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アジャイルなクラウドトランスフォーメーションを採用すべき理由

テクノロジーに携わるエグゼクティブは一般に、アジャイルソフトウェア開発手法が効果的であることを理解し受け入れていますが、アジャイルなアプローチでクラウドトランスフォーメーションに取り組むことには躊躇する方もいます。彼らは、クラウドトランスフォーメーションはアジャイルが機能するには大きすぎて複雑すぎると信じています。このブログ投稿では、Amazon Web Services(AWS)Professional Servicesのシニア・クラウドトランスフォーメーション・アドバイザーであるSaša Baškarada博士が、クラウドトランスフォーメーションへのインクリメンタルかつ反復的、および適応的手法が、従来のプロジェクト管理よりも迅速に成功する結果をもたらす可能性が高い理由を説明します。

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AWSプロフェッショナルサービスのシニア・クラウドトランスフォーメーション・アドバイザーである Saša Baškarada 博士によるゲスト投稿

他の計画を立てているときに様々なことが起きるのが、人生というものです。

ーAllen Saunders

あなたが大規模なクラウドトランスフォーメーションの構想に着手しようとしているCIOであるとします。あなたは、市場投入までの時間の短縮、顧客体験の向上、コスト削減、技術的信頼性の向上、スタッフの生産性の向上など、重要なビジネス成果を重要度順にランク付けすることから始めるでしょう。次に、実行可能なすべてのクラウドトランスフォーメーションのロードマップを描きます。そして、各ロードマップが前述のビジネス成果をどれだけ効果的に最大化するかを評価するでしょう。当然のことながら、ビジネスの成果に関してそのようなロードマップを評価するには、多くの仮定、見積もり、および因果推論を行う必要があります。最後に、変更にかかるコストも考慮し、個々のビジネス成果に重みを付けて集計することにより、全体的なビジネス価値が最も高くなるロードマップを選択しようとするでしょう。

別の方法として、特定されたビジネス目標のいずれかに対して段階的に価値提供していくやり方を選択することもできます。全体的なビジネス価値の最大化に焦点を合わせる代わりに、経験から学び、クラウドトランスフォーメーション・ジャーニーとともに適応していくやり方です。つまり、大胆に考え、小さく始めて、行動は素早く!です。

複雑な社会技術システム(Socio-Technical Systems)としての組織

クラウドトランスフォーメーションを開始するには、まず、組織を大規模な社会技術システムとして理解する必要があります。社会技術システムには、人、技術、外部環境の間の複雑な相互作用が含まれます。クラウドトランスフォーメーションの文脈では、これには、幅広いオンプレミスおよびクラウドテクノロジー、さまざまな内部テクノロジーとビジネスの利害関係者、および外部パートナーと顧客が含まれる場合があります。効果的なクラウドトランスフォーメーションのロードマップ作成は、関連するビジネス成果が複数の手段で達成される可能性があるという事実、およびさまざまな技術的および社会的側面を単独で検討することはできないという事実によって複雑になります。たとえば、社会的な側面を犠牲にして技術的な側面に焦点を合わせると、最適ではない結果につながる可能性があります。さらに言うと、最も重要なクラウドトランスフォーメーションの課題は技術的なものではありません。組織は社会技術システムである、という共通の理解から始まらないクラウドトランスフォーメーション戦略は、必ず失敗します。

クラウドトランスフォーメーション・ジャーニーを進化させる

組織を広大な相互接続された複数の側面を持つシステムとして理解したので、今度はトランスフォーメーションを実行することを検討しましょう。インクリメンタルポリシーに基づく開発プロセスの先駆者たちは、最適な決定を行う前に、考えられるすべての代替案と関連する要因を検討するなどということは、現実的ではないと、ずっと主張してきました。代わりに意思決定者は、アプローチだけでなく目的も反復ごとに適応させて「満足化する」、言わばインクリメンタルな改善を目指すべきです。つまり、クラウドトランスフォーメーションのロードマップは、一度作って終わりではなく、継続的に進化する生きたモノと見なされるべきなのです。

クラウドトランスフォーメーションに対するアジャイルアプローチにより、広範囲にわたる予測を行う必要性が最小限に抑えられ、代わりに、スプリントごとに予測をテストおよび修正できます。イニシアチブによっては、目的を部分的にしか達成しないものもあれば、期待を上回る結果を生み出すものもあります。インクリメンタルで反復的なアプローチにより、経験から学び、クラウドトランスフォーメーション・ジャーニーを進めるにつれてアプローチを適応させることができます。

これは、クラウドを活用して新しい製品やサービスを開発することで、不連続なイノベーションに取り組むべきではないという意味ではありません。不連続なイノベーションへのアプローチがアジャイルであるべきことを意味するだけです。

成功要因

最後に、組織を変革するプロセスで実行できるいくつかの実用的な手順について説明しましょう。アジャイルなクラウドトランスフォーメーションは簡単ではありませんが、次のガイドラインは成功に役立ちます。

  • 大胆に考えること。上記のように、何よりもまず、テクノロジーとビジネス戦略を一致させる大胆なビジョンノーススター)を設定する必要があります。マッキンゼーの調査によると、変革が成功した組織は、より高度なテクノロジーを導入しています。野心的な目標を設定すると、才能を引き付け、勢いをつけるのに役立つ切迫感と興奮が生まれます。
  • コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション。もちろん、大胆なビジョンは、幅広い組織の賛同なしには役に立ちません。賛同を得るために、できれば体験談やエピソードなどの物語の引用や複数のチャネルを介して、ビジョンと成功への道を常に一貫して明確にすることで、コミットメントを示します。
  • 組織能力のギャップを埋める。 AWS Cloud Adoption Framework(AWS CAF)は、クラウドトランスフォーメーションの準備状況を評価するための包括的なフレームワークを提供しており、ビジネス、人、ガバナンス、プラットフォーム、セキュリティ、運用の6つの観点から、クラウドトランスフォーメーションを支える主要な組織能力について説明しています。 AWS CAFは、関連する技術面およびビジネス面の利害関係者を特定し、スキルとプロセスのギャップに対処し、従来のモデルからクラウド運用モデルに移行するのに役立ちます。 AWS CAFを活用して、現状の組織能力を評価し、組織能力向上のためのアクションプランを作成して下さい。
  • トランスフォーメーション推進室の設立。新しい組織構造を導入し、専任のトランスフォーメーション担当人員を割り当て、進捗状況を継続的に監視します。既存の日常業務に単純にトランスフォーメーションの責任を追加することはやめて下さい。トランスフォーメーション推進室は意思決定を促進し、説明責任と透明性を推進します。
  • 運用モデルのトランスフォーメーション運用モデルとは、クラウドサービスまたはプロダクトの、利用者と提供者間の関係性と相互作用を意味します。具体的には、組織がクラウドを使用して、社内外の利用者にデジタルプロダクトとサービスを提供する方法です。新しい組織構造は、ビジネスの成果に沿った指標を使用して、部門の枠を超えたプロダクトチームを中心に形成する必要があります。これには、2つの運用モデルを並行して維持することを提唱するバイモーダルITの側面が含まれる場合があり、どちらもデジタルトランスフォーメーションで重要な役割を果たします。
  • 実験的アプローチの奨励。実験的アプローチは、アジャイルなクラウドトランスフォーメーションの核心です。すばやく繰り返して行動から学習するには、実験的アプローチを奨励し、時折の失敗を受け入れる必要があります。
  • 組織変更管理(OCM)に焦点を当てる。経験上、変化に対する抵抗が、クラウドトランスフォーメーションを成功させるための最もチャレンジングで過小評価されている障害の1つであることが分かっています。 AWS OCM 6-PointFrameworkとEssentialsToolkitを活用して、クラウドトランスフォーメーションに関連する組織変更の採用を促進します。

トランスフォーメーションの時 – アジャイルアプローチとともに

クラウドトランスフォーメーションは継続的なジャーニーです。アジャイルアプローチと、この投稿で説明したガイドラインを採用することで、価値を迅速に証明し、未来へ向けたトランスフォーメーションの勢いを維持することができます。


著者について

Dr. Saša Baškarada Saša Baškarada博士は、アマゾンウェブサービス(AWS)のシニア・クラウドトランスフォーメーション・アドバイザーであり、お客様がクラウド導入の各ステップを通じて変革的なビジネス成果を達成できるよう支援しています。 AWSに入社する以前、Sašaはオーストラリア国防省で科学技術のエグゼクティブとして10年間、そして大学の学者および研究者としてさらに10年間を過ごしました。 Sašaは様々なトピックについて幅広く出版しており、情報システムの博士号とソフトウェアエンジニアリングのBIT(優等学位)を取得しており、現在、パブリックリーダーシップとポリシーの修士号を取得しています。

※この記事はアマゾンウェブサービスジャパン株式会社の大塚信男が翻訳を担当しました。(オリジナルはこちら