AWS Startup ブログ

メルカリの “楽しく・夢中になれる” 購入体験を支える AWS のテクノロジー【AWS Summit Tokyo 2019 基調講演書き起こし】

2019年6月12日〜14日、幕張メッセにて「AWS Summit Tokyo 2019」が開催されました。AWS Startup Blogでも、3日間にわたって現地からの速報リポートをお届けしましたが、今回のブログポストでは、基調講演にご登壇頂いた、株式会社シナモンの CEO 平野様、シンセティックゲシュタルト株式会社の CEO 島田様、そして、株式会社メルカリの CTO 名村様の講演の様子を3回に分けてお届けしたいと思います。3回目の今回は、株式会社メルカリの CTO 名村様による講演の模様です。

本記事は、ログミーによる提供です。

長い滞在時間を誇るメルカリの事例

名村卓氏(以下、名村):こんにちは。メルカリの CTO の名村です。メリカリの AWS の事例について紹介させていただきます。まず、メルカリの紹介をさせてください。


メルカリは、個人の中古品の売買を可能にする、CtoC のマーケットプレイスです。メルカリがエスクロー決済を行って、多様な配送オプションを提供することで、個人間の取引を円滑に行えるプラットフォームになっております。四半期ごとの利用実績なんですが、おかげさまで多くのお客様に利用されており、四半期ごとの実績は去年で 3,000 億円を超えてきております。

メルカリの特徴の一つは滞在時間です。他の EC サービスに比べて、非常に長い滞在時間を誇っております。ソーシャルネットワークサービスに匹敵する滞在時間です。

メルカリの他の特徴としては、個人間の取引ですので、安心した取引を実現するために、例えば捜査機関や公的機関との連携をしています。最近ですと、AI によって大量のデータから違反検知、利用規約に反する出品を自動で検知して、安心・安全なサービスの提供に努めております。

今後の事業展開なんですが、メルカリは最近「メルペイ」をリリースしまして、メルカリでの売上金を実際の店舗でも使えるようになりました。こうしたエコシステムの拡大をもとに、メルカリでは総合的な金融サービスの提供を視野に入れて、事業を拡大しています。

また、海外のアメリカでもメルカリは展開をしており、アメリカの事業も引き続き成長を続けております。

ここから、メルカリの AWS の実際の活用事例の紹介をさせていただきます。まず、AI・マシンラーニングの分野です。メルカリでは、最近 AI の分野に非常に注力してまして、この分野において AWS の技術を活用しております。

まず最近リリースした「Image Search」という、画像検索という機能なんですが、こちらは写真を撮ったものに近いものを、メルカリの商品の中から検索できる機能です。

Amazon S3 の存在は非常に大きい

名村:メルカリはペタバイト規模のデータを持っており、こちら、画像のトレーニングにAWSの環境を活用しています。

簡単なアーキテクチャのオーバービューなんですが、トレーニングには Amazon EKS のクラスターを使っております。

ここでコンテナベースのトレーニングクラスターが動いており、GPU を使って実際にトレーニングを行っております。メルカリは Amazon S3 にすべての画像を保存しておりますので、こちらの画像と、Amazon EKS のクラスターをシームレスに繋ぐことで、トレーニングを実現しています。AWSと相性がいいポイントなんですが、まず Amazon S3 の存在は非常に大きいです。高い可用性と安定したストレージが「日々トレーニングをし続ける」といった環境に非常に適切であること。また、充実したイベントフックを持っていますので、複雑なロジックを記述することなく、トレーニング環境にデータを渡すことができる。それから、Amazon S3 の充実したツール群によって、開発が非常に簡単に行えます。

また、Amazon EKS のほうですが、Kubernetes を管理するコストがまったくないことは非常に大きい特徴で、Kubernetes のCRD (Custom Resource Definition) を使って、全体のトレーニングを構築してるんですが、こちらの実現が可能である。それによって、フルコンテナのワークロードでトレーニングを実現しているところがポイントになります。

他にも、「AI 出品」という機能もありまして、これから出品するものを撮影したタイミングで、商品のタイトルやカテゴリーブランドを推測して、自動で入力してくれます。こちらのトレーニングにも AWS の環境を活用しています。

それから、安心・安全なメルカリの提供に向けて、AWS の活用をした事例もあります。例えば、メルペイなどの金融サービスは、AML/CFT というアンチマネーロンダリングやテロへの資金供給を防止する機能が必要になるんですが、こちらの機能に AWS の技術を多く活用しています。splunkというプラットフォームを利用しているんですが、こちらを AWS 上で稼働させて、Amazon Kinesis といったログ収集基盤をはじめ、AWS Lamda や AWS Fargate などのコンテナ技術も活用して、この技術基盤を実現しています。

 AWS と相性が非常にいいポイントなんですが、まず Amazon Kinesis の存在が大きいです。splunk が Kinesis に標準対応していますので、こういった取引の情報やイベントを収集するパイプラインとして、Kinesis が非常に強力に機能しているところです。

あとは Amazon ECS をはじめ、AWS Fargate や AWS Lamda のサーバーレス環境も活用してまして、こちらによって管理コストを下げながら、データのリアルタイム処理や、外部データの投入、もしくはバッチ処理を実現しています。


メルカリがAWSを使う主な理由を考えたんですが、とくに3つあります。まずは、日々信頼が積み上がっている……いろいろな実績が日々起きていることで、AWSそのものに実績がどんどん積み上がって、それによって信頼のあるサービスの実現ができるところ。

あとは、毎年・毎月、無数の新機能が常にリリースされるので、新しい開発、もしくは最新のトレンドに乗って、常に最新のソリューションを利用することができるところ。

それから、「Customer Obsession」というAmazonのプリンシパルにもありますが、こちらが非常に徹底されているので、メルカリのアカウントチームの方々が、まるで社員のようにメルカリの課題を一緒に考えて、何とか実現しようというソリューションを一緒に考えてくれるところ。こういったところが AWS の強みだと思っていて、活用をしています。

これからもメルカリは AWS を活用して、安心・安全なサービスを、より多くのお客様に提供されるように、常に努力してまいります。以上です。

(会場拍手)

講演の書き起こしは以上です。

 

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【特報】メルカリ様における AWS のコンテナサービスの活用の詳細をお話し頂くセミナーを開催します。詳しくはこちら

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