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計画から実行まで ー AWS Migration Hub を活用してマイグレーションとモダナイゼーションを加速する

クラウドのマイグレーションとモダナイゼーションは、時間がかかり複雑で、常に進化し続けるプロセスです。それにもかかわらず、マッキンゼーの調査では、お客様はクラウドにかける予算と移行を計画しているアプリケーションの数を増やしていることが示されています。マイグレーションおよびモダナイゼーション プロジェクトが複雑になる理由は3つあり、第1に、不揃いかつその場限りのソリューションに依存するため、関係者とのコラボレーションが煩雑になる可能性があることです。第 2 に、お客様には絶えず変化する最新技術に追従することに慣れていない場合があります。最後に、お客様は移行プロセス全体の管理を怠って、個別のタスクに気を取られてしまう場合があり、移行プロセス全体のタスクパイプラインの管理を無視することがあります。これらの課題の影響は、以下の図1に示すように、440人を超える経営幹部を対象にマッキンゼーが行った調査のデータから明らかになっています。

このブログ記事では、AWS Migration Hub Journeys を紹介し、コラボレーション、計画、実行など、複雑なマイグレーションとモダナイゼーションに関連する課題にどのように対処するかを紹介します。

図 1: マッキンゼーの調査チャート

AWS Migration Hub Journeys の紹介

今日、お客様はマイグレーションとモダナイゼーションに向けたタスクを実行するため、最新かつ信頼できるガイダンスを探すのに多大な時間を費やしており、移行タスク管理が非効率性と不確実性につながっています。

AWS Migration Hub Journeys は、AWS への移行を成功させるための手順とガイダンスを提供することで、移行タスクの実行と追跡を容易にします。Migration Hub Journeys は、移行フェーズごとにすべてのタスクを階層化し、簡単に実行できるようにそれらをサブタスクに分割しています。また、サブタスクごとに段階的な実行手順書が提供されるため、プロジェクト計画に必要な時間が短縮され、クラウド エキスパートへの依存が軽減されます。ユーザーは必要に応じてタスクを柔軟に編集または追加できます。AWS Migration Hub Journeysは、特に移行に関する自動化作業と手動作業に関するコラボレーションを容易にします。 ユーザーは、個々のタスクの結果として作成された成果物を、一元的に保存して、後で参照することができます。大規模な移行を追跡する際、AWS Migration Hub Journeys は、追跡および警告システムを通じて問題が発生した場合に適切な AWS エキスパートに警告を発し、支援を求めます。AWS Migration Hub のMigration Hub Journeysを利用することで、AWS への移行にかかるコストと時間を全体的に削減できます。

以下の図 2 は、AWS Migration Hub Journeys が移行を開始するにあたりどのように役立つかの概要を示しています。

図 2 : AWS Migration Hub Journeys

マイグレーション・ジャーニー

AWS Migration Hub Journeys では、マイグレーション・ジャーニーの概念を導入しています。これらのジャーニーは、エキスパート、プロセス、ツールを集めて移行作業を効率化するためのプラットフォームです。これにより、構造化と体系化されたタスクパイプラインによって、移行の見通しを一変させます。下の図 3 は、AWS Migration Hub コンソール内のジャーニーの簡単な概要を示しています。これについては、本ブログで詳しく説明します。

図 3 : マイグレーション・ジャーニーの概念

Migration Hub には、マイグレーション・ジャーニーの作成に使用できるテンプレートが用意されています。これらのテンプレートは一般的な移行シナリオを表しており、ベストプラクティスに従っています。テンプレートからジャーニーを作成すると、フェーズ、モジュール、タスク、サブタスクがあらかじめ定義されているジャーニーを作成できます。

マイグレーション テンプレート

マイグレーション テンプレートは、「典型的な」マイグレーション・ジャーニーのタイプ(例:DB2データを移行するジャーニーや、Windows OSアプリケーションを移行するジャーニー)を説明する構造化された文書です。これらには、移行プロセスを完了するために必要な一連のタスクがすべて含まれています。お客様は、自分のニーズに最も近いテンプレートを選択し、テンプレートの内容を新しいジャーニーにコピーしてから、自分の要件に合わせてジャーニーを更新することで、独自の移行プロセスを計画します。AWS Migration Hub には、リリース時に AWS のエキスパートとパートナーによって開発された多数のテンプレートが含まれています。また、お客様は独自のカスタムテンプレートを作成して、特定のニーズに合わせて繰り返し実行できる移行プロセスを確立することもできます。AWS Migration Hub Journeys から現在入手可能なテンプレートについては、下の図4を参照してください。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールで、左側のメニューから[Migration journey templates]を選択します。

図4: マイグレーション・ジャーニー テンプレート

各テンプレートには、AWS 移行方法に沿ったフェーズが設定されており、各フェーズ内には、図 5 に示すように、移行手順をガイドするモジュール、タスク、サブタスクがあります。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールで、左側のメニューから [Migration journey templates] を選択します。リストから任意のテンプレートを選択すると、その特定のテンプレートに対応する詳細情報が表示されます。

図 5: 一般的なマイグレーション テンプレート — 概要

マイグレーション・ジャーニー – フェーズ

テンプレートからジャーニーを作成すると、各フェーズが利用可能になり、それらのフェーズの管理をジャーニー内で開始できます。図 6 は、選択したジャーニーを構成するフェーズを示しています。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから、Journey を選択します。ジャーニー内から、「phases」タブを選択します。

図 6: マイグレーション・ジャーニー — フェーズ

マイグレーション・ジャーニー – タスク

以下の図 7 のタスクには、必要な手順とガイダンスが記載されています。場合によっては、タスクを完了するのに役立つ、またはタスクを完了するために必要となるツールに関する指示も記載されています。タスクを特定のタスク所有者に割り当てたり、完了タイムラインを指定したり、推定作業レベルと実際の作業レベルを把握したりできます。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから、Journey を選択します。ジャーニー内から、[tasks]タブを選択します。任意のタスクを選択すると、タスク内の詳細と編集可能な設定が表示されます。

図 7: マイグレーション・ジャーニー — タスクの詳細

マイグレーション・ジャーニー – サブタスク

タスクを正常に完了するために、タスクの下位にサブタスクが集約されます (下の図 8) 。タスク(と複数のサブタスク)でコメントやファイルを共有することができるため、別のチームメンバーに割り当てて共同作業を行うことができます。依存関係は、タスクの完了を妨げるブロッカーとともにタスク内にリストされます。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから、Journey を選択します。ジャーニー内から「tasks」タブを選択し、編集するタスクを選択します。タスク内から、[Subtasks]を選択します。

図 8: マイグレーション・ジャーニー — タスク — サブタスク

チームメンバーは、タスクおよびサブタスクにファイルを添付できます (図 9)。たとえば、タスクの完了に役立つ分析レポートを添付します。タスクの結果を含むファイルを添付することもできます。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから 、Journey を選択します。ジャーニー内から、[Tasks] タブを選択し、編集するタスクを選択します。タスク内から、[Attached files] を選択します。

図 9: マイグレーション・ジャーニー — タスク — 添付ファイル

マイグレーション・ジャーニー – モジュール

タスクはモジュールに割り当てられて編成されます (図 10)。モジュールは、特定の結果を達成するようフェーズ内のタスクを整理するために使用する論理的なコンテナです。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから、Journey を選択します。ジャーニー内から [Modules] タブを選択します。

図 10: マイグレーション・ジャーニー — モジュール

マイグレーション・ジャーニー — 個人とチーム

マイグレーション・ジャーニーには、移行プロセスのコントリビュータまたは管理者である個人とチーム(図11)を定義する機能も含まれています。ジャーニーの作成者は、自動的にそのジャーニーの管理者になります。

個人またはチームをコントリビュータまたは管理者としてスペースまたはジャーニーに追加するには、招待状を送信します。追加されるには、招待を受け入れる必要があります。また、招待を断ることもできます。

使い方 — Migration Hub Journey コンソールから、Journey を選択します。ジャーニー内から、[Individuals and teams]タブを選択します。

図 11: マイグレーション・ジャーニー — 個人とチーム

AWS Migration Hub Journeys へのアクセス

AWS を初めて使用し、クラウド移行の計画段階の初期段階にある場合は、AWSアカウント無しで AWS Migration Hub Journeys に直接アクセスするオプションがあります。AWS Migration Hub Journeys に直接アクセスするプロセスは、AWS ビルダー ID を利用することで簡略化されます。

クリーンアップ

マイグレーション・ジャーニーをクリーンアップする手順は、AWS Migration Hub Journeys コンソールからマイグレーション・ジャーニーが削除できます。下の図 12 に示すように、AWS Migration Hub Journeys の [Migration journeys] セクションから、ジャーニーの横にあるラジオボタンを選択し、右上の [Actions] ドロップダウンをクリックして [Delete journey] を選択します。お客様が確認し、追加の書面による同意を提供すると、そのジャーニーは完全に削除されます。

図 12: マイグレーション・ジャーニーの削除

まとめ

AWS Migration Hub Journeys は、リアルタイムのガイダンスと効率的なコラボレーションによってマイグレーションとモダナイゼーションの両方のプロセスを合理化し、複雑な移行を総合的な移行プロセスにおける管理可能なタスクに変換します。お客様は、AWS Migration Hub Journeys の機能と利点を調べて、お客様やパートナーのプロジェクトに実装することを検討することをお勧めします。今すぐ AWS Migration Hub Journeys の能力を活用して、マイグレーションとモダナイゼーションのジャーニーを最適化し、よりスムーズで効率的なAWS移行を実現してください。AWS Migration Hub Journeys を採用することで、組織はマイグレーションとモダナイゼーションの複雑さを自信を持って乗り切ることができ、AWS での体験をより効率的かつ成功させることができます。

著者について

Kalyan Vennelakanty

Kalyan Vennelakanty

Kalyan Vennelakanty は AWS のテクニカルプログラムマネージャーで、クラウドアプリケーションのデリバリーに豊富な経験があります。彼は新しいクラウドテクノロジーに取り組み、お客様の移行ニーズを満たすのを支援することに情熱を注いでいます。

Steven Koufoudakis

Steven Koufoudakis

Steven Koufoudakis は AWS のパートナーソリューションアーキテクトです。彼は新しいテクノロジーを扱うことに喜びを感じています。また、適切なテクノロジーを組み合わせてお客様のビジネスニーズを満たすお手伝いをしています。パートナーやお客様の AWS でのワークロードのマイグレーション、モダナイゼーション、最適化を支援することに情熱を注いでいます。

Mohan CV

Steven Koufoudakis

Mohan CV は、バージニア州北部に拠点を置く AWS の主任ソリューションアーキテクトです。大企業のマイグレーションとモダナイゼーションの分野で豊富な経験を持ち、データ&アナリティクスを専門としています。Mohanは新しいテクノロジーの活用に情熱を注いでおり、お客様が独自のビジネスニーズに合わせてこれらのイノベーションをカスタマイズできるよう支援することに喜びを感じています。

この記事の翻訳はソリューションアーキテクトの須山健吾が担当しました。原文はこちらです。