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Amazon FSx for NetApp ONTAP で SAP HANA データベースのレプリケーションとクローンを作成

このブログは 2022 年 8 月 24 日に Jay Horne(Sr. Storage Solutions Architect)によって執筆された内容を日本語化したものです。原文はこちらを参照してください。

SAP HANA One を発表した 2012 年以来、お客様は AWS 上で SAP HANA データベースを稼働させています。AWS で SAP HANA を稼働させているお客様は、アップグレードや開発テストのためにバックアップの作成や本番データベースボリュームのクローン作成など、日常的に多くのメンテナンスタスクを実施する必要があります。

Amazon FSx for NetApp ONTAP は、オプションの NetApp SnapCenter Plug-In とともに、SAP HANA データベースのアプリケーション整合性スナップショットとクローン作成機能を総合的にサポートします。FSx for ONTAP ファイルシステムの機能を活用することで、SAP HANA データベース管理者は、重要な本番環境のバックアップ、レプリケーション、クローン作成のプロセスを自動化、高速化、簡素化することが可能になります。これらのストレージベースのスナップショットとクローン作成の機能は、現在、開発テスト、災害復旧、システムアップグレードのために企業で利用されており、本番の SAP HANA データベースの可用性や性能にほとんど影響を与えません。

2022 年 5 月 10 日に AWS は、Amazon FSx for NetApp ONTAP による SAP HANA on AWS の認定を発表しました。SAP HANA は、Amazon FSx for ONTAP Single-AZ ファイルシステムで特定の EC2 インスタンス上で動作する本番ワークロードに対応しています。

このブログ記事では、FSx for ONTAP Single-AZ ファイルシステムを使用して、重要な SAP HANA データベースのストレージベースのスナップショットとクローンを作成し、市場投入までの時間の短縮とテストおよび開発サイクルの短縮を可能にする方法について説明します。

概要

FSx for ONTAP Single-AZ ファイルシステムの SSD ストレージ層は、SAP によって SAP HANA ベースのワークロード用に認定されています。FSx for ONTAP ファイルシステムは、一貫したサブミリ秒のレイテンシを実現し、スループットと IOPS、SSD 層のストレージ容量を独立して拡張でき、あらゆるサイズのボリュームのスナップショットを数秒で取得できます。スナップショットは、ストレージボリュームのポイントインタイムで効率的な読み取り専用の複製です。Single-AZ FSx for ONTAP ファイルシステムは、シングルアベイラビリティゾーン内で高可用性構成のファイルサーバーのペアによって駆動されます(図1)。

FSx for NetApp ONTAP SAZ Overview

図 1:FSx for NetApp ONTAP シングルアベイラビリティゾーン

ミッションクリティカルな SAP ワークロードでは、定期的にバックアップを取得して維持することが重要です。多くのユースケースでは従来のストリーミング バックアップ手法で十分ですが、FSx for ONTAP を使用する利点は、ネイティブでビルトインされたアプリケーション整合性のあるスナップショットおよびレプリケーションの機能を提供することです。

次の図(図2)は、SAP HANA データベースサーバーにインストールされたプラグインを使用して、オプションの NetApp SnapCenter ソフトウェアがデータベースのスナップショットとバックアップ処理を調整する方法を示しています。SnapCenter 管理ソフトウェアは、Windows Server OS を実行する EC2 インスタンスにインストールされ、ストレージシステムとデータベースサーバーのスナップショットは、シンプルな Web インタフェースで管理されます(図3)。

FSx for NetApp ONTAP with Snapcenter and Snapmirror replication

図2:FSx for NetApp ONTAPとSnapCenterレプリケーションの連携

NetApp Snapcenter web interface example

図3:SnapCenter Web インタフェース

前提条件

このブログ記事は、読者が AWS サービスおよび SAP HANA データベース、FSx for ONTAP ファイルシステムに精通していることを前提にしています。このソリューションを導入するには、SAP の SAP HANA データベースソフトウェアと、NetApp の SnapCenter ソフトウェアにアクセスする必要があります。まだ既存の契約がない場合は、AWSの営業担当者にお問い合わせください。

  1. FSx for ONTAP へのアクセスは、NFS v4 以上である必要があります。
  2. サポートされている EC2 インスタンスのいずれかに SAP HANA がデプロイされている必要があります。
  3. FSx for ONTAP は、SAP HANA データベースと同じサブネットで実行されている必要があります。
  4. 必須ではありませんが、NetApp SnapCenter Plug-In for SAP HANA を使用することを推奨します。
  5. 一部の場面で、FSx for ONTAP コマンドラインインタフェース(CLI)を使用してアクセスする必要があります。

FSx for ONTAP を使用して SAP HANA を実行するメリット

FSx for ONTAP ファイルシステムで SAP HANA を実行すると、NetApp SnapCenter SAP HANA Plug-In を使用してシステムのバックアップを自動化でき、ストレージの IOPS、スループット、容量を個別に拡張でき、安定した低レイテンシのパフォーマンスを実現できるなどのメリットがあります。また、FSx for ONTAP ファイルシステムでは、アプリケーションの一貫したストレージベースのスナップショットを高速に取得できます。大規模なインメモリデータベースにストレージベースのスナップショットを活用するユースケースは複数ありますが、機能別に3つの主要なカテゴリーに分類することができます。

  1. バックアップ、オフサイトコピー
  2. 開発またはテスト、システムのアップグレードや移行、災害復旧テスト
  3. 論理的な破損の確認

バックアップは、オフサイトコピーを保存するために使用されるセカンダリファイルシステムへの書き込みアクセスを必要としないという点で、他の使用例とは異なります。他のすべてのシナリオでは、複製またはクローンされたデータの読み取り / 書き込みの可用性が必要となります。

バックアップ

バックアップは、あらゆる企業のデータ保護ポリシーの重要な部分です。従来、AWS 上にデプロイされた SAP HANA では、バックアップ計画には AWS Backint Agent サービスを使用してプライマリデータベースから、Amazon S3 バケットへのデータのストリーミングコピーを含めることが出来ます。これは依然として有効な戦略ですが、お客様のデータベースサイズが大きくなるにつれ、このソリューションは SAP HANA データベースサーバーにとって時間とリソースの両方を消費する可能性があります。

一方、ONTAP スナップショットは、ストレージサービス上で直接作成することができます。これにより、バックアップデータの調整とストリーミングが不要となるため、SAP HANA データベースが稼働している EC2 インスタンスの負担が軽減されます。NetApp SnapCenter で SAP HANA 用のプラグインを利用してバックアップを実行すると、データベースとの一貫性が保たれたセーブポイントが開始されます。プライマリの FSx for ONTAP ファイルシステムの基となるボリュームに、スナップショットのコピーが数秒で作成されます。SnapCenter では、個々のスナップショットをセカンダリファイルシステムにレプリケーションすることもできます。セカンダリファイルシステムは、AWS上 の FSx for ONTAP ファイルシステム (図4)でも、オンプレミスで動作する NetApp ストレージ システムでもかまいません。スナップショットはプライマリファイルシステムから切り離され、NetApp SnapVault を使用してセカンダリファイルシステムに長期間保存することができます。セカンダリファイルシステムは、AWS の別のアベイラビリティゾーンや別のリージョン、オンプレミスのカスタマーデータセンターに復元することもできます。SnapCenter ソフトウェアでは、バックアップジョブとレプリケーションジョブのスケジューリングと、プライマリファイルシステム上のスナップショットコピーの保持を管理します。さらに、ブロック整合性チェックを実行するために、週次でファイルベースの追加バックアップを実施することをお勧めします。この機能も SnapCenter ソフトウェアにより管理することができます。

FSx for NetApp ONTAP Snapvault Backup diagram

図4:FSx for NetApp ONTAP SnapVault バックアップ

移行と DR のための開発 / テストと品質保証(QA)

バックアップと同様に、開発やテストなどの他のアクティビティでも、本番データベースのコピーを必要とします。違いは、開発およびテストでは、他のシステムと相互に作用するために、コピーをアクティブに利用できる必要がある点です。FSx for ONTAP ストレージが構成されていない場合は、次のような課題が生じます。

  1. 大規模なデータベースに対する従来のバックアップ / リストア操作に数時間以上かかるため、このプロセスの完了を待つ間、テストが遅れる可能性があります。
  2. データベースのコピーを作成するためのバックアップとリストアプロセスは、ソースとターゲットの両方のシステムでリソースを消費する可能性があります。
  3. 特に複数の開発およびテストシステムが必要な環境では、本番サイズのコピーを追加で作成および保存することによって、ストレージコストが増加します。

前述したバックアップのケースでは、個々のポイントインタイムスナップショットを複製し、災害復旧で利用する目的で、より長い保持ポリシーを持つセカンダリロケーションに保管しました。一方、テストと開発のケースでは、本番ボリュームはすべてのスナップショットをそのままセカンダリファイルシステムにレプリケーションするか、クローンを作成します。また、開発およびテストでは、SnapMirror レプリケーションを同じアベイラビリティゾーンに作成したり、同じ FSx for ONTAP ファイルシステムのローカルに作成したりすることもできます。

スナップショットプロセスは数秒で実行され、1日を通して複数のスナップショットをスケジュールすることができます。開発システムで使用するスナップショットのクローンも数秒で作成でき、手動で新しいスナップショットを作成し、新しいクローンを作成することでいつでも更新することができます。これにより、SAP 管理者は、開発やテスト用の本番環境データのポイントインタイムコピーを、ストリーミングバックアップよりも高速に作成できます。

SnapMirror レプリケーションでは、前回のレプリケーションイベント以降に変更されたブロックのみがコピーされますが(図5)、ボリュームの完全なスナップショット履歴は保持されます。この処理はストレージファイルシステムで処理され、データベースサーバーからデータをコピーするオーバーヘッドが削減されます。

スナップショットのクローンをプライマリまたはセカンダリシステムに複数作成し、複数の異なるテストおよび開発データベースサーバーからアクセスできるようにすることができます。クローンは効率的で、同じファイルシステムで同一のブロックを共有するため、必要となる総ストレージ量が削減できます。

スナップショットやクローン、SnapMirror レプリケーションの各プロセスによって、バックアップに使用した継続的なデータ保護ポリシーが中断されることはありません。

FSx for NetApp ONTAP SnapMirror replication diagram

図5:FSx for NetApp ONTAP SnapMirror レプリケーション

論理的な破損の確認

SAP HANA データベースが破損した場合、ほとんどの場合、正常なバックアップからリストアし、必要に応じてトランザクションログを適用して完全にリストアすることが推奨されます。ただし、本番環境のデータベースが破損した場合、破損が発生する前のスナップショットのクローンを別のデータベースサーバーにマウントして、論理修復を行うこともあります(図6)。

いくつかの要因で論理的な破損が発生しますが、必ずしもデータベースが完全に使用できなくなるわけではなく、状況によってはデータベースをリストアする代わりに修復を行うことが望ましい場合があります。たとえば、以下のような場合です。

  1. 破損が理解されており、範囲が限定されている場合
  2. リストアする前に破損の詳細調査を実施する必要がある場合
  3. バックアップが疑わしいまたは使用できない場合

このシナリオでは、本番環境のファイルシステム上のスナップショットと修復サーバーを使用して、論理的な破損を修復します。スナップショットは、マウントおよび検査が高速にできるため、このシナリオではフルバックアップをリストアするよりも適したソリューションです。

ONTAP スナップショットは、リカバリを実行するために必要なすべてのデータの完全なポイントインタイムコピーを構成します。しかし、スナップショットの書き込み可能なコピーをマウントするためには、まずクローンを作成する必要があります。NFS 経由でボリュームをクローンし、修復システムにマウントするまでの完全なプロセスは、わずか数秒で完了します。つまり、様々な時点に対する複数のテストを連続して行うことができます。これにより、ビジネスおよびデータベース管理者は、本番環境の中断を最小限に抑えながら、破損の原因を突き止め、修復することができます。

FSx for NetApp ONTAP SAP HANA Repair System Example

図6:FSx for NetApp ONTAP SAP HANA 修復システム

考慮事項

最適なパフォーマンスとデータ効率のために、ONTAP ボリュームは、各主要コンポーネントが独自の Storage Virtual Machine(SVM)内に含まれるようにレイアウトする必要があります。これは、SAP HANA データベースサーバー上のインタフェースからスループットのボトルネックが発生しないようにするためです(図7)。

FSx for NetApp ONTAP Storage Layout for SAP HANA

図7:SAP HANA 用の FSx for NetApp ONTAP ストレージレイアウト

ONTAP スナップショットは、ボリュームレベルで取得され、本番データと一緒にデータを保存します。各ボリュームには、作成時に使用されたデフォルトポリシーに基づく独自のスナップショットセットが保持されます。これらのスナップショットはアプリケーションを意識していないため、SAP HANA 用の SnapCenter Plug-In で作成されるスナップショットを使用する場合は、これらのスナップショットを無効にする必要があります。FSx for ONTAP ファイルシステムのコマンドラインインタフェースからこのタスクを実行するには、次の手順を実行します。

  1. すべてのボリュームのデフォルトスナップショットスケジュールを無効にする
    FsxId01234567890abc::> vol modify -volume <vol_name> -vserver <svm_name> -snapshot-policy none

続いて、ストレージ効率化とストレージ階層化の両方とも SAP HANA でサポートされていないため、無効化する必要があります。これらのオプションは、ボリュームの作成時に選択するか、FSx for ONTAP ファイルシステムのコマンドラインインタフェースによってこれらのコマンドを実行することができます。

  1. ストレージ効率化を無効にする
    FsxId01234567890abc::> volume efficiency off -volume <vol_name> -vserver <svm_name>
  2. ストレージ階層化を無効にする
    FsxId01234567890abc::> vol modify -volume <vol_name> -vserver <svm_name> -tiering-policy none

最後に、最適なパフォーマンスを得るために、FSx for ONTAP ファイルシステムの TCP 最大転送サイズを 262,144 に設定することが推奨されます。これは、ONTAP コマンドラインインタフェースからのみ利用可能な高度なコマンドです。

  1. TCP の最大転送サイズを設定する
FsxId01234567890abc::> set advanced

Warning: These advanced commands are potentially dangerous; use them only when directed to do so by NetApp personnel.
Do you want to continue? {y|n}: y

FsxId01234567890abc::*> vserver nfs modify -vserver <svm_name> -tcp-max-xfer-size 262144

Warning: Setting "-tcp-max-xfer-size" to a value greater than the configured TCP transfer size could affect the performance for existing
         connections. Contact technical support for guidance.
Do you want to continue? {y|n}: y
FsxId01234567890abc::*> set admin
FsxId01234567890abc::>

SAP HANA on FSx for ONTAP ファイルシステムの導入に関するその他の情報については、SAP HANA on AWS のドキュメント、NetApp TR-4667 – SAP HANA System Copy and Clone テクニカルレポート、SAP HANA backup and recovery with SnapCenter ユーザーガイドをご参照ください。

まとめ

このブログ記事では、SnapCenter Plug-In for SAP HANA で FSx for NetApp ONTAP Single-AZ ファイルシステムを使用する利点について説明しました。これには、重要な SAP HANA データベースアプリケーションの保護とレプリケーションのほか、災害や論理的な破損が発生した場合の迅速なリカバリが含まれます。これによって、高速で効率的な ONTAP ボリュームに保存されたデータの本番コピーとレプリケーションコピーの両方をデプロイし、管理することができるようになりました。

詳細については、以下のユーザーガイドページをご参照ください。

  1. FSx for ONTAP
  2. SAP on AWS

この記事を読んでいただきありがとうございました。SAP on AWS に関するフィードバックやご質問は、SAP on AWS チームにお問い合わせいただくか、aws.com / sap で詳細をご確認ください。Amazon FSx for NetApp ONTAP の詳細については、製品ページをご覧ください。

翻訳は AWS プロフェッショナルサービス本部の葉山が担当しました。