Amazon Web Services ブログ

【開催報告】アップデート紹介とちょっぴり DiveDeep する AWS の時間 第三十一回 (6/29)

みなさんこんにちは!
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 ソリューションアーキテクトの塚本です。

2023 年 6 月 29 日に「第三十一回 アップデート紹介とちょっぴり DiveDeep する AWS の時間」をオンラインで開催しました。本イベントは、AWS の数あるアップデートの中から「すぐ使える、運用に役立つ、あったらいいなと思ってた、おもしろい、重要」なものをピックアップし、ちょっぴり DiveDeep してカジュアルな雰囲気でお伝えするイベントです。

今回は「AWS Dev Day 2023 Tokyo 延長線」ということで、2023 年 6 月 22 日、23 日に開催された AWS Dev Day に関連して、開発者の皆様のご経験に基づく AWS の活用事例をご紹介いただきました。
今回も非常に多くの方にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

実施内容

クリエイティブサーベイ株式会社の鈴木 氏、株式会社アルファドライブの畠山 氏、株式会社はてなの瀧澤 氏、株式会社テラポートの山野 氏の4名にご登壇いただき、AWS でのシステムの運用に関わるご経験をもとにしたナレッジを共有いただきました。合計1時間半の中で盛りだくさんの内容でお送りしました。
記事の中に資料や動画のリンクがありますので、見逃してしまった方はそちらから御覧ください。

アジェンダ

  • 今月のお勧め 5 分間アップデート (5 分)
  • 大規模なアンケートシステムの Amazon Aurora Serverless v2 移行とオートスケーリングの恩恵(15分)
    • スピーカー:クリエイティブサーベイ株式会社 CTO 鈴木 康寛 氏
    • 昨年来、CREATIVE SURVEY では、大規模なアンケート回答を受け付けるためにアーキテクチャーの刷新に取り組んでおり、Amazon EC2 から Amazon ECS on Fargate に移行は完了したものの、DB の負荷が高まっている状況でした。 本セッションでは、オートスケーリングの最後の要であるデータベースを Amazon Aurora Serverless v2 に実際にどのように移行を進めたかを、Amazon RDS Blue/Green Deployments などの具体的な実例を交えてお話しいたします。
  • 全員 SRE ? CI/CD や運用まで完遂するプロダクトエンジニアが実践する AWS CDK でのインフラ構築(15分)
    • スピーカー:株式会社アルファドライブ プロダクト本部 畠山 嵩広 氏
    • 私達 AlphaDrive は、プロダクト開発者全員が「ユーザーに価値を届ける」ことを重視し、フロントエンド・バックエンドの開発に限らずインフラ ・ DevOps にも積極的に関与しています。例えば、そのための施策の 1 つとして、私達は AWS CDK を活用しています。CDK では馴染みのあるプログラミング言語での IaC 体験や独自の抽象化により、開発者がフルサイクルのオーナーシップを発揮できます。本セッションでは、CDK をはじめとして、私達が「全員 SRE」を実現するために取り組んでいることをお話しします。
  • 実践データ移行 ~ はてなダイアリーや魔法の i らんどの事例と共に ~(15分)
    • スピーカー:株式会社はてな 組織・基盤開発本部 サービスプラットフォーム部 瀧澤 崇 氏
    • 本セッションでは、システム刷新時の新システムへのデータ移行時の検討事項や実際のデータ移行事例をご紹介します。ここで扱うデータ移行は、新旧システム間でデータの扱い方が変わるため、データを変換しながら移行する必要がありました。このようなデータ移行での見積りや、実際の移行処理の組み立て方をお話します。事例紹介では、はてなダイアリーからはてなブログへの移行、KADOKAWA 様の魔法の i らんどのリニューアル時の事例、AWS マネージドサービスを利用したデータ移行やその際に得た知見についてご紹介します。
  • サーバログを Amazon CloudWatch Logs 経由で手軽に確認できるようにし、費用をかけずに運用負荷を減らした話(15分)
    • スピーカー:株式会社テラポート CTO システム開発部 山野 寛和 氏
    • 複数台でサーバを運用する際、Amazon CloudWatch Logs にログを転送して集中管理できるようにします。またメール送信に Amazon SES を使用する場合、メール送信ログは Amazon Simple Storage Service に保存することができます。 ただ、それらのログ内容を確認するのは手間がかかるので何とかしたいです。 また案件の規模に関わらず、同じ操作性で検索 & 閲覧などできるようにしたいです。 これらの問題を解決するため、社内用にログ閲覧ツールを作成しました。 公式に用意された仕組みを組み合わせることにより、費用をかけずに日々の運用工数を減らしています。 その具体的な作成内容を紹介します。

当日の様子

当日の内容を抜粋してご紹介します。

AuroraServerless v2への移行の道(大規模なアンケートシステムの Amazon Aurora Serverless v2 移行とオートスケーリングの恩恵)
[資料動画]

最初のセッションはクリエイティブサーベイ株式会社の 鈴木 康寛 氏よりデータベースをプロビジョニングされた Amazon Aurora から、 Amazon Aurora Serverless v2 へ変更をした経験をご共有いただきました。クリエイティブサーベイ株式会社様のサービス、 Creative Survey では、企業向けのアンケート・コニュニケーションプラットフォームを提供しており、アンケートが配布されたときに大規模なスパイクが発生する特性のあるシステムとなっています。インフラの刷新を行うなかで、このアクセスの特性に合わせて Amazon Aurora Serverless v2 を利用することで、負荷に応じたスケーリングとコスト削減を行いました。その他 Amazon Aurora の機能である Blue Green Deployments を利用することでデータベースの切り替え時間の短縮も叶えました。
Amazon Aurora Serverless v2 への移行を進めた方法や、その中での課題についても紹介されており、Amazon Aurora Serverless v2 への興味がある方にはぜひ御覧いただきたい内容です。

全員 SRE ? CI/CD や運用まで完遂するプロダクトエンジニアが実践する AWS CDK でのインフラ構築
[資料動画]

2 つ目のセッションでは、株式会社アルファドライブの畠山 嵩広 氏より、開発者全員が SRE として開発からインフラの運用までを一貫して行えるようなチーム体制を構築したご経験を共有いただきました。株式会社アルファドライブ様ではプロダクト開発者全員が SRE としての知識を持つことをポリシーとして掲げています。しかし、全員が最初からインフラについての知識を持っているわけではないため、開発者もインフラが管理できるようにするツール選定や仕組みが必要でした。その中でインフラの管理ツールとしては、プロダクト開発でも利用している TypeScript を利用して、短いコードでインフラを記載できる AWS CDK を採用し、インフラとプロダクトのコードを1つのレポジトリで管理することで、開発者がインフラ管理をより身近に感じられるようにしています。また、積極的にモブプログラミングを行うことで、チームとしてインフラ知識を高める文化を構築しています。
AWS CDK を採用することのメリットについても詳しく紹介されており、 IaC を進めたいと考えている方や、 SRE 文化への興味がある方にはぜひ参考にしていただきたい内容です。

実践データ移行 ~ はてなダイアリーや魔法の i らんどの事例と共に ~
[資料動画]

3つ目のセッションでは、株式会社はてなの 瀧澤 崇 氏がシステム間のデータの移行を行う際に取った手法を紹介してくださいました。単にデータを移動するだけのデータ移行ではなく、旧システムと新システムの間でのデータ構造の変更、データ変換を含めたデータ移行を行った事例の紹介となっています。移行には AWS Step Functions 、 AWS Batch 、 Amazon S3 を利用しており、ステータス管理や移行先・移行元情報などのメタデータの管理に Amazon S3 のオブジェクトキーを利用することで、リトライのし易い構成にしている点がポイントです。
複雑なデータの移行を行う際に参考にしたい事例であり、移行方法の詳細についてぜひ動画や資料でご確認ください。

サーバログを Amazon CloudWatch Logs 経由で手軽に確認できるようにし、費用をかけずに運用負荷を減らした話
[資料動画]

最後のセッションは、株式会社テラポート 山野 寛和 氏より、 Amazon CloudWatch Logs を更に見やすくするための工夫についてご共有いただきました。 CloudWatch Logs を非エンジニアのオペレーターでも見やすくし、簡単な調査も実施できるように自作のポータルサイトを作成して表示することで、エンジニアが対応する問い合わせの件数を減らしています。 PHP で CloudWatch Logs からログを取得して、ポータルサイトに自社の運用に合わせて形式を変更するなどの加工をして表示しています。また、メールのログ、バウンス率等も取得し、同じポータルサイトに表示するなど、オペレーターが調査を行うために必要な情報をまとめて見れるように工夫されています。非エンジニアでも見やすい形式を求めて加工を行うという点で興味深い内容となっており、皆様にもぜひご覧いただければと思います。

いただいたご質問とその回答

「大規模なアンケートシステムの Amazon Aurora Serverless v2 移行とオートスケーリングの恩恵」について
Q. Aurora Serverless v2 に移行したときにレイテンシが悪化したという話がありましたが、すでになにか改善策を実施していますか。
A. Aurora Serverless v2 への移行に関係なく、SELECT で大規模なレコードにアクセスすることが原因でパフォーマンスが悪かったため、対象のSQLの改善を行っています。また、適切なインデックスが貼られていないものも同様に改善を行っています。

「実践データ移行 ~ はてなダイアリーや魔法の i らんどの事例と共に ~」について
Q. データ移行に利用する技術スタックとして、Amazon S3 を選択した理由はなんですか。 Amazon DynamoDB は候補に上がりましたか。
A. Amazon DynamoDB は候補にありませんでした。 Amazon DynamoDB を利用する場合、要素が複雑になってしまうためです。 Amazon S3 ではバケットにファイルをおいて、そのまま加工につなげることができます。また、ファイルベースでの移行を行ったので、手元で試すことも容易にできました。

次回予告

次回は「 Data Analytics 」編です。
ゲストスピーカーとして、株式会社 E-Grantの堀江 氏、クラスメソッド株式会社の石川 氏、株式会社ジェーエムエーシステムズの植木 氏をお招きしましてデータ分析の活用事例や分析を行うためのツールの紹介を行います。
次回も多くの方々のご参加を心よりお待ちしております!
2023 年 4 月以降に開催予定の『アップデート紹介とちょっぴり DiveDeep する AWS の時間』の視聴申し込みを一括でできるようになりました!毎月申し込みする必要はなくなります。また、イベント開催直前にリマインドメールをお送りいたします。下記リンクから参加ご希望月の申し込みをお願いいたします。

三十二回「アップデート紹介とちょっぴり DiveDeep する AWS の時間」- Data Analytics 編-

開催日時

2023 年 7 月 27 日(木)16:00 – 17:30 オンライン開催

アジェンダ

  • 16:00 – 16:10 オープニングセッション
  • 16:10 – 16:25 プロダクト成長のためのデータの可視化
    • スピーカー: 株式会社E-Grant CTO 堀江 勤 氏
  • 16:25 – 16:40 AWS SDK for pandas で手軽に実現する!pandas と AWS のデータ分析サービス統合
    • スピーカー: アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 福本 健亮
  • 16:40 – 16:45 Q&A
  • 16:45 – 17:00 Amazon Athena (Iceberg) x dbt ではじめるデータ分析!
    • スピーカー: クラスメソッド株式会社 プロトタイプソリューションアーキテクト 石川 覚 氏
  • 17:00 – 17:15 AWS Glue + Amazon QuickSight でクイックに成果を出す需要予測
    • スピーカー: 株式会社ジェーエムエーシステムズ アドバンストテクノロジー部 植木 将也 氏
  • 17:15 – 17:20 Q&A
  • 17:20 – 17:30 クロージングセッション

このブログの著者
塚本 真理 ( Tsukamoto Mari )
ソリューションアーキテクトとして ISV/SaaS 系のお客様の技術支援を行っております。好きなサービスは Amazon RDS とAWS Amplify です。趣味は 2 歳の息子と電車を見に行くことです。