Amazon Web Services ブログ

自然言語処理で e コマースサイトにおける検索精度を向上させ収益改善に繋げる

e コマースサイトは、機敏で正確、そして何よりもユーザーフレンドリーであるべきです。しかし、e コマースサイトの検索パフォーマンスの歴史は、顧客と小売業者のどちらも満足させていない現実を物語っています。

Baymard Institute によると、「全 e コマースサイトのうち 61% が、 ユーザーの検索語句にそぐわない検索結果を表示している」ため、顧客は新しい検索語句を入力するか、古い検索語句を完全に放棄せざるを得ないのです。 Forrester によると、 「商品の検索体験全体に対するイライラによって、 約 68% という許容できないほどの解約や離脱を引き起こされている」といいます。

Z 世代がより速く(そしてより正確な)検索結果を求める中、e コマース企業は検索をモダナイズしなければならないという重圧を感じていますが、行動に移している企業はほとんどありません。この失敗をそのままにしてしまうと、イノベーションだけでなく、売上においても競合他社に遅れをとるという深刻なリスクを負うことになります。

このブログでは、なぜ小売業者がキーワード検索の品質のために機会損失してしまうのかと、どのようにして Amazon Web Services( AWS )が自然言語処理( NLP )を用いて、 e コマース企業の収益向上を支援できるのかを述べます。

キーワード検索の課題

すべてのオンライン顧客が買い物中に検索バーを利用するわけではないですが、50% 近くは利用しています。Forrester は、2022 年のロードマップレポート ” Must-Have E-Commerce Features ” にて、「小売ウェブサイトユーザーの 43% は、初めてウェブサイトにアクセスした際に、まずは検索バーで検索することから始める」ということです。このことから、検索結果に重点を置くことは、顧客との関係を維持する上でさらに重要になります。しかしながら、検索結果に重点を置くことはそれほど簡単ではありません。なぜなら、ほとんどの検索エンジンは自然言語を理解しないからです。

例えば、あなたが赤いドレスシャツを探しているとしましょう。あなたはお気に入りのウェブサイトを立ち上げ、検索バーに「男性 赤い ドレスシャツ」と入力します。そうすると、検索エンジンはあなたが書き込んだ内容を理解しようとします。しかし、キーワード検索エンジンは、キーワードをそれぞれ個別の用語としてしか理解できないため、必要な情報以外の入力は、ズレた検索結果を導いてしまう可能性があります。赤いドレスシャツの検索結果の代わりに、検索エンジンは 「ドレスシャツ 」ではなく、ドレスやシャツの検索結果を返すかもしれません。これを変えるには、検索エンジンが検索語句を一つの用語として理解する必要があります。言い換えれば、ユーザーの意図を理解する必要があるのです。

キーワード検索によくある課題として、タイプミス、同義語と方言、特徴検索、フィルター検索、コンテキスト検索、テーマ検索があります。

タイプミス: 検索したい単語を誤ってスペルミスしてしまうことです。例えば、「 sweater 」と入力すべきところを 「 sweeter 」と入力することです。

同義語と方言: 地域によって異なる意味を持つ単語を検索することです。例えば、「 sunglasses 」ではなく、「 shades 」と検索してしまい、全く異なる検索結果を得ることがあります。

mens shades の検索をしている画像

例:multi-billion-dollar retailer – 「 mens sunglasses 」の代わりに 「 mens shades 」で検索した結果

特徴検索: ユーザーが特定の特徴を持つ商品を検索することです。例えば、「 strap sandal 」と検索した際に、キーワード検索エンジンが理解できるのはキーワードだけで、ユーザーの意図は理解できないので、商品説明にはサンダルとストラップが使用されていても、検索エンジンは検索語句と同一と認識できず、検索結果は 0 件と返します。

フィルター検索: ユーザーが商品の属性で検索することです。例えば、$ 30 未満のイヤリング、青色の靴下、ポリエステルの椅子張りカバーなどと検索します。

「 Earrings Under 30 」 の検索結果として関連のないアイテムが表示されてしまう

例:multi-billion-dollar retailer – 「 Earrings Under 30 」 の検索結果として関連のないアイテムが表示されてしまう

コンテキスト検索: ユーザーが特定の商品ではなく、コンテキストに基づいて何かを検索することです。例えば、「すきま風対策」や「寒さ対策」と検索して、どんな商品が結果に出てくるかを確認するような場合です。コンテキスト検索は、小売業者にとって最も困難なものになります。なぜなら、コンテキスト検索では、ユーザーが存在しないキーワードを検索していることが多く、その結果、検索結果が 0 件になったり、関連した検索結果が 0 件になるからです。

テーマ検索: ユーザーがテーマ別のカテゴリーで商品を検索することです。例えば、特定の種類のラグを探している人は、単に 「ラグ」と検索するのではなく、「廊下用ラグ」と検索するかもしれません。

HALLWAY RUG と検索した際に商品が見つからない画像

例:multi-billion-dollar retailer – 「 rug 」 の代わりに 「 hallway rug 」 で検索した結果

Baymard Institute は、「ユーザーの観点では、これらの日常的な表現は業界用語と同じように正しいと思っており、大規模テストの参加者のほとんどは、検索結果が悪かったときに別の類義語を試そうとは思わなかった」と述べています。「その代わりに、検索結果が悪かったり、限定的だったりするのは、そのサイトがそのような商品を選んでいるからだと参加者は単に思い込んでいました。」

機会損失を回避しましょう

顧客と小売業者にとって、検索の問題はイライラさせられるものですし、ショッピング体験の全体的な質を低下させています。しかも、小売業者は、この問題から顧客の体験と企業の財務の両面で悪影響を受けます。もし、顧客が探している商品を見つけられなければ、小売業者は多くの収益を失うことになるからです。

数字を見てみましょう。Econsultancy の調査によると、e コマースの平均コンバージョン率は 2.77% です。しかし、顧客が検索バーを使って探していた商品を見つけると、平均コンバージョン率は 4.63% に上昇します。これは e コマースの平均コンバージョン率のほぼ 2 倍です。Amazon.com で検索された場合、この数字はさらに上昇します。毎回 Amazon.com で検索し、探していた商品を見つけると、コンバージョン率は 6 倍に上昇します。つまり、かつては 2% だったコンバージョン率が 12% になります。このパーセンテージを収益に換算すると、e コマース企業にとって財務的に大きな改善です。

e コマース検索の改善を AWS はどのように支援できるのでしょうか?

AWS は、Amazon Comprehend 、Amazon Kendra 、Amazon Textract 、Amazon OpenSearch Service といった人工知能と機械学習( AI/ML )サービスを提供しています。これらのサービスを利用することで、e コマース検索を改善することができます。

Amazon Comprehend は、機械学習を使用してテキストの意味、洞察、つながりを見つける自然言語処理サービスです。このサービスにより、あなたの検索エンジンはキーフレーズ、エンティティ、感情をインデックス化し、検索パフォーマンスを向上させることができます。Amazon Comprehend は時間をかけて学習し、ドキュメント、カスタマーサポートチケット、商品レビュー、メール、ソーシャルメディアへの投稿といったテキスト情報から貴重な洞察を発見します。Amazon Comprehend を使用することで、ユーザーは次のことができるようになります:

  • ビジネスの分析とコールセンターの分析:顧客アンケートから洞察を引き出し、商品を改善します。
  • 商品レビューのインデックス化と検索: キーワードだけでなく、キーフレーズ、エンティティ、感情をインデックス化した検索エンジンを用いることで、コンテキストに焦点を当てます。

Amazon Kendra は、自然言語を理解する ML ベースのインテリジェント検索エンジンです。このインテリジェントなエンタープライズ検索サービスは、組み込みのコネクタを使用して、さまざまなコンテンツリポジトリを横断して検索することができ、機械学習の専門知識がなくても、ユーザーに高い精度の回答を提供します。

Amazon Textract は、スキャンした文書からテキスト、手書き文字、データを手作業なしで自動的かつ正確に抽出でき、すぐに使える ML サービスです。業種を問わず、データを整理し、元のコンテキストを保ち、出力結果のマニュアルレビューを省くために、Amazon Textract を利用できます。

Amazon OpenSearch Service はオープンソースの分散型検索・分析スイートで、インタラクティブなログ分析、ニアリアルタイムのアプリケーション監視、ウェブサイト検索を実行できます。OpenSearch Service を使用すると、ユーザーはアプリケーション、ウェブサイト、データレイクカタログ内で、高速かつパーソナライズされた検索により、関連するデータをすばやく見つけることができます。

結論

何十億ドルもの売上があるにもかかわらず、小売業者は検索パフォーマンスの低さによって収益を失っています。しかし、そのままにしておくのは勿体ありません。Amazon Comprehend 、Amazon Kendra 、Amazon Textract 、Amazon OpenSearch Service といった AWS サービスを利用することで、この問題を解消することができます。これらのサービスにより、小売業者は強力で改善された検索体験を生み出すことができるため、最終的には、収益の減少ではなく、収益の増加に集中することができます。

AWS の AI/ML サービスを利用して小売業の検索パフォーマンスを改善し、収益を増加させる方法をご覧ください。 消費財業界向けの AWS の取り組みについてはこちらから詳細をご覧ください。または、AWS 担当者にお問い合わせください。

参考リンク

著者について

Aditya Pendyala

Aditya はニューヨークを拠点とする AWS のシニアソリューションアーキテクトです。クラウドベースのアプリケーションのアーキテクトとして豊富な経験があります。現在、大企業と協業し、拡張性、柔軟性、耐障害性に優れたクラウドアーキテクチャの構築を支援するとともに、クラウドに関するあらゆることを案内しています。Shippensburg University でコンピューターサイエンスの理学修士号を取得し、 “When you cease to learn, you cease to grow “という言葉を信条としています。

Siddharth Pasumarthy

Siddharth はニューヨークを拠点とする AWS のソリューションアーキテクトです。ファッションやアパレル業界の小売企業の顧客と協業し、クラウドへの移行や最先端技術の導入を支援しています。Indian Institute of Technology で建築学の学士号、Kelley School of Business で情報システムの修士号を取得しました。最新のテクノロジーに精通するだけでなく、芸術にも情熱を注いでおり、余暇にはアクリル画の静物画を制作しています。

翻訳は Solutions Architect 金成が担当しました。原文はこちらです。