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Media Lab 利用開始と AWS を活用した顧客ソリューションの共同検証

業界標準技術に基づいた映像伝送でクラウド環境の検証が可能な ”Media Lab“ 利用開始

メディアワークロードでは、従来の放送システムやメディア業界向け専用機器の IP 化が進められており、また “SMPTE” (*1 ) に代表される映像技術全般にわたる標準規格の策定も IP による映像伝送が定義され、ワークロードに対応するための定義や専用機器への対応が進められています。映像技術や伝送の IP 化はクラウド技術利用にも直接つながるため放送システムのクラウド化の挑戦も続いており、AWS においても AWS Cloud Digital Interface (CDI) を発表し JPEG XS を用いた業界標準定義による伝送をサポートすることや、実際の放送システムをクラウド化する活動が米国を中心に進んでいます。日本においては、これらのイノベーションの動きを加速することを 1 つの目的として 、我々は “Media Lab” を 2022 年の Inter BEE で発表しました。

“Media Lab” は、AWS Direct Connect による AWS クラウドへの接続を広帯域ネットワークで行うことを可能とし、業界標準の SMPTE ST 2110-22 を含めた各種映像フォーマットをクラウドへ伝送するためのシンプルな構成を、AWS のオフィスに設置された機器で実現しています。これによって、IP 化に伴いメディア業界で一般的に実施される Interoperability (ベンダー機器間や技術間の相互接続評価)の確認を実機環境とクラウド環境で実施することが可能になっています。

この環境は 2023 年 4 月に設置工事と内部での検証が完了し、実際のお客様との活動に使われはじめています。本 Blog では、メディア業界に向けた製品を開発・販売されている製造会社のお客様と 5 月末から 6 月頭に実施された活動の内容を紹介します。

( *1 ) 米国映画テレビ技術者協会

株式会社ヴィレッジアイランド: “JPEG XS” 伝送の相互接続性確認

映像のエンコードや変換、解析を行うための技術や製品をお持ちの株式会社ヴィレッジアイランドは、自社技術を用いたクラウド製品開発を加速する1つの活動として、自社の JPEG XS エンコーダー・デコーダーと AWS Elemental MediaConnect の相互接続評価を共同で実施しました。評価にあたり使用するエンコーダー・デコーダーの VICO-4L-XS を含めた機材を “Media Lab” に持参いただき接続評価を実施しました。評価の内容は、VICO( エンコーダー ) から HD レベルの JPEG XS 伝送を AWS Elemental MediaConnect で受信し、映像を戻すために用意したもう  1  つの AWS Elemental MediaConnect へ AWS CDI を使い伝送し、VICO( デコーダー ) へ  JPEG XS の形でクラウドから送信しその映像を確認する。といった内容を目的に実施しました。

( 図 1 :構築したアーキテクチャ )

この接続テストでは、JPEG XS の相互接続性について課題を見つけることができ、詳細分析を行う目的で追加の試験を実施することができました。追加の試験は、株式会社ヴィレッジアイランドによるパケットキャプチャリングを 3 つの接続テストパターンで実施しましたが、この中には “Media Lab” に AWS 側で設置した AWS Elemental Live との直結によるパケット測定も含まれており、相互接続性の確認を実機環境を備えた利便性を生かして実施することができ、AWS クラウド側環境と AWS の実機製品の差分も比較することができています。継続して解析対応を実施していくことでテストは終了し、後日株式会社ヴィレッジアイランド側で改修対応を実施され、AWS と追加評価を実施することを計画しています。

株式会社ヴィレッジアイランド 映像システム事業部

取締役  川上 厚志 氏

このテストを通じて、映像伝送の正常な実現には至りませんでしたが、この結果を通じて製品接続に課題があることを明らかにすることができました。AWS は世界的に信頼されるプラットフォームであり、その “Media Lab” は革新的なテクノロジーの開発とテストに貢献しています。我々は AWS 様とテストを行いその結果から学びを得ることができました。JPEG XS コーデックについては、将来的な期待が高まっています。その高い圧縮率と低遅延性は、映像伝送分野において画期的な進歩をもたらすことが期待されています。今後も AWS 様との協力関係を深めながら、新たなテクノロジーの探求と革新的なソリューションの提供に努め、最高品質の映像伝送を提供することをお約束いたします。

リーダー電子株式会社:AWS Cloud Digital Interface (CDI) を利用した映像解析ソリューション

全世界のメディア業界向けに映像測定・解析機器を長年開発・販売しているリーダー電子株式会社は、AWS 上で稼働するコンテンツチェックサービスの “GLADIAS Cloud” サービスを既に販売されています。 2022 年の Inter BEE でも発表されている 現在開発中の “Cloud Live Solution” を共同で評価しました。

“Cloud Live Solution” は、クラウド環境内で AWS CDI を使用することによって高解像度映像を非圧縮伝送で受信し、その受信映像をモニター表示することや映像データを解析し表示する、2 点間の伝送の遅延量を測定するといったことが可能なアプリケーションであり、AWS Direct Connect や専用回線を準備しなければできない高解像度映像を用いた評価を実施しました。これら評価する機能は、従来から放送基幹システムで行われている機能をクラウド上で実現する機能になります。

( 図 2 :構築したアーキテクチャ )

( 実際の画面 1  )


( 実際の画面 2 )

評価作業では、まず AWS Elemental Live から業界標準の伝送方式である SMPTE ST2110-22 JPEG XS を利用して映像を出力し AWS Elemental MediaConnect で受信、その後 AWS CDI による伝送を行いもう 1 つの AWS Elemental MediaConnect へ映像を送信します。このAWS Elemental MediaConnect よりSMPTE ST2110-22 JPEG XS による映像出力でオンプレミス環境への伝送を行うことで評価を実施しました。実施した評価によって、 Web ブラウザー経由、 Mobile 経由による 波形モニター、映像データ確認、動画プレビューの機能を Web UI で表示されることを確認することができました。

リーダー電子株式会社 グロースビジネスカンパニー VMA2 ユニット

ユニット長 坂本 圭弘 氏

検証環境の構築には時間をかけずに検証を進めることができ、クラウド環境でもオンプレミス環境と同等な冗長構成を構築し、遅延測定の精度を確認することができました。今後ライブでのクラウド利用は増えてくると予想されるため、高品質な映像をリアルタイムに扱うためのサービスが拡充されることを期待しています。

最後に

放送基幹システムをクラウドへ移行するには、世の中に出てくる新たな技術への対応に加えて、業界で定められている方式を使用することや従来の機能と同等レベルのものをコンポーネントとしてクラウド上で実行することが求められるため、製品開発や評価には広帯域なネットワークや専用のメディア機器が必要となります。今回ご紹介したように AWS は それらを備える “Media Lab” を利用することで、お客様のクラウド移行をサポートし、メディア業界のクラウド移行というイノベーションの加速を継続して行っていきます。

お問い合わせはメディアチームまでお願いします。

参考リンク

AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)

AWS のメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
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本ブログは、BD  山口、SA  金目、SA 井村、SA 小林 、SA 長澤による確認、SA 斎藤が執筆を担当しました。