AWS Startup ブログ

誰もが簡単に高度なデータ分析を実現できる ─ datagusto 社の AWS 活用事例

「データ分析を行い事業改善に結びつけたい」というニーズは、近年高まりを見せています。しかし各企業は「社内にデータ分析の専門家がいない」「データを集計・可視化できても、それを元にして何の施策を実施すればいいのかわからない」といった課題を抱えており、データを有効活用できているとは言い難い状況です。

その課題を解決するのが、SaaS 型 AI 分析ツール「datagusto(データグスト)」。これは、データをアップロードして“レシピ”と呼ばれる分析テンプレートをクリックするだけで、業務の現場が抱える疑問への解答を導き出せるサービスです。

たとえば、「テレアポの成功率を高めるために最も適した時間帯は?」などの答えを、AI が出してくれます。2021 年 11 月の正式ローンチから 2022 年 9 月(取材時点)までで、大手企業を中心に 19 社で導入されており、順調に事業を拡大しているのです。

同社は AWS を用いて「datagusto」のアーキテクチャを構築しています。その活用事例について、株式会社datagusto 創業者・CEO パー 麻緒 氏と 創業者・CTO 中村 達哉 氏にお話を伺いました。

日々の意思決定に“gusto”を

――まずはお二人の簡単な自己紹介をお願いします。

パー:datagusto の創業者・CEO であるパー 麻緒と申します。大学で修士課程修了後、別の大学の博士課程へ進学してデータサイエンスの研究をしていました。その後、外資系コンサルティング会社に就職してコンサルタントとデータサイエンティストの中間くらいの業務に従事し、さまざまなクライアントを担当しました。また、当時はBI ツール「Tableau」のエバンジェリストも担っていたのです。そこから転職後は、AI 系のスタートアップで事業開発をしました。

これらの会社での経験が、創業のきっかけになっています。世の中の大多数の企業は、データの集計や可視化に苦労しています。さらに言えば、データを活用して事業改善に結びつけられている企業は、ごくわずかであるのが実情です。より簡単に誰でもデータを扱え、日々の意思決定に“gusto(心からの楽しさ・喜び)”を感じられる未来を実現したいと思いました。しかし、私にはデータ関連のビジネスの知識やノウハウはあるものの、プロダクト開発のスキルがありません。そこで、共同創業者である中村を誘いました。

datagusto 創業者・CEO パー 麻緒 氏

――では、次に中村さんからお願いします。

中村:datagusto の創業者・CTO である中村 達哉と申します。大学・大学院ではデータ分析に関する研究に携わっており、博士号を取得した後は大手 IT 企業に就職。研究成果のデモシステム開発から機械学習までを含む、計算機環境の設計・開発・運用を経験しました。その後、パーから「datagusto」の構想を聞き、その思いに共感して共同創業したという流れになります。

――他のデータ分析系ツールと比較して、「datagusto」の特徴はどのような点にあるでしょうか。

中村:一般的なデータ分析系ツールは、主にエンジニアやアナリストの方々を対象としています。ですが、私たちのツールは営業やマーケター、プランナーなど、それほどテクノロジーに詳しくない方々を対象としているのが特徴です。

そうした職種の人たちが簡単な操作をするだけで、業務で抱えている疑問に「datagusto」が答えを出してくれます。複雑な AI やデータ分析系の処理は「datagusto」がシステムの裏側で実現しているため、ユーザーは専門知識がなくてもデータを活用できるのです。

「datagusto」の使用イメージ

フルマネージドのサービスを使い、運用工数を低減

――どのような要素を魅力に感じて、AWS をご導入いただいたのでしょうか。

中村:AWS はサービスの種類が豊富かつ便利であるのはもちろんですが、それ以外にもユーザー数が多いことが利点として挙げられます。それに比例して世の中に出回っている情報もたくさんあり、システムの開発・運用にあたって参照できるドキュメントが多数存在しているのも良い点です。エンジニアを採用する際にも、ユーザー数の多さはプラスに働きます。それらの理由から AWS を導入しました。

――御社のシステムアーキテクチャの概要を教えてください。

中村:「datagusto」はマルチテナント型の SaaS サービスです。シングルページアプリケーション(SPA)の構成にしており、フロントエンドとバックエンドのシステムは分かれています。フロントエンドは AWS Amplify、バックエンドは Amazon ECS(on AWS Fargate)によるホスティングです。バックエンドの一部の処理は AWS Lambda を用いています。データベースやストレージは、Amazon AuroraAmazon S3 というオーソドックスな組み合わせです。

AI やデータ分析系の処理を AWS Lambda と Amazon SageMaker に任せていくといった改善も行っています。このデータ処理の設計は日々改善を続けており、より良いシステムを実現するための調査や研究を常に実施しています。

私たちの技術選定の特徴として「なるべくフルマネージドのサービスを使うこと」が挙げられます。運用工数を低減させられるためエンジニアが開発に注力できますし、たとえ今後システムのトラフィックが増えても自動的にスケールしてくれます。

――御社は AWS Activate* もご利用いただいています。このプログラムを知った経緯や利用されての感想などをお聞かせください。

*… AWS Activate は AWS 上でシステムを構築、拡張するのに必要なリソース(最大 100,000 USD の AWS Activate クレジット、24 時間年中無休の技術サポート、トレーニング特典など)をスタートアップ企業に提供するプログラム。

中村:私たちは創業時からベンチャーキャピタルに投資していただいております。そして、その方々を通じて AWS Activate の存在を知りました。資金的なサポートを受けられることは、アーリーフェーズのスタートアップにとって非常にありがたいです。また、AWS Activate の利用をきっかけとして、AWS のスタートアップ企業向けの技術相談会などにも参加するようになりました。

――技術相談会にはご満足いただけていますか。

中村:はい。非常に丁寧にサポートしていただいています。先ほど述べたアーキテクチャにも、技術相談会でのアドバイスが反映されています。もともとは今とは異なる構成を用いていたのですが、技術相談会で AWS Amplify の存在を教えていただき、それを機に変更しました。

また、技術的にかなり深掘りした質問をしても、ソリューションアーキテクトの方々が詳細に説明してくれます。システム全体のコンセプトやアーキテクチャについて相談できるのは、AWS による技術支援の大きな特徴だと感じています。

datagusto 創業者・CTO 中村 達哉 氏

データを統合的に扱う“プラットフォーム”へ

――今後、サービスやアーキテクチャをどのように発展させていきたいですか。

パー:これからもさらに「datagusto」の導入企業数やユーザー数を増やしたいですし、使い勝手もより向上させていきます。直感的な操作で、シームレスにサービスを利用できるようにしたいですね。一例を挙げると、現在の「datagusto」は CSV ファイルなどをアップロードしてデータ登録するのが基本操作なのですが、今後は「Snowflake」や「Salesforce」などの他システムからデータを自動的に読み込めるように連携したいです。また、各種の予測・分析結果などを、ユーザーの業務にそのまま使える形式のレポートとして出力可能にしていきます。

それ以外にも、企業同士がデータをやりとりできるようにしたり、AWS Marketplace のように各種データを企業が購入可能にしたりといったことも構想しています。単なるツールというよりも、データを統合的に扱える“プラットフォーム”にしたい。現場でデータ関連の業務に携わる人たちを、トータルで支援できるシステムへと進化させていきます。

中村:その目標を実現するためにも、システムのインタラクティブ性や処理性能をより向上させることが必要だと考えています。現在は比較的シンプルなアーキテクチャ構成を用いていますが、今後は必要に応じて組み替えを行っていきます。

将来的には、イベントに応じて後段の処理を並列で走らせるような仕組みも必要になってくると考えています。マイクロサービス的に、機能や用途に応じてバックエンドのサービスを立ち上げることもあり得るかもしれません。さらに、特定のユーザーにのみに機能を早期リリースして、使い勝手やユーザーからの反応を検証できるような仕組みも構築していきたいです。実現したいことは、まだまだ山のようにあります。

――「datagusto」がさらに使い勝手の良いシステムになりそうですね。今回はありがとうございました。


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