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【開催報告】生徒の成長につなげる教育データ利活用の先進事例(2022/11/11)
こんにちは、AWS ソリューションアーキテクトの深井です。
2022 年 11 月 11 日に「生徒の成長につなげる教育データ利活用の先進事例」というタイトルでオンラインセミナーを開催しました。開催報告として、セミナーの内容と当日の収録映像を紹介します。
開催の背景
2019 年に開始された GIGAスクール構想から 3 年が経過し、多種多様な学習ドリル、EdTech サービスの有効活用や、教育データの利活用について今後どのように取り組むべきか、多くの学校機関、教育委員会様では、まだまだ手探りの状況が続いているのではないでしょうか?
本セミナーでは、2015 年から生徒への端末導入を進め、データ・ID の散在や先生の負荷増大など、多くの課題に直面していた郁文館夢学園様が、どのようなアプローチで課題を解決し、現在のような生徒 1 人 1 人のオーダーメード教育を実現されたのか、また、キヤノンITソリューションズ 様から郁文館夢学園様のデジタルキャンパス化構想の実現に向けて、独自に開発した in Campusを活用した教職員の課題解決についてご説明いただきました。セッションの後半には AWS のサービスを活用したスタディログ分析や教育現場のちょっとした業務効率化に活用いただけるサービスについて、デモを交えてご紹介しております。
セミナー内容紹介 / 収録録画
タイトル : 生徒の成長につなげる教育データ利活用の先進事例
開催日 : 2022 年 11 月 11 日 (金)
動画視聴はこちら
(必要情報を入力後に視聴可能となります)
生徒の成長につなげる教育データ利活用の先進事例 (学校法人 郁文館夢学園 人材開発室 室長 藤井 崇史 氏)
このセッションでは、郁文館夢学園が 2003 年から開始しているオーダーメードのキャリア教育である「夢教育プログラム」の取り組みから「デジタルキャンパス化構想」の実践について紹介しています。
夢教育プログラムでは、生徒全員が「夢手帳」に生徒自身の夢や、夢から逆算した計画表、日々の教育データを蓄積しています、担任は夢手帳のデータをもとにフォローアップを行っています。生徒は 1 年をかけてフィールドワークを通してレポートを執筆し、ポートフォリオとしてまとめ大学受験に活用します。
オーターメード教育では、デジタルデバイスや個人の教育ポートフォリオの利用のためのデジタル環境の整備が必要になるため。一人一台端末としてiPad Airを利用し、高速なネットワーク環境を提供しています。
運用管理として Google Classroom を導入し、現在では各クラスごとに Classroom が存在しています。全教員が Google Classroom を利用することで、進捗状況や資料・教材のやり取りが行え、生徒ごとの活動記録を貯めています。また、学習ポートフォリオでは「スタディサプリ」や「すららドリル」等を利用しています。
また、上記のような環境とデジタル体制の下地があることにより、2020 年の新型コロナ対策で全校オンライン授業に移行した際も、一切授業を止めることなく指導することが出来ています。
郁文館夢学園では、2018 年頃から「デジタルキャンパス化構想」を進めましたが、複数の互換性のないシステムがあることが原因で手間が増大し、教員の負荷が増え、教員が生徒に向き合う時間が減り、デジタル化やシステムに対する不安が増していました。これらの課題を解決するために、教育データ利活用の意義の見直しを行いました。
教育の質の向上・夢教育の進化実現するために、教える効率と働き方の効率を最大化 にゴールを設定し、情報共有による学校の強みや特色の創出や、生徒のために利用する時間のを増やすための業務削減シミュレーションも行っています。
現在の「デジタルキャンパス化構想」では、グループウェアなど生徒授業に関わるもの、業務システムへの入り口を「教職員ポータルシステム」に集約しています。お知らせやデジタル化された出欠席、それに成績推移や面談記録を合わせることで教員は生徒の現状をスピーディかつ正確に把握することが出来るようになります。生徒は、過去の先輩の卒業論文を情報を検索・比較することで、進学やその先の進路のイメージを広げることが出来ます。現在、6 か年の夢教育のカリキュラムマネジメントを目指しており、2024 年に完成の予定になります。
キヤノンITソリューションズが考える初等中等教育の将来 (キヤノンITソリューションズ株式会社 文教ソリューション開発本部 第二開発部 ソリューション推進グループ 大高 史嵩 氏)
このセッションでは、キヤノンITソリューションズが展開する 教育支援デジタルプラットフォーム「 in Campus シリーズ」から郁文館夢学園と進めている教育DXの実現、それに続く初等中等教育の将来について説明しています。
in Campus は学校で必要とされる 10 個のサービスからなるサービスラインナップの総称です。
キヤノンITソリューションズは 1990 年代から文教市場に参入しています。これまでは高等教育機関向けが中心でしたが、近年では新型コロナによる GIGA スクール構想の前倒しなど、初等中等教育のニーズも高まり、郁文館夢学園をはじめとする中高一貫校へのサービス展開を始めています。
初等中等教育への取り組みのなかで、郁文館夢学園への要件定義や他学校へのヒアリングを行い、生徒・教職員・保護者の「課題」と「あるべき姿」を整理し郁文館夢学園とシステム全体像を作り上げています。現在、多くのシステムをAWS上で構築を進めており、データ分析も AWS のサービス利用を検討しています。
郁文館夢学園と導入を進めている教育DX のテーマとして 教員を支援 し 教育の質の向上 を進めることを根底としています。教員が忙しすぎて子供に向き合える時間を確保できないといったような課題を解決するためにシステムを導入を行っています。
in Campusでの教職員の課題解決として「欠席情報登録の効率化」「面談の質向上と効率化」を紹介しています。
欠席情報登録の効率化では、保護者からの欠席連絡を直接校務システムへ反映させることで、教員の朝の事務負担を減らすことが出来ます。これが実現することにより朝の職員室に掛かってくる電話が無くなるため導入メリットが体感出来ると考えています。
面談の質向上と効率化では、教員ごとの情報量の差があるため面談の質が一定ではなく、情報を集めるための時間がかかっているという課題に対し、新サービスでは面談で必要な情報を全てシステムに蓄積するため効率化が図られ、空いた時間を有効に活用し個別最適な面談を行うことが可能になり、三者面談で保護者に納得感を与えることができると考えています。
キヤノンITソリューションズが考える初等中等教育の将来として、教職員の業務改善を行うことで、生徒・保護者へのフィードバックが良くなると考えています。教職員だけでなく生徒・保護者それぞれの固有の課題に対し、新サービスを活用することで課題を解決し生徒1 人 1 人に合わせた教育の実現に貢献していきます。
AWSを活用したスタディログ分析のデモ (ソリューションアーキテクト 松井 佑馬)
このセッションでは、教育デジタル活用ロードマップとデータ基盤の関係について説明し、スタディログの国際標準規格である xAPI の説明を行いました。データ分析基盤として利用する AWS のサービス を紹介し、最後に xAPI 形式のログを利用したデータの抽出、可視化のデモを行っています。
国が策定した「教育データ利活用ロードマップ」では「誰もが、いつでもどこからでも、だれとでも、自分らしく学べる社会」というビジョンが掲げられていて、そのために教育データの蓄積と流通のイメージが提示されています。また、ロードマップの中では、教育データの利活用環境や連携基盤、具体的なデータ標準について言及されています。
言及されているデータ標準の中で、スタディログ(学習履歴)の国際標準規格の一つとして xAPI (Experience API) があります。 xAPIは学習履歴における 「誰が何をどうした」 という構造をJSONで記述するものです。また、学習の結果や時刻といった情報を付加することで学習履歴を汎用的に記述することができます。
一方でデータ分析を行う際には、データが散在して管理困難、ローカルPCで分析するには耐久性・性能・セキュリティが不十分、といった課題があるかもしれません。その解決策としては、クラウドでデータレイクを構築してデータ分析基盤とすることが考えられます。データレイクでは様々な生データを集めて保存しておくことで、将来的な分析ニーズの変化にも柔軟に対応することが出来る様になります。
AWSのサービスによるデータレイク構築では、データの収集・保存に Amazon S3 および AWS Glue、また分析・可視化として Amazon Athena および Amazon QuickSight を利用することが可能です。
Amazon S3 はスケーラブルなオブジェクトストレージで、あらゆるデータを長期間保存することに向いているサービスです。AWS Glue はデータのカタログ化やデータの変換 (ETL) を簡単に行うことが出来るサービスです。Amazon Athena は S3 上に置かれたデータに対し SQL クエリを実行することが出来るサービスです。Amazon QuickSight はデータからグラフやダッシュボードを作る可視化ツールになります。
スタディログ分析のデモでは、まず xAPI 形式のスタディログ(テストの解答履歴)を S3 に保存し、Glue Crawler で xAPI の詳細を知らなくてもスタディログのカタログを作成できることを示しました。次にスタディログのカタログに対し Athena の SQL クエリを実行することで、スタディログから個々人のテスト成績および解答データを出力しました。最後に、それらのデータを QuickSight で可視化して、得点の分布・問題の正答率・解答時間の分布といったグラフを含むダッシュボードを作成する方法を紹介しました。デモの詳細につきましては、ぜひこちらの動画をご覧ください。
AWS AIサービスを活用した業務効率化のデモ (ソリューションアーキテクト 深井 宣之)
このセッションでは、AWSが提供している AI サービス の中から 音声からテキストを書き起こすサービス、画像・動画分析サービス を紹介し、紹介したサービスを利用したデモを行っています。
AWS には 機械学習 を利用したサービスが複数あります。その中で AIサービスは 機械学習の深い知識を必要とせずに利用可能なサービスになります。このセッションでは、AIサービスとして Amazon Transcribe, Amazon Rekognition の紹介とデモを行いました。
Amazon Transcribe は音声からテキストを書き起こすサービスです。Transcribe は日本語を含む複数の言語に対応し、ユーザが用意した音声ファイルをテキストに変換します。デモでは Transcribe 以外のサービスを組み合わせ、ユーザが WinSCP を利用し SFTP でファイルをアップロードすることで、自動的にテキストへ書き起こしを行う動きを紹介しています。Transcribe の活用方法として、議事録の作成支援、授業内容の振り返り、語学練習としての英語の書き起こし を提案しています。
Amazon Rekognition は動画・画像分析のサービスになります。Rekognition は動画・画像を対象に多くの種類の分析を行うことができますが、このセッションでは 顔検索 を利用したデモを行っています。検索したい顔の写真を Rekognition に送ることで、事前に作成した顔コレクションの中から、対象の人物が含まれている写真がピックアップされます。さらに、表情の違いや、顔の一部が隠れている場合でも正しく判定されることを確認しています。Rekognitionの活用方法として、行事写真の焼き増し対応や卒業アルバム作成作業の効率化、担任の先生以外が撮影した大量の写真からの検索などを提案しています。
このセッションで行ったデモの利用だけではなく、紹介したAIサービスを他のサービスや製品と連携させることでより価値を発揮することが出来ると考えています。
おわりに
本セミナーの内容が、教育データ利活用や学校業務の効率化への一助になれば幸いです。AWSの活用やご提案に関するご相談、ご要望がありましたら、担当営業、もしくは公式サイトの お問い合わせ までお問い合わせください。
このブログは、2022 年 11 月 25 日時点の情報に基づいてソリューションアーキテクト 深井が執筆いたしました。