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CCoE 活動検討のはじめの一歩

昨今、クラウドがビジネスにもたらす経済的価値を追求し、会社や組織全体としてこれを享受するための施策を立案/推進するチームを立ち上げるお客さまが珍しいものではなくなりました。このチームは「クラウド活用推進組織」や「クラウド CoE (Centre of Excellence)」、もしくは省略して「CCoE」と呼ばれています。

前回のブログでは CCoE として活動するにあたっての心構えについてご紹介いたしました。本稿では、CCoE の活動内容を検討する際の考え方についてご紹介いたします。

この記事は、次のような方を読者として想定しています。

  • まだ CCoE を組成していないお客さまで、CCoE について知りたい もしくは CCoE を組成しようと考えている方
  • CCoE を組成しているお客さまで、業務の質を良くしたい もしくは 業務の幅を広げたいと考えている方

CCoE への期待は十人十色

CCoE の活動に対する期待値は、関係者の立場によって異なってきます。例えば、経営層はクラウド活用によるビジネス価値の可視化が期待値かもしれませんし、セキュリティ部門は統制上のゲートキーパーの役割を期待しているかもしれません。関係者と認識がズレたまま活動が進んでしまうと、効果的な活動が出来ず、関係者に不満が溜まってしまう結果に陥るかもしれません。具体的な活動を開始する前に、認識のズレを極小化できるよう CCoE のミッションを明文化して認識合わせすることをお勧めします。クラウド活用を推進するにあたっては活動も多岐にわたり多くの関係者が存在するため、クラウド推進活動全体を俯瞰したうえで、経営層や関係部門と共通認識を持って CCoE の活動内容を検討することが重要なポイントです。

クラウド活用推進活動全体における CCoE の活動

そもそもクラウド活用を推進する上でどのような活動が必要でしょうか。クラウドを活用しビジネス成果を加速させるためには、共通基盤構築や設計ガイドライン作成といった技術的な観点だけでなく、人材育成やガバナンスの整備といった非技術的な観点での活動も重要になってきます。AWS ではこれまで多くのクラウド導入をご支援してきた経験から AWS クラウド導入フレームワーク(AWS CAF) というフレームワークを公開し、クラウド導入の一連の基盤となるケイパビリティやベストプラクティスをご案内しております。AWS CAF では、クラウド活用推進のために必要な活動は6つの観点にカテゴライズされております。

AWSクラウド導入フレームワークは6つの観点でカテゴライズされます。

AWS CAF の観点を踏まえて、CCoE の活動内容について想像してみてください。お気づきかもしれませんが、CCoE はクラウド活用推進を担う組織ですので、6つの観点すべてが活動スコープとも言えます。また、ビジネス価値を実現するうえで、事業戦略など経営レベルの施策と整合した活動になっている必要もあります。ただし、ご安心ください、これらすべての活動を CCoE 単独で実施する必要はございません。元々の組織形態として、いずれかの機能を主管している部門が存在する企業も多いと思います。それぞれの企業の事業環境や事業戦略上の優先順位を踏まえ、CCoE がどの領域にどの程度入っていくのかを検討し、関係部門と役割を調整のうえ活動を決めていくことが肝要です。

自社の課題を起点に CCoE の活動を考える

CCoE 設立を検討するにあたって、他社の CCoE の活動内容を調査される方も多いと思います。私がご支援しているお客様からも「他社の CCoE はどのような活動をしているのか。」というご質問を良く頂きます。昨今、CCoE に関する多くの活動事例が公開されており、簡単に入手できます。例えば、AWS Summit Online 2022では以下のセッションで CCoE の活動について触れられております。

  • 「朝日生命×AWS」生保の次世代プラットフォーム構築(CUS-19) [動画資料]
  • コニカミノルタの画像 IoT プラットフォーム FORXAI における AWS 活用とクラウド人財強化について(CUS-21) [動画資料]
  • 関西電力のデジタルトランスフォーメーションを支えるクラウド標準化・ガイドライン策定取組と AWS 活用事例(CUS-24) [資料]
  • ユーザ企業が AWS 認定資格を取得することの意義と効果 (ファミリーマートと QUICK の実例紹介)(CUS-26) [動画資料]

先行事例はとても魅力的です。ついついそのまま自社に取り入れたくなるかもしれませんが、少し立ち止まって考えてみましょう。確かに先行事例は宝の山ですが、他社で上手くいっている活動をそのまま自社に取り入れても上手く機能するとは限りません。会社が違うということは、そもそもビジネスも組織も異なります。すなわち CCoE が取り扱う課題が異なっているのです。そのため、自社への適用を検討する際には、自社の状況を踏まえて有効性を検討したうえで、必要に応じてカスタマイズする必要があります。先の事例でも、CCoE を取り巻く環境や進め方が異なっております。このように、会社によって取り組むべき課題が異なり多様であるため、CCoE の形態も必然的に多様になります。あくまでも、自社の課題を起点に CCoE の活動を検討することが重要です。

CCoE は環境に応じて変化する

また、同じ会社の CCoE でも時間の経過とともに、組織もプロセスも成熟し CCoE を取り巻く環境が変化していくため、クラウド利用の状況に合わせてより効率的に運営できるように変化していくことが重要です。一般的に、時間経過ともにクラウド利用が進み、利用部門や利用システムの規模も拡大していくため、CCoE のタスクも増加していきます。CCoE に権限が集中している場合、CCoE のリソースがボトルネックになりかねません。組織全体でクラウド推進活動を拡大させていくためのアプローチの一つとして、人や組織の成熟度に合わせて、プロジェクトや既存組織に CCoE の権限を委譲しながら、CCoE 自体は更に先を見据えたタスクに集中できるようにシフトしていくことが考えられます。このように、CCoE はクラウド推進活動が組織全体で最適な状態になっているか否かを常に確認しながら柔軟に変化していくことが求められます。

CCoEの役割は時間とともに変化していきます。

まとめ

本稿では CCoE の活動内容を検討する際の考え方についてご紹介しました。

  • クラウド活用を推進するにあたっては活動も多岐にわたり多くの関係者が存在するため、クラウド推進活動全体を俯瞰したうえで、経営層や関係部門と共通認識を持って CCoE の活動内容を検討することが重要です。
  • CCoE の先行事例をそのまま取り入れてもうまく機能しない可能性があります。クラウド推進を取り巻く環境は各社各様ですので、CCoE の活動定義に唯一解はありません。自社の課題や事業戦略上の優先順を踏まえ活動内容を検討することが重要です。
  • 時間の経過とともに組織もプロセスも成熟し CCoE を取り巻く環境が変化していくため、それに応じて CCoE も形を変えていくことが重要です。

本稿の内容が CCoE の活動を検討されている方々の一助になれば幸いです。
今後も CCoE やクラウドジャーニーに関するコンテンツを発信していきますので、ご期待ください。

参考情報

著者

カスタマーソリューションマネージャー 西部 信博
カスタマーソリューションマネージャー 山泉 亘