなく、クラウドを活用したより強靭なビジネスを構築するチャンスに変えるべきでしょう。パンデミックの際にも、ある企業は迅速にスケールアップし、ある企業はスケールダウンせざるを得なかったということがありました。

短期的な嵐を乗り切るために必要なことを行うのはリーダーとして重要ですが、この機会を利用して長期的な視点でビジネスを変革している企業は、通常このようなサイクルからより強く立ち上がることができます。そのためには、経済の不確実性の中で経営を行う上で、さらに重要な側面である「人」が関わってきます。この点については、次回の記事で取り上げる予定です。Ishit

Ishit Vachhrajani

Ishit Vachhrajani

Ishit は、大企業の元 CXO や上級管理職で構成されるエンタープライズストラテジストのグローバルチームを率いています。エンタープライズストラテジストは、世界的な大企業の経営陣とパートナーを組み、クラウドがいかにスピードと敏捷性を高め、イノベーションを推進し、新しいオペレーションモデルを形成することによって、顧客ニーズにより多くの時間を集中させることができるかを理解するための支援を行っています。AWS 入社以前は、 A+E Networks 社の Chief Technology Officer として、クラウド、アーキテクチャ、アプリケーション、製品、データ分析、技術オペレーション、サイバーセキュリティなどのグローバルテクノロジーを統括していました。 A+E では、クラウドへの移行、俊敏性のための組織再編、グローバルな統一財務システムの導入、業界をリードするデータ分析プラットフォームの構築、グローバルなコンテンツ販売と広告販売商品の見直しなど、大規模な変革を主導し、運用コストの大幅な削減を実現しました。それ以前は、NBC ユニバーサルやグローバルなコンサルティング会社でリーダーシップを発揮してきました。A+E Networks 社では「 Create Great 」 と呼ばれる CEO 賞をはじめ、いくつかの賞を受賞しています。また、次世代のリーダーを指導することに熱心で、多くのピアアドバイザリーグループのメンバーとして活躍しています。インドの Nirma Institute of Technology で Instrumentation and Control Engineeringの学士号を取得し、学業成績で金メダルを獲得しています。

この記事はアマゾン ウェブ サービス ジャパン ソリューションアーキテクトの佐藤伸広が翻訳を担当しました。原文はこちらです。