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基調講演 Liveblog【前編】27の各国事例で語り尽くす – AWSパブリックセクター サミット 2021

登壇したマックスとテレサ

今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、今年のAWS公共部門サミット・オンライン基調講演(キーノート)を担当したマックス・ピーターソン(vice president of international public sector at AWS )とテレサ・カールソン(vice president of worldwide public sector and industries)によるキーノートの「前半」模様を、速報のLiveblog形式でお届けします(後半はこちら)。今からでもご登録をいただければ、基調講演とブレイクアウト・セッションの全てがオンデマンド視聴可能です

 

各国の公共部門が競い合うクラウド化

開始1分:AWSは、パートナー各社との取り組みを通じて、コンピューティング・リソースの拡大、ケイパビリティの増強に多くの投資をしてきました。この継続的な努力により、データ解析にかかる時間は、劇的に減少しました──例えば、7年間かかっていた作業が7日で終わるように。あるいは、10日間かかっていたゲノム解析は5時間に短縮されました。イノベーションはAWSだけで行うものではなく、皆さん自身、お客様自身が起こすものです。Intel, VMware, Datadog, Dynatrace, Splunkのグローバルスポンサー5社には、とても感謝しています。パートナーセッションを含む、多くのブレイクアウト・セッションをぜひ視聴してください。本日から配信が始まるAWSパブリックセクター・サミットは、学び、刺激を受け、感動するための場です。

開始2分:たった2カ月前、UAEの探査機「Hope Orbiter」が初めて火星に到着しました(後述の事例#21)。アジア各国では、新型コロナウィルス対策のトラッキング・アプリがローンチされています(事例#1)。 ラテンアメリカではバーチャルケアが開始されました(事例#2)。Amazon Connectを用いてバーチャル・コンタクトセンターの構築が米国各州で進んでいます(後述の事例#12)。いずれも、数カ月・数週間を要していた構築が、たった数時間で済むようになっています。

この場を借りて、教育者、研究者、NPO職員、政府職員の皆さん、それぞれへの感謝を伝えさせてください。──このパンデミック危機に立ち向かってくれて、ありがとう。私をインスパイアし感動させてくれて、ありがとう。

開始3分:変化が常態になる時代が始まっています。マックス・ピーターソン(vice president of worldwide public sector)はこの9年、AWSのパブリックセクター・チームを支えてきてくれました。マックスは、これまでの経歴のなかで、Capture(公共調達渉外)のチームや、Partnerビジネスのチームを牽引してきてくれました。私のAWSでの11年間は、常に10年先を見据えることを目指した旅でした──民間企業で用いられているのと「同等のイノベーティブな技術(Same Innovative Technologies)」すなわちクラウドが、世界の政府機関・公的機関から利用されるようになることを目指してきたのです。これからも「Disruptive Innovation(非連続なイノベーション)」を起こし続け、そして「Making the world Better Place(世界をより良い場所に)」するよう努めていきましょう。ここで、マックスに「バトンタッチ」します。

開始4分:AWSの研究支援「DDI」の第2ラウンドが開始 ── AWSは今年、第2ラウンドの「AWS Diagnostic Development Initiative(DDI)」を発表し、1200万ドルを2021年中に配布することを発表しています。COVID-19との戦いにおける「診断のイノベーション」を加速するために、昨年AWS DDIを開始しました。このイニシアチブを通じて、AWSはコンピューティング・クレジットと、AWSプロフェッショナル・サービスチームから2,000万ドル相当のカスタマイズされた専門知識とコンサルティングサービスを提供し、AWSを使用して「診断のイノベーション」を推進するお客様をサポ​​ートし続けています。イニシアチブの最初のフェーズでは、AWSは、非営利団体や研究機関から新興企業や大企業に至るまで、17か国の87の組織を支援しました(事例#3)。今週、AWSはプログラムの次のフェーズを開始し、サポートを「3つの新しい領域」に拡大しました。──その3つとは、1)個人およびコミュニティレベルでの発生を特定するための早期の病気の検出。 2)疾患の軌跡をよりよく理解するための病後分析。 3)世界中のウイルスゲノム配列決定を強化するための公衆衛生ゲノミクス──です。 AWSは今年、本プログラムのために確保した残りの1,200万ドルのサポートを配布する予定です。申請は始まっています──ぜひ、今すぐに申し込んでください。

 

開始5分:ご存知のオーディエンスもいらっしゃるかもしれませんが、私は「ガジェット」が大好きです。スタンフォード大学の薬学研究所では、スマートウォッチに実装するヘルスケア・アプリを大規模に展開しています。先述のDDIファンディングは、皆さんがThink Bigすることをサポートしてくれます。スナイダー博士(Dr. Michael Snyder)に詳しく聞いてみましょう(事例#4)。

 

スタンフォード大学による、「感染の兆候」を早期検出するためのクラウド活用

開始6分登壇スピーカー#1/ スタンフォード大学

人々の健康を守るために、「テクノロジー」に出来ることはなんでしょうか? いまや地球上の6割の人がスマートウォッチを身に着けています。感染の予防や追跡に、あるいは日常の健康状態の把握に、これ以上最適なガジェットはありません──体温、血圧、睡眠時間など、多くのパラメータを追うことができるのです。スタンフォード大学医学部の教授兼遺伝学部長であるマイケル・スナイダー博士は、今回のサミットで、彼のチームがスマートウォッチアプリを開発し、ユーザーの身体が「感染」と戦う兆候を示したときに、発症の最大「10日前」までにユーザーに対して“感染の可能性”の警告を行う方法について、詳しく説明してくれました。このアプリの助けを借りることでユーザーは、早期に、症状を「自覚」・「認識」することもできます。スタンフォード大学のチームは、ウェアラブルのようなより安価でアクセスしやすい方法で発症前のCOVID-19症例を追跡することで、早期発見システムを提供できることに気づきました。このアプリは、個人の安静時心拍数と歩数の変化を検出するアルゴリズムを搭載しています。リアルタイムでのトラックをする「MyPHD」アプリをぜひご覧ください。2017年に開始されたこのプロジェクトは、AWSクラウドによって大きく躍進しました。スタンフォードでは、AWSのDDIの支援を受けています。初期の結果は有望であり、パイロット試験では、症状に気付く前の10日前に新たに感染した個人に警告を発することに成功しました。アプリは研究の次の段階(=今週から開始されたDDI Phase2)に進んでおり、スタンフォード大学のチームは、COVID-19の兆候をリアルタイムで検出する能力を高めるために、1,000万人を目標に参加者を募集しています。このスマートウォッチベースの早期検出システムは、AWS Professional Servicesチームのサポートを受けてAWS上に構築されました。このチームは、研究者と協力して、データ処理パイプラインの拡張を支援しました。「私たちはデータ処理パイプラインを構築しました。まもなく、このウェアラブルデータを世界中の研究者がアクセスできるゲノミクスデータと組み合わせるデータレイクを構築し、プレシジョン・メディスン(精密医療)の進歩をサポートするコラボレーションプラットフォームを提供します。データアクセスの機会を研究者に拡大するべく、AWS Lake Formationを用いて、より広い研究者に分析の機会と基盤を与えていきたいと考えています。今回の取り組みは、その最初のものです」──とスナイダー博士は語っています。

 

開始9分AWS@15──Amazon S3をローンチして以来、この15年、AWSは「あなたのミッション」を支援する企業であるべく努力し、他社よりも早く動くことを心掛けてきました。クラウド上で作動するコールセンターサービスである「Amazon Connect」はその一例です。ある政府では、「Citizen Experience(市民の体感)」を高めるために、Amazon Connectを用いて電話が繋がるまでの待機時間を「3時間から3分」にまで縮めました事例#5)。

 

開始10分:数年前、クラウド導入を検討するための会話は、各組織の「IT部門」とAWSとの間で始まることがほとんどでした。それが、今では大きく変わりました。会話の起点が、喫緊かつ重要なミッション・オーナーである部門との会話にシフトしているのです。

 

開始11分:ロードアイランド州では「個人と仕事をつなぐためのデータをサイロから解放する」取り組みとして、AWS上で作動する、失業保険の給付を行うシステムを25万人が利用しました。2020年の春、AWSは同州政府と協力して、州の失業保険システムを迅速に拡張したのです(事例#6)。州の行政官は、この巨大なデータが、職業推薦にも使えることに思い至りました──COVID-19による失業保険申請の急増に伴い、州の労働力に関する大量のデータは、現在の労働力のニーズをより深く理解し、個人を新しい仕事に結び付ける機会を提供できることに気づいたのです。州政府は、NPOである「Research Improving People’s Lives(RIPL)」とタッグを組み、AWS上に安全なデータレイクを構築しました。AWSのセキュアなデータレイク上で作動するAIのアルゴリズム(“Hope”と命名されています)が、市民に対して、応募可能かつ採用可能性の高い仕事をレコメンドする──人工知能(AI)アルゴリズムをデータに適用して、個々人のスキルと経験に一致する仕事をユーザーに推奨できる──ようにしました。──未来の意思決定プロセスをクラウドが支援するのです。このシステムは、RIPLとロードアイランドの労働力開発プログラムの有効性に関するリアルタイムデータも提供し、職業訓練の改善にもこれらのフィードバックが活かされています(事例#7)。ロードアイランド州政府が教えてくれること、それは「クラウドを用いることで、継続的なイノベーションがDay 1から可能であるとうこと──これなのです。

 

開始12分:パブリックセクター分野に、多くのスタートアップ企業が参入しているトレンドは、喜ばしいことです。数週間前に、「AWS Space Accelerator」という支援プログラムをAWSは開始しました(事例#8)。 宇宙開発・探査に情熱を傾けるコミュニティの一員として、皆さんが「Move Fast(早く動く)」のを、AWSとパートナー企業は支援します。AWSと皆さんとのあいだで乗数効果を発揮する、その手助けをリソース提供などの手段でサポートします。こうしたサポートは、アメリカに限りません。60%のAPNパートナー企業が米国の「外」に所在していることを強調しておきたいと思います。

 

開始14分:皆さん、世界中のCOVID-19の感染拡大の状況を可視化する、ジョン・ホプキンス大学の「ダッシュボード」を見たことがあるかと思います。ダッシュボードに取り入れるべきソースやデータが拡大しはじめて大学側が困り始めていたときに、AWSパートナー企業であるEsri社が支援を申し出たのです。クラウドを用いることで、どのようにCOVID-19関連データの処理を効率化することが可能か、その提案が同大に受け入れられました。こうして、同大学のダッシュボードは、数十億人のユーザーに参照される、世界中でもっとも参照されるサイトになったのです(事例#9)。

 

開始15分:ワクチン接種のオペレーションをクラウドが支える──インド政府では、オンラインでのワクチン接種登録システムをAWSを用いて運用しています。システムの運用開始の初日には「190万人」が一斉にアクセスをし、「10億人」が今後利用するスケジュールとなっています(事例#10)。 AWSはバイデン政権や、ミネソタ州政府、サウスカロライナ州へワクチン接種やその配布ロジ・オペレーション面での支援を申し出ており、協力関係にあります(事例#11)。米国の多くの州政府はAmazon Connectを用いて、接種予約のホットラインを効率化しています(事例#12)。

 

開始16分:AWSは世界最高水準のセキュリティを追求── この水準は、オンプレや他社クラウドでは達成できないということを、本日強調させてください。Security By Designの考えに基づいた、幾つかの論点を次に見ていきます。

 

開始17分: AWSではセキュリティが最優先事項であり、AWSはお客様に独自の、堅牢なセキュリティ機能を提供します。 Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)インスタンスは、AWS Nitro Systemの安全な基盤の上に構築されています。 AWS Nitroは、インスタンスのハードウェアとファームウェアを継続的に監視、保護、検証し、仮想化リソースを専用のハードウェアとソフトウェアにオフロードすることで攻撃対象領域を最小限に抑えます。 AWS Nitroセキュリティモデルはロックダウンされており、管理アクセスを禁止しています。 AWS Nitro Enclavesのリリースにより、ユーザーはアドミン権限から分離されたコンピューティング環境を作成して、機密性の高いデータをさらに保護し、人的ミスを避けながら安全に運用・処理ができるようになりました。

 

開始18分:検証可能なセキュリティ(Provable Security)という考えも、AWSは重視しています。そしてこの考えの実装は、数学的ロジックを全体構成の非効率を検出するために用いる、Automated Reasoningというテクノロジーで支えられています。もし1機関が保有する全てのデータの経路をマニュアルで検証しようとしたなら、従来は数カ月では済まなかったはずです。その間にも、システム構成は変化しつづけるのが現実です。Automated Reasoningでは、これを文字通り「数秒」で完了させることが出来るのです。こうした技術をAWSはAmazon S3などにも適用しています。

 

開始19分:15年間のAWSの取り組みを振り返らせてください。AWSは、お客様が参照し確認できるセキュリティ認定を充実させるべく、努力と投資をしています。たとえば、AWSは最近、日本政府が創設した「ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)」に登録された最初のプロバイダーの一つになりました事例#13)。

AWSは、セキュリティの知識とベストプラクティスの共有にも取り組んでいます。過去3年に渡り、米国でTop Secretに分類されるデータとワークロードに関してもお客様よりAWSの利用を決断いただいた、その経験を活かしているのです。 オンプレミスはサイバー攻撃に対して脆弱です。そしてクラウド上でのサイバー攻撃対策には「同盟」が必要であり、AWSは最適の同盟相手でありたいと思っています。2021年3月、AWSは米州機構(the Organization of American States)と戦略的提携を締結しました(事例#14)。この契約に基づき、AWSはラテンアメリカ各国の政府に、サイバーセキュリティのトータルな対策を改善するための「サイバーセキュリティ評価と実装ガイド」を提供していきます。

 

開始20分:もう一つ、具体的なサービスを紹介させてください。AWS GuardDutyは、攻撃のパターンを学習し、常に新しい検知のパターンを追加し続けています。ここでは、難しいことは申しません。最高度のセキュリティを手に入れるために取られるべき簡潔なステップは、次の5つです。1).アカウント情報やセキュリティ・インシデント発生時のコンタクト先を最新のものとしてください。2).攻撃対象となる「Attack Surface(攻撃可能面積)」をAWSを利用することで、最小にしてください。3).GuardDutyを用い、その検知アイテムに対して一つ一つ対処してください。4).AWSのSecurity Competency Partners各社に相談をしてください。5).どうかAWSの「Well-Architected」ツールやその他のリソースを最大限活用してください。

 

開始22分アリゾナ州のCISOであるTim Roemerは、APNであるCrowdStrike社と協力し、マニュアルでのログ解読作業から、AI/MLを活用したクラウドでの監視での切り替えに成功しています(事例#15)。アリゾナ州では州全体のITインフラに対する監視、VPN網の監視が既に実現されています「潜在的な」悪意をもった活動を、数十億件の他のアクティビティとの相関関係のもとで、早期に検知できる態勢を整えているのです。

クラウド上で安全に医療データを扱う

開始23分登壇スピーカー#2/ 英国 国民保健サービス(NHS)

National Health Service(NHS)Digitalは、英国の国民医療システム向けのデジタル製品、データシステム、およびサービスを設計、構築、および運用しています。 症例研究にとって決定的に重要な役割を果たす「NHS Digital」の最高経営責任者であるSarah Wilkinson氏は、AWSクラウドの弾力性のあるインフラストラクチャが、COVID-19に対応して、新製品の提供と既存のサービスの拡張にどのように役立ったかを今回のサミットで共有してくれました(事例#16)。パンデミックの初期の数週間における1つの主要システムのピーク負荷は、これまでの最高負荷の「95倍」にも達しました。他の国では前例が無い規模で、NHSでは、5,300万人分の健康関連データ(治療歴、通院歴、薬の処方歴など)をクラウド上に載せています。 NHS Digitalがこれまでになく速い速度で「変化[=AWS利用の拡大]」を導入する際には、信頼性とセキュリティを維持し続けたままそれを成し遂げることが重要であり、これらのクラウド移行の取り組みは将来への足がかりとして機能してくことでしょう。 AWSとともに、まったく新しいジャーニーが始まっています。中央からのコントロール制御と、各末端での自立した利用の両立が可能になったのです。「各国のヘルスケア分野では混乱が起きていることも知っています。15時間以上の勤務が続くこともある英国の医療現場の疲弊を緩和するためにも、NHS内のデジタルトランスフォーメーションには、1年前よりもはるかに多くのエネルギーと野心が注ぎ込まれています。そして、デジタルサービスは想定を上回るペースで消費されており、そのようなプラスの影響があるため、これからの道のりが非常にエキサイティングなものとなる自信があります」とWilkinson氏は述べています。メディカルイメージ(医療画像)、録音された会話など、多様なデータを構造化し、あるいはインデックス付けし、NHSはインサイトを引き出しています。AWSは自然言語解析のソリューションでも突出している点も、Wilkinson氏は強調します。「ヘルスケア・トゥギャザー」の未来をAWSとともに作っていくことを楽しみにしています。──このように、Wilkinson氏は登壇を締めくくります。

 

開始29分:クラウドが、政府・公共部門のミッションを加速する「5G」によって、皆さんにより身近なものになってきているのを知っていますか? AWS Wavelength, AWS Outposts、そして5G。この3つについても、ぜひ語らせてください。Open Edge Computing Initiativeのプライベートな5Gネットワークを用いた取り組みについて、ご存知でしょうか? カーネギーメロン大学ではAWSを用いてリアルタイムでの動画分析を提供し、例えばマスク着用のコンプライアンスが守られているか、あるいは身体的な安全距離の確保が保たれているか──など、多様な分析を自動化しています(事例#17)。

また、国防分野では U.S Marine Corps Logistics Commandがプライベートな5Gネットワークをジョージア州の武器庫で構築している利用実績があります。ロボティクスや、拡張現実を備えたスマートな武器庫が実現するのです(事例#18)。もう一つ、私のお気に入りの事例は、カリフォルニア州のサクラメント・コミュニティの事例です。このコミュニティでは、コミュニティとして5Gネットワークを整備し、そのWifiネットワークに家や舗道から生徒たちが接続することができ、オンライン教育に参加する効率性が高まっています(事例#19)。5GとAWSの組合せで、これからどんなイノベーションが起きてくるのか、私はとても楽しみにしています。

 

開始31分: エッジ・コンピューティングの事例は、「宇宙」に触れずには語れません。NASAのジェット推進研究所(NASA JPL)の「Perseverance Rover」の事例を知っていますか?(事例#20) クラウドが、ミッション・オーナーの迅速な意思決定を支援している好例です。2021年2月18日、NASAの火星探査機「Perseverance Rover」は、地球から7か月、3億マイルの旅を終えた後、火星に着陸しました。これは宇宙探査にとって大きな成果であり、AWSは、NASA JPLと協力して、最先端かつ最深度での宇宙探査ミッションに貢献できることを誇りに思います。 AWSはこの野心的なプロジェクトの最初期から、NASA JPLがミッション・クリティカルな画像を撮影して共有・解析し、火星での生命の可能性に関する重要な質問に答えることを可能にすべく貢献してきました。 NASA JPLは、AWSを使用することで、地球上に転送された火星からのデータをこれまでになく高速に分析処理できます。これは、「赤い惑星」の表面で撮影された写真から、NASAがローバーの健康状態と安全確保についてより迅速に意思決定することを可能にする詳細データまで、全てのデータを対象とするものです。

また、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査の事例はご存知ですか?(事例#21) UAEの探査機「Hope Orbiter」によって収集されたデータをAWS GroundStationを用いることで火星からダウンリンク(送信)し、自動での加工・インデックス付けを経て、20分もかからず、地球上で分析できているのです。「Transporter-1」の打ち上げは、皆さんご覧になりましたか? データの収集を目的に打ち上げられている人工衛星の数が「143個」であることについては、きっとご存知の方も多いですよね。──でも、おそらく皆さんが知らない驚きの事実は、そのうちの「115個」が、AWSの顧客によって運用されているということなのです(事例#22)。

 

開始32分:ここまで紹介してきたようなイノベーティブなクラウド活用事例のその入り口にあるのが、スマートな「クラウド調達」と「クラウド政策」です。たくさんの「Procurement Vehicle(1案件ごとに閉じる調達ではなく、複数案件を横断する調達の仕組み)」が誕生しています。世界各国の公的機関で、150もの「Procurement Vehicle 」が運用され始めていることをAWSは把握しています(事例#23) ──そして重要なことに、AWSと顧客機関の「直接」だけのだけではなく、パートナーを含めた「間接」の枠組みも多数誕生しているのです。

また、公共調達をよりスムーズな在り方に変えるためのプラットフォームとしては、AWS Marketplaceのソリューションの品ぞろえは、今や50カテゴリー、8,000種類を超えて拡大中です(事例#24)。ぜひAWS、そしてAPNのパートナー各社と会話を推進してください。煩雑な調達の事務・業務に多大な手間をかけ過ぎることなく、クラウドを調達した「後」の、ミッションのアウトカム達成に集中してください。

防衛分野にもクラウド化の波

開始33分登壇スピーカー#3 / 国防総省 国防兵站局

たった5つのアプリを移行する計画からはじまった米国国防総省の関連機関 国防兵站局(DLA)のクラウドジャーニーは、とても大きなインパクトを生み出しました事例#25)。DLAはAWSとともに、クラウド移行の勢いを加速しています。ハリケーンやコロナなど様々な危機に直面した際に、どこに資材を運ぶべきか、どのように効率的にリソース管理を行うべきか──。DLAは、グローバルサプライチェーンの管理を担当しています。プログラム・エグゼクティブ・オフィスは、これらの国防総省およびDLAビジネスオペレーションをサポートする約200のITアプリケーションを管理し、年間70億ドルを超えるトランザクションを処理し、4,650億ドル相当のビジネス価値が毎年これらのシステム上で処理されています──それも、Speed, Agility, Efficiencyの3つをいずれも高度に達成しながら。オンプレでは実際、多大な遅延や資源の欠乏が生じていました。

DLAのプログラム・エグゼクティブ・オフィサーであるAdarryl Roberts氏は、チームがデジタルビジネス変革のクラウドジャーニーに乗り出し、最初に5つのアプリケーションを調達統合エンタープライズ環境(PIEE)の下で、予定より6週間近く早くクラウドに移行した方法を共有してくれました。この移行は、わずか138日間で完了しました。チームは現在、クラウド上で1年に複数のシステムをリリースし、稼働時間を98%以上で推移させています。ダウンタイムは、クラウド移行後には生じなくなったと、強調されています。

現在、アプリケーションの85%がクラウド上にあり、今後数年以内に完全な移行(オールイン)を完了する予定です。 DLAはまた、データをクラウド環境に移行し、2021年後半にSAPフレームワーク内でCOVID-19ワクチンの配布をサポートする重要アプリの1つをクラウドに移行します。 「システムを最新化し、クラウドに移行することで、運用方法が強化されています。テクノロジーが進化し続け、クラウドジャーニーを継続する中で、非常に高い野心を持ちつつも、AWSとの貴重なパートナーシップとともに歩むというDLAがチームで有する「Unified Vision(共有されたビジョン)」は、私たちが最前線にとどまり、使命を果たすのに役立っています」とロバーツ氏は述べています。DLAでは、調達担当者からセキュリティ担当者まで「Unified Vision(共有されたビジョン)」のもとで行動し、直接コーディングできる人材育成を進めるなど、クラウド時代に相応しい組織づくりにも取り組んでいる旨、紹介されました。

 

開始39分:「クラウド調達」について話した次に、「人材・雇用」についても見ていきましょう。雇用を気にするとき、多様性や平等性をもちろん気に掛けねばなりません。世界銀行によれば、2020年時点で、半数以下の女性にしか職業を持ち働く機会が与えられていません。衝撃的なことに、この数字は1990年当時の51%から下落しているのです。米国労働統計局のレポートによれば、[コロナ禍が猛威をふるった]2020年2月から12月の間に失われた雇用のうち55%は、女性の雇用でした。空恐ろしい数字です。多くの才能に恵まれた人々がいることを、私は知っています。クラウド・テクノロジー業界こそが、彼女たちに機会を与えねばなりません。クラウドとテクノロジーで機会を作るのです──「行動しない」という選択肢は、コストが大きすぎます。

人材育成のためのデータが公的機関には膨大に蓄えられています。どのように、人工知能や機械学習など、需要が激しい分野での人材育成・獲得をすすめ、各機関が必要とするリアルタイム・インサイトを得ることができるでしょうか? AWSは、「スキルベースのトレーニング」が社会に定着していくことを理想としています。官民協定を結び、これまで充分に代表されてこなかったコミュニティからの雇用や、彼女らへのトレーニング提供を推進することを打ち出しています。スペインでは、失業者のリ・スキルに政府と協力して取り組んでいます(事例#26)。学生は、AWSクラウドプラクティショナーを得ることができます。もちろん、こうした取り組みにおいて、AWSには仲間がいます──次の登壇者は英国で初のクラウド・コンピューティングのディプロマ学位を設けただけにとどまらず、今も変わり続ける学生のニーズに応え続けているピアソン社です。

クラウド時代の教育の在り方

開始42分登壇スピーカー#4/ ピアソン

 ピアソンの社のPresidentであるロッド・ブリストー氏は、クラウドスキルを開発する新しい方法として「ハイクオリティ」の遠隔教育が必要──いま多くの学生が経験している、単なる遠隔教育とは、圧倒的に質的に違うものが必要である──と、述べています。2013年からAWSとの取り組みは始まりました(事例#27)。クラウドを活用することで、ピアソンは中間試験と期末試験の前後でトラフィックの多い期間にリソースをスケールし、世界中の学生の進化するニーズを満たす新しいデジタル製品と次世代アプリを開発することができました。 クラウドはピアソンの内部変革を促進するのに役立ちましたが、将来の労働力を形成するのに役立つクラウドベースのスキルを教えることの重要性もまた、強調したいところです。生徒がどうコンテンツに向き合うのか、ピアソンの導出したインサイトは、学生たちは、より短く(Shorter)、積み上げ可能な(Stackable)、自身のライフスタイルにフィットさせやすい自学自習タイプのオンライン・コンテンツを好む──ということを教えてくれます。こうした学生たち・学習者たちのニーズに応えるために、1,100名のディベロッパーを自社で、グローバルに雇用しています。

私がピアソンのトップとして見出しているもう一つのトレンドは、「教育と雇用の直結」というベクトルの強化です。ピアソンは、クラウドべ―スのスキル養成にこだわります。教育が雇用に直結し、働き方も変わっていくのです。ピアソンは最近、AWS Educateと協力して、クラウドコンピューティングにおける史上初のビジネスおよびテクノロジー教育評議会(BTEC)の国家公認の高等ディプロマ学位を開発しました。世界中の600以上の大学の学生は、リモートまたは直接資格取得を完了することができます。これは、英国の大学学位の最初の2年間に相当し、高等教育または直接の仕事につながる可能性があります。人材の厚みが生まれることで、各企業もスキルを備えた人材をリクルーティングできるようになります。 「私たちはクラウドコンピューティングスキルへの投資を継続します。クラウドコンピューティングは、これまで以上に効果的なオンライン学習の鍵を握り、今日と明日の労働力を強化し、変革するのに役立ちます」とブリストー氏は述べています。このような取り組みは始まったばかりで、高校レベルのクラウド関連プログラムもつくっていきます。ピアソン・オンライン・アカデミーも今年からローンチしました。米国のカリキュラムであれ英国A-Level GCSEであれBTECであれ、どんな学びにも対応するバーチャルスクールです。ハワイ州立大学との提携も発表しました。オンラインでの看護の学位取得を可能とし、ピアソンPathwaysでパーソナライズされたレコメンド機能にもとづいた職業教育を充実させていきます。ピアソンはAWSと現在、そして未来に必要となるWorkforceを育成していきます──このように、登壇は締めくくられました。

日本の公共部門の皆様へのご案内

AWSでは、政府・公共部門、パブリックセクターの皆さまの各組織におけるミッション達成が早期に実現するよう、継続して支援して参ります。

【New!!】オンデマンド視聴のご案内:2021年4月より、AWSパブリックセクター サミット・オンラインの無料オンデマンド配信が始まっています(ご登録はこちら)。米国防総省の関連機関であるアメリカ国防兵站局など海外政府機関や、女性エンジニア育成にコミットする「Girls Who Code」、スタンフォード大学等の公的機関の事例を中心に45のブレイクアウト・セッションも配信されています。日本からも初の事例登壇として京都大学の長﨑正朗先生から「ハイブリッドクラウドで実現したヒトゲノム解析プラットフォーム」について講演をいただきました。

今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、「農水省DX室」「気象庁の衛星ひまわり8号のデータセット」や「re:Invent 公共部門セッションのサマリー」など国内外の公共部門の皆さまとの取り組みを多数紹介した過去のブログ投稿に関しても、ぜひご覧いただければ幸いです。「クラウド×公共調達」の各フェーズでお悩みの際には、お客様・パートナー各社様向けの相談の時間帯を随時設けておりますので、ぜひAWSまでご相談ください

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このブログは2021年4月16日の開催初日の基調講演および英文でのRecapブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が執筆しました。

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小木 郁夫
AWSジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
BD Capture Manager
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