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【開催報告】2020年 AWS re:Invent Recap 製薬業界 AI/MLセミナー

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 インダストリー事業開発部 片岡です。

製薬業界でAI/機械学習 (ML)にご興味をお持ちのエンドユーザーの皆様を主な対象として2020年12月23日に「2020年 AWS re:Invent Recap 製薬業界 AI/MLセミナー」をウェビナーで開催しました。

本記事では最新事例や最新サービス紹介を含む当日の資料・動画を皆様にご紹介します。

本ウェビナー開催の背景

世界最大級のグローバルITカンファレンスである「re:Invent 2020」が、昨年12月から今年1月にかけて行われました。今回はコロナの影響で初のオンライン開催となり、AWSのクラウドサービスに関わるセミナー、ハンズオンセッション等、2,500を超えるセッションがお客様に無料で提供されました。

本ウェビナーでは、re:Inventの中で発表された最新事例・サービスの中から、特にアップデートの多かったAI/MLにフォーカスして、日本の製薬業界のお客様に向けて、分かりやすくコンテンツをまとめて発表させて頂きました。

1. re:Invent 2020 Recap 製薬業界 AI/ML最新事例紹介 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
インダストリー事業開発部 プリンシパル
佐近 康隆

 

佐近から、まず「re:Inventで発表のあった製薬業界のAI/ML関連事例」のパートでは、機械学習を利用するに際に重要となる「データの流動性」と「業務効率の改善」にフォーカスしました。具体的な事例としては4社、(1) Roche様 (個別化医療を支えるデータサイエンスプラットフォーム)、(2) Astra Zeneca様 (200万件をめざしたゲノム解析)、(3) Merck様 (CMC薬事の業務効率改善)、(4) Novartis様 (生産データの収集・解析・予測・見える化) の取り組みを紹介させて頂きました。あわせて、「前臨床試験のための腎臓画像解析」、「臨床試験計画のための患者分類」、「営業最適化のための患者アウトカム予測」など、AWSのAI/MLサービスを利用して実現した具体的な事例もご案内の上、AWSのスペシャリストがお客様とともにAI/MLの活用機会を探し出す「ML Discovery Workshop」をご提案しました。

前臨床試験のための腎臓画像解析 (ML Discovery Workshopの一例)
製薬業界向けAIMLセミナー 前臨床試験のための腎臓画像解析

次に、「国内におけるAI/ML関連事例」のパートでは、製薬業界でAI/MLソリューションを提案されているスタートアップとして、がんゲノム医療関連で自然言語処理などでAWSを積極的に活用しているテンクー様、ライフサイエンス×画像解析に強みを持ち創薬プロセスにおけるAI利活用を提案しているエルピクセル様、強化学習を用いて医薬候補の低分子化合物設計を支援されるシンセティックゲシュタルト様を紹介しました。

最後に、「Amazon HealthLake (Preview) ご紹介」のパートでは、プレビュー(本番運用前にお客様にご試用頂きフィードバックを頂く期間)の開始が発表されたAmazon HealthLakeの機能を紹介させて頂きました。Amazon HealthLakeは、ペタバイト規模の医療データの保存・変換・クエリ・分析が可能になるHIPAA対応サービスで、医療情報交換の標準規格HL7 FHIRのフォーマットに自動的に構造化・標準化するため、検索や解析が容易になるというメリットをご説明しました。また、アメリカでのプレビュー事例として、Konica Minolta Precision Medicine (KMPM) 様やCerner様をご紹介しました。

2. re:Invent 2020 Recap AI/ML新機能・新サービス紹介 [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
シニア機械学習ソリューションアーキテクト 博士(情報理工学)
宇都宮 聖子

宇都宮からは、最初に今回のre:Inventで発表されたサービスのオーバービューとして、AI/ML関連サービスが他のサービス群に比べて多くのアップデートがあり、新たにHealth AIという項目が追加されたことに触れました。また、MLのマネージドサービスであるAmazon SageMakerに関するアップデートが多数あり、機能の概要と、発表された新機能についてご紹介しました。機械学習をお客様で開発される際の課題として、アノテーションから始まり、本番環境へのデプロイ、CI/CDに至る開発プロセスの複雑さや高コストを挙げ、お客様により早く、生産性を高め、低コストで機械学習をお使いいただくために、Amazon SageMaker関連の8つの新機能アップデートについてご説明しました。(詳細はSlideをご参照下さい。)

AWSの機械学習スタック一覧

次に開発者向けツールのアップデートとして、機械学習のパイプラインを最適化するための新サービスであるAmazon Managed Workflows for Apahche Airflow(MWAA)をご紹介しました。従来は別にEC2サーバを立てて、Apache Airflow用のサーバを起動する必要がありましたが、今回フルマネージドサービスとして、組み込みのセキュリティでApache Airflowを実行することが可能となり、Amazon AthenaやAWS Batchなど関連するAWSサービスと連携させて、簡単にパイプラインを構築頂けるようになるというメリットをご説明しました。その他にも、新サービスのAmazon QuickSight Qでは、従来のAmazon QuickSightのデータを、機械学習を用いて簡単に検索ができるようになったり、新機能追加があったAmazon CodeGuruでは、新たにPythonに対応したりするなど、様々なアップデートをご紹介しました。

最後にAIサービスについて、特に発表の多かった産業向け機械学習サービスを5つご紹介しました。その1つとして、プレビューの発表がありましたAmazon Lookout for Vision は、学習済みモデルを再学習させることで、必要となる異常画像の枚数が少なくても(このセッションの事例では正常画像を20枚以上、異常画像を10枚以上)、画像の異常検知が行えるサービスとして紹介しました。例えば、工場での概観検査や細胞診断など、目視検査が必要となる工程で、このサービスをご利用いただく事で、画像や動画の迅速かつ正確な異常検出を低コストで自動化できる可能性について言及しました。

3. デモで解説!創薬業界のAWS AIソリューション [Slide]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト
小泉 秀徳

小泉から、「AIを活用した動態検知自動化ソリューション」のパートでは、2020年10月に開催されましたCBI学会で、大日本住友製薬様と共同発表した内容をご紹介しました。研究開発領域における動物行動評価の課題として、実験時間の増加や熟練度への依存、評価のばらつきなどがあり、AIを用いた動態検知の短縮化、効率化、精度向上にはお客様の高いニーズがある、という点をご説明しました。そこで、深層学習を用いた静止画/動画分析サービスであるAmazon Rekognitionで学習したモデルをベースとして、Amazon Rekognition Custom Labelsという機能を用いると、お客様でお持ちの画像とラベル情報から、用途に応じた独自モデルを作成することが可能になります。またAmazon Rekognitionの学習済モデルをベースとしているため、独自モデルを作成するための画像データ枚数が少なくて済むというメリットをご紹介しました。(ご説明したカスタムモデル作成方法については、こちらのAWS Blogをご覧ください。)

動態異常自動検知のアーキテクチャ

次に、「AIを活用したデータラベリング」のパートでは、前述のAmazon Rekognition Custom Labelsで、少ないデータ数でも精度が出る一方で、精度を向上させるためには質の高い、一定数のデータが必要になるため、さらなるラベリングの効率化・作業負担軽減につながるサービスとしてAmazon SageMaker Ground Truthをご紹介しました。こちらのサービスは、ビデオサポートが新機能として追加され、お客様は動画をアップロードしてラベリングするだけで、動画が自動で画像に分割されるため、一つ一つ画像にラベリングをするという煩雑な作業が削減できるメリットをご説明しました。(Amazon SageMaker Ground Truthを用いた動画ラベリング方法については、こちらのAWS Blogをご覧ください。)

そして「AIを活用した文字書き起こし」のパートでは、宇都宮のセッションでHealth AIとしてご紹介した、医療向けの高精度な音声文字起こしサービスであるAmazon Transcribe Medicalと、非構造化データから医療情報を抽出するサービスであるAmazon Comprehend Medicalをご紹介しました。まだ英語のみの対応ですが、Amazon Transcribe Medicalで音声から文字起こししたデータを、Amazon Comprehend Medicalで抽出する流れを、デモを交えてご説明しました。また、医療情報を対象とないAmazon Transcribeは既に日本語に対応しており、煩雑な議事録や会話のメモをこのサービスで代替することで、不要なリソースを削減できる可能性について言及しました。

最後に、「グラフデータx AI」のパートでは、フルマネージドグラフデータサービスであるAmazon Neptuneを用いることで、3つ以上のデータの関連性について、簡単に検索できる特徴があり、新しく発表されたAmazon Neptune MLはまだプレビュー段階ですが、グラフ用に開発された機械学習手法であるGNNを利用することで、機械学習の知識が無くてもグラフデータに対する正確な予測が可能になるというメリットをご紹介しました。終わりに、ヘルスケア・ライフサイエンスのお客様を対象にしたプロトタイピングの機会として、お客様の開発力向上とAWSサービスへのご理解を深めて頂くことを目的に、お客様とAWSが共同で、コーディングとAWSサービスを組み合わせながらソリューション開発を体験頂くことができる機会をご紹介しました。

まとめ

本ウェビナーに関して、ご質問やご要望がございましたら、お問い合わせページ、もしくは担当営業までご連絡をお願いします。また、AWSではお客様にAI/MLを学んでいただく様々な機会がございます。直近では、2月24日 13:00より「AWS Innovate AI/ML Edition」で、15を超えるセッションを通してAI/MLについて詳しく学習頂けるオンラインイベントをご用意しております。セッション例は以下をご確認下さい。

セッション例

[フロントエンドセッション]
機械学習の知識がなくてもすぐ実装可能なAPI 系サービス
14:40 – 15:10「画像やテキストを分析して何ができる?~認識系AIでできること~

[データサイエンティスト&アナリストセッション]
これから機械学習に取り組む人、クラウドで機械学習をはじめる人向け
15:20 – 15:50「Amazon SageMakerではじめる機械学習」

これまでに機械学習に取り組み、運用を経験した事がある方向け
16:00 – 16:30「機械学習の開発・運用を加速するAWSでのMLOpsの実現方法」

どのセッションも無料でご参加いただけますので、登録サイトより必要事項を記入の上、ご登録をお願いします。

 

参考コンテンツ

本セミナーでご紹介したAI/MLサービスのご利用方法に関するブログを含めて、ライフサイエンス関連ブログはこちらからご覧ください。

 

このブログの著者

片岡 勇人 (Yuto Kataoka)
インダストリー事業開発部 事業開発マネージャー (ヘルスケア・ライフサイエンス)