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AWS のデジタルツイン:L1 Descriptive デジタルツインで価値を推進

このブログは、Adam Rasheed によって書かれた Digital Twins on AWS: Driving value with L1 Descriptive Digital Twins を翻訳したものです。

以前のブログでは、お客様がアプリケーションでデジタルツインをどのように使用しているかに一致する、デジタルツインの定義とフレームワークについて説明しました。特に、お客様が求めているビジネス価値を実現するために必要なユースケースとテクノロジーを理解するのに役立つデジタルツインレベリングインデックスについて説明しました。このデジタルツインレベリングインデックスは、L0 から L5 システムを使用する自動運転車の分野で見られるものに類似しています。ここで、L0 は手動運転、L1 はクルーズコントロール、L5 はステアリングのない真の自動運転車です。要約すると、次の図は、 前のブログで説明した 4 つのデジタルツインレベルの概要を示しています。このブログでは、電気自動車(EV)の例を見て、L1 Descriptive レベルを説明します。ユースケースの例を通じて、L1 Descriptive デジタルツインソリューションを作成およびサポートするために必要なデータ、モデル、テクノロジー、AWS サービス、およびビジネスプロセスについて学習します。

L1 Descriptive デジタルツインL1 デジタルツインは、物理システムの説明に重点を置いており、初期のビジネスケース分析や製品要件から、詳細なエンジニアリング設計や 3D 視覚化に至るまでのコンテンツが含まれています。L1 デジタルツインの目的は、ユーザーがコンポーネントと、物理システムを構成するコンポーネント間の関係を理解できるように、構造を説明することです。多くの場合、L1 デジタルツインの場合、物理システムはまだ初期の設計段階にあるため、まだ存在していません。または、物理システムが存在する場合、L1 デジタルツインを使用して、特定の一連の動作条件下での物理システムの平均的な動作(計算流体力学または弾性波解析など)を理解します。以下で説明する L1 Descriptive デジタルツインの例には、1 /アセットモデル、2 /エンジニアリング設計、および 3/没入型バーチャルリアリティ環境が含まれます。 アセットモデル物理エンティティ(または資産)について考えたとき、最も基本的な説明は、システムを構成するすべてのサブアセンブリとコンポーネントを識別することです。たとえば、次の図では、EV 車両の階層表現を示しています。この図は、車両を構成する主要なシステム、サブシステム、およびコンポーネントを示しています。以下の図は説明のみを目的としており、網羅的なものではないことに注意してください。この情報は、デジタルツインの構造を説明し、通常、 Amazon Neptune などのグラフデータベースでエンティティモデルとして表され、ナレッジグラフを使用して他のソースからのデータでクエリおよび集計できます。多くの業界では、異なるシステム間および資産のライフサイクル全体での相互運用性を可能にする標準規格が定められていることに注意してください。たとえば、ISO 19650 および UK 1192 は、ビルディングインフォメーションモデリング用に開発された国際規格です。実際には、構成の詳細を最新の状態に保つことは、機器オペレーターにとって一般的な課題であり、アセットの構成を知ることが保守スケジュール、在庫計画、安全上の理由からの製品リコールの発行のようなユースケースの鍵となります。 AWS IoT TwinMaker は、開発者が建物、工場、産業機器、生産ラインなどの実際のシステムのデジタルツインを簡単に作成できるようにするサービスです。特に、さまざまなデータソースに接続して、アセットエンティティモデルを作成、更新、およびクエリすることが容易になります。次に、このデータを視覚化して表示したり、入力データとして機械学習または物理ベースのモデルにルーティングして予測を行うことができます。

エンジニアリング設計

エンジニアリング設計の観点からは、構造フレーム、パワートレイン、電気システム、ステアリングとサスペンション、および外装(スタイリングと空気力学の両方)とインテリア(スタイリングと快適さのために)など、設計が必要な多くの自動車サブシステムがあります。各サブシステムは、数十年の経験で検証されたさまざまな計算ツールを使用して設計されています。たとえば、全体的な乗り心地と車両ダイナミクスは、組み立てられた車両の各構造コンポーネントの剛性をモデル化する物理ベースのマルチボディダイナミクスシミュレーションを使用してモデル化されます。

以下の例では、AWS パートナーの Maplesoft によって提供されており、車両がシミュレートされた不整地を走行するときに、タイヤと道路の接触の相互作用がモデル化されています。シミュレーションへの入力には車速とステアリング入力が含まれ、モデルは車両サスペンションのたわみを提供します。シミュレーションでは、タイヤと路面の接触力が低すぎて適切な駆動力を提供できない場合に把握できるように、タイヤの剛性の詳細とサスペンションの設計を考慮します。EV の操縦中(滑りやすい路面でのブレーキングなど)の車両ダイナミクスと安定性は、多くの理由で内燃エンジンの場合とはかなり異なります。それは、EV の下部重量配分(バッテリーパックが床下にあるため)と、エンジンが前面にある従来の車両の比較を含みます。動的システムシミュレーションにより、エンジニアはさまざまな条件下で車両のダイナミクスをシミュレートして、設計のエンジニアリング要件を満たすことができます。この例ではこの場合、視覚化を強化するために車両の 3D レンダリングも提供しました。

特に EV の場合、充電時間、加速、航続距離に関する顧客の期待に車両が適合していることを確認するために、電気駆動列の性能分析が重要です。たとえば、丘を上り下りする寒い日の EV のバッテリー範囲は、平坦な道路の暖かい日の範囲とは大きく異なります。EV パワートレインの性能を調べるために、下の図に示すように以前の EV モデルを変更しました。このモデルには、駆動列の関連部分と、空気力学と地形傾斜の簡略化された車両モデルが含まれています。画像のグラフは、車両がシミュレートされたドライブサイクルに従うときの主要なバッテリーとモーターのパラメーター(電圧と電流)を示し、バッテリーの充電状態(SOC)は、バッテリーが放電するにつれて低下することを示しています。このタイプの分析により、設計エンジニアは、電気駆動列がターゲット顧客の予想ルートプロファイルを満たすか上回るための適切なパフォーマンス特性を備えているかどうかを理解できます。このモデルのバリエーションを操作するには、Maplesoft の Web サイトにアクセスしてください。

さまざまなソフトウェアツールを使用したエンジニアリング分析の他の例には、空気力学的抗力を最小限に抑えるための、車両上の気流の計算流体力学、構造部品の有限要素解析により、車両の負荷に耐える強度があることを確認し、乗り心地解析により、車両の運転中の乗客の振動/快適さのシミュレートが含まれます。AWS パートナーには、計算流体力学(CFD)、有限要素解析(FEA)、創薬、気象モデリング、電子設計自動化(EDA)など、計算量の多いワークロード向けのエンジニアリングシミュレーションソフトウェアを提供する幅広い独立系ソフトウェアベンダー(ISV)が含まれます。これらの ISV ソリューションは、AWS ParallelCluster などの AWS High Performance Computing(HPC)サービスを使用して、または AWS Marketplaceを介してデプロイできます。さらに、AWS HPC Competency Partners は、フルマネージドクラウド HPC 環境、およびエンドツーエンドのクラスタープロビジョニング、デプロイ、管理、および AWS で HPC ワークロードを実行するためのサポートも提供します。AWS HPC インフラストラクチャでシミュレーションを使用すると、メーカーは、製品開発中に物理ハードウェアの高価な開発を仮想モデルに置き換えることでコストを削減できます。より一般的には、エンジニアリング設計のトピックについて、相手先ブランド製造(OEM)のお客様から、自社のエンジニアリングワークフローを最新化したいというという要望をよく聞いており、デジタルトランスフォーメーションに関するガイダンスを提供することを AWS に期待しています。AWS は、社内の機能グループ全体で、さまざまなエンジニアリングツール間、堅牢な権限管理を備えた外部サプライチェーン全体でのデータとモデルの共有に関連する主要な問題点に対処するために、デジタルエンジニアリングの取り組みに投資しています。

没入型拡張現実体験

上記の L1 Descriptive の例は、OEM による車両の設計中のエンジニアリングの説明に焦点を当てています。もう 1 つの魅力的なL1ユースケースは、高忠実な 3D、没入型仮想現実(VR)、インタラクティブな拡張現実(AR)などの拡張現実(XR)テクノロジーの適用で、カスタマーエンゲージメントプロセス中に、ユーザーを実際の車両体験に没頭させます。この例では、AWS Partner の CavrnusTheia Interactive および Epic Games が、Audi©A5 コンバーチブルを備えたショールームの没入型コラボレーションレプリカを作成するためのメタバースソリューションを開発しました。ブランドの販売員は、常時オンで利用可能な仮想空間を通じて、顧客とのより有意義なやりとりが実現できます。

たとえば、自動車購入の将来のビジョンは、顧客が快適な自宅から没入型の仮想ショールームに入り、メタバース体験の販売サイクルを通じて、ブランドの販売員が同じ仮想ショールームに参加して案内することです。これを強調するために、Cavrnus  の没入型体験からスクリーンショットを撮りました。廊下を歩いて車両に近づき、ショールームで車両を見て、ドアを開けて車両の中に座って対話する顧客の視点を見ることができます。

Cavrnus の体験は、すべてのユーザーが音声およびビデオストリーミングを含む完全な空間 3D 共存を実現するマルチユーザーコラボレーション環境を可能にします。顧客は、友人や家族を招待して、自分の場所からリモートで没入型体験に参加し、アバター、音声、ビデオを介して触れ合うことができます。お客様は、利用可能な構成オプションに従って、車両の色、トリムレベル、ホイール、およびインテリアを変更することができます。すべてのユーザーは変更をすぐに確認でき、共同で会話したり、ホワイトボードを使用してアイデアを互いに説明したりできます。その後、正確に構成された車両用に独自のコマーシャルを作成できます。

下の画像では、顧客はコンバーチブルルーフとトランクを開いて車両とのインタラクションを続けています。顧客はまた、ビデオやアバターで見ることができる友人や家族との共同ディスカッションに参加しながら、車両の色とインテリアトリムのオプションを変更します。

このエクスペリエンスは完全にインタラクティブであり、顧客は自分のコントラーラを使用して、まるで直接そこにいるかのように仮想ショールームを「歩き回る」ことができます。没入型体験を示すビデオについては、Cavrnus の Web サイト にアクセスして、自分の目で確かめてください。

このソリューションでは、デジタルショールーム環境は Theia Interactive によって作成されました。ショールームのアセットは、デジタルコンテンツ作成ツールを使用してデジタルアーティストによって構築されました。車両および車両コンポーネントは、Audi© によって提供された元の CAD およびエンジニアリングデータから作成され、変換/最適化ワークフローを通じて処理されました。このエクスペリエンスは Cavrnus を利用しており、レンダリングとストリーミングに Unreal Engine を使用した G4 および G4ad EC2 インスタンスの使用を含む AWS インフラストラクチャでホストされています。エクスペリエンスは、クラウド内の AWS GPU サーバーから、スマートフォンを含む Web ブラウザーを介して任意のエンドデバイスにピクセルストリーミングすることもできます。

AWS は、3D コンテンツの生成、ストレージ、ホスティング、エクスペリエンスのプロセスを簡素化するために、さまざまな業界のお客様と協力し続けています。たとえば、Amazon Nimble Studio は仮想スタジオであり、デジタルコンテンツの作成者が利用できるようになり、仮想ワークステーション、共有ストレージ、そしてメディアおよびエンターテインメント制作環境のクリエイティブツールを接続する組み込みのレンダリングソリューションを提供します。さらに、AWS は Epic Games と提携して、Unreal Engine ベースのコンテンツの開発プロセスをターンキーにする、AWS マーケットプレイスで利用可能な Unreal Engine Amazon Machine Image (AMI) の提供を最近開始しました。

まとめ

AWS では、4 つのデジタルツインレベルすべて のユースケースをサポートするために、さまざまな AWS サービスと ISV パートナーシップを使用して、デジタルツインの旅でお客様をサポートできることを非常に嬉しく思っています。このブログでは、自動車の例を見て、L1 Descriptive ベルについて説明しました。将来のブログでは、自動車の例を拡張して、L2 Imformative、L3 Predictive、および L4 Living デジタルツインを示します。

著者について

Adam Rasheed 博士は、AWS の自律コンピューティングの責任者であり、自律システムの HPC-ML ワークフローの新しい市場を開発しています。彼は、航空、エネルギー、石油およびガス、再生可能エネルギー業界でのデジタルツインの開発を含む、産業分野とデジタル分野の両方にまたがる中期ステージの開発で 25 年以上の経験があります。Rasheed 博士はカリフォルニア工科大学で博士号を取得しました。そこでは、実験的な超高速大気熱力学(軌道再突入加熱)を研究しました。MIT Technology Review Magazine によって「世界のトップ 35 イノベーター」の 1 人として認められ、航空学における初期のキャリア貢献に対して業界賞である AIAA ローレンススペリー賞も受賞しました。彼は、産業分析、運用最適化、人工リフト、パルスデトネーション、超音波、衝撃波誘起混合、宇宙医学、およびイノベーションに関連する 32 以上の特許と 125 以上の技術出版物を発行しています。

このブログはソリューションアーキテクトの戸塚智哉が翻訳しました。