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SaaS アプリケーションの、Amazon EFS を使ったより迅速かつ低コストなデプロイ

これまで当社には、独立系ソフトウェアベンダー (ISV) であるお客様たちから、SaaS アプリケーションをデプロイする際に存在する、複数の検討事項についてのお話しが届いていました。これらの考慮事項の範囲は、総保有コスト (TCO) に関するものから、運用や俊敏性への影響などにまで及びます。また、セキュリティ、監査性、可用性の高さ、データ保護などに対処する必要もあり、それらはすべて、ブランド力やマーケットでの認知度に影響を与える要素である、というお話しも聞いています。オンプレミスでもクラウドの場合でも、セルフマネージドの共有ファイルストレージを必要とするアプリケーションでは、上記の基準を満足する技術的ソリューションを決定し維持することは簡単ではありません。

今回のブログでは、マネージド型ストレージへの移行、そして完全マネージド型でクラウドネイティブな Amazon Elastic File System (Amazon EFS) の活用に関し、当社が ISV であるお客様からうかがってきた事項のいくつかをご紹介していきます。

総所有コスト (TCO)

ISV のお客様からは、セルフマネージド型ストレージのプロビジョニングとキャパシティ管理に関連し、TCO に影響を与える複数の要素についてうかがっています。これらの要素には、管理上のオーバーヘッド、利用されないキャパシティ、コロケーション (施設、異なる使用条件、別々の契約) 、ハードウェア、そして帯域の問題などが含まれます。Amazon EFS をご利用になるお客様では、セルフマネージド型ファイルストレージのソリューションと比較して最大 90% の節約が可能です*。 Amazon EFS は伸縮自在にスケーリングするため、お客様はファイルの追加や削除に合わせ、自動的に利用量を拡大や縮小することができます。プロビジョニングや管理用のキャパシティを確保する必要はありません。さらに、ストレージボリューム管理の複雑さから逃れられ、実際に必要な分だけを支払えば良い、という別の利点もあります。EFS ライフサイクル管理では、毎日アクセスしないファイルを、EFS Infrequent Access ストレージクラスに透過的に移動することで、コスト削減幅のさらなる調整が可能です。このストレージクラスのコストは 0.025 USD/GB (毎月) だけです (料金は米国東部 (バージニア北部) リージョン) 。 さらに言えば、EFS には、マルチアベイラビリティゾーンアーキテクチャにより提供される追加的なコスト削減手法もあります。これにより、お客様がアプリケーションをスケールアウトする際、コンピューティングに合わせて、よりコストの低い EC2 スポットインスタンスを選択することが可能です。

運用上のシンプルさ

ISV のお客様は、予測が不可能な顧客数の増大に合わせスケーリングするために、ビジネスが俊敏さを備えることの重要性についても、お話しくださっています。この課題に関係する要素は、アプリケーション向けにストレージの信頼性を確保することから、新たなマーケットに移動することの煩雑さにまで及びます。また、タイミングを見計らって市場投入することや、コロケーション、ハードウェア、および帯域などの調達リスクについても考慮する必要があります。加えて、セルフマネージド型ストレージソリューションでは、貴重な資本と開発リソースが、インフラストラクチャのデプロイと維持により拘束されるというご意見もありました。

Amazon EFS では、完全マネージド型のストレージソリューションをご利用いただけます。つまり、キャパシティを保持するために、ハードウェアもしくはインフラストラクチャの管理を気にする必要がないということです。さらに、利用量の最適化などを気にする必要もありません。このサービスは、一切の関与を必要とせずに自動で拡大および縮小するので、支払いは実際に利用した分のみです。全体的に見て最も優れている点は、インフラストラクチャの管理から開発リソースを解放できる点であり、アプリケーションに付加価値を追加する作業に注力できるようになります。Faculty 社のデータエンジニアである Scott Stevenson 氏は次のように言います。「偉大なテクノロジーの証しとは、その存在を忘れることができるということです。Amazon EFS は、利用者側では管理作業を一切必要とせずに、簡単に機能させられます。技術的な課題となり得る独自ストレージシステムの構築および管理に取り組む代わりに、その業務は Amazon EFS に任せることが可能です。」

俊敏性

LoanLogics 社を始めとする ISV のお客様からは、アプリケーションのクラウドと完全マネージド型ストレージへの移行は素早く行いたい、というご要望もいただいています。LoanLogics 社の場合、アプリケーションは Linux ベースであり、データの読み出し書き込みを行うためのファイルシステム構造をお求めでした。多くのお客様が、アプリケーションのリファクタリングが不要であるという理由から、SaaS 環境用のストレージとして Amazon EFS をご利用になっています。これにより、クラウドと完全マネージド型への移行が迅速化できます。この利点により、お客様はご自身の顧客にメリットを提供するための機能に集中し、総収益を高めることができます。他のストレージオプションでは、特別なコードの作成と維持による、リファクタリングが要求される場合があります。一方、Amazon EFS では、POSIX 互換のファイルシステムとインターフェースし NFS を介してコミュニケーションするよう構築されているアプリケーションでは、リファクタリングの必要をなくています。

LoanLogics 社の CIO、Terrell Cassada 氏からは、Amazon EFS を使うことで、同社がいかに俊敏性を手に入れたかをお聞かせいただきました。彼の言葉は次の通りです。「当社では、多数ご参加いただいている新規顧客に対応するため、即刻、ストレージキャパシティを拡大する必要がありました。AWS のファイルストレージサービスでは、アプリケーションのコードの変更は一切必要なく、数日の内にインフラストラクチャの拡大が可能でした。」

多くのお客様は、データの読み出しと書き込みでインターフェースをし合う複数のアプリケーション用に、共有ファイルストレージもお求めです。Amazon EFS への移行により、お客様はアプリケーションを移動させずにマネージド型コンテナーサービスである ECS や EKS と統合し、モダナイゼーションを行えるようになります。同時に、AWS パートナーネットワーク (APN) のテクノロジーバートナーでは、AWS での SaaS の構築、移行、最適化を加速し簡素化するための、SaaS ファクトリーもご活用いただけます。

セキュリティと監査性

マルチテナントのセキュリティと監査性は、多くの SaaS アプリケーションにおいて、基本的な要件となっています。多くのお客様が、正確な制御と監査を行えるマルチテナントサービスの提供に必要となるセキュリティとコンプライアンスを実現するため、Amazon EFS をご利用になっています。Amazon EFS では、IAM 認証とアクセスポイン を提供しています。これにより、しばしばマルチテナントの SaaS 環境で求められる異なったクライアント間でのアクセスを、シンプルに管理および制御することが可能になります。さらに、Amazon EFS では、転送と保存の両方の状態にあるデータの暗号化も使えます。これは、ますます増加するアプリケーションでのコンプライアンス要件にも適合できます。それらに加え Amazon EFS では、お客様がお使いの AWS アカウントにおけるガバナンス、コンプライアンス、運用監査、リスク監査を可能にするため AWS CloudTrail もサポートしています。CloudTrail を使うと、AWS インフラストラクチャ全体のアクションに関し、ログ記録、継続的なモニタリング、アカウントアクティビティの維持などが行えます。

可用性

多くの ISV のお客様から、ユーザーのニーズに対応するため頑強かつ高い可用性のある環境を必要とするような、ビジネスクリティカルなアプリケーションに関するお話しもお聞かせいただいています。タイミングを問わないデータアクセスが必要なアプリケーションにとって、高可用性のストレージターゲットは大変重要なのだとのことです。Amazon EFS では、複数のアベイラビリティーゾーン (AZ) にデータを保存することにより、高い可用性と耐久性を提供しています。書き込みが完了したデータは、任意のアベイラビリティゾーンにあるユーザーとアプリケーションから即時のアクセスが可能です。これは、すべてのクラスター化アプリケーションにとって重要な点です。各アベイラビリティゾーンは、独自の電源インフラストラクチャを備え完全に分離されたパーティションであり、十分な距離で物理的に分離されています。その距離は、他のゾーンから何キロメートル離れていますが、同時に、すべてのゾーンは 100 km (互いに 60 マイル) 以内に置かれています。また、すべてのアベイラビリティーゾーンは、高帯域幅で低遅延のネットワークにより相互接続されています。それらは、完全冗長の専用メトロファイバーを介して、各ゾーン間において高スループットで低遅延のネットワークを構成しています。

データ保護

法律上およびコンプライアンス上の一定の要件を満たすためには、データの保護も大切になるというお話しもうかがっています。Amazon EFS のアーキテクチャでは、複数のゾーンにまたがる保存機能の一環として、単一のデータセンターに影響を与える可能性のある問題からデータの保護も行われます。すべてのファイルシステムオブジェクト (ディレクトリ、ファイル、リンク) は、複数のアベイラビリティゾーン間で冗長的に保存され、データは 99.999999999% の耐障害性を持ちます。加えて EFS では、完全マネージド型でポリシーベースのバックアップソリューションである AWS Backup もサポートしています。これにより、シンプルなバックアップ管理が行え、データ保護とコンプライアンスの要件に対応するクロスリージョンのバックアップコピー作成もサポートされます。

まとめ

まとめです。Amazon EFS では、セルフマネージド型のファイルストレージソリューションと比較して、SaaS アプリケーションのデプロイを、より素早く低 TCO で行える効果的なストレージソリューションをご提供しています。EFS には、ビジネスの俊敏性を高め運用を簡素化できる複数のメリットがあります。さらにこのサービスはユーザーに高い可用性とデータ保護を提供しながら、セキュリティコンプライアンスと監査性にも対応しています。全体を通じ最も優れているのは、EFS の TCO が、インフラストラクチャのプロビジョニングや管理を気にする必要もなく、セルフマネージド型ファイルストレージソリューションと比べてコストを最大で 90% 削減できる点です。この EFS を Amazon EC2 と組合せることで、SaaS アプリケーションのクラウドへの移行向けに、シンプルで統合されたコンピューティングとストレージのソリューションがご利用になれます。クラウドと完全マネージド型への移行の簡素化に加えて、お客様はアプリケーションを移動させずにマネージド型コンテナーサービスである Amazon ECSAmazon EKS と統合し、モダナイゼーションを行えます。ご質問、あるいは、SaaS アプリケーションか他の目的での Amazon EFS ご利用について共有したい体験がある場合には、コメント欄にお書込みください。

* EFS ライフサイクル管理を Infrequent Access ストレージクラスで利用し、米国東部 (バージニア北部) の料金を適用し、ハードウェア上のストレージの利用率を 85% とした場合に基づいています。