AWS Startup ブログ
Amazon EKS を有効活用してアーキテクチャを構築。フライウィール社の AWS 活用事例
データおよび人工知能を活用したサービスソリューションを提供する株式会社フライウィール。同社は、デジタル ビジネス プラットフォーム「Conata(コナタ)™」やデータを軸とした DX 推進など、エンタープライズ企業の経営課題を解決する事業を展開しています。
フライウィール社は AWS を有効活用してアーキテクチャを構築しています。各種サービスを利用してインフラ運用を省力化しつつ、顧客へ提供する事業の価値を最大化しているのです。
今回は、フライウィール社へのクラウド導入を支援したアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネージャーの梁瀬 新とスタートアップソリューションアーキテクトの Torgayev Tamirlan が、フライウィール VP of Engineering の小西 祐介氏と Software Engineer (インフラ担当の Tech Lead) の桐野 俊輔氏にお話を伺いました。
データ利活用の専門家集団として、顧客の事業課題を解決する
梁瀬:フライウィール社の企業概要や事業・サービス概要を教えてください。
小西:フライウィールは「データを人々のエネルギーに」というミッションを掲げ、エンタープライズ企業向けに、SCM からマーケティングまで一気通貫したデータ ソリューションを提供している会社です。
主力製品であるデジタル ビジネス プラットフォーム「Conata(コナタ)™」はクライアント企業における部署横断でデータの収集や分析、活用ができ、DX や SDGs といった重要な経営課題を解決しています。
また、組織の大きな特徴として、Google や Microsoft、Amazon といった GAFAM 出身のエンジニアが、およそ 2 人に 1 人の割合でいることが挙げられます。
フライウィール VP of Engineering 小西 祐介氏
梁瀬:かなり大きな割合ですね。なぜ優秀なエンジニアが御社に集まるのでしょうか。
小西:私たちのエンジニアリングの特徴として、大手通信事業者や大手書店チェーン、大手通信販売・物流事業者など、日本のなかでもトップレベルで規模の大きなデータを持つ企業のデータ分析に携われることが挙げられます。データを扱う専門家にとって、この環境はチャレンジングであり働きがいも大いにあります。
また、私たちは徹底的に“顧客の事業”と向き合うことを大切にしており、成果が出るまで泥臭くデータと向き合い続けます。フライウィールで働くエンジニアのなかには「採用面接のときに、面接官が AI という言葉を使わなかったことが入社の決め手になった。顧客のビジネス改善を何よりも優先していることが、かえって伝わった」と話す者もいるくらいです。事業とエンジニアリングとの距離の近さを、魅力に感じて参画してくれるエンジニアも多いです。
また、エンジニア同士が互いに知識を共有することでスキルアップしていく文化や、開発における生産性向上のために体制や仕組みを積極的に整える文化があります。優秀なエンジニアは「優秀なエンジニアのたくさんいる環境で働きたい」と考える人が多いですから、さらに優れたスキルで新たな仕事への挑戦を求めるエンジニアが増えていくという好循環が生まれているのだと思います。
検索・レコメンドシステムのアーキテクチャ
Torgayev:フライウィール社は、AWS を用いてアーキテクチャを構築しています。他のクラウドプラットフォームと比較して、AWS のどのような点に良さを感じていますか。
桐野:まず、クラウドプラットフォームのなかで AWS の利用企業が多いことが挙げられます。そのため、AWS の利用経験があるエンジニアを採用しやすいですし、顧客とのシステム連携もスムーズに行いやすいという利点があります。AWS は提供するサービスの種類も多種多様ですから、必要な機能がひととおり揃っていることも大きいです。
フライウィール Software Engineer (インフラ担当の Tech Lead) 桐野 俊輔氏
Torgayev:フライウィール社が扱うシステムのアーキテクチャ概要についてもご説明ください。
小西:私たちの提供しているサービスは幅が広く、全種類のアーキテクチャを話すことは難しいため、検索・レコメンドのシステムの例をピックアップしてご説明します。
小西:まずは、機械学習パイプラインの部分、図の左側から説明を始めます。サーバーの応答や、サービス上でユーザーが取った行動のログが、 Amazon S3 上に蓄積されます。これらのログはApache Airflow や Dagster、Apache Flink で構築されたパイプラインで処理しています。データの処理には Amazon Athena や Amazon EMR、Amazon SageMaker などを活用しており、協調フィルタリングや、ニューラルネットワークを用いたベクトルへの埋め込み等々の機械学習処理を実行しています。
そうして作成した学習済みのモデルデータは Amazon S3 に配置され、作成された候補セット等のデータは Amazon Aurora や Amazon ElastiCache などのデータベースまたは Elasticsearch に格納されます。
これらのデータは、検索やレコメンドのリクエストにリアルタイムに応答するために使われます。図の上方、Elastic Load Balancing を経由して検索・レコメンドサーバーにリクエストが来ると、サーバーは候補セットのデータを Amazon Aurora や Amazon ElastiCache、Elasticsearch から取得します。
これらの候補セットを組み合わせ、再び機械学習の処理を行い、ユーザーの反応を予測することで、ユーザーにとって最適な情報を返すようにしています。また、上図にあるように検索・レコメンドサーバーや Elasticsearch などは Amazon EKS(on EC2)で動いています。
Amazon EKS の導入により Kubernetes の運用コストを低減
Torgayev:Kubernetes を使用されている理由について教えてください。
桐野:Kubernetes のマニフェストファイルを用いることで、インフラをコードで管理できることに大きなメリットがあります。コードを読めばインフラの状態を確認できますし、エンジニア同士でノウハウを共有することやバージョン管理をすることも容易です。スケーリングもしやすいですし、何か突発的な問題が起きても Reconciliation Loopによってリカバリーが自動的に行われます。
また、Kubernetes はエコシステムがかなり充実しているため、関連ツールも数多くあります。そうしたツールを活用することで、自分たちでゼロからコードを書かなくても目的を達成できることも多いです。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 スタートアップソリューションアーキテクト Torgayev Tamirlan
Torgayev:Amazon EKS の特徴が活きている部分はあるでしょうか。
桐野:Amazon EKS のマネージド型ノードグループ*を便利に使っています。この機能を用いれば、1 回の操作でクラスターのノードを作成・自動更新できるため、運用にかかる工数が大幅に低減されます。
*…Amazon EKS マネージド型ノードグループは、Amazon EKS Kubernetes クラスターのノード(Amazon EC2 インスタンス)のプロビジョニングとライフサイクル管理を自動化する機能です。Amazon EKS マネージド型ノードグループの使用に追加料金はかかりません。お支払いいただくのはプロビジョニングした AWS リソースの分だけです。
また、Amazon EKS のマネージド型コントロールプレーン*を補完する EKS アドオンも重宝しています。AWS のサービス全般に言えることですが、マネージドの形で各種インフラの管理を AWS に担ってもらえるからこそ、自分たちは本質的なビジネス価値に直結する業務に集中できます。
*…Amazon EKS には、複数の AWS アベイラビリティーゾーン(AZ)全体で動作するスケーラブルで可用性の高い Kubernetes コントロールプレーンがあります。Amazon EKS は、Kubernetes API サーバーと etcd 永続レイヤーの可用性とスケーラビリティを自動的に管理します。Amazon EKS は 3 つの AZ にわたって Kubernetes コントロールプレーンを実行し、高可用性を確保します。また、正常に作動していないコントロールプレーンノードを自動的に検出して置き換えます。
さらに、Amazon EKS にデフォルト設定で IAM ユーザー・IAM ロールに基づく認証機能が組み込まれているのも便利です。私たちは複数の顧客に対してサービスを提供しており、セキュリティ強化のためにアクセス権限の管理が重要になります。デフォルトの機能として、それが提供されているのはありがたいですね。
Torgayev:現在は Amazon EKS を Amazon EC2 上で動かしていますが、今後 AWS Fargate や AWS Fargate Spot を使うご予定はありますか。
桐野:私たちが運用しているサーバーのなかにはバッチジョブを担うものがあり、そのサーバーは AWS Fargate や AWS Fargate Spot が向いていると考えています。動作検証などをしたうえで問題なさそうであれば、今後導入する可能性は大いにあります。
さらにレバレッジが効くような組織やアーキテクチャへ
アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネージャー 梁瀬 新
梁瀬:今後サービスやアーキテクチャをどのように発展させようとお考えですか。
小西:開発組織全体として開発・運用のレバレッジがさらに効くようにしていきたいです。たとえば、以前は各チームが個別に機械学習の最適化に取り組んでいました。用いている機械学習の技術そのものはどのチームも類似しているケースが多いので、社内で共通的に利用できる機械学習基盤を構築し、各チームがそのシステムを使う形へと進化を続けていきたいと考えています。
これにより、機械学習の手法やノウハウが全社的に共有されるため、開発組織全体として顧客に提供できるサービスのレベルが上がります。加えて、エンジニアの技術をさらに向上させるように、今後も体制や制度を整備していきたいと考えています。また、今回ご紹介したのは検索やレコメンドの処理ですが、私たちはそれ以外にも需要予測やデータ分析など各種の機能を提供しており、カバーできる領域をさらに広げたいです。
桐野:サービス間の連携やデータの管理をより最適化できるように、今後もインフラを改善していきたいです。各チームのプロダクティビティを上げる施策に取り組みます。
梁瀬:これからもフライウィール社がさらに良いサービスを提供されるのを楽しみにしています。ありがとうございました。
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