Amazon Web Services ブログ

日本テレビ放送網株式会社、日テレ系ライブ配信トライアルにおいて AWS を利用した Cloud Playout を実現

Cloud Playout 導入の背景

放送/配信業務において映像を送出する Playout システムは LIVE 映像が配信されている LIVE フィードと事前に準備済みの映像ファイルである Asset の切替、番組進行 / 編成管理、緊急切替といった様々な処理を行います。そして LIVE フィード / Asset の切替や映像の “フタ被せ” ( 権利の関係から映像配信できない場合に別映像を被せる ) は該当の映像区間のみに対して処理をするため、フレーム精度 ( 後述 ) での対応が求められます。そのため Playout システムの構築には専用ハードウェアの組み込みや数年単位での検討/構築期間、多くのコストが掛かる事が従来は一般的でした。
日本テレビ放送網株式会社 ( 日本テレビ ) は2020 年 10 月より始めた地上波プライムタイムのライブ配信トライアル ( 日テレ系ライブ配信トライアル ) において、これらの課題を解決し、迅速にサービスを実現するために株式会社 PLAY ( PLAY ) の Cloud Playout サービス “ PLAY KRONOS ( KRONOS ) ” を採用しました。KRONOS は Veset International Limited の映像ソリューションである Nimbus を映像送出機能の一部として取り入れた クラウドプレイアウトサービスで、AWS MediaServicesAmazon Elastic Container Service ( ECS ) などの AWSサービスを利用して高い可用性を実現しています。

「 私達は KRONOS を採用する事で専用ハードウェアの調達をする事なく、要件定義含め5ヶ月の構築期間で日テレ系ライブ配信を実現しました。既存の Playout システム改修や、新規でオンプレミスに構築した場合と比較し 約1/3の期間で Playout システムを構築する事ができました。また、KRONOS は SaaS として利用できるため、初期構築費用を抑え、利用期間に応じたコスト負担となり導入の敷居を下げる事もできました。日テレ系ライブ配信はトライアルとして始め、視聴者からの反応や、各種システムとの連携確認、運用フローの確立など様々な事を確認する必要がありましたので、コストを抑え迅速にサービスを立ち上げられた事は嬉しく思います。」と日本テレビ ICT 戦略本部 エンジニアリングディビジョン担当副部長 松本氏は述べます。

Cloud Playout ワークフロー

日テレ系ライブ配信において Cloud Playout を実現した構成図を以下に記します。

 

  • 日本テレビ局舎の地上デジタル放送マスター設備、Encoder から出力された信号は専用線である AWS DirectConnect を通り、AWS Elemental MediaConnect ( MediaConnect ) へと伝送されます
  • MediaConnect は Playout Serviceへ信号を出力します
  • Playout Service はSCTE信号 or 規定時間 ( System Clock ) or 前イベント終了をトリガとして LIVE フィードと Asset ( Amazon Simple Storage Service から取得 ) の切替処理等を行います
  • APC Service は AWS Fargate で構築された Dashboard Service 、API Service からの指示により Asset や Live フィードの切替スケジュール等の制御 / 管理を行います
  • Playout Service は APC Service と連携し緊急切替等の処理も行います
  • Playout Service から MediaConnect へと信号が出力され、MediaConnect からは TVer 配信プラットフォーム、及び放送データ共有システム Traffic Sim RecShare CLOUD へと信号を分配して出力します
  • そして TVer から視聴者へとコンテンツが配信されます

フレーム精度での番組切替の実現

Playout における Liveフィードと Asset の切替では正確にコンテンツ間の切替を行うためフレーム精度で処理する必要があります。 1 秒, 2 秒といった単位よりも更に細かい粒度 ( 29.97 fpsであれば 1 フレームは約 0.0334 秒に該当 ) で切替を行う事になります。そのため、フレーム区間を認識し正しくフレーム精度で処理する場合、サーバ内で動く System Clock だけを参照していては正確なフレーム精度を出す事は困難でした。日テレ系ライブ配信トライアルでフレーム精度を実現するため、LIVEフィードに重畳された SCTE35 Splice_Insert ( KRONOS は SCTE35 Time_Signal にも対応 ) の情報を基にして入力切替処理が行われました。SCTE35 Splice_Insert / Time Signal は広告挿入や番組開始 / 終了などを識別する際に使われる規格です。この SCTE35 Splice_Insert / Time Signal を用い日テレ系ライブ配信トライアルではフレーム精度での処理、及び広告挿入を実現しています。「 フレーム精度での入力切替処理は Veset 社と連携し、多くの議論を重ね開発をしました。また KRONOS には MediaConnect 、Fargate などのマネージドサービスが組み込まれています。マネージドサービスを使う事でシステム運用 / 管理の工数を減らし、お客様の機能要望の実現に集中できた事はメリットと考えております。現在も多くの機能要望を頂いており引き続き KRONOS は進化をしてゆきます 」と KRONOS を提供する PLAY COO 宮島氏は述べます。

新たなサービス要件へ迅速に対応できる Cloud Playout の実現へ

「 放送局にとっては開発コストを一社で直接負担しない、設備が固定化しないという点で AWS 上で構築され SaaS 提供されているKRONOSには大きな価値がありました。KRONOS での番組進行 / 編成管理はセキュアな経路での Web アクセスに対応しているため、日本テレビ以外の制作番組については該当のテレビ局の担当者が編成作業を行うなど運用の柔軟性が生まれました。配信は放送とは異なり環境変化によりサービス要件が速いスピードで変わってゆきます。コアである Playout 部分が AWS 上で構築できた事により、システム構成の柔軟性が高まり、素早く新たな要件に対応できると考えています。」と松本氏は述べます。

日テレ系ライブ配信トライアル
Cloud Playoutサービス「 PLAY KRONOS 」
Veset International Limited

このブログは SA 金目 健二、西亀 真之が担当しました。