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本日閣議決定された『デジタル・ガバメント実行計画』を”クラウドのレンズ”で読み解く

本日令和2年(2020年)12月25日、『デジタル・ガバメント実行計画』が閣議決定に至りました

今回のブログでは、335ページの大部の政策集となった『デジタル・ガバメント実行計画』(以下、『実行計画』。全文はこちら)を、クラウドの観点から読み直すことで、特に政府部門・公共部門の各お客様にクラウド導入をご検討いただく判断の一助となることを目指します。昨年版から120ページ以上も大幅加筆された最新の『実行計画』では、何が謳われているのでしょうか?

今回のデジガバ実行計画の”柱”

今回の『実行計画』には、(昨年までのバージョンでは見られなかった)4本のメイン・アイディアが新規に配置されています。トップページには、”社会全体のデジタル化を進めるために、まずは国・地方の「行政」が、自らが担う行政サービスにおいて、デジタル技術やデータを活用して、利用者目線に立って新たな価値を創出するデジタル・トランスフォーメーションを実現”する必要性、つまりは政府サイドが垂範する決意が、説かれています。この理念を追求していくための、4本の柱──【1】デジタル庁の創設【2】Gov-Cloud【3】自治体等共通SaaS基盤【4】公共サービスメッシュ──に関し、順に抜粋・解説していきます。(以下、赤字表記は『実行計画』中の施策名称を抜粋した箇所。)

  • 【1】デジタル庁の創設:”強力な司令塔機能を有するデジタル庁の設置”との表現に加え、以下の記載がデジタル庁に関してはなされています。
    • “マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤を抜本的に改善し、国民の満足度を最大化するデジタル政府・デジタル社会を実現するため、また、データを提供する最大の機関である行政が、デジタル社会において国の豊かさや国際競争力の基盤であるデータ戦略を推進するためには、そのための権限及び体制を有する組織が必要”
    • “行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口として、デジタル庁を設置するための関連法案を次期通常国会に提出”、
    • “今後デジタル庁が策定する国・地方の情報システム、準公共分野の情報システムの整備方針、デジタル庁が相互連携分野として指定する分野において各府省が策定する相互連携分野の標準に係る整備方針にこれらを反映させるとともに、デジタル庁の関わる情報システム整備の際に、これらへの遵守を要件とするなど実効性の確保を検討する”
    • “2021 年度(令和3年度)については、デジタル庁の設置も見据え、一括要求・一括計上の範囲を大幅に拡大し、87 システムの整備・運用等に必要な予算計2,986 億円を内閣官房及びデジタル庁に一括計上している”
  • 【2】(仮称)Gov-Cloud:”政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境”が、「(仮称)Gov-Cloud」の定義であるとされています(p.20など)。クラウド・バイ・デフォルト原則を踏まえた政府情報システムの整備(内閣官房・総務省・全府省)を加速する中核施策の一つとして位置付けられており、”2018 年(平成30 年)6月に、政府情報システムにおけるクラウド・バイ・デフォルトの基本的な考え方、各種クラウド(パブリッククラウド、プライベートクラウド等)の特徴、クラウドサービスの利用における留意点等を整理し、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」“が策定されたあとの、土台となる構想です。なお、『実行計画』の中では、中央省庁がこのGov-Cloudを活用するのは勿論のこと、加えて”独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(医療、教育、防災等)等の情報システムについても、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討”とし、中央省庁の領域”外”での活用にも言及がなされています。また、後述のとおり、先行して運用が開始されている「第二期政府共通プラットフォーム」との包含関係についても、”「(仮称)Gov-Cloud」が提供することとなる複数のクラウドサービスの利用環境の一部をなすもの”と、整理されています。
  • 【3】(仮称)自治体等共通SaaS:”今般のコロナ禍において、特別定額給付金や持続化給付金など、各種給付金の事務処理のデジタル化に課題があることや、デジタル改革の必要性が改めて認識された。今後どのような突発的な事務が発生し、次に実施される緊急時の施策について、いかなる主体が担当し、いかなる情報を必要とするかは、もとより予め分かるものではないが、汎用的に突発的な事務に対応できるシステムを予め用意し、仮に次の緊急事態に同様の給付金を支給するような場合には、国民に迅速に届けることができるようにすることが必要”──との課題意識が冒頭で語られています。『実行計画』では、そのための方針として、”給付金事務などを簡便に実装できる開発基盤機能、マイナポータルの申請受付データ取得、情報提供ネットワークシステムからの自己情報取得、住民基本台帳ネットワークシステムからの本人確認情報取得、申請の補正等に係る住民との双方向メッセージング、市区町村をはじめとする行政機関等の接続機能、主要クラウドサービスと連携できる政府・地方公共団体職員の認証機能、国と地方の事務に関する最新の通達やQ&A を閲覧でき、照会等をWeb 上で行える機能”──これらの機能群を有する「(仮称)自治体等共通SaaS」を、「(仮称)Gov-Cloud」上に整備すると、謳われています。 また、”公共サービスメッシュと速やかに接続し、自治体システムとの連携を迅速かつ円滑に実施できるようにする”旨も、記載されています。
  • 【4】公共サービスメッシュ: 情報連携基盤「公共サービスメッシュ」の構築の「考え方」として、次のように記載されています。”デジタル政府の核心である、ワンスオンリー(同じ情報を2度、国民に求めない)を実現し、国民の負担を減らし、行政のコスト削減・正確性向上を図るためには、行政機関間における情報連携が徹底されることが、必要不可欠[・・中略・・]プッシュ型通知、更新を行うことができ、庁内連携・団体間連携・民間との対外接続に一貫した設計で対応できる仕組みを構築する。係る仕組みの構築に当たっては、[既存のシステム]の項目定義等の資産を活かしつつ、後方互換性を維持したまま柔軟にデータ項目などの仕様を拡張でき、世帯や代理といった関係属性を扱えて、中間サーバー等を介在させずにリアルタイムでシステム間のAPI 連携ができる、柔軟かつ簡素な構成とする”──とされ、併せて”濫用や漏えいによる問題が発生したり、プライバシー侵害が発生したりすることのないよう、システムについては今後、データべースの分散管理とアクセスコントロールを前提に、新たな手法に転換”する旨、方針が打ち出されています。

閣議決定に至るまでの諸提言

今回の閣議決定に至るまでには、さまざまな会議体から多くの提言が提出されました(下記の図は、その一部)。クラウドの可能性を最大限に享受いただくことがデジタル・ガバメントの推進、政府部門・公共部門でのDX推進に繋がるものと私たちは信じています。今後も、各方面との協力・意見交換・提言活動を推進していきたいと思います。

 

その他、クラウドに言及のある個別施策

閣議決定に至った『実行計画』は、上記の構想に加えて、個別施策としてもクラウド化を強力に推進する記載が多数見受けられます。以下に、その一部をご紹介します。

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 政府横断で環境を整備

  • 政府横断施策や投資額の大きいプロジェクトのガバナンスの徹底( 内閣官房・総務省・関係府省)に関しては、自治体や独法、先行して整備されている政府共通プラットフォームとの関連性に触れながら、以下のように記載されています:

クラウドサービスの利用環境整備(内閣官房・総務省・全府省):”政府情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境(「(仮称)Gov-Cloud」)を整備し、早期に運用を開始する。そして”情報システムの迅速な構築及び柔軟な拡張、最新のセキュリティ対策、技術革新対応力や可用性の向上、コストの大幅低減といった効果が期待されることから、各府省は、クラウド・バイ・デフォルト原則に基づくクラウドサービスの利用の検討に当たっては、「(仮称)Gov-Cloud」の活用を検討する” ”同様に、独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(医療、教育、防災等)等の情報システムについても、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討を進める”

また、政府共通プラットフォーム(総務省)と「(仮称)Gov-Cloud」の関係性に関しては:”2019 年(平成31 年)2月に策定した「政府共通プラットフォーム第二期整備計画」に基づき、総務省は、政府情報システムの整備及び運用の効率化、質の向上並びに政府のガバナンスを支える基盤としての役割を果たすことを目的として、クラウドサービスを活用した第二期政府共通プラットフォームを整備し、2020 年(令和2年)10 月からサービスを提供している。第二期政府共通プラットフォームは、「(仮称)Gov-Cloud」が提供することとなる複数のクラウドサービスの利用環境の一部をなすものであり、各府省が共通で利用する情報システムを中心に、共通的な行政サービス・業務を支えるクラウド基盤として、引き続き取組を推進する。その際、クラウドサービスの技術進展等も踏まえた継続的な改善を行うことで、利用システムにとっての利便性向上や運用・保守の効率化を図る。 以上の取組に当たり、内閣官房及び総務省は、クラウドへの移行を計画的かつ効率的に進めるため、第二期政府共通プラットフォームの運用などの取組を通じて得られたクラウドサービス活用や運用改善などのノウハウを各府省における「(仮称)Gov-Cloud」の利用にいかすなど、クラウドサービス利用の検討段階から移行後の運用までの一貫した府省支援を実施する”

  • 行政機関におけるクラウドサービス利用の徹底 – クラウド・バイ・デフォルト原則を踏まえた政府情報システムの整備(内閣官房、総務省、全府省):”これまで政府では、情報セキュリティ対策や移行リスクへの漠然とした不安、不十分な事実認識等から、クラウドサービスの利用に前向きでなかった側面を有してきたことは否定できない” との記載に続き、”政府情報システムを整備する際には、クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとするクラウド・バイ・デフォルト原則を具体化し、各府省がクラウドサービスを採用し、効果的に利用するために、[前掲の]「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」[..]を策定した。 各府省は、引き続き、クラウドサービス利用方針に基づき、政府情報システムを整備する際には、対象となる行政サービス・業務、取り扱う情報等を明確化した上で、メリット、整備の規模、費用等を基に、各種クラウドサービスの利用を原則として検討する”。 “これを支援するため、政府情報システムについて、[…](「(仮称)Gov-Cloud」)を整備し、早期に運用を開始 […] また、各府省がクラウドサービスの利用の検討を行うに当たり、技術的な助言等を行う”
  • ガバメントネットワーク整備プロジェクト(内閣官房):”現行の政府共通ネットワークは廃止”としたうえで、”また、2020 年度(令和2年度)に、各府省のネットワーク環境の統合後の姿を前提に、利便性、セキュリティ、拡張性、効率性の各要素を兼ね備えたモデルとなるネットワーク環境を整備する。国は、2021 年度(令和3年度)を通じ、当該環境の中での既存業務の遂行により、各府省の円滑な統合に向けての検証を行い、各府省は、自府省の2022 年度(令和4年度)以降のネットワーク環境の更改等を契機にモデルとなるネットワークに統合することを原則として検討を行う”
  • 情報システムの整備に関する基本的な方針(内閣官房・全府省):”必要となる情報システムの整備に当たっては、迅速かつ柔軟に進めるため、クラウド・バイ・デフォルト原則を徹底し、クラウドサービスの利用を第一候補として検討するとともに、共通的に必要とされる機能は共通部品として共用できるよう、機能ごとに細分化された部品を組み合わせる設計思想に基づいた整備を推進する”
  • 行政機関等による情報システムの共用の推進:”各府省は、可能な限り個別に新規のオンラインシステムを整備することは避け、既存の情報システムや政府全体で共通的に利用する情報システムの活用等、効率的な情報システムの整備による行政サービスのデジタル化を図る”との原則のもと、”情報システムの整備時期を見据えつつ、費用対効果やサービスレベルの向上、情報セキュリティの対策強化を図るため、政府共通プラットフォームや民間を含めた各種クラウドサービスの活用を図る”

 各省・個別システム領域でもクラウドを本格活用

  • レワークの推進(全府省):”今後は、行政の情報システム及びネットワークのうち、特に、基盤となるネットワーク環境について、クラウドサービス利用の本格化を踏まえ、行政全体の最適化や利便性とセキュリティの両立を前提に検討を進め、その整理・再構築に向けた取組を進める”
  • 登記情報システム(法務省):”2024年度(令和6年度)までに更改が予定される次期システムにおいては、一部拠点への集約を実施するとともに、代行環境をクラウド化するなどのシステム構成の見直しや運用等業務の精査等による工数見直しを行い、効率的な運用を図る”

 自治体向けにも”Gov-Cloud利用促進”、”三層分離”見直し等の施策を推進

  • 地方公共団体における業務プロセス・情報システムの標準化の推進(内閣官房・総務省他):”標準化・クラウド化の効果を踏まえ、地方公共団体の情報システムの運用経費等については、標準準拠システムへの移行完了予定後の2026 年度(令和8年度)までに2018 年度(平成30 年度)比で少なくとも3割の削減を目指す”
  • 地方公共団体における適正な情報セキュリティ対策(総務省):”いわゆる「三層の対策」により情報セキュリティ対策の抜本的強化が図られたが[・・中略・・]クラウド化など新たな時代の要請を踏まえ、業務の利便性・効率性の向上を目的とした見直しを行い、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改定する”
  • 自治体においても民間のクラウド利用を推進: ”都道府県ごとに構築されている自治体情報セキュリティクラウドについては、標準要件を満たす民間のクラウドサービス利用型への移行を推進するとともに、国主導で調達の共同化を進める”[*付記:20年度3次補正予算において、次期自治体情報セキュリティクラウドへの移行を支援 (国費1/2; 29.3億円)](以下、紫色フォントの記載は、『実行計画』と同日に発表された後述の総務省『自治体DX推進計画』より抜粋し掲載した項目)
  • 基金を設けてクラウド活用を原則とした取り組みを推進:”地方公共団体における情報システムについて、クラウド活用を原則とした標準化・共通化を今後5年で確実に実現していくための取組を全力で推進する。その際、複数年の取組として地方公共団体が予見可能性をもって計画的・安定的にデジタル改革を進めることが可能な形での財政的な支援を行う(※)。(※)J-LIS(地方公共団体情報システム機構)に時限的な基金を創設するとともに、J-LISへの国のガバナンスを強化する法改正に際し、基金の位置付けについても検討する。”[後述の総務省『自治体DX推進計画』]
  • Gov-Cloud移行に向けた準備経費を3次補正予算として要求:”自治体情報システムの標準化・共通化 1,509億円【上述の”基金”(令和7年度まで)】  基幹系情報システムについて、「(仮称)Gov-Cloud」への移行のために必要となる準備経費(現行システム分析調査、移行計画策定等)やシステム移行経費(接続、データ移行、文字の標準化等)に対する補助(国費10/10)” [同上、総務省資料。]
  • (*令和3年1月に追記:)「地方自治体によるガバメントクラウドの活用について」(内閣官房IT室) の資料では、”地方自治体がガバメントクラウドを活用するメリット”、”ガバメントクラウドを活用する業務システム”──等のトピックに関して、説明が付されています。

 準公共分野・独法でも共用資源としてのGov-Cloudを活用

  • “独立行政法人、地方公共団体、準公共分野(医療、教育、防災等)等の情報システムについても、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けて、具体的な対応方策や課題等について検討を進める”(「(仮称)Gov-Cloud」の整備)──との表記で、(中央省庁に限定した施策としてではなく)その「外」の情報システムについてもGov-Cloudの共通機能・共通基盤のリソース提供が行われる構想が記載されています。

 民間領域のDXも先導

  • 企業が行う従業員の社会保険・税手続ワンストップ化・ワンスオンリー化の推進(厚生労働省他):”事業者がクラウドサービス上にデータを記録し、行政機関等が当該データを参照することによって社会保険・税手続を行うこと(社会保険・税手続の新たな提出方法)について環境整備を行”うこと

──以上、『実行計画』のなかに編まれたクラウド関連の方針を取り急ぎ眺めてきましたが、今後各機関でのデジタル・ガバメント推進にクラウドが貢献できるよう、取り組みを続けて行きたいと思います。

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このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が執筆しました。
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小木 郁夫
AWSジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
BD Capture Manager
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