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クラウドジャーニーの歩み方 – Assess (評価) フェーズ – #1

まえがき

みなさん、こんにちは。カスタマーソリューションマネージャー (CSM) の安部です。カスタマーソリューションマネージャーは、クラウド導入を進めようとしているお客様のクラウドジャーニー全般を支援する活動をしています。 本ブログは、現状オンプレミス上で多くの IT 資産が稼働しており、AWS への移行を考えたいお客様向けに作成しています。 この記事では、CSM の観点で、AWS への移行を検討しているお客様がクラウド移行を進めるにあたり、クラウド移行の4つのフェーズと各フェーズで阻害要因となる10のハードルを軸に、各フェーズにおいてどのような具体的な課題を持たれ、どのように解決していくかを事例を紹介しながら、紐解いていこうと思います。 AWSのクラウド移行およびクラウド活用の道のりについては、「クラウドジャーニーの歩み方 (前編) 」と題したブログでも紹介していますので、併せてご参照ください。

クラウドジャーニーにおける10のハードル

クラウド移行には、4つのフェーズがあります。Assess (評価) から始まり、Mobilize (移行準備) に入り、Migration (移行) へと進みます。さらに、クラウド利用によるビジネスの価値を高めるため、Modernization (最適化) へ取り組む流れとなります。本ブログでは、最初の取り組みとなるAssess (評価) に焦点を当てて、前編・後編でまとめています。前編では、下記図に示す「クラウドジャーニーにおける10のハードル」の最初のハードルである、「1.クラウド移行のビジネスメリットがわからない」に関して、課題の深堀りと解決策についてお話いたします。

Assess (評価) フェーズでの課題 前編

本前編では、本Assess (評価) フェーズの位置づけからご説明します。
クラウドジャーニーの歩み方でも触れました通り、Assess (評価) フェーズでは、クラウド移行のためのビジネスの全体戦略の策定、全体戦略から紐づくビジネス価値の特定、現状分析とあるべき姿の定義、ロードマップの検討を行うことが求められます。これらは、何を目的にクラウド移行を進めるのかを理解して、コスト削減だけにはとどまらず、イノベーションを起こす企業風土の構築のためには不可欠であり、はじめの一歩の重要なフェーズとなります。

本フェーズにおいてよくある課題を掘り下げてみます。

「 1.クラウド移行のビジネスメリットが分からない」

クラウド移行のビジネスメリットがわからない状態という課題は、クラウド戦略の策定がされていない、またはクラウド戦略の中にクラウド化のメリットが体系的に明確化されていない場合に起こりがちです。最適なビジネス成果実現のためには、ビジネス戦略とクラウド戦略が統合され、クラウド化による戦略的メリットが各事業部内で十分に理解されている必要があります。現状、社内でクラウド戦略の策定がどの程度進んでいるかを客観的に判断する方法として、各事業でビジネス展開に向けた具体的なIT施策の検討が進んでいるかを確認する、もしくは上位層から提供される各種情報、例えば年次報告書や中期経営計画書、経営層からステークホルダーへ発信される社長レター、などから読み解く方法が挙げられます。自社のビジネスリーダーが、クラウド関連の施策をビジネス戦略や計画にどのように組み込んでいるか、またクラウド活用により実現したい目標が明確になっているかをぜひ確認してみてください。
ここで、クラウド戦略が策定されていないもしくは漠然とした戦略である場合を想定してみましょう。なぜクラウドなのか?ビジネスの観点で見た場合のクラウドとは、自社でハードウェアや設備を購入、準備することなく、ネットワーク経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、ソフトウェアといったさまざまなITリソースを、オンデマンドで利用することができるサービスとなります。オンプレミスに比べて、利用までにかかる時間の圧倒的短縮、需要の縮小や拡張にあわせたリソースの利用、利用した分だけの支払いという従量課金制、 IT 資産の固定費から変動費への転換といった特徴があります。

一方、オンプレミスでは、自社で必要となるサーバーやネットワーク機器、電源機器、ソフトウェアなどを自社で保有して、インフラストラクチャを管理、運用していく利用形態となります。メリットは、⻑年の運⽤実績を踏まえたセキュリティー管理や、⾃社内ですべての設備環境を掌握し、情報漏洩防止を自主管理できること、⾃社ネットワークの低レイテンシー要件への対応ができること、などがあります。これはオンプレミスのデメリットにもつながり、調達に関わる工数やリードタイムの発生、予期しないハードウェア障害、定期的な機能増強や⽼朽化対応、保守、災害対応などによる俊敏性の低下、不確実なサイジングによる余剰キャパシティーの発生やリソース不足による機会損失、余分なエネルギー消費による環境への影響があります。

今一度、時間やコストをかけてまで、すべて自前でコントロールできるITインフラを企業内の全システムが持つべきかを考える必要があります。出来る限りインフラ管理の手間を減らして、本来取り組むべき業務に集中することが重要です。
オンプレミスのシステム運用にかかる人件費や設備費に対して、ビジネス的価値、利益をほとんど生み出していないのが、オンプレミスを保持し続ける一番の課題ではないでしょうか。
それぞれの事業組織やビジネス領域において、クラウドを活用して何を実現したいのかといったゴールやビジネス目標を明確にし、それを実現するためにはどのようにクラウド移行をするのかといった移行戦略を立案することが重要です。

これら、クラウド戦略やデメリットの課題に対して、AWSでは、AWS Cloud Value Frameworkを用いて、経済的メリットの定量化やクラウドへの移行実現性の評価など、5つの観点で改善点を特定してビジネスメリットを見える化していくフレームワークがあります。代表的な焦点として、コスト削減 (TCO) が挙げられますが、それ以外のスタッフの生産性、オペレーショナルレジリエンス、ビジネスの俊敏性、サステナビリティというクラウド特有の価値も、最も説得力のあるクラウドのメリットとして、フレームワークを用いて、より説得力のあるビジネスメリットをまとめて行くことができます。このフレームワークは、「クラウド移行で実現できるビジネス価値と経済性評価の考え方」という動画で解説していますので、併せてご覧ください。また、「AWS IT トランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー (ITX 2023) 」でも、関連するプログラムをご案内できますので、ご興味をお持ちのお客様は、アマゾン ウェブ サービスの営業担当者にお問い合わせください。

まとめ

前編では評価フェーズとして、AWS Cloud Value Framework を用いたビジネスメリットの見える化、までを行いました。後編では、評価フェーズのもう一つのハードルとして、「ベンダー依存で移行対象システムが未選定、移行準備状況も把握できていない」についての課題とその取り組みについて、ご紹介いたします。

カスタマーソリューションマネージメント統括本部
カスタマーソリューションマネージャー (CSM) 安部 俊作、上原 研太

参考リンク

NIST (アメリカ国立標準技術研究所) によるクラウドコンピューティングの定義
AWS Cloud Value Framework
クラウド移行で実現できるビジネス価値と経済性評価の考え方
AWS IT トランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー (ITX 2023)
クラウドジャーニーの歩み方 (前編)
クラウドジャーニーの歩み方 – Assess (評価) フェーズ – #2