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週刊生成AI with AWS – 2024/7/1週

みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの小林です。

7月になりましたので、AWS公式ウェブマガジン”builders.flash“で新しい記事が公開されましたので、今月も生成AIに関連するものをピックアップしてみましょう。

ひとつめの記事はピクシブ株式会社様に寄稿いただいたものです。ピクシブ株式会社様は3Dキャラクターと対話ができるサービス、「ChatRoid」を提供していますが、そのなかでAmazon Bedrockをご利用頂いています。この記事ではアーキテクチャとその選定理由が紹介されています。

ふたつめの記事はGreenSnap株式会社様によるもので、Amazon Bedrockを利用した画像加工の新サービス、「gardenAI」について紹介しています。このサービスは生成AI技術を利用して庭や外構をリアルにデザインするサービスで、実際の写真を加工することが可能だそうです。Amazon Titan Image Generator G1を画像生成に、プロンプト生成にAnthropicのClaude 3 Haikuを利用していますので、この利用例にも注目です。

みっつめの記事は、PartyRockでアプリを作るというテーマですが、会話形式のストーリーにまとめられているので気軽に読んでいただけます。PartyRockは気軽に生成AIアプリケーションを作る体験ができるツールですが、どう使ったらいいかイメージが湧かないという方もいらっしゃいます。この記事を見ていただくと、PartyRockでアプリケーションを作る流れをつかめるので、ぜひどうぞ。

それでは、7 月 1 日週の生成AI with AWS界隈のニュースを見ていきましょう。

さまざまなニュース

    • AWS生成AI国内事例ブログ: AI Inside株式会社様、セキュアな生成AI環境で対応可能な帳票の大幅な拡充に成功
      AI Inside株式会社様は、AIエージェント「Heylix」やAI-OCRサービス「DX Suite」に加え、それを支えるAIインフラ「AnyData」「AI inside Cube」を提供しています。これまで手入力が必要だった帳票処理をデジタル技術で効率化するのがAI-OCRを提供するDX Suiteですが、書類はフォーマットが統一されていないものも多く、モデル学習が必要になるケースがあり、その対応には約2,000万円の費用と1ヶ月以上の期間が必要という課題がありました。この課題に対してLLM(大規模言語モデル)による解決にチャレンジし、サービス開始から7年間の期間で13種類が提供されるにとどまっていた非定型帳票対応用のプリセットが、3ヶ月間で1,000種類を超えるという成果を上げています。これを支えたのはAmazon Bedrockです。推論データがモデル学習に再利用されない事に加えて、Amazon EKS(Elastic Kubernetes Service)で稼働するアプリケーションからAWS PrivateLinkでよりセキュアな接続が可能な点がポイントとなりました。
    • ブログ記事「Amazon Bedrock Claude 3.5 Sonnetを活用して大学レベルの専門知識を必要とする工学的問題を解く」を公開
      AnthropicのClaude 3.5 Sonnetが発表され、Amazon Bedrockでも用途に応じて選べるモデル選択肢のひとつとして、米国リージョンでご利用頂けるようになっています。この記事では、機械設計を例にとって機械力学・材料力学・熱力学・流体力学の知識が必要な問題をClaude 3.5 Sonnetを活用して解決することが可能な例をご紹介しています。生成AIは完全ではありませんので、問題が複雑になればなるほど誤答の可能性も高まります。ですがそれを前提に、熟練者に対して手がかりとなる参考情報を素早く与えてくれるという見方をすれば、日々の業務に活用できる部分もかなり存在するのではないでしょうか。
    • ブログ記事「生成AIを圧要して工場の稼働率低下の原因分析を行う」を公開
      6月20日21日に開催したAWS Summit Japanでは、生成AIの活用に向けたたくさんのアイデアを展示しました。その中でも人気があったもののひとつが、ミニチュア組立工場を動かしながらスマート工場における生成AIの活用ケースのデモです。このブログ記事では、このデモのなかから「工場の稼働率低下の原因分析を生成AIで実現」というトピックにフォーカスしてご紹介しています。コンセプトやアーキテクチャの詳細な解説をしていますので、みなさんの業務への応用のヒントになるのではないでしょうか。
    • ブログ記事「スマートシティ向けの早期火災検知設計モデル: AWS IoTおよびMLテクノロジーの活用」を公開
      生成AI活用のど真ん中、という訳ではないのですが、生成AIを実生活に取り込む上でのヒントになりそうだなと思ったのでピックアップした記事です。このブログ記事は、AWS IoTを活用してデータを収集し分析することで火災の発生を早期に検知するとともに、データに基づいて機械学習モデルを利用することで火災予測を可能にするアイデアを解説しています。この記事は「スマートシティの火災」に焦点を当てていますが、交通網の改善や環境問題への対策など、同じ考え方を適用できる領域は多岐にわたります。もしかすると、ビルや工場の管理にも応用できるかも知れませんので、ご興味がありましたらぜひご一読ください。
    • ブログ記事「LLMの埋め込み情報ドリフトをAmazon SageMaker JumpStartから監視する」を公開
      多くのお客様が取り組んでいる検索拡張生成(RAG)についての理解を深め、精度向上のための打ち手を考えるヒントに成り得るブログ記事です。RAGではドキュメントを埋め込みベクトル(Embeddings)で表現しデータベースに格納、ユーザからの問い合わせと関連性の高いものを検索します。そのため、埋め込みベクトルの変化(この変化をドリフトと呼びます)の有無を測定することで、より高精度なアプリケーションを実現するための打ち手の要否を判断する事につながります。実際に手元で試せるような構成になっていますので、ぜひ時間を取って試してみてください。

サービスアップデート

    • Visual Studio IDEにおけるAmazon Q Developerが一般利用開始に
      Visual Studio IDEにおいてAmazon Q Developerが一般利用開始になりました。Amazon Q Developerは技術的な質問に答える、コードを生成する、既存コードを説明する、といった機能を通じてソフトウェア開発をシンプルにします。例えば、「Lambda関数をAWSにデプロイする前にローカルでデバッグする方法は?」「この関数に対するテストケースを生成して」といったリクエストに応えることができます(現時点では英語を正式サポート)。この機能はVisual Studio IDEの拡張機能であるAWS ToolkitにAmazon Q Developerが組み込まれている、という形で提供されます。
    • Amazon SageMaker StudioがAmazon S3 Access Grantsとの統合が可能に
      Amazon S3 Access Grantsは、Active DirectoryをはじめとするIDプロバイダの情報や、AWS IAMのプリンシパル情報に基づいてAmazon S3のオブジェクトに対するアクセス権を自動的に付与する仕組みで、データアクセスのガバナンス向上に活用できる機能です。今回、Amazon SageMaker StudioからAmazon S3 Access Grantsを利用したデータアクセスができるようになり、データアクセスが容易になるとともに「最小権限の原則」を実装しやすくなります。
    • Amazon EKSがEC2 capacity blocks for MLをネイティブにサポート
      マネージド型ノードグループを利用しているAmazon EKSのクラスタで、EC2 capacity blocks for MLで確保されたインスタンスをネイティブに利用できるようになりました。EC2 capacity blocks for MLは機械学習ワークロード向けにGPUインスタンスを予約できる仕組みです。Kubernetesを利用してAI/MLワークロードを実行している方が、リソース確保とその利用をするのが容易になるアップデートです。

著者について

Masato Kobayashi

小林 正人(Masato Kobayashi)

2013年からAWS Japanのソリューションアーキテクト(SA)として、お客様のクラウド活用を技術的な側面・ビジネス的な側面の双方から支援してきました。2024年からは特定のお客様を担当するチームを離れ、技術領域やサービスを担当するスペシャリストSAチームをリードする役割に変わりました。好きな温泉の泉質は、酸性-カルシウム-硫酸塩泉です。