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八丈町立富士中学校:生成AIを活用したオリジナルチャットボットの制作

生成AIが急速に普及する中、文部科学省が2023年7月に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しました。⽂部科学省では、当ガイドラインを踏まえ、リーディングDXスクール事業におけるパイロット的な取組として、教育活動や校務において⽣成AIの活⽤に取り組む学校を指定し、「効果的な教育実践の創出」を⾏うことで、今後の更なる議論に資するよう、知⾒の備蓄をすすめることとしています。パイロット校に指定されたうちの1校が⼋丈町⽴富⼠中学校です。富⼠中学校での⽣成AI活⽤を⽀援したライフイズテック株式会社にお誘いいただき、2023年12⽉に中学2年⽣の授業を視察しました。本記事ではその模様をレポートします。

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八丈島の魅力を伝えるオリジナルチャットボットを制作!

富士中学校では、ライフイズテック株式会社の協力のもと、3年前から生徒が島の魅力を探究し、「ライフイズテック レッスン」を活用したWebサイト制作を通じて島外に発信するという地域課題解決型の取組を進めています。

今回は、富士中学校の2年生が、生成AIを活用しながら「八丈島の魅力を伝えるチャットボット」を制作しました。ライフイズテック レッスンを活用して制作を進めているオリジナルのWebサイトに、このチャットボットを搭載させ、Webサイトをさらに充実させようというものです。子どもたちがAIを使って新たな価値の「生産者」になるために「課題解決をベースに生成AIの使い方を学び実践する」という高度なチャレンジになります。

チャットボットは、ライフイズテック社で開発中の学校向け生成AIサービスを利用して、計6時間の授業で作成しました。生成AIが書いたプログラミングコードを、ブラウザのみでコードを記述/ 実行 / デバッグできるクラウドベースの統合開発環境(IDE)である AWS Cloud9で動作を確認しながらチャットボットを作成していきます。学校向け生成AIサービスは、学校向けに特化した機能やUI・UXの最適化を図ってあり、生徒も教師も安心安全に生成AIを利活用できるようになっています。

最初の2時間では、チャットボットの枠組を作るため、学校向け生成AIサービスを活用し必要なプログラミングコードを生成しました。

視察した3-4時間目では、先生が生成AIのプロンプトの書き方や、個人情報・著作物など入力してはいけない文言についてレクチャーをした後、プロンプトを体験。最初は何を入れるべきか、躊躇していた生徒もいましたが、「どんなことでも入れて大丈夫だよ」という声掛けで、どんどん活用できるようになり、「八丈島の魅力を伝えるチャットボット」を作成するためのアイディアを練りました。プロンプトの回答が返ってくるのに少し時間がかかるので、その間は教材を見たり、別の作業をしたりと工夫していました。次に、練ったアイディアをチャットボット制作画面に入れました。実際にチャットボットが思うような操作をするか確認。真剣な顔をして、集中して取り組んでいる生徒たちの姿が印象的でした。

ライフイズテック社で開発中の学校向け生成AIサービスにはプロンプトのヒントを出す工夫などがあり、生徒たちが使いやすいインターフェースになっています

チャットボットはAWS Cloud9を立ち上げて作成します

「チャットボットが観光施設の問い合せ先の電話番号を伝えてしまうけど、大丈夫かな?」と先生に聞いている生徒も。先生からは「観光施設に、電話番号を出してもよいか、電話で聞いてみたら?」とアドバイスされ、「電話だと緊張するから、メールで聞いてみる」とのこと。実社会と結びついた学習の広がりを感じた一幕でした。

最後の5-6時間で、画像生成AIを使って、チャットボットのキャラクターを作成しました。3-4時間目で先取りで作業をしている生徒もいました。狙った画像が出るまで、何度もプロンプトを工夫していました。

画像生成はAmazon SageMakerにStable Diffusionをデプロイして利用しています

山下孝輔先生は、「(生徒たちは)面白かったでしょう。響くものがありました。」と手応えを感じてくださったと同時に、「生成AIを利用すると、中学生も高度なことができてしまう。ただどこまで理解しているかは、確認が必要」「生成AIに『使われない』ために、自分の思いやアイデアをいかに取り入れられるか、AIを使っていかに発展させられるかということに今後チャレンジしていきたい」と語っていました。

放課後の時間にも、クラスの半数以上の生徒たちが残っていて、続きの作業をしていましたが、そこで一番盛り上がっていたのは、先生の顔を真似た画像を生成する競争でした!

生徒が生成AIを使うための工夫

今回、富士中学校での授業に協力したライフイズテック社は、次世代デジタル人材育成を手がけ、「中高生ひとり一人の可能性を一人でも多く、最大限伸ばす」をミッションに2010年に創業したEdTech企業です。主力事業である中学校・高校向けクラウド教材「ライフイズテック レッスン」は、全国600以上の自治体で4,000校の公立・私立学校、約120万人が利用(2023年8月時点)する、情報・プログラミング学習サービスへと成長しています。さらに生成AIの登場以降、すでに数多くの生成AI×教育の新サービス開発や取組を進めており、AIネイティブのための教育変革を牽引しています。

本授業で利用した学校向け生成AIサービスのプロダクトマネージャーの窪田秀行氏から、「文章生成/画像生成を生徒のみなさんが簡単かつ安心して使うことができる環境の提供が必要と考えています。例えば、画像生成のためのプロンプト入力の場面においては、必要な構成要素及びその入力例の組み合わせからプロンプト作成できる機能を具備し、プロンプトの専門知識の必要性を軽減させる工夫をしています。また、生成された画像を安心・安全に生徒画面へ届けるための仕組みとして、Amazon Rekognitionを活用させていただき、性的・暴力的な画像の生成を抑止する機能も搭載しています。」と生徒が生成AIを使うための工夫を教えていただきました。

今回の視察した授業では、中学生が最先端のことを学び、AIの利用者に留まらず、AIを使った課題解決者や開発者といった「生産者」への一歩を踏み出したことに感銘を受け、生徒たちを頼もしく感じました。

【参考:AWS導入事例】ライフイズテック株式会社「本格化する情報教育をオンラインプログラミング教材で支援全国の中高生が“学び”に没頭できる環境を AWS で実現」

このブログは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター 教育事業本部 初等中等教育/EdTech営業部 アカウントエグゼクティブである尾島菜穂が執筆しました。