Amazon Web Services ブログ

【動画公開&開催報告】クラウドの意思決定と AWS のコスト最適化の舞台裏

はじめに

みなさん、こんにちは。2023年5月18日に「クラウドの意思決定と AWS のコスト最適化の舞台裏」を開催しました。
このブログでは、当日参加できなかった方や、参加したが内容を振り返りたい方に向けて、ご自身の取り組みの参考としていただくために当日のセッション内容のまとめを紹介します。

セッション内容の紹介

ビックカメラの挑戦とクラウドエコノミクス

  • 株式会社ビックデジタルファーム デジタルソリューション部 担当部長 兼 システム開発室長 池田哲也 様

本セッションでは、ビックカメラ様が目指す “新しい顧客体験” の実現のため、内製化への挑戦、そしてクラウドエコノミクスを含むITXパッケージ2.0(ITX2.0)の採用についてお話しいただきました。ビックカメラ様はOMO(Online Merges with Offline)戦略、基幹システムのモダナイゼーション、システム内製化にAWSをフル活用いただきコストダウンと事業の俊敏性を向上していくことを目指されております。コスト試算には移行前の評価の一つであるクラウドエコノミクスプログラムを活用いただきました。AWSでクラウドの経済性の試算をした結果、26%のインフラ削減効果と30%のスタッフ生産性の向上の効果が得られることがわかりました。AWSのクラウドエコノミクスの試算結果は過去の実績から試算されているということで数字にも納得感が得られたとのことです。またシステム全体の規模感がわかり、予算策定にも有効に活用されました。

ITX2.0以外での内製化施策として、自社のガイドラインを策定し、自社トレーニングを実施しました。ビックカメラ様標準のAWS構築ガイドラインを策定し、社内トレーニングも積極的に自社で行われました。採用課題についてはAWS経験者が集まらないといった問題がありました。しかしDX宣言からAWSを全面採用して、メディアへの意識的な露出の増加によって大幅に採用の応募が増加し、優秀な人材の獲得や採用期間の大幅な短縮を実現できました。

最後に、今後はAWSの本格的な移行が進み、クラウドエコノミクスで試算された効果の検証が楽しみとのことです。同様の課題に悩まれている企業の皆様には、ぜひビックカメラ様にお気軽にお声がけくださいと締めくくっていただきました。

株式会社ビックデジタルファーム様セッション資料

クラウドリフトに伴うAWSクラウドエコノミクスの実践と効果

  • Sky株式会社 ICTソリューション事業部 執行役員 金井 孝三 様

本セッションでは、オンプレミスの仮想サーバー約400台のクラウドリフト&シフトを検討した時の課題をクラウドエコノミクスがどのように解決したかについてお話し頂きました。Sky株式会社様では半導体不足に伴うハードウェア調達納期の長期化や利用リソース予測が困難であるという課題がありましたが、クラウドの「必要な時に、必要なタイミングで、必要な分だけリソースを即座に調達することができるため、今後のビジネスの変化にも柔軟に対応することが可能である点」を評価頂き、クラウドを利用して頂く方針となりました。

移行計画当初は、オンプレミス環境からクラウドへ移行した場合のコスト削減効果の算出方法や、実際にどのような手順で移行を進めていけば良いのかに不安があったため、AWSからオンプレミス環境からクラウドへ移行することで得られる経済的なメリットを定量化するプログラムである「AWSクラウドエコノミクス」についてご説明し、実施をいただきました。AWSクラウドエコノミクスを実施した結果、インフラコストについては年間100万円以上の削減効果、スタッフ生産性については年間で1000万円以上の生産性向上が見込めることが分かり、これらの結果をもってプロジェクトの会社承認を得ることができたこと、約3か月でプロジェクトをスタートさせることができたことをご発表いただきました。

金井様からは「AWSは営業担当と技術担当がビジネスと技術の両面からご支援いただける」「“AWSは一緒にビジネスを成長させていくパートナーです”という言葉に共感した」といった嬉しいコメントを頂戴し、今後もAWSの移行プログラムを活用しながら、システム移行を進めていく予定と締めくくって頂きました。

Sky株式会社様セッション資料

CFMを活用した位置情報活用プラットフォームのコスト最適化への取り組み

  • 株式会社アイシン CSSカンパニー コネクティッドソリューション部 部長 白井 定文 様
    株式会社アイシン CSSカンパニー コネクティッドソリューション部 クラウドデザイン室 第2グループ 主任 加藤竜丸 様

本セッションでは、 CFM(AWS Cloud Financial Management)プログラムを活用した定期的なコスト最適化診断にて、AWS上に構築したシステムに対するクラウドコスト低減の取り組みについてお話しいただきました。アイシン様では、位置情報活用プラットフォームの需要の増加により、複数の開発環境の立ち上がりに伴ってクラウドコストが増加していましたが、アカウント毎にコスト要因が異なっており、効果的な調査や対策に課題がありました。これらの課題に対してCFMによる包括的なコスト評価分析によって次のように効率的な低減活動を推進することができたことをお話しいただきました。
■コスト増の主要因の分析結果をアカウント群ごとで可視化するため、それぞれの環境・利用状況に合わせた対策の検討ができた
■効果的な対策案とその効果額予測の提示によって、自組織における活動方針の策定を効率的に進めることができた
■関係メンバへの協力要請の際に、CFMによる具体的な効果額の提示により説得力のある協力依頼ができた
結果として、関係メンバのコスト意識向上にもつながり、削減活動に対して前向きな雰囲気が広がっていった
今後もリザーブドインスタンス (RI)やSavings Plans(SP)活用範囲の拡大による費用低減やクラウドネイティブアーキテクチャの検討を行い、コスト低減を進めていく予定と締めくくっていただきました。

株式会社アイシン様セッション資料

最新のクラウドエコノミクス活用事例のご紹介

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 事業開発統括本部
    シニア事業開発マネージャー 山田 泰三

本セッションでは、クラウドエコノミクスにおけるビジネスケースの目的と最新のクラウドエコノミクスの最新事例についてご紹介いたしました。クラウドエコノミクスはクラウド移行判断のためのフレームワークを提供し、投資計画(ビジネスケース)によって経済性のシミュレーションや投資分析を行うことに意義があります。投資計画の目的は合理的な意思決定を可能にして、投資実行後の効果検証を可能にすることにあります。

クラウドエコノミクスの最新事例のパートではモダナイゼーション効果とエネルギーコスト削減効果、二酸化炭素の排出量の削減効果のサンプルビジネスケースを紹介いたしました。モダナイゼーション効果ではサーバーレス化、コンテナ化によるインフラコスト削減効果、スタッフ生産性の向上効果を上げました。急激な需要に対応する自動スケーリング、より堅牢なインフラ環境を提供し、効率的な運用を目指す必要があるビジネス課題が背景にあり、モダナイゼーション効果を期待される場合には他社のベンチマークデータから経済性を試算します。またエネルギーコストと二酸化炭素の排出量の削減効果のビジネスケースでは国内のデータセンター事業者の持つデータセンターに対して、フェルミ推定を用いてデータセンターあたりのVM数を算出し、すべてのワークロードをAWSへ移行した場合のTCO比較と二酸化炭素の排出量の削減効果の検証を行いました。またAWSにはインテルアーキテクチャーベースのインスタンスよりも最大60%の消費電力削減を期待できるAWS Graviton3インスタンスを持っております。AWS GravitonインスタンスにすることとAWSへの移行を加速化することでさらなる環境負荷の軽減の実現ができるシミュレーションを行いました。

AWSクラウドエコノミクスセッション資料

データから見るコスト最適化の穴と日本企業が実践すべきコスト最適化の3つ勘所

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 事業開発統括本部
    シニア事業開発マネージャー 仁戸 潤一郎

本セッションではお客様のクラウドコスト最適化の支援活動の中で生成された3つのデータを元に、今日本のお客様が抱えているコスト最適化の課題を洗い出し、その対策についてお伝えさせていただきました。まず最初のデータは最適化の度合いについてアジアパシフィックの各地域の平均と日本のスコアを比較した結果です。日本はリザーブドインスタンス (RI)やSavings Plans(SP)といったコミットメントによる割引や週末に使っていないインスタンスを止めるといった、既存のリソースを変えることなく実施できる最適化についてはスコアが良かったのですが、コストに優れたAWS Graviton2/AMDベースのインスタンスの採用率やAmazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)/Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS)の最新世代化など既存のリソースを刷新するような最適化についてはアジアパシフィックの中で最下位でした。2つ目のデータは日本のお客様のコスト最適化のベンチマークです。Amazon EC2やAmazon Relational Database Service (Amazon RDS)などの汎用的なサービスのRI/SPのカバー率は高いものの、Amazon Redshift/Amazon ElastiCache/Amazon OpenSearch Serviceなど特定部門や業務で使用されるサービスのRI/SPのカバー率は低かったというものです。3つ目はCFM-Capability Assessmentというお客様のコスト最適化に関する体制やプロセスの成熟度を評価するアセスメントサービスのベンチマークで、日本では利用部門のビジネス成果とIT費用の紐づけをするというスコアが一番低かったというものでした。それぞれの項目における対策をご紹介しつつ、これらの項目に共通しているのは、IT部門と利用部門がクラウドの利用について情報連携できているか、ということがポイントとなり、どのような形で両者の連携を強めていくのか、その具体的な方策の例についても紹介させていただきました。
AWS CFM セッション資料

おわりに

経済の不確実性が高まり、原材料価格やエネルギーコストの高騰が企業の利益に直接の打撃を与えている状況です。企業はさらなるコスト削減策を迫られており、多くのお客様でクラウドを活用した取り組みが加速しています。しかしながら、クラウドへの移行検討時はもちろん移行後も避けて通れない論点の一つがクラウド利用のコストです。今回のウェビナーでは様々な事例と共にクラウド利用費用に伴う課題やその解決策を、お客様観点、AWSクラウドエコノミクスチーム観点からご紹介致しました。今後クラウドのビジネス価値最大化とAWSコスト最適化にお悩みの際には、今回のウェビナーの資料等を参考にして頂ければと思います。また、実際にクラウドエコノミクス、またCFMを自社で実施したい場合は、ぜひ弊社営業担当者までご連絡をお願いいたします
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 事業開発統括本部
シニア事業開発マネージャー 杉山 彩奈