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2023 年の事例から見る CCoE の活動と在り方 (前編)
こんにちは。カスタマーソリューションマネージャー (CSM) の仁科です。昨今、クラウドがビジネスにもたらす経済的価値を追求し、会社や組織全体としてこれを享受するための施策を立案/推進するチームを立ち上げるお客さまが珍しいものではなくなりました。このチームは 「クラウド活用推進組織」 や 「クラウド CoE (Centre of Excellence)」、もしくは省略して 「CCoE」 と呼ばれています。
以前のブログでは、CCoE の活動に関して AWS Summit Online 2022 の事例を交えながら、CCoE の活動内容を検討する際の考え方についてご紹介しました。今回は AWS Summit Tokyo 2023 の CCoE に関する事例や関連の事例から、CCoE を取り巻く状況をご紹介したいと思います。前編では CCoE の活動事例や共通点をご紹介し、後編では少し視点を変えて、2023 年の事例から見えてくる CCoE の在り方を考察します。
この記事は、次のような方を読者として想定しています。
- まだ CCoE を組成していないお客さまで、CCoE について知りたい、もしくは、CCoE を組成しようと考えている方
- CCoE を組成しているお客さまで、業務の質を良くしたい もしくは 業務の幅を広げたいと考えている方
- 2023 年の CCoE に関する事例を知りたい方
クラウド活用推進に必要な観点
以前のブログでもご紹介しましたが、重要な観点ですので改めて簡単にご説明します。クラウドを活用しビジネス成果を加速させるための活動を検討する際に観点として利用できるのが、 AWS クラウド導入フレームワーク (AWS CAF) というフレームワークです。AWS CAF では、クラウド活用推進のために必要な活動を 6 つの観点 (下記の図の左側に記載している非技術的な観点のビジネス、ピープル、ガバナンス、右側に記載している技術的な観点のプラットフォーム、セキュリティ、オペレーション) にグループ化しています。これら 6 つの観点すべてが CCoE の活動スコープと言えますが、すべてを CCoE 単独で実施する必要はありません。各企業の事業環境や事業戦略上の優先順位を踏まえ、CCoE がどの領域にどの程度入っていくのかを検討し、関係部署と役割を調整しながら、それぞれの企業にあった CCoE としての活動を決めて、実施していくことが重要です。
2023 年の CCoE の活動事例と共通点
AWS Summit Tokyo 2023 でも以下のセッションで CCoE の活動に関して触れられています。詳細に関しては、ぜひ動画や資料をご確認ください。
- トヨタ CCoE が進める Developer eXperience のカイゼン(CUS-10) [動画、資料]
- 国でもできたスマートなクラウド利用 ~高速試行錯誤しながら進歩を続けるクラウド CoE~(CUS-16) [動画、資料]
2023 年の事例としては「カイゼン、改善」というキーワードが見られました。トヨタ自動車の事例では「開発者の仕事を楽にすること」を「DevEx (Developer eXperience) カイゼン」として取り組まれていました。デジタル庁/農林水産省の事例では「統制を改善し続けるプロセス」を高速回転させ、改善に継続的に取り組まれていました。こちらの記事でも記載している通り、「クラウドを使って、会社、組織をもっと良くしたい」という心構えが表れていることが分かります。クラウド自体が日々進化していることから、一度何かを実施して終わり、ではなく、CCoE として継続して改善を続けていくことでクラウド活用を推進していくことが重要です。
また、CCoE がクラウド利用のブロッカーにならないように、現場のために動く、現場の効率化を図るために活動しているという内容も見られました。トヨタ自動車では、ガードレール型セキュリティや最低限開発に必要な Git や CI/CD などを開発者に提供することで、開発開始までのリードタイムを約 96% 削減したという事例をご紹介いただいています。CCoE の活動によって、開発者がより開発をしやすくなる環境を整えているという良い事例です。デジタル庁/農林水産省では、クラウド利用ガイドラインにおいて、「標準化・共有化・シンプル化によりムリ・ムダ・ムラを無くす」をコンセプトに、クラウド利用者が必要なルールをわかりやすくシンプルに記載し、持続的に更新いただいています。ガイドラインやルールを決めても、内容が複雑だったり、チェックする項目が多いと形骸化しがちです。ガイドラインを作るにあたって、利用者目線で本当に必要な内容は何かを検討して決定していくことが重要です。2 つの事例から、こちらの記事で記載している「利他的であること」という心構えも変わらず見られることが分かります。
2023 年は上記の事例のほかに、CCoE という単語は明確にはないものの、クラウドの人材育成や組織横断的なクラウド利用改善の取り組み、必要に応じて AWS パートナーを活用する事例も見られました。以下にその一部を抜粋します。
- ベイシアが目指す「クラウド化」周回遅れからデジタル先進企業への挑戦(AP-16) [資料]
- クルマのサブスク「KINTO」のアジリティとガバナンスを両立する DBRE の取り組み(CUS-11) [動画、資料]
- 情シスの情シスによる情シスのための人材育成-リスキリングとそれに反する教育後回しジレンマ克服の具体策-(CUS-01) [動画、資料]
- 国の DX を支えるデジタル人材の育成(AWS-53) [動画、資料]
前述した通り、CCoE がクラウドに関するあらゆる改善、活動をすべて実施すべき、というわけではなく、あくまで CCoE も含めたいずれかの部署や横断型組織などでクラウド利用に関しての課題全体に取り組んでいくことが重要であると言えます。ぜひ、AWS Summit Tokyo 2023 のその他の事例についても参照してみていただければと思います。
まとめ
前編では、AWS Summit Tokyo 2023 から見る、2023 年の CCoE の活動事例や共通点をご紹介しました。
- CCoE として必要な心構えである 「クラウドを使って、会社、組織をもっと良くしたい」 「利他的であること」 は引き続き重要であり、各会社、組織で取り組まれている
- 必ずしも CCoE 単独でクラウド推進におけるすべての課題解決を行う必要はなく、いずれかの部署や横断型組織も含めてクラウド推進における課題に取り組んでいくことが重要
後編では、2023 年の事例から見えてくる CCoE の在り方を考察します。
参考情報
- 2023 年の事例から見る CCoE の活動と在り方 (後編)
- CCoE 活動検討のはじめの一歩
- 今から始める CCoE、3 つの環境条件と 3 つの心構えとは
- クラウドマイグレーションの意外なつまづきポイントを解説!AWS移行セミナー~組織や人材、ガバナンスなど非技術的な領域の課題と対策~
- AWSクラウド導入フレームワーク (AWS CAF)
- MRA (移行準備状況評価) から見えるクラウド移行におけるよくある課題とその対策 (前編)
- MRA (移行準備状況評価) から見えるクラウド移行におけるよくある課題とその対策 (後編)
著者
カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 仁科 みなみ、大東 正和