Amazon Web Services ブログ
優れたデータインサイトによる中堅中小企業の改革
(この記事は、 Reinventing Small and Medium Businesses with Better Data Insights を翻訳したものです。)
すべてのビジネスデータを統合して分析できるとしたら、何を実現できるでしょうか?
ビジネスアプリ、ソーシャルメディア、インターネットに接続されたデバイスなど、中堅中小企業の意思決定に必要なデータは十分に蓄積されています。よくある誤解として幅広いデータ分析はデジタルネイティブなスタートアップ企業や大企業でしかできないとの認識がありますが、スマートなビジネスを展開する企業はその規模に関わらず、さまざまな方法で自らを改革することができます。ここではさまざまな業界で見られるいくつかの例を紹介します
- ビジネス投資に対し、何が有効で何が有効でないかを確認するためのデータ分析
- ビジネスの成長に影響を与える、産業および経済動向の予測
- 購入者の好みや行動を分析することによる、顧客維持率の向上
- 販売・マーケティングキャンペーンの結果など、より効果的な事業推進を支援するための業績評価指標の追跡
データに基づくインサイトを分析して活用できる中堅中小企業は競合他社との差別化を図ることができます。 Business.com の記事によると、全データの 93% が「ダークデータ」であると指摘されています。ダークデータとは「企業が収集、処理、保管しながらも活用できていない情報資産」と定義されるもので、このようなデータを活用するためにはデータ分析への取り組みが必要です。 Amazon Web Services (AWS) では、データ分析へ取り組む際の課題が分析の専門家を雇うことの難しさからデータパイプラインの作成に何から手をつければいいのかわからないということまで、多岐にわたることをお客様から伺っています。労働市場が厳しい中、お客様はデータ分析の重要性が増していることは分かっていても、敷居が高いと感じられることが多いようです。幸いなことに、そのようなことはありません。特に自分たちをデータの専門家だと考えていない場合は、なおさらです。
データ分析の学習は、一般的なデータ形式を理解することから始まります
ソフトウェアアプリケーション、ビジネスプロセス、サードパーティマーケットなど、さまざまなソースからデータにアクセスすることができます。またデータは以下のようなあらゆる形式で提供されています。
- 構造化: スプレッドシートのような、あらかじめ定義された形式で保存されたデータ
- 非構造化: テキスト文書など、本来の形式で保存されている様々な種類のデータ
- 参照: 他のデータを分類または区分するために使用されるデータ。多くの場合、公開されている人口統計データなど、静的もしくは時間の経過とともにゆっくりと変化するサードパーティーのデータ
- 履歴: ログファイルや財務報告など、過去の出来事や状況に関するデータ
- 取引: 電子取引や実店舗での販売状況に基づく財務情報
このようなデータを分析できるように変換することは困難です。先に述べたように、お客様からは収集したデータを分析するための適切な人材を採用するのが難しいという声が聞かれます。また、新入社員の多くはデータからインサイトを得るために必要な業界知識や背景情報が不足しています。中堅中小企業にとって、費用対効果が高く、簡単で、拡張性の高いデータ変換ソリューションが、これらの情報を活用するための鍵となります。ビジネス上の成果を念頭に置きながら、重点分野を絞り込み、組織にとって重要なデータを活用することができます。
企業のデータを保存および整理する方法はいくつかありますが、データレイクは最も求められている機能的な選択肢の1つです。
データレイクとは何か、中堅中小企業の具体的なユースケースは何か?
データレイクのコンセプトは、企業が形式に関係なくデータを保存できる一元的なソースを作成することです。構造化、非構造化、参照、履歴、取引の 5 種類のデータ形式のいずれかをビジネスで収集する場合、 従来は 1 つのビューに統合することが困難でした。データレイクは新しい概念ではありませんが、企業はどのような場合に自社に適しているのかを見極めようとしています。データレイクは以下の 3 つの点でメリットをもたらします。
- 効果的なデータ分析: 組織のあらゆるソースからのデータを組み合わせてカスタムデータベースを構築し、よりリッチなデータセットを作成することができます。
- 多様で幅広いデータの利用: データを組み合わせて統一されたデータセットを作成し、さまざまなチームで使用できます
- データの効率性と俊敏性の向上: データをネイティブフォーマットで保存できるため、データの移動と変換にかかる処理時間が短縮されます
Smart Business ニュースレター:スマートなビジネスを構築するために必要なクラウドリソース、専門家のインサイト、同業他社の視点などの情報を毎月お届けします。
データ分析の課題をクラウドで解決する方法
データに関する課題から潜在能力を引き出すことを目標に、AWS はお客様がすぐに使い始めることができるローコード/ノーコードソリューションとして一連のサービスを開発し、あらゆる規模の企業やあらゆるレベルの技術的専門家が分析の力を発揮できるようにしました。つまり、データの専門家でなくても、多数のデータソースを理解することができるのです。
顧客関係管理 (CRM) システムのデータと会計システムの収益データを用いた分析はよく見られるユースケースです。AWS を用いてどのようにデータレイクソリューションの作成と使用に対する障壁を下げることができるのか、サンプルアーキテクチャを見てみましょう。
最新のデータアーキテクチャの中心にあるのは、あらゆる種類のデータの中央リポジトリとして機能するオブジェクトストレージサービスである Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) です。 Amazon S3 をデータレイクとして利用することで Amazon S3 と統合する多数の AWS サービスが利用できるようになり、企業のデータ基盤として機能します。まず CRM と財務システムからデータをエクスポートし、両方のファイルを Amazon S3 バケットに配置します。フォーマットは関係ありません。データは次のステップでクリーニングのために変換されます。
Amazon S3 に存在するデータは分析的なインサイトを得るためのシンプルでわかりやすいアプローチの扉を開きます。 Amazon S3 のデータは、非構造化データと構造化データを自由に組み合わせることができます。
次のステップはそのデータを組み合わせて、基本的な SQL 文で照会できる形式に変換することです。これは人的リソースが限られる場合、最初の大きな課題となる可能性があります。幸いなことに AWS Glue Databrew はデータをクリーニングして読み取り可能な形式に変換し、他の AWS サービスで使用できるようにする視覚的なインターフェイスが用意されています。ユーザーは顧客データと財務データの結合、機密データの削除、2つのファイルを同じファイルフォーマットへ変換、さらには重複データや無効なデータの削除を、コードを書かずに実行できます。
データの準備が整うと Glue Crawler は自動的にデータ構造を検出し、メタデータを AWS Glue データカタログに配置します。これら 3 つのステップだけで、専門的なスキルや複雑なインフラストラクチャに対する懸念を持つことなく、 Amazon S3 バケット内の無関係だったファイルがすぐにクエリを実行できるデータレイクに変換されます。このツールの利用にあたってデータサイエンティストは必要ありません。
Amazon Athena は変換されたデータをクエリ可能です。新しいデータセットを活用するためにデータウェアハウスを作成して維持する必要はありません。 CRM と財務システムの両方のデータを 1 つのデータベースに結合できます。 Amazon Athena は初期費用やメンテナンス、複雑なデータ抽出作業は不要でビジネスニーズに合わせて拡張できます。料金は実行したクエリに対してのみ発生します。
Amazon Athena のクエリは収集されたデータからインサイトを得る際にすぐに役に立ちます。しかし、多くの場合意思決定者はデータに対してより視覚的なアプローチを必要とします。 Amazon QuickSight を使用すると事業部門の従業員は実用的なインサイトを簡単に解釈できる方法で提供でき、ユーザーは技術的な知識がなくても自然言語で質問*をして深く掘り下げることができます。ユーザーはコードを書く代わりに、「前年比で最も成長したのはどの顧客セグメントですか」と尋ねるだけで、以下のようなダッシュボードでほぼリアルタイムにインサイトを得ることができます。
次のステップ
上記構成の大きな利点はデータの価値を最もよく知っている人の手に分析的なインサイトの鍵を委ねられることです。データ駆動型のインサイトと意思決定の専門知識を組み合わせることで、競争上の優位性を得ることができます。完全なサーバーレスアプローチ、ローコード/ノーコードによる実装、美しいビジュアライゼーションを提供する機能により、あらゆる規模の企業がデータジャーニーを開始し、収集したデータを価値のある分析的なインサイトに変えることができます。
これらのサービスは今すぐ利用可能であり、あらゆる規模の企業がすぐに使い始めることができます。ビジネスインテリジェンスツールをより効果的に活用したい場合はより多くのインサイトを得る方法の学習、もしくは中堅中小企業のクラウド活用をご支援する専門家にお問合せください。
翻訳はソリューションアーキテクトの酒井 賢が担当しました。原文はこちら です。