AWS Startup ブログ

インゲージ社、Amazon Connect によりクラウド電話機能を実現。AI サービスとの統合も行い利便性を向上

Re:lation(リレーション)」はメール・LINE・チャットなどを経由する顧客対応の「困った」をなくす、問い合わせ対応・メール共有システムです。複数チャネルの問い合わせを一画面に集約し、複数ユーザーで共有・管理が可能。「未対応・対応中・対応完了・対応不要」といった状況が一目でわかり、二重返信や対応漏れを防止できます。

そんな「Re:lation」では、電話機不要でインターネット上のサービスから受電・架電ができるクラウド電話という機能を、クラウド型コンタクトセンターサービス Amazon Connect によって実現しています。それに加えて、AI サービスとの統合により電話での会話の文字起こしなど多種多様な機能を実現しているのです。

AWS の利用状況や Amazon Connect を活用するようになった経緯などを、「Re:lation」提供企業である株式会社インゲージにインタビュー。同社の執行役員 CTO 兼 開発部部長 永田 兆 氏と執行役員 兼 開発部ディレクター 舘林 秀和 氏に、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 アカウントマネージャーの三室 佑貴とシニアスタートアップソリューションアーキテクトの濵 真一がお話を伺いました。

問い合わせ対応の「困った」をゼロにする

三室:インゲージ社の会社概要と、提供されている事業についてまずはお聞きします。

舘林:インゲージは今期で 11 期目の会社で、「Make IT Easy(メイク・アイティー・イージー)」というビジョンを掲げています。IT は、人々の生活に関わるさまざまなことを便利にしてきました。もはや、人々の暮らしに不可欠なものとなっています。だからこそ、IT は使いやすく、楽しんで使えるものでなければなりません。その「ITをもっとカンタンに」という想いをビジョンに込めています。

ミッションとしては「ひとり一人に向き合うをカタチにする」を掲げています。人が多くなればなるほど、ITが普及すればするほど、「向き合う」ということは難しくなります。ですが、ビジネスにおいては特に個々の人々と向き合うことが大事だと思います。インゲージはITのチカラでひとり一人に向き合うということをカタチにしたいと考えています。

これらのビジョンやミッションを実現するために、ソリューションとして「Re:lation」というプロダクトを提供しています。「Re:lation」は、問い合わせ対応の「困った」をゼロにするというコンセプトの問い合わせ対応・メール共有システムです。

株式会社インゲージ 執行役員 兼 開発部ディレクター 舘林 秀和 氏

顧客に対してサービスを提供している企業は、メールや電話、LINE、Instagram DM などさまざまな窓口から問い合わせを受けます。「Re:lation」はそんな様々な窓口で受け付けた問い合わせを、一元管理することができるサービスです。これにより、問い合わせの対応漏れや情報の分断を防ぐことができるようになります。また、チームで共有できるため、複数人での問い合わせ対応で生じがちな二重対応などの課題も解決することができます。

さらに、お客さまとのコミュニケーションの履歴が蓄積されていくため、問い合わせを起点とした CRM(顧客管理システム)としてお使いいただけるのも特徴です。創業当時からデザインにこだわっており、2019年に「グッドデザイン賞」も受賞しています。

幅広い業界や業種、職種でお使いいただいておりますが、なかでも EC 系の事業を提供する企業様によくご活用いただいています。EC では多くの顧客に対応する必要がありますし、問い合わせもたくさんあるので、こういったツールを活用することでより業務を円滑に進めることができるようになります。他にも、業種を問わずカスタマーサポートやコンタクトセンターなどでご導入いただくことも多いです。

自社への Amazon Connect 導入後、顧客へも電話機能を提供

濵:AWS の各種サービスを利用し始めた経緯についてもお話しいただけますか。

永田:私たちはかつて AWS を単体で使っておらず、アプリケーションをデプロイするために Engine Yard という PaaS を使っていました。創業期は私を含めて 2 人しか開発メンバーがいなかったので、インフラの構築・管理に時間を割くよりもサービスの開発に集中したかったためです。

Engine Yard は、その裏側で AWS の Amazon EC2 が動いています。より開発組織の規模が大きくなってきたら、それらのサーバーを自社の AWS アカウントで管理する形式に切り替えようと考えていました。また、Engine Yard はストレージやキューの仕組みを提供していなかったため、それらの機能については自社の AWS アカウントで Amazon S3Amazon SQS を立ち上げ利用するという運用にしていました。

株式会社インゲージ 執行役員 CTO 兼 開発部部長 永田 兆 氏

濵:非常にスタートアップらしい選択ですよね。会社の初期フェーズにおいては、インフラを構築することよりも、事業を前に進めることの優先度の方がずっと高い。そして、事業が成長していく過程で Engine Yard がマッチしなくなれば、自社で AWS の各種サービスを運用する方針に切り替え、設計をシームレスに変えていくということですね。

そこから徐々に AWS のサービスの利用割合を増やしてこられたと思うのですが、Amazon Connect を利用し始めたのは何がきっかけでしたか。

永田:弊社の代表取締役 CEO である和田が、Amazon Connect を知った後、「これは便利だ」ということで自社で使うための外線電話をこのサービスで設定しました。そして、Amazon Connect をぜひ「Re:lation」のお客さまにもご活用いただきたいということになり、クラウド電話の機能を提供するに至りました。

AWSのサービスとの連携によって、我々は単なる機能提供に留まらず、顧客データの保護に対しても高いレベルで取り組んでいます。すべての顧客情報や業務データは、厳格なセキュリティ対策のもとで安全に管理されています。

AWS の他サービスとの連携や AI の組み込みも容易

濵:記事の読者の方々に向けて解説すると、Amazon Connect はクラウド型コンタクトセンターをソフトウェアとして提供するサービスです。類似のサービスは他社も提供しているのですが、Amazon Connect の大きな特徴は従量課金であることです。最低月額料金や長期契約、前払いライセンス料は不要で、利用状況に合わせてコストを最適化できます。

舘林:おっしゃる通りですね。AWS の他のサービスとの親和性も高いため、弊社の場合ですと AWS Lambda や Amazon S3 などとインテグレーションができ、コールセンターの仕組みをカスタマイズして利便性を向上させられるのも利点でした。

Amazon Connect を用いた『Re:lation』のクラウド電話機能のアーキテクチャ

永田:Amazon Connect は、Amazon Connect Contact Lens という通話内容を録音・分析して顧客対応の品質向上につなげる会話分析ツールの機能も搭載されています。録音データを文字に起こしたり、顧客の感情を読み取ったりして顧客理解を促すことができます。これらの機能を、自社で開発することなく実現できたのは便利でした。

三室:今後、Amazon Connect と AI 関連のサービスを組み合わせて、「Re:lation」を進化させていくご予定はありますか。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 スタートアップ事業本部 アカウントマネージャー 三室 佑貴

舘林:弊社ではこれまでも、AI・機械学習のサービスへの組み込みを積極的に行ってきました。たとえば、先ほど述べた録音データの文字起こしや感情分析の機能に加えて、AI を活用して返信の作成・文章の校正・最適な定型文の提案などを実現する「AI パッケージ」を過去にはリリースしています。

今後も、各種の問い合わせ対応業務のうち、簡易的なものについては AI を活用した自動化・効率化を推進していきます。それから、生成 AI を活用したオペレーターの AI アシスタント機能 Amazon Q in Connect には注目しています。このサービスを用いることで、顧客の問い合わせに関連する記事やドキュメントを素早く提案する機能を実現できるかもしれません。

「Re:lation」の技術基盤を改善し続ける

濵:AWS のサポートに対するご感想はいかがでしょうか。

永田:普段から技術的な相談に乗ってもらえますし、今回のインタビューもそうですが積極的に外部への PR やネットワーク形成の機会を作ってくれることがありがたいです。各種の技術イベントにも誘ってもらって登壇・参加していますし、技術経営者のための招待制カンファレンス CTO Night & Day にも招待してもらいました。CTO Night & Day はかなり革新的ですよね。あれだけの CTO・VPoE が一堂に会する機会はめったにないですから。

永田:今後もこれまで通りに相談に乗ってもらったり、コミュニティの場を提供してもらえたりするとありがたいです。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 シニアスタートアップソリューションアーキテクト 濵 真一

濵:最後に、今後どのようなタイプのエンジニアを採用したいかを教えてください。

舘林:職種としては全方位で募集をしています。弊社に合いそうなタイプの人としては、スタートアップですので積極性のある方。「自分はこれをやり遂げたい」という強い思いのある方が絶対にマッチすると思います。

また、インゲージは関西の会社なのですが、関東と比べるとスタートアップ企業の母数が少ないです。そのため、「他のスタートアップからインゲージに転職する」というケースだけではなく「SIer からインゲージに転職する」というケースもかなり多いです。だからこそ、この記事を読まれている関西のエンジニアで、いま SIer で働いていてスタートアップに転職したい方には、ぜひ挑戦の場としてインゲージを選んでいただけたらと思います。

永田:「Re:lation」は成長を続けているサービスですから、その技術基盤もさらに進化させていく必要があります。大変なこともあるでしょうが、そうした課題を乗り越えることを楽しめる人であれば、インゲージにマッチしているはずです。

また、私たちはサービス開発に Ruby を用いているのですが、まつもとゆきひろさんにも技術顧問に就任していただくなど、エンジニアたちの Ruby スキル向上のために尽力しています。Ruby を書いて良いサービスを作りたい人にぜひ来てほしいです。

舘林:永田が話してくれた技術基盤の改善について、たとえば AWS をマルチアカウント化するとか、モノリシックな Ruby on Rails のアプリケーションとして動かしていたサービスを機能単位で AWS Lambda に切り出すなど、実施したいことは山ほどあります。今は技術的な過渡期であり混沌としていますが、だからこそエンジニアにとっては面白い挑戦がたくさんあるフェーズだと考えています。

濵:御社のさらなる飛躍が楽しみですね。読者の方々にも、Amazon Connect の利点や御社の魅力が伝わったのではないでしょうか。今回はありがとうございました。