Amazon Web Services ブログ

消費財企業の車両管理部門が考慮すべき 3 つの革新的テクノロジー

このシリーズブローグのパート 2「消費財企業と物流ベンダーがAWSデータレイクで車両管理を最適化する方法」では、消費財企業の車両管理部門が非常にスケーラブルな Amazon Web Services (AWS) データレイクを構築し、リアルタイムデータやドライバーの安全性スコア、車両テレメトリデータから実用的な洞察を得る方法について説明しました。続くこのブログではさらに一歩進んで、消費財企業が車両管理データレイクからさらに多くの価値を得るために実現可能な 3 つの最先端テクノロジーについて説明します。

消費財企業車両管理における高度な位置情報追跡機能

ユースケースを確認する前に、ジオフェンシングについて理解を合わせておきましょう。車両管理にとってジオフェンシングは重要な概念です。ジオフェンスとは現実の物理領域を表現する仮想境界です。ジオフェンスの一例として、位置情報が検知できるユーザーやデバイス、あるいはサービスが仮想境界を越えると、その位置情報の変化に基づいた特定のアクションを起動するといったことがあります。

Amazon Location Service は、データセキュリティとユーザープライバシーを損なうことなく、開発者がアプリケーションに位置情報機能を簡単に追加できるようにするサービスです。このサービスを使うことで消費財企業は、データとユーザーのプライバシーを確保しながら、車両管理アプリケーションに自動化されたリアルタイムの位置情報と追跡、ジオフェンスリソースを組み込むことができます。位置情報サービスによって、以下のような高度な機能を利用して車両管理を強化することができます:

  1. 輸送中在庫出荷のリアルタイム可視化: サプライヤー倉庫からの出荷、ロジスティックサービスプロバイダーによる輸送中在庫のステータス、フルフィルメントセンターへの着荷といった貨物輸送のマイルストーンを正確に把握できます。オペレーションチームと消費者はより正確な到着予定時間を知ることができるようになります。
  2. サードパーティ製ソフトウェアアプリケーションに依存することなく車両管理データを保有: データの遅延や追加コスト、煩雑なデータアクセス、サードパーティアプリケーション新機能不足といった、(サプライチェーンの)ダウンストリームにおける問題を回避することができます。
  3. 例外的なイベントのプロアクティブ監視: 自動アラートを使用して、例外的なイベントの発生時に車両管理者に通知します。例えば、車両が境界を越える、計画されたルートから逸脱する、といった誤配送や車両盗難を示唆するイベントです。
  4. 生データの価値向上: 事後解析や対処、予測といった価値を見出し、アセット使用率最適化やルート計画、需要予測を行います。

消費財企業の車両管理部門は、AWS の配信アプリケーションアーキテクチャのサンプルのように、データレイクを使用して配信アプリケーションを作成できます。次の図に消費財車両管理システムで Amazon Location Service を利用した車両管理アプリケーションを示しています。

図1: 消費財車両管理システムにおける車両追跡と配送管理

自動運転

自動運転トラックは以前から車両管理システムの一部であり、小売業者は高度にスケーラブルな自動運転トラック技術に、コスト削減や自己回避、予知保全、配送精度といったメリットを見出してきました。ドライバー不足に対する救済策ともなります。こういった理由から、Amazon は自動運転車やカートを使用して倉庫のフルフィルメントタスクを実行しています。消費財企業が自動運転車を使用して倉庫とロジスティクスのプロセスをいかに最適化するかのユースケースといえます。以下に、トランスファーハブモデルと隊列走行の 2 つの自動運転車ユースケースを紹介します。

トランスファーハブモデル

Amazon は、トランスファーハブモデルで自動運転トラックを使用しています。このモデルでは、トラックは通常、高速道路で消費財商品を運び、ハブ拠点に停車します。ハブ拠点からは商品は有人のトラックに積み込まれ、最終目的地まで配送されます。商品輸送の長距離を占める高速道路部分では人間の介入を必要としませんが、一方で配達のラストワンマイルは、不安定な地元の交通状況や歩行者といった要素が含まれる可能性が高い複雑な環境であるため、Amazon ではそこには人間のドライバーを配置しているのです。自動運転により、長距離輸送部分でのドライバー不足のプレッシャーは軽減されますが、Material Handling & Logistics の記事「Why Is There Still a Truck Driver Shortage?」にあるような課題は依然として存在します。

図2: トランスファーハブモデル

自動運転車の技術が今後も進化するにつれて、この戦略を自社の車両管理に組み込んだ消費財企業では、ルート最適化とトランスファーハブでのメンテナンスコスト削減により、大幅なコスト削減の実現が期待できます。

隊列走行

トラック隊列走行は、自動化された高速道路システム(自動運転車用に指定された道路システム)でトラックを車両縦隊で走行させる方法で、多くの場合交通渋滞が少なくなるとされます。この仕組みは組み込みセンサー技術を用い、交通状況と車両の速度を監視、最適化し、交通信号を調整します。自動化された高速道路システムと、その構築における AWS の役割について、詳しくはケーススタディ「Miovision Transforms Transportation Using AWS IoT and Smart Devices」をご覧ください。

隊列走行では、一群のトラックが先頭のトラックにワイヤレスで接続されており、運用上の安全性と燃料効率を実現します。現在、Amazon 消費財の隊列走行では、先頭には有人トラックを配置しています。しかしスマートロードでの完全無人隊列走行は、それほど遠くない将来に消費財企業にとっての主要な技術革新となるでしょう。

図3: 隊列走行

消費財車両管理データソースのための AWS Data Exchange

AWS Data Exchange から得られる高品質なデータを利用すれば、消費財企業の車両管理部門は自社車両データを拡張、強化できます。AWS Data Exchange を利用すると、クラウド内のサードパーティーのデータを簡単に検索、サブスクリプション、利用できるようになります。AWS Data Exchange で手に入るデータのバリエーションや量、スピード感は、車両管理部門にとってのゲームチェンジャーとなり得ます。なぜなら、データの保存や配信、請求、エンタイトルのためのインフラストラクチャを構築、維持することなく、複数の認定済みサードパーティが収集したデータを簡単に利用できるようになるからです。AWS Data Exchange を使用して、消費財企業は数百のデータソースにすばやくアクセスできます。

車両管理の領域では非常に多くの革新が起こっており、AWS はお客様が車両管理データレイクから最大の価値を得る支援をします。ご紹介したようないずれかのテクノロジーを実現する準備があれば、AWS がお手伝いします。今すぐアカウントチームに連絡してください。


著者について

Michele Sancricca

Michele Sancricca は、AWS の輸送・物流テクノロジーのワールドワイドヘッドです。以前は Amazon Global Mile のサプライチェーン製品の責任者を務め、世界で2番目に大きな海運会社である Mediterranean Shipping Company のデジタルトランスフォーメーション部門を率いていました。引退した少佐である Michele は、イタリア海軍で電気通信士官および指揮官として 12 年間過ごしました。

Shailaja Suresh

Shailaja Suresh は、ソフトウェア製品のアーキテクチャ、戦略、デリバリにおいて 16 年の専門的な経験があります。彼女は AWS のシニアソリューションアーキテクトであり、お客様に AWS クラウドへのジャーニーのために、規範的な技術ガイダンスを提供しています。 Shailaja はエンジニアリングスキルを持ち、ソフトウェアエンジニア、アーキテクト、リード、およびプロジェクトマネージャーとしての役割を果たしてきました。Shailaja は、メンタリングとコーチングを通じてチームに力を与えることができると強く信じています。

翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。