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【開催報告】AWS リテールセミナーシリーズ #3 Retail DX – Turn Your Data into Action 価値を得る動と静

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 機械学習ソリューションアーキテクトの伊藤です。2020年10月28日にAWSはリテールビジネスにおけるオンラインセミナー「AWS リテールセミナーシリーズ」の第3回を開催いたしました。本Blogでは、今回のテーマである「Retail DX – Turn Your Data into Action 価値を得る動と静」について、セミナーの配信会場の様子を含めながらレポートしたいと思います。

AWSではこれまで、「Born from Retail, Built for Retailers」というメッセージを掲げ、Amazon での経験をもとにした様々なソリューションを小売業のお客様にご提案してきました。しかし、世の中がかつてない変容を遂げようとしている中、小売業のお客様においても、消費者の新たな購買行動に対応していくために変革を行っていくことが喫緊の課題となっています。そのようなお客様に対し、AWSが持つ知見や技術を広くお伝えするために、このセミナーシリーズが企画されました。
10月28日の第3回では、個社ごとに異なるビジネス価値創出戦略において、ビジネス価値を得るためにデータをアクションに繋げるためのアーキテクチャとはどのようなものなのかという視点で、モダンアーキテクチャのご紹介、蓄積された静的データの活用方法、リアルタイムな動的データの取得と活用のユースケースと具体的なアーキテクチャをご紹介させていただきました。ここから、簡単にではありますが、それぞれのセッションの内容ついて振り返っていきたいと思います。動画も公開されていますので、お時間がある方はぜひご覧ください!

モダンデータアーキテクチャのご紹介

エンタープライズソリューション本部
流通・サービスソリューション部 部長 五十嵐 建平

リテールDX

最初に、アマゾンのイノベーションを支える仕組みと、アマゾンのデータレイクAndesについてご紹介しました。単純にアーキテクチャファーストで考えるのではなく、カルチャー、メカニズム、組織がまずあり、はじめてアーキテクチャがあります。アマゾンはモノリシックだった amazon.com がスケールしなくなったため、マイクロサービスアーキテクチャにシフトしました。また、組織は 2 PIZZA TEAM を作り、小さくそれぞれが自律的に動ける組織として、主体性と自立性を重視しました。その時に発生する役割の溝へのタスクについては、オーナシップというour Leadership Principles(OLP)でカバーするという仕組みになっており、アマゾンは全員がリーダーであることが求められます。そして、これらのカルチャー、メカニズム、組織に基づいてアマゾンのデータレイクAndesがデザインされています。つまり、Andesはアマゾンのビジネスをスケールするためのエコシステムを提供すること、主体性のあるチームに選択肢をもたせ、統制は最低限でよいというアーキテクチャであることを目的にデザインされています。このように、ビジネス戦略ごとに必要なアーキテクチャが変わるため、個社の価値創出戦略の方向性として、リアルタイムインベントリ、フリクションレスストア、オムニチャネル/オンラインシフト、サプライチェーントラッキング、カスタマーインサイトの5つを提示しました。
ITだけで何をやるかということはできず、表面的なDX、各論DXとなってしまうことことが多いこともご説明しました。ITとオペレーションを同時に改善するために、スピードある試行錯誤が重要になってきます。アマゾンでも、目的が異なれば実装はことなります。例えば「次世代店舗」という枠組みでも、コスト、オペレーション削減のための Amazon Dash Cart や、店舗まるごと変えると捉えた場合での Amazon Go など実装が異なっているという事例を提示しました。
共通することはデータを集める、リアルタイム、ということがあげられるが、レガシーなシステムやサイロ化されたシステムや組織などがデータドメイン集約を阻害することが多いです。これらを乗り越えた事例として、サントリー様の “ONE SUNTORY” としてのデジタルトランスフォーメーション事例をご紹介しました。また、金融における基幹システムのクラウドマイグレーション事例として、ソニー銀行様、住信SBIネット銀行様の事例をご紹介し、クラウドを使うことでの阻害要因はないことを示しました。AWSのCEOであるAndy Jasyによる、Transformationの実点に向けて成功に向けた4つの大事なことの中にも、実験をし続けることが重要であるとしています。
アーキテクチャとして、ラムダアーキテクチャを振り返り、そのためのAWSが提唱するモダンアーキテクチャをご紹介しました。S3を中心としたバッチレイヤー、Kinesisを中心としたリアルタイムデータストリームがあり、幅広いデータ活用とスケールするアーキテクチャであり、一例として、リアルタイムPOSのリファレンスアーキテクチャをご紹介しました。

静: 人が活かせるデータ分析

エンタープライズソリューション本部
流通・サービスソリューション部 ソリューションアーキテクト 柏村 拓哉

リテールDX

前セッションでご紹介したモダンアーキテクチャにおける、データレイクに蓄積された静的データをビジネス価値創出のためにどのように活用していくかについて、デモンストレーションを交えてお話ししました。
はじめに、なぜデータ分析が必要なのか?を振り返りました。データに基づく現状把握とビジネス意思決定によりビジネス価値を創出するためであり、一例としてECサイトでのデータ活用の流れをご紹介しました。では、データ分析が実際に進んでいるかというと、現実は様々な課題があり進んでいないことが多く、経営者、分析担当者、DX推進担当、業務担当それぞれどのような悩みを抱えているか提示しました。ツールの構築に時間やコストがかかっていたり、導入しても現場の利用が浸透せずに終わってしまうことがあげられました。データ分析は気づきの連続であり、データサイエンティストだけではなく、業務担当者も日々気づきを得ているため、気づきを得た時にデータを見て検証することが重要であり、「ビジネス課題の仮説構築」、「データ収集」、「データ分析」、「評価・仮説検証」のプロセスを素早く回す仕組みが必要になります。この素早いサイクルを回す仕組みを構築するためのソリューションとして、すぐに、簡単に、誰でも使える環境を提供する Amazon QuickSightをご紹介しました。ダッシュボードの例として「販売損益の可視化」、「顧客の使用状況の可視化」を提示し、これらのダッシュボード構築にかかった時間は10分程度でした。実際に、Amazon QuickSightのダッシュボード構築のデモンストレーションを紹介し、GUI操作で誰でも簡単に、ダッシュボードを作る手順をお見せしました。Amazon QuickSight は、サーバ運用管理不要で、オートスケールも可能であり、全員が活用できる料金体系で、使った分だけの支払いとなります。
最後に可視化の事例・ユースケースとして、ダイソー様の Amazon QuickSight 導入事例や、ユースケースとして、経営者向けのダッシュボードや、売り上げのWhat-If分析機能などを紹介しました。また、画像やテキスト、音声などの非構造化データを分析するためのAIサービスをご紹介させていただきました。例として、テキストや画像を分析することで、トレンドの分析してQuickSightで表示するソリューション、音声とテキスト分析を活用したコンタクトセンター/VoC(Voice of Customer)の可視化事例をご紹介いたしました。

動: リアルタイム処理でもたらされるユーザ体験

デジタルトランスフォーメーション本部
ソリューションアーキテクト(DX/ML/IoT担当) 國田 有華子
機械学習ソリューションアーキテクト 伊藤 芳幸

リテールDX

このセッションでは前出のモダンアーキテクチャにおける動の部分、リアルタイム処理にフォーカスを当てて、なぜリアルタイム処理が必要なのか、具体的にどのようなユースケースをどのようなアーキテクチャで実現するのかをお話ししました。
まずは伊藤から、なぜリアルタイム性がビジネス戦略において重要なのかを再度確認しました。消費者は常に膨大な情報を収集しており、ニーズが刻々と変化していること、それに伴った迅速なビジネス判断やオペレーションが求められていると同時に、設備やシステムなどのインフラの停止は莫大な機会損失を招いてしまうことを再確認させていただきました。この傾向は今後さらに加速し、よりリアルタイム性が企業競争力のために当たり前になってくる、リアルタイム処理を実現するために俊敏性と拡張性を満たす必要があり、AWSのクラウドソリューションが選択肢の一つとなることをご提示しました。
次に、國田からリアルタイム処理のベストプラクティスとして、リアルタイム処理の基本となる処理フローの型をご説明したあと、お客様、オペレーション、インフラの3つを軸としたユースケース15例を、具体的なアーキテクチャとともにご紹介させていただきました。お客様軸では、「お客さまごとのクーポン配信」「今なら唐揚げ揚げたてです」「宿泊施設のレコメンド」「無人販売体験を提供したい」「スマートセルフレジ」「お買い物リストで店内ナビ」「コールセンターでの会話分析」「遠隔接客+感情分析」について、ビジネスのねらいと、具体的なアーキテクチャとその技術ポイントをご紹介しました。2つめのオペレーションは「サービス解約予知」「接客状態のリアルタイム把握」「マスク着用チェック」「ブランドイメージ観測」を、3つめのインフラは「センサーデータからの予防保守」「サプライチェーンの温度管理」「レストランの混雑緩和、クレンリネス」をご紹介しました。AWSのサービスを組み合わせることで、様々なケースで機能するソリューションを作成できるということを実感いただけたと思います。
まとめとして、情報収集から活用までを迅速に行うために、強固なIT基盤が必要である一方で、ビジネス価値創出のための検証は、まず小さくはじめてみることが重要であること、その際に従量課金かつデータを集めればすぐに実験を始められるAWS のサービスは便利であることをお話しさせていただきました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回のセミナーに参加されなかった方にも、セミナーでAWSがどのようなことをお話しさせて頂いたかがお伝えできていれば幸いです。冒頭やオープニングの中でも述べました通り、新しい時代において今までのAmazonが蓄えてきた流通小売の知見を、様々な形で皆様に還元していきたいと考えております。それを発信していく場として、AWSは日本におけるお客様事例、セミナーの告知・開催報告などをまとめたサイトを構築いたしました。

ぜひ、こちらも定期的にご覧頂き、AWSが発信する流通小売業における最先端の情報を取得いただければと思います。今後もこのようなセミナーを企画し、皆様に様々な情報をお届けしたいと思っています。次回もぜひご期待ください。また、最後になりますが、我々と一緒に流通小売業界のお客様を支援して頂けるチームメンバーを募集中ですので、ご興味がある方は是非ともご応募ください。

また、他のリテールセミナーシリーズの開催報告は、以下のリンクからご覧いただけます。

第1回 リテールセミナーシリーズ 2020年7月7日 [Blog]
第2回 リテールセミナーシリーズ 2020年8月24日 [Blog]