Amazon Web Services ブログ

データドリブンのカルチャーを育むためにすべき3つのことは何ですか?

ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンによる世界的なベストセラー「ファスト & スロー あなたの意思はどのように決まるか?」によると、人々は直感的もしくは論理的に意思決定を行います。直感は迅速な意思決定につながり、合理的思考は意思決定を遅らせます。組織においては、その逆です。直感は長い意思決定プロセスにつながり、データや事実に基づく意思決定はプロセスの短縮につながります。

直感ドリブン ( 訳註 : データドリブンとは対照的に、意思決定が誰かの直感に基づいていること ) のカルチャーでは、他人は誰かの証明不能な直感に従うことになります。意見がぶつかり合い、最終的に勝つのは、最も素晴らしいストーリーを語れる人か、最も給料が高い人です。データドリブンの組織は通常、より少ない議論でより高い成功確率の意思決定を、より迅速に行います。

しかし、データドリブンのカルチャーを採用することは容易ではありません。確立された行動を変えなければならず、意思決定に必要なデータはしばしば入手できず、正しく解釈できません。

「意見」を「疑問と実験」に変える

経験や直感、信念に基づく自己主張は、議論や意思決定プロセスを開始するのに役立つ重要な資質です。直感ドリブンの組織では、人々は、意見から解決策へとすぐに飛躍します。意見はしばしば感嘆符 ( ! ) 付きで表現され、別の感嘆符 ( ! ) 付きの意見が重ねられます。

データドリブンの組織では、意見の最後に疑問符 ( ? ) が付き、「試してみよう」という返答を引き出します。意見は疑問につながり、それが仮説となって小規模に試行され、検証されます。あらゆる観点と結果を比較検討した経験のある人々は、データと実験の結果に基づいて意思決定を行います。

意思決定プロセスを導くのは直感ではなく、対象を絞った実験からのデータです。

「無作為なデータ保存」から、「意図的なインサイトの生成」へと変える

データドリブンのカルチャーを取り入れたい組織はしばしば、データがない、データが多すぎる、または意味のないデータを持っていることに気づきます。これは通常、データが無計画で保存されているためです。データウェアハウスとデータレイクはフリーマーケットになり、場合によっては貴重なものを見つけることができますが、ほとんどのアイテムは役に立たず、コストに見合う価値もありません。

データドリブンの組織は、特定の課題に特化したデータを生成します。彼らは意見を裏付けるための実験を定義して実施し、必要となる正確なデータとインサイトを生み出します。質問、意味、構文に応じて、さまざまなテクノロジーを使用してデータを保存、処理、分析、視覚化します。データは特定の明示的な目的で収集され ( 目的制限 ) 、処理される理由から必要なものに限定されるため ( データ最小化 ) 、データ保護にも役立ちます。

AWS は、エンドツーエンドのデータ戦略の構築に役立つテクノロジーを提供しています。 (データを使って組織を改革する方法の詳細については、AWS for Data をご覧ください。)

「ストーリーの語り聞かせ」から「データリテラシー」へ変える

直感ドリブンの組織では、無数のパワーポイントスライドを使用してストーリーを伝えることが不可欠なスキルとなり、意思決定会議というよりも、サーカスのショーになってしまうことがよくあります。データと統計は使われていますが、それは「ストーリー」を裏付けるためだけに使われています。これらの統計は文脈から外れていることが多く、特にフォーキャストは統計的に有意ではありません。

多くの組織では、従業員は合計と平均を理解しています。しかし、彼らは中央値、標準偏差、パーセンタイル、またはコホートを理解していません。データを適切に生成、準備、特に視覚化する方法を知りません。組織によっては、ほぼ毎年、より新しく、より便利で、よりカラフルなビジネスインテリジェンスツールを導入しているのに、ツールの使い方は言うまでもなく、基本的なデータリテラシー ( 訳註 : データを適切に読み、分析し、伝える能力 ) について従業員にトレーニングすることを忘れています。

一方、データドリブン組織では、ストーリーの語り聞かせは意図的に制限され、データに基づく推論が優先されます。たとえば、AWS では、社内の意思決定の基礎として、プレゼンテーションの代わりにドキュメントを使用しています。

これにより、誰もが意思決定者になることができます。お客様のことを念頭に置いて、より迅速に意思決定が下されます。

Matthias Patzak

Matthias Patzak

Matthias は AWS ソリューションアーキテクチャのプリンシパルアドバイザーを務めた後、2023 年初頭にエンタープライズストラテジストチームに加わりました。この役職では、マティアスは経営陣と協力して、クラウドがイノベーションのスピードやITの効率を高め、自社のテクノロジーが生み出すビジネス価値を高めるのにどのように役立つかについて、人、プロセス、テクノロジーの観点から検討しています。AWS に入社する前は、マティアスは AutoScout24 で IT 担当副社長を務め、Home Shopping Europe でマネージングディレクターを務めていました。両社とも、リーン・アジャイルのオペレーションモデルを大規模に導入し、クラウドトランスフォーメーションを成功させた結果、納期の短縮、ビジネス価値の向上、企業価値の向上を実現しました。

この記事はアマゾンウェブサービスジャパンの大塚信男が翻訳を担当しました。(オリジナルはこちら