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【先進AWSユーザーインタビュー】株式会社VAAK : 画像認識技術をコアに、社会的課題への解決にも挑戦するAIスタートアップ

みなさんこんにちは。アマゾン ウェブ サービス ジャパンで、スタートアップマーケティングを担当している石渡です。

注目のスタートアップ企業を紹介するインタビューシリーズを始めます。トップバッターを飾って頂くのは、高度な画像認識技術をコア技術としたAIスタートアップの株式会社VAAK社です。

百花繚乱のAI領域において、独自の技術で異彩を放つVAAK

AIを活用したメディア認識技術は、我々 AWS も大変力を入れている領域です。様々な企業が注目するこの領域に、独自開発の画像認識+行動解析エンジンで切り込もうとしているのが、今回ご登場頂く株式会社 VAAK です。高い精度での映像認識に留まらず、対象の次の行動を予測することを通じて、「短期的には店舗の業務改善に、長期的には、犯罪の未然防止や人身事故の防止などにも適用を見据えています」と語る同社 CEO の田中氏に、同社の取り組みとAWSの活用方法、そして、今後のビジョンをお聞きしました。

アマゾンウェブサービスのオフィスにてインタビューを行いました

速報:インタビュー後の9月6日、VAAK社が Industry Co-Creation(ICC)サミットKYOTO 2018 で行われたピッチコンテスト「Honda Xcelerator」で優勝したというニュースが飛び込んできました。詳しくはこちらをご覧ください

1. VAAKとは?

2017年11月に創業した株式会社 VAAK 。「バーク」というその社名は、Visualize, Analyze, Automate, prediKt という同社の4つのコアテクノロジーから得たものだそうです。それぞれ、可視化 (Visualize)、分析 (Analyze)、自動化 (Automate)、そして予測(prediKit) という点を、すべて一気通貫に手がけるところが同社の事業の守備範囲です。田中氏によると、社会貢献性と市場性という2軸で参入するべき事業領域を評価し、行動解析技術のもつ可能性に気づき、技術開発を経た上で、VAAKを創業したのだそうです。

インタビューを実施した時点で、既に2つのプロダクトをβリリースしています。

最初のプロダクトとして 2018/2にリリースしたのが、万引き防止を目的としたプロダクトである「VAAKEYE」(バークアイ)です。そして、2018年6月には、レジなし決済システムである「VAAKPAY」(バークペイ) をリリースしています。これらの2つのプロダクトには、VAAKがもつ3つの強み(検知、予測、効率化)がベースになっているといいます。

それがどのようなものか、同社のデモ画像があるので、まずはご覧ください。

 

 

特徴①:正確な検知能力

例えば、「ある商品をカバンにしまう」という万引きの行為は、「キョロキョロする」という犯行前の兆候から始まる可能性が高いといえます。VAAKの技術は、この動作をまず迅速かつ正確に検知するために、実に100を越える人間の動作ポイントを分析しているといいます。実際、先ほどのデモでも、「ハンドバッグを所持している」「辺りを見回している」などが認識され、画面上に表示されています。

特徴②:予測能力

兆候動作が正しく検知できた後に必要となるのが、その次に起こるであろう行動をモデルから予測することです。VAAK では、マクロ・ミクロの様々なモデルを組み合わせて、次の行動を予測しているといいます。

特徴③:効率化

最後の特徴は効率化で、VAAKのソリューションは、店舗に設置された既存のカメラ設備をうまく活用することができ、導入コストの削減につなげることができるのだそうです。

 

これらの3つの特徴を備えていることが VAAK のプロダクトの強みと言えそうですが、それらは、どのようにAWS上で実現されているのかを、詳しくお聞きしました。

2. システム上のチャレンジとAWS

VAAK では、創業当初から AWS を基盤に活用頂いています。この背景は、田中氏始め、創業のコアメンバーが、AWS の利用経験を持っていることが大きかったそうです。同社 CTO の久良木氏は、過去の取材の際に、以下のコメントを寄せています。

VAAKのサービスは映像管理から機械学習、またアプリケーションの提供を行いますが、AWSのサービス群を活用することで、サーバーレスに実装することができ、通常の1/4のサーバー数で運用することができています。これによりインフラ工数も最小限で済み、削減できた工数は当社のユニークな行動解析システムやアプリケーションに費やすことができました。

【出所】AWSジャパン事例資料より

久良木氏のコメントを踏まえ、田中氏には、経営の視点も加味して、どのようにAWSのシステムデザインを検討したのかをお聞きしました。

「システム要件として重視しているのは、映像解析コストの最適化、高いパフォーマンス、そして、高い精度の実現です。これらを考慮して、AWSを創業時より利用しています。」

この3つのビジネス要件が、実際に、どのようにAWS上に展開されているのか、構成概要図が以下です。

 

店舗に置かれたビデオカメラからの画像は、Amazon Kinesis Video Streamに取り込まれ、その後同社の独自の行動解析を担うAIサーバーに取り込まれます。Kinesisの採用にあたっては、わずか1ヶ月程度の短期間での検証しか必要としなかったそうです。

Kinesisを経て取り込まれたストリームデータは、先に紹介した、同社のユニークな機械学習モデルに取り込まれ、被験者の行動解析を実行します。

現在のアーキテクチャは、「グローバルな規模にまでスケールが可能なように柔軟であり、かつ、堅牢性を持たせたシステムデザインになっている」と田中氏はいいます。AWSの経験が豊富な技術者集団が作り上げた現在のシステムですが、インタビューの途中では、AWSのAIソリューションである「SageMaker」への期待とともに、AWSが提唱するシステム・アーキテクティングの方法論である、「AWS Well-Architected フレームワーク」への期待もお聞かせ頂きました。特に後者については、Well-Architectedワークショップを通じて、より一層のシステムの洗練とコストの最適化を図っていくことにも興味を持っているというお話をお聞かせ頂きました。

 

3. VAAKが見据える将来のビジョン

VAAKが実現している「行動解析を通じた、人間行動の予測」という領域は、様々な可能性を秘めていると言えるでしょう。その一つの方向性として、街中での暴力やテロなどの犯罪抑止という領域や、鉄道駅における人身事故の抑止などが一例となると田中氏は言います。

先頃リリースしたVAAKPAYによるレジなし決済ビジネスについては、その先のビジョンをお伺いしたところ、やはり、無人店舗の実現というのが今後の方向性の一つであると言います。無人店舗の形態にも様々なものがあるが、現在米国でのみ展開中の、Amazon Goにも高い興味があるということでした。

今回で3社目の挑戦となるシリアルアントレプレナーの田中氏。市場性と社会貢献性という点が画像認識技術に着目した理由ということからも、今後もどのような社会的課題に取り組んでいこうとしているか、ご注目ください。

お忙しいところ、インタビューにご協力頂き、ありがとうございました。

関連情報:

Amazon Kinesis Video Streamsプロダクトページ

Amazon SageMaker プロダクトページ

AWS Well-Architected フレームワークご紹介ページ