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【開催報告】AWS リテールセミナーシリーズ #1 リテールテクノロジーの新潮流 ~ニューノーマル時代の店舗、ECサイト、接客~

みなさま、はじめまして。ソリューションアーキテクトの柏村です。2020年7月7日にAWSは新しいオンラインセミナーとして「AWS リテールセミナーシリーズ」をスタートいたしました。本Blogでは、記念すべき第一回である「リテールテクノロジーの新潮流 ~ニューノーマル時代の店舗、ECサイト、接客~」について、セミナーの配信会場の様子を含めながらレポートしたいと思います。

 

AWSではこれまで、「Born from Retail, Built for Retailers」というメッセージを掲げ、Amazon での経験をもとにした様々なソリューションを小売業のお客様にご提案してきました。しかし、世の中がかつてない変容を遂げようとしている中、小売業のお客様においても、消費者の新たな購買行動に対応していくために変革を行っていくことが喫緊の課題となっています。そのようなお客様に対し、AWSが持つ知見や技術を広くお伝えするために、このセミナーシリーズが企画されました。

7月7日の第一回では、実店舗やECサイトをテーマに、これからのニューノーマル時代を見据えた新たな購買体験を提供する仕組みについて、3つのソリューションをAWSのソリューションアーキテクトからご紹介させて頂きました。ここから、簡単にではありますが、それぞれのセッションの内容ついて振り返っていきたいと思います。なお、下記では動画が公開されていますので、お時間がある方はぜひそちらもご覧ください!

オープニング:AWSの考えるニューノーマルリテール

エンタープライズソリューション本部
流通・サービスソリューション部 部長 五十嵐 建平

オープニングでは五十嵐から、ニューノーマルと呼ばれる新しい生活様式において、流通小売業の消費者の消費行動も変わってきていることをご説明し、なぜ本日の3つのソリューションを紹介するかをご説明致しました。例えば、お客様は店舗に行かずに買い物を済ませたかったり、店舗が空いているときに行きたい、あるいは出来るだけ人と会わずに短く買い物を済ませたい、などの要望が高まっていると考えられます。

それに応えるために、流通小売業の皆様は様々な方法でデジタルトランスフォーメーションを加速させていく必要があります。本セミナーでは、1. ECと実店舗の融合、2. データの活用、3. 店舗におけるオムニチャネルを、このデジタルトランスフォーメーションにおける目指すべき姿として提案させて頂きました。実は、これらの姿は従来から言われたきたことではありますが、新しい時代において本当にお客様にとって必要なことになってきていると、皆様が感じられていることだと思います。ここで注意が必要なことは、それぞれの機能を1つ1つ個別に実現してデータがその機能に囲い込まれるのではなく、データを流通させて、お客様の情報をシステム間で連携していく必要があるということです。そのために、システムを内製したり、自分でデータを持ったりすることで、自由にデータの分析を行い、より効果的に必要な情報を抽出することがポイントとなります。

AWSでは、皆様が自分でビルドできるようなAWSを使ったサービスをどんどん提供していきたいと考えています。特に、AWSはお客様からのフィードバックを大切にしており、それを活かしてソリューションを改善したり、新しいものを生み出していきたいと考えています。また、AWSはAmazonから生まれた企業でありますので、そこで得た知見というものをサービスや今回のようなソリューションという形で皆様に還元していきたいと考えております。

 

以降の3セッションでは、先ほどの3つの目指す姿を軸として、データを活用していく具体的な方法についてご紹介しました。

AWSを用いたシームレスなECサイトと実店舗の連携

デジタルトランスフォーメーション本部
DXアーキテクト 國田 有華子

店舗に行かずに買い物を済ませたいお客様に取って、重要なチャネルの1つはECサイトです。しかし、ECサイトは実物を見れないことでの不安や、実際に店頭で店員と会話することで得られる情報や、買い物をするというワクワク感がないなどの課題があります。店舗側から見ても、そのようなお客様との接点を持てないことで、購買機会の損失に繋がっています。

國田からは、店舗とECを別々に考えるのではなく、融合した新たな購買体験の場として考え直すことが重要であることをお話しさせて頂きました。特に昨今はカリスマ店員などのインフルエンサーからの発信が影響力を持つ時代であり、ECサイトから店舗と直接繋いでそのような店員からのライブ配信やビデオ会話を行うことで、消費者の購買体験を向上し、購入に繋がる可能性が大きく考えられます。また、そこで得られる顔の表情や話している内容のデータをECサイトと連携することで、より消費者に沿った購買体験を提供することができる可能性があります。このセッションでは、実際にECサイトから動画配信や、店舗とのビデオ通話によるコミュニケーションを、アパレルにおける買い物をテーマにデモ動画としてご覧頂きました。

 

この動画の中では、ECサイトで買い物をしている消費者が店頭にいる店員とシームレスにビデオ通話を開始することができ、ECサイトで見ている商品についての質問を行ったり、サイトの会員情報を元にして店員からレコメンドを受けたりする様子をご紹介致しました。このようにECサイトと実店舗をつなぐことで、消費者の購買体験が向上するというだけでなく、小売業の皆様にとってもお客様に寄り添って商品をお薦めして購買につなげることができるというメリットがあります。

このような融合されたECサイトと店舗は、AWSの様々なサービスを用いて実現することができます。Amazon Chime SDKや新しくリリースされたAmazon Interactive Video Serviceなど、ECサイトに自由に組み込むことのできる動画配信サービスを持っています。これらを活用することで、ECサイト上で店舗と消費者を繋ぐことが可能な上、自由にそこでの情報を取得することができるので、例えば、音声を文字情報に変換するAmazon Transcribeやテキストから感情を分析するAmazon ComprehendなどのAIサービスと組み合わせることで、通話内容を分析し、よりお客様の購買体験を高めて、ビジネス上の付加価値をつけることができるようになります。

このようなサービスを用いることで、ニューノーマルな時代に対応したリテールサービスを俊敏にローコストで構築することが可能であり、ECサイトと店舗を融合した新しい購買体験をお客様に提供できるようになります。

AWSのAIソリューションを活用した店舗での新しい体験

デジタルトランスフォーメーション本部
機械学習ソリューションアーキテクト 伊藤 芳幸

伊藤からは、実店舗の意義とともに、安全・安心という新しいニーズと、それを満たすために店舗でも今からできる解決策をご紹介させて頂きました。実店舗、つまりオフライン店舗においては、実際の商品を手に取ったり、店員と会話を楽しんだり、また欲しいものをすぐに手に入ることができるなどの利点があります。一方で、そのような体験を守るために店舗運営においても、安全・安心を保つことが小売業の皆様の課題であるというように捉えています。そこで、今以上に安全・安心を実現するためにどのようにデータを活用して実現できるかを、このセッションではお話しさせて頂きました。

例えば、空いている店舗や時間帯を知りたいお客様に取って、今持っているPOSのデータを活用して、時間帯別の混雑予報を出すことは1つのアイディアです。また、店頭についているカメラからお客様の導線を確認し、混雑を緩和するための店内のレイアウトを最適化することも考えられます。他にも、欲しいものをすぐに見つけたいというお客様に取っては、アプリなどと連携し、会員情報や購買履歴を元にお客様の望むものをすぐにレコメンドしていく仕組みなども、解決案の1つになります。

AWSにはこれらを実現するために必要なサービスが揃っています。Amazon Forecastは、Amazon.comでも使用されている予測技術であり、過去の時系列データから将来の時系列を予測するAIサービスになります。AIサービスはデータを用意するだけで使用できるサービスであり、このAmazon Forecastも時系列データを用意するだけで、データセットの前処理・学習やデプロイなどの作業を省略することができます。これにPOSデータを使用することで、どのような時間帯に来店する人が多いかを予測することができます。

Amazon Rekognitionは、画像や動画を機械学習を用いて分析するためのサービスです。このサービスは、物体や顔の検出以外にも、人や車の動きを捉えることができます。これを用いることで、店内のお客様の様子や商品の配置などを確認することができ、最適なレイアウトの立案に役立てることができます。

また、Amazon PersonalizeもAmazon Forecastと同様にAmazon.comで使用されているAIサービスであり、ユーザー向けにパーソナライズされたレコメンデーションを簡単に構築できるサービスになります。これを活用することで、来店したお客様の属性情報と、趣味嗜好や購買履歴を元にパーソナライズされたコンテンツをデジタルサイネージやモバイルアプリに表示することで、お客様がすぐに欲しいものを見つけることができるようになります。

AWSのAIサービスは他にも様々にあり、これらを用いることで店舗における新しい購買体験を手軽に構築することができ、小売業の皆様のデジタルトランスフォーメーションをより加速することができます。

無人販売冷蔵庫-スマートクーラー-を用いた接触の少ない買い物体験

デジタルトランスフォーメーション本部
IoTソリューションアーキテクト 飯塚 将太

 

最後のセクションでは、飯塚より店舗における新しいオムニチャネルとして、スマートクーラーをご紹介しました。スマートクーラーは無人販売冷蔵庫ともよばれ、QRコードなどでユーザを認証して冷蔵庫を開け、中から商品を取り出すだけで購買が完了する、新しい購買体験を提供するソリューションです。これにより、お客様は出来るだけ人と会う時間を少なくして、買い物を済ませることができます。

お客様が店舗に行った時でも、人との接触を少なくするためのセルフサービスとして代表的なものは自動販売機やAmazon Goのような無人販売店舗が挙げられます。自動販売機は短時間で購入でき、店舗側にとっても無人で販売できるので人件費を削減できるメリットがあります。一方、陳列する商品に制限があったり、商品を手に取って見ることのできないというデメリットがあります。無人販売店舗は自動販売機と違って自由に商品を置くことができ、消費者も実際に商品を手に取って見ることができます。しかし、実際に店舗を構築するためには時間と費用の初期投資が大きい課題もあります。スマートクーラーは、自動販売機と無人販売店舗のメリットを取りつつも、それらが抱える課題を解決したソリューションです。

このスマートクーラーは冷蔵庫内の各種センサやカメラなどのデバイスと、データを蓄えたり決済を行うクラウド側、そして取った商品を認識するための画像認識など、AWSのIoTやMLの各種サービスを組み合わせたことで実現するソリューションになります。カメラや各種センサーをコントロールし、クラウドと連携するためにAWS IoT Greengrassというデバイス側にインストールできるサービスを利用しています。また、画像認識の部分については、機械学習の開発プラットフォームであるAmazon SageMakerが持つ物体検出のアルゴリズムを用いています。

AWSでは、スマートクーラーを自社で内製したい、あるいはソリューションを通してIoTやML、クラウドを学習されたい小売業者の皆様のために、このセミナーの終了後、スマートクーラーのレシピをGitHubにて公開しました。このレシピを用いることで、皆様自身でスマートクーラーを最短数日で構築することができます。公開したスマートクーラーのレシピの情報については、Blogからご覧頂くことができます。また、AWSのソリューションアーキテクトも、個別のご要望に応じてハンズオンやPoCの導入支援を行っています。ご興味ある方はぜひAWSまでご連絡をお待ちしています。

GitHub: https://github.com/aws-samples/smart-cooler

Blog: https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/smart-cooler/

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回のセミナーに参加されなかった方にも、セミナーでAWSがどのようなことをお話しさせて頂いたかがお伝えできていれば幸いです。冒頭やオープニングの中でも述べました通り、新しい時代において今までのAmazonが蓄えてきた流通小売の知見を、様々な形で皆様に還元していきたいと考えております。それを発信していく場として、AWSは日本におけるお客様事例、セミナーの告知・開催報告などをまとめたサイトを構築いたしました。

https://aws.amazon.com/jp/local/retail/

ぜひ、こちらも定期的にご覧頂き、AWSが発信する流通小売業における最先端の情報を取得いただければと思います。

今後もこのようなセミナーを企画し、皆様に様々な情報をお届けしたいと思っています。次回もぜひご期待ください。

最後になりますが、我々と一緒に流通小売業界のお客様を支援して頂けるチームメンバーを募集中ですので、ご興味がある方は是非ともご応募ください。

 

また、他のリテールセミナーシリーズの開催報告もありますので、以下のリンクからぜひご覧ください。

第2回 リテールセミナーシリーズ 2020年8月24日 [Blog]
第3回 リテールセミナーシリーズ 2020年10月28日 [Blog]